アレがSTANDでALONEな人のCOMPLEX
休暇はパソコン弄ってるか、アレを弄ってるかしかしてません
「う゛う゛にぃ~…コラぁアアアアアア!!」
「こち亀の時間だああああああああ!!!」
「・・・」
「こ、こんにちは・・・」
「ほ・・・ほげええええええええええええ!?」
「無視して良いよ」
「後輩君、こちらのお嬢さんは?」
「私の友人です」
「こんにちは・・・お邪魔してます」
「お邪魔だなんて、そんな事は。ゆっくりしていって下さい」
「はい・・・」
「ふぅ・・・」
「・・・」
「・・・」
「入るところからやり直しても良い?」
「お好きにどうぞ」
「いつもこんな感じなの?」
「この人?そうだよ、今日はマシな方」
「そうなんだ」
「いつもはもっと気持ち悪い」
「失礼な事を言うね」
「事実じゃないですか」
「気持ち悪いバージョンも見たいです」
「そんなものは無い、僕はいつも至って真面目です。
さて、日課の『nature』でも読むか」
「もう何言っても無駄だと思いますよ、
あとそれ『Newtype』です」
「くっそ~ 今日に限って・・・もっと面白いやつにすれば良かった・・・」
「他には何があるんですか?」
「興味持たなくて良いよ、調子乗るから」
「一番得意な奴やりましょうか、
『大気圏突入中にカミーユに撃ち落とされるC-3PO』っていう・・・」
「見たいです!」
「やめて下さい」
「それで友人さんは、今日はどうしました、私の彼を紹介します的な?」
「え、お二人は付き合ってるんですか?」
「気持ち悪い事言うのやめてよ」
「まぁ、付き合っては居ないですね。一方的に突かれてますね、
俺が。鈍器とかで」
「私も一方的に疲れてますね」
「上手い事言うね」
「今日は、この子のノートPCの調子が悪いとかで、
見てるんですが、正直、私もそんなにスキルは無いので、
本当に見てるだけですが」
「なるほど、それで俺が来るのを待っていた訳だな」
「いいえ、駄目だったらお店に見て貰おうって」
「俺、一応、パソコン研究部の部長よ?これが公安九課だったら草薙素子よ」
「直せるんですか?」
「餅も乳もモチモチって言うだろ」
「言わないです、餅は餅屋って言いたいんですか?
それなら尚更、お店に持っていきますけど」
「今、どういう状況?」
「確かに、起動した後にブルースクリーンになったり、
ブラウザすら立ち上がるのに時間くったり、調子悪いですね」
「友人ちゃん、何もしてないのに壊れたでしょ」
「え、はい。確かに特に何もしてないのに壊れました」
「やっぱりな」
「すごい、分かるんですか」
「女性が機械を壊す原因の内、最も多いのがそれさ」
「さすが部長さんですね!」
「アンタ、馬鹿にされてんのよこれは」
「?」
「とにかくちょっと貸して見給え」
「ちょっとこの小汚い人に貸すけど良い?」
「うん」
「今、なんて?」
「見るなら早く見て下さい、お店持っていくんですから」
「こんなのは簡単だ。
セーフモードで起動してだね、
コマンド・プロンプトで『ipconfig』と打ち込む。
表示された、デフォルトゲートウェイに対して『ping』コマンドを打つ」
「すごい」
「0%の損失か・・・なるほどな」
「何か分かりましたか?」
「嫌、何も分からないけど、何か俺、パソコン詳しい人みたいじゃない?」
「帰りましょう」
「ちょっと待って!あれだね、Cドライブが破損しちゃってるんじゃない、
何か衝撃とか加えられて」
「覚えはありませんけど、そうなのかな」
「それだとどうなんですか」
「うん、もうリカバリしちゃった方が早いかなって、
工場出荷時に戻すって奴?」
「データはどうなりますか」
「勿論消えるけど」
「それだとちょっと困ります・・・写真とか結構入っているので」
「あぁ、ハメ撮りとかそういうやつ?」
「先輩、『歯医者』って拷問知ってます?」
「もう言いません」
「こ、この間ディズニー行った時の写真とか・・・」
「一応、データだけ抜いてさ、バックアップファイルの時まで戻してみるよ」
「メディアはあるんですか?」
「そこの棚に外付けHDDあるから、好きなの入れて良いよ」
「ありがとうございます」
「先輩これ、1TB一杯ですが」
「あぁ、適当に消して良いよ」
「わぁ・・・エッチなのばっかりですね」
「気持ち悪い」
「こんなところに写真移したら思い出が汚れるね、止めようか?」
「汚れないよ、大丈夫だよ」
「取り敢えず気持ち悪いので全部消しましょう」
「嘘だろ・・・」
「そもそも何でここに、こんなのあるんですか、
そういうのは自宅でやって下さい」
「そういうのって何?、そういうのって何の事?知ってるの?
これ何に使うやつなの? 痛い!」
「自宅でやって下さい」
「分かりました・・・」
「あ、そういえば私もUSBメモリ持ってました、こっちに移しましょう」
「何でHDD消したの?」
「はい、こっちに移して良いよ」
「うん、ありがとう」
「俺の"ひとつなぎの大秘宝"が・・・」
「お茶いれるね」
「あ、俺にも頂戴」
「はい、お茶」
「わぁ、ありがとう、香りが良いね!」
「はい、先輩には、棚にキンチョールが入ってたのでこれを」
「わぁ、ありがとう」
「移し終わったよ」
「では、先輩、お願いします」
「はい・・・」
「はい、これで後は完了まで待つだけだよ」
「ありがとうございます、助かります」
「意外に詳しかったですね」
「俺が何年パソコンやってると思ってるの」
「何年やってるんですか、っていうか何歳なんですか」
「もう私、全然こういうの分かんなくて」
「まぁ、詳しくなくても使える様に出来てるしね」
「正直、この子も結構古いので、新しいのにしようかなって思うんですけど、
何かオススメとかありませんか」
「あぁ~? 何か適当に気に入ったの買えば良いんじゃないの~
ラインストーンとか一杯貼ってあるやつ~」
「何で急に態度悪いんですか」
「・・・俺はかつて同じセリフを同級生の女子に言われた事がある」
「へぇ、すごいですね」
「そうだろ」
「話しかけた女子が」
「そっちかい」
「それで、まぁ、正直、誰かに頼られた事何かなかったから、
俺も張り切ったよ、まずどういう用途で使うのか、
予算は、ノート、ミニノート、デスクトップそれともタブレット?
聞き取れるだけの情報を集め、最適解を導き出すべく頑張った」
「頑張りましたね」
「それで俺は3つまでPCを絞り出して、その子に提示した」
「そしたら?」
「『ありがとう、考えてみる』と言って彼女は満足気に去っていった。
俺も役目を全うした充実感で、その午後は気持ちよく眠れた」
「ちゃんと授業受けて下さい」
「しかし、いつまでたっても彼女から返答は無かった。
一週間たち、一ヶ月たち…痺れを切らした俺はこちらからその女子に話しかけた」
「え、誰?アンタ とか言われたんですか」
「さすがにそこまで酷くない」
「そう、俺は聞いた、『この間のPC、どれにするか決めた?』とな」
「はい」
「そうしたら、『あぁ~ Macのにした~』とか言うわけだ、
俺の選択肢の中にMacなんて無かったのに!」
「えぇ」
「理由を聞いたら、それが一番『カワイかった』からだそうだ、
俺は絶望したね、可愛い?パソコンが?確かに擬人化したら可愛いけど?
俺の苦労は?俺を頼ったんじゃないの?俺の事好きなんじゃないの?」
「いや、最後のは間違いなく勘違いですけど」
「それが理由でパソコン部の部室に現れる地縛霊と化したんですね・・・」
「化してねぇよ」
「とにかくそういう事で悪いが、俺にオススメのPCを聞くことは止めてくれ」
「はい・・・ごめんなさい」
「その子も別にそこまで本気で頼んでなかったんでしょうね」
「俺にトラウトを植えつけやがって」
「それだとサーモン人間みたいになりますけど大丈夫ですか」
「あ、下らない話してたら終わったみたいですよ」
「下らなくないよ」
「大丈夫みたいね、ちゃんと起動するし。
あとはこのUSBからデータ移すだけ」
「ありがとうございました本当に」
「報酬はスイス銀行に頼む」
「スイスですか?」
「良いから、もう帰ろうか」
「うん」
「え、もう帰っちゃうの?あ、ウィリアムおやじの話しようか?」
「さようなら」
「ありがとうございました」
「ウィリアムおやじは白髪のおじいさん~
やめりゃあいいのに逆立ちしちゃって
危ないったらありゃしない―」
「良かったの、何か言ってたけど」
「良いよ別に、いつもあんな感じだから」
「ふぅん、でも楽しそうだね」
「じゃあ、入部すれば?」
「絶対にヤダ」
お わ り