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ザ☆旅行記Ⅶ 奇貨おくべし  作者: 小宮登志子
序章 帝国宰相の手紙
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すぐに帝都まで来られたし

「ふわぁ~~……」

 わたしはバルコニーに出て、うららかな日差しを浴びながら、ぼんやりと町を眺めていた。マーチャント商会、混沌の勢力、騎士団、キム・ラード、元メイド長……と、今から思えば、こんなに多くを敵にして、よく(こちらだけは)無事に収まったものだ。プチドラも、まるで気が抜けたように、寝そべっている。前の戦いでは大いに働いてもらったから、しばらくは休養してもらおう。

 町は、物理的には大きな被害を受けていなかったこともあり、さほど時間をおかずに復旧した。宝石産出地帯でも本格的に生産を再開し、アーサー・ドーン及びG&Pブラザーズ株式会社の隊商は、定期的にミーの町とミスティアの間を行き来している。

 この前までは、「やれ要求書だ、やれ交渉だ」と騒がしかった騎士会執行委員会も、今では(弱みを握られて)すっかり大人しくなっている。「くれぐれも、約束を履行するよう、お願いいたしたい」と、人が変ったように低姿勢。

 なお、ポット大臣は、宿題の反省文100ページを1日で書き上げて提出した。官僚だけあって、文章の作成はお手の物らしい。こんなに簡単にできるのなら、もう少しページ数を増やせばよかったかも……


 そのままバルコニーの椅子に腰掛け、まどろんでいると、

「カトリーナ様!」

 ポット大臣が、大急ぎで駆けてきた。

「な…… なん? なんなの??」

 わたしが目をこすりながら体を起こすと、ポット大臣は、

「実は、帝国宰相から密書が届いたのです。使者の方が、カトリーナ様に直接渡したいということなので、いかがいたしましょう」

 なんだかイヤな予感。密書、すなわち秘密の話には、昔からロクなことがないと決まっている。


 ポット大臣に案内されて応接室に入ると、そこにはフード付ローブをまとった使者が待っていた。プレートメールの上に赤いマントを羽織り、顔のある太陽が描かれた旗を持って、グリフィンに乗って……という、いつものパターンと違うと思ったら、今回は「勅使」ではなかったのね。

「帝国宰相自らしたためられた手紙です」

 使者は手紙をわたしに手渡し、

「では、私はこれにて」

 と、風のように去っていった。これにはポット大臣も呆気に取られている。

 手紙には、厳重に封印が施されていた。だったら、わたしがわざわざ直接受け取らなくてもよさそうなものだが、ともかくも封を解いてみると、その文面は……


 とにかく重大な話があるので、すぐに帝都まで来られたし。以上。


 差出人も宛名もなく、人をおちょくっているとしか思えない内容だが、相手が帝国宰相なので、無碍に断ることはできない。国を留守にしたくはない時に、困ったものだ。

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