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33話 害虫駆除4

大変お待たせしました。


前回までのあらすじ

絡んでくる鬱陶しい害虫を駆除しようと、森に誘い出したリョウ。

かなりの手練れが3匹いて、各個撃破を狙うもまたもや油断のためピンチに陥るリョウ。

なんとか切り抜けるのか、それとも命を散らしてしまうのか...

「本当よ。あなたがもう少し早く来てくれていたら、もっと簡単に終わらせることができたんだから。

 おかげで私は魔力切れ寸前よ!」

「メア嬢、そう言ってやるな。

 吾輩としては久々に骨のある相手と立会えてっぅぐ…満足している。」

「ガイダイ殿、その顔の負傷は…酷い火傷を負われている様ですが…か、片目が潰れているではありませんか!それに耳も!」

「なに、たいしたことではない。

 目、耳の一つでこやつを斬れたのなら安いものだ。

 それよりも、吾輩も魔力を使い過ぎた。

【飛剣】、【潰剣】、【鋼体】、三つも【スキル】を使うことになるとは、思ってもおらなんだが。

 すまぬがビッケル殿、帰りの道中はお主に頼ることになるが、かまわんか。」

「…ふむ、魔力を大きく消費されているのですな…

 帰りの道中の露払い程度のことであればいくらでも。

 しかし早くに傷の治療をせねば、十全に動けぬでしょう。」


 俺に近寄りながら仲良くおしゃべりしやがってからに。

 もう余裕ですか?虫の息の俺なんてしゃべりながらサクッと片付けられると思ってるんですか?

 絶対に吠え面かかせてやる。

 まずは現状確認だ。

 でかい傷は…左腕は手首から先がおじゃん。右腕は裂傷多数だけど靭帯やら太い血管は大丈夫っぽいな、痛みはあるが動かせる。両足は共に膝と足首に違和感ありで裂傷多数、特にタマムシに刻まれた右足は踏ん張りが利きそうにない。胸から腹にかけての裂傷は広く深いものの幸い内臓に達していないが出血がやばいな。血止めを急がなければ意識が保てない。

 魔力は、一割あるかないか…【個人的空間】がいたかったな。焦ってロスが大きくなってしまった。

 装備は、指輪を使えばよべる【カチ割り】、厳鉄の入った巾着型の首紐、それにブーツ、奥歯に仕込んだ厳鉄二つ。

 なかなかに絶望的だな…


「心配いたみいるが、気になさるな。

 実は、さる筋から頂戴した【霊薬】があるのだ。この程度の傷であれば跡形もなく癒せよう。

 ビッケル殿の言われるとおり、惜しいがここで使うべきか。」

「な、なんと、【霊薬】をお持ちなのか!?」


 【霊薬】ってまじか!?

 本当なら金貨50枚はくだらんぞ。ってか金を積んだところで手に入るものじゃない。

 さる筋ってアイマミ侯爵からの品か。タマムシの役割はアイマミ侯爵にとってそれだけ重要ってことか。


 俺そっちのけで、タマムシが懐から【霊薬】を取り出す。日本でいうところの栄養ドリンクの瓶に入ったそれは、瓶なのか、中身なのかわからないが薄っすら発光していて神秘性を主張している。俺も見たことはないけどあれが“本物”だと直感的にわかる。瓶の方も相当に値打ちものだな。あの戦いの中で割れず形を保っていることから特殊な材料か、製法か、魔法的処置が施されていると見て間違いない。

 食い入るように【霊薬】を見つめるナナフシとメスゼミの目には珍しいものを見たという驚きと欲望の色が浮かんでいる。特にナナフシの【霊薬】を見る目はドロドロとした粘着質なものだ…

 ほんの僅かだが生き残る道筋が見えてきた。

 ほとんど妄想の領域だが、なんとかなるかもしれない。

 

「それではガイダイ殿は早急に治療されよ。害虫は拙者が処理しよう。

 封印を解かねば【霊薬】は服用できないのであろう?」

「…流石ビッケル殿、博識だな。

 それでは吾輩は回復させてもらおう…弟子たちも探してやらねばならぬしな。」

 【霊薬】を奪われないための処置か…呪文を唱えるとか特定の行動をしないと蓋を開けられないってとこか。


 封印解除の呪文を唱えるタマムシを背に、十字槍を構えたナナフシが見下しきった視線を向けてくる。がしかし、油断はなさそうだ。ヤローとの間合いは3メートル弱、完全に向こうの距離だ。今の俺じゃあどうあがいてもヤツの攻撃を凌げない、運がよければ右腕を犠牲に致命傷を避けることができる程度、二撃目で確実に命を摘まれる。どうする、考え「癒しを与えよ、バルス!」っておいっ、バルスってなんだバルスって。ってうお眩しいっ!

【霊薬】封印解除の呪文かっ!?つか今攻撃されたら反応すらできな「かひゅっ!」

 声に重たい頭を向ければ、胸から血を吹き出し崩れ落ちるタマムシ。その後ろにはべた付く笑みを浮かべたナナフシと状況を理解できていないメスゼミ。

 ヤローやりやがった!


「なっなにをしっあああぁぁああああああっ」

「何をとは、分かりきったことを言われる。“害虫駆除”ですよ、メア嬢。」

 金切り声を上げて問い詰めようとしたメスゼミは腹を裂かれ、臓物を零れさせながら沈む。ナナフシは十字槍の血を振り払うと、吐き気を誘う笑みをメスゼミに向ける。

「ふふ、理解できませんかなメア嬢。あなたもガイダイ殿も、そこで死にかけている傭兵と同じ“害虫”なのですよ。アイマミ侯爵の犬に、癇癪持ちのコントロールできない魔法使いに、若様をたぶらかす傭兵。

 お館様、サジエラ辺境伯家にとっては程度の差こそあれ、どれも有害な虫なんですよ。」

 静かに語られる言葉には隠し切れない愉悦が滲んでいる。


 刻一刻と死に向かうメスゼミにナナフシは淡々と自論を説明する。

「あなたたちの存在はサジエラ辺境伯家にとっては排除すべき“害虫”です。

 拙者は常々如何にこの“害虫”を取り除くべきかと苦心しておりました。

 表だって動けばいくら正義が拙者にあり、お館様も本心では望まれてはいても咎めを受けます。

 動きたくとも動けない、そんな日々にどれほど拙者が自分の力の無さに嘆いたかわかりますかな、メア嬢?

 それが今回このような形で解決しようとは、ふふっ、天も拙者の忠義の心に報いてくれたのですよ。」

 ナナフシは出血で意識を失ったメスゼミの顔を切り裂いて覚醒させ話を続ける。誰かに自慢したくてたまらないってガキかよ。つかあいつの考えって俺の考えとモロ被りじゃん…“害虫”ってワードまでも被ってるし…えっ、俺の思考回路はあいつと一緒ってことかよ!気持ち悪すぎるわっ!


「傭兵一匹狩るだけで満足するつもりでしたが、あなたとガイダイ殿も同時に排除でき、おまけに【霊薬】まで手に入るとは、なんと素晴らしいことか!

 これでサジエラ辺境伯家は安泰だ。拙者の地位も盤石のものとなるだろうっ!

 ふふっ、はーっはっはっ!」

 哄笑をあげながらメスゼミを滅多刺しにして、タマムシが握りしめていた【霊薬】に手を伸ばすナナフシ。俺に背を向け屈みこんでタマムシの指を解いている。タマムシの死後硬直が始まるには早すぎるがよほどしっかり握っていたのか苦戦している。

 やるなら今しかない。

 痛む体に鞭打って…全力で茂み目指して離脱す「どこに行くつもりだ、傭兵?」

 動けたのは僅かに一歩、距離にして3メートルほどか。

 目の前には右手で十字槍を握り、左手で【霊薬】を転がすナナフシ。一瞬にして正面に回り込まれた…


「わざと隙を晒してやったのにこそこそと逃げるだけとは、実に生き汚い傭兵らしい姿だ。

 ん、なんだその手は?得意の魔法でも放つつもりか?

 貴様が詠唱を終える前に突き殺してくれっんがっ」

 ボケが油断し過ぎなんだよ!死んどけっ!

 予測していなかった背後からの強襲に前のめりに倒れこむナナフシ、そこになんとか動かせる右手で指弾を放つ。放たれた7発の厳鉄の内4発は狙いを外すものの、残りの3発がしっかりと仕事をしてくれナナフシの肉を弾けさせ赤い花火を咲かせる。首と胸、腹で着弾した厳鉄は込められた【静かな花火】を発動させナナフシの血、肉片、臓物をぶちまけさせる。声をあげることもなく絶命するナナフシ。

 余裕ぶって俺の正面に回り込みさえしなければこんな結末にはならなかっただろうにアホなヤツだ。

 ははっ、それにしてもこうも上手くはまってくれるとは、ナナフシじゃないけど、天が俺に生きろとでも言っているみたいだ。

 まあ、さっさと【霊薬】をいただくとしよう、今の動きでそろそろ限界が近そうだ。

 

 【霊薬】ちゃんどこですか?割れたりしてないよな…おっあの光は、発見!うん、瓶にはヒビ一つ入ってない。封印解除しても瓶自体の強度は変わらずただ蓋が開くようになるってことか…つか瓶自体の強度が弱体化してたら危なかったな。

 右手一本で苦労しながらも慎重に蓋を開けると、甘い芳香が鼻を充たす。なんの匂いだっけこれ、なんか懐かしい気がするんだけど。って、今はそんな場合じゃない、早く体を癒さんと。

 特に酷い左手と胸から腹への裂傷に3分の1ずつ塗布して、残りは飲む…


 ヤク○ト!

 これヤク○トやないか!

 何年振りだ、飲んだの!?

 匂いもまんまヤク○トじゃんそういえば。

 飲んだ後の口の中の粘つく感じ、甘いものがいまいちな俺でも飲みたいと思える表現しづらいただ甘いだけでない味わい…完璧です、完璧にヤク○トさんです!

 そっかー、ヤク○トって異世界だと貴重なお薬なんだ...


 ってうお!?気持ち悪っ!

 傷口の肉が盛り上がって、ピンク色の肉がウゾウゾ動いてるじゃねーか!

 ちゅーか、熱い!

 血が身体中を駆け巡っているのがわかる。

 身体中が活性化している。

 人体ってこんなに熱をもっても大丈夫なんか!?

 って左手、なんか湯気でてないか?暗くてよくわからんけど…


 1分に満たない短い時間で、瀕死と言える重傷がほぼ完治した。重傷だった左手とタマムシから受けた刀傷も表面上は完治している。動くと力が入りづらかったり皮膚が引っ張られたりと多少の違和感はあるものの…【霊薬】先生恐るべし!おまけに少しだけど魔力も回復している。

 これならなんとか町まで帰れそうだ。身体の修復にエネルギーを使ったのか腹はめっちゃ減ってるけど…


 とりあえず、ナナフシからズボンだけでも剥ぎ取って町に帰るとするか。回復したとはいえ、老師に診てもらった方が確実だろうし


「いやー、よく生き残ったね」


 誰だ!?


消化不良のところは次回で説明します。(ナナフシを背後から襲ったモノは?)


誤字脱字修正したつもりですがまだあるようで...修正しておきます。

感想にもお返事できていません。気長にお待ちください。


次回はなるべく早めに更新する...予定です。

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