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ザ☆旅行記Ⅶ 奇貨おくべし  作者: 小宮登志子
第3章 クラーケンの宿
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世知辛い世の中

 ドアを開け、クラーケンの宿の中をのぞきこむと、果して、別にどうといこともない、あえて言えば普通の宿だった。

「いらっしゃいませ」

 思いのほか、上品な声が響く。いわゆる「萌え」を意識したメイド服(多分、宿のマスターの趣味だろう)の女性が3人ほど、入り口で声を合わせて挨拶してくれた。

「とりあえず、今晩、宿泊したいんだけど……」

「分かりました。一応、宿泊料は前金でいただくことになっております」

 話によれば、宿泊料は銀貨2枚(前金)、ただし飲食代は別料金とのこと(なお、ペット(プチドラ)は可)。このくらいならリーズナブルな価格設定だろう。

 わたしは、小切手と引き換えに受け取った金貨を1枚取り出して手渡した。ところが、帰ってきたのは銀貨7枚。普通、金貨1枚=銀貨10枚のはずだが……

「申し訳ありません、実は、『釣り銭手数料はキッチリと取り立てるように』と厳しく言われてまして……」

 メイドは済まなさそうに言った。何事につけても手数料とは、なんとも世知辛い世の中だこと。


「それじゃ、アンジェラちゃん、お願い」

 メイドが声をかけると、少女(やはり、「萌え」系のメイド服)が一人、小走りに駆けてきた。

 少女は、ちょこんとお辞儀し、

「荷物をお持ちします」

 と、ニッコリ微笑んだ。歳は小学校高学年くらいだろうか。まだ子供だ。

「ありがとう。でも、重いわよ」

 風呂敷包みには、伝説のエルブンボウや金貨や替えの衣服など、いろいろと詰まっていてる。これを持たせるのは、なんだか気の毒だ。その代わりといえば……

「それじゃ、この子をお願い」

 わたしがプチドラを差し出すと、少女は、やや戸惑いながら、両手で受け止めた。


 わたしは少女に案内され、1階の食堂部分を横切り、階段を上って2階の宿泊用フロアに、そして、6畳ほどの小さな部屋に通された。

 少女はプチドラを床に降ろしてポケットから小さなカギを取り出し、

「それでは、ごゆっくり、おくつろぎ下さい。一応、カギはかかりますが、貴重品は常にお持ちになるよう、お願いします。もし、紛失された場合には、責任は負えませんので」

 言い終わると、少女はお辞儀して、小走りに駆けていった。ルーチンワークで慣れているのだろうか、子供の割には、しっかりした物言いだ。

 わたしはプチドラを抱き上げ、

「さて、これからどうするかだけど……」

 しかし考えるまでもなかった。同時に、腹が「グゥー」と悲鳴を上げたから。

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