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疚市(旧)  作者: 雪虫
29/36

5-1

 ようやく泣き疲れた私は、床に這いつくばったまま顔を上げた。部屋の中は真っ暗だった。光なんて一つもなかった。そのくせ、何も見えないという訳ではなく、全てを塗り潰すような暗闇の中に、何か黒いものが二つ、打ち捨てられたように転がっている事だけはわかる。私は、その二つの影の、すぐ近くにあった、小さい方を、腕に抱え上げて抱き締めた。埃君。彼が疚人になってしまったのか、なってしまったのだとしてもどうしてそうなってしまったのか、それは私にはわからなかったが、疚人になってしまったのならこのままにはしておけない。たったの数時間で腐りきってしまうから。私の腕を掴んで遊んで欲しいとはしゃいでいた子のそんな姿を見てしまったら、私は、私は、もう絶対に這い上がれない。


 私は埃君の亡骸を抱えて外に運び出すと、家の裏にあったタライの中に埃君の体を入れた。そして、扉の近くに立て掛けてあった鍬を発見したので、家の外に出て、適当な場所で穴を掘る。穴を掘る。穴を掘る。一心不乱に。ようやく、十分な穴を掘り終えた所で、私は埃君の元へと戻っていった。臭いはすでに酷かった。私は歯を食い縛りながらタライを穴の方へと運び、穴の中に中身ごとタライを置いた。そして鍬で穴に土を戻していく。それだけで、私の体力も気力もすっかり底をついてしまった。私はせめてもの目印代わりに鍬を置き、不自由な体を引きずって家の中へと戻っていった。そして玄関に踞る。何も見たくない。何も聞きたくない。何も嗅ぎたくない。何も感じたくはない。私は膝に顔を埋める。もう何も考えたくはない。


 朝なんて来なければいいのに。


 このまま、何もかも、終わってしまえばいいのに。





 けれど朝は、平等に、私達の前に訪れる。


 これっぽっちも求めてなんていなくても。

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