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23話 ギルドマスター2

お久しぶりです。


前話のあらすじ

圧倒的実力で目立つリョー君 そろそろ顔合わせしとくか(ギルドマスター)

【耳長族】人間の3~5倍の寿命をもつと言われている長寿種族。性格はプライドが高く排他的で他の種族を見下すことが多い。部族単位で集落を形成して他種族と交わらず自給自足に近い生活を送っている。見目に優れたものが多く、愛玩用として狙われることが多い。腕力、持久力には劣っているが視力に優れ弓の扱いは一流とされている。魔法に関しても高い適正を持ち、9割が魔法を使えると言われている。

 基本的に生まれた集落で一生を終えることが多いが、一部例外は魔法使いや冒険者として外の世界で活躍する。

 

【リーリアンネ=ベレカルレ=マーンスン】特級支援者。子爵。

 32年前サンシスコ王国王都サンパレスを襲撃した六頭のワイバーン(ランクB)のうち一頭を単独で討伐し特級支援者に認められる。風の魔法と弓を得意として、【風穴】の二つ名で畏れられた。戦争への参加、魔境、迷宮の探索よりも他者との交流を求め多くの種族の元に足を運んだ。結果、人族のみならず炭鉱族や獣人族とも友誼を結び、多方面に大きな影響力を持つといわれている。サンシスコ王国においては、支援者としての実力と他種族に対する外交的功績から子爵に叙任されるもリーリアンネ自身は他者から縛られることを嫌う性格のため、貴族として振舞うことは少ない。10年程前から行方を暗ませており、旅に出た、耳長族の郷に帰った、死んだ等噂されている。




「本当に驚いていますよ、まさか竜殺しの英雄に会えるなんて。それもこんな美しい方だったなんて。」


「ふふっ、お世辞でも嬉しいわ。

 わたしのことはリーリアンネで結構よ、あなたのこともリョー君と呼ばせてもらうから。今日のこの席は、噂のあなたと話しをしてみたいというわたしの我が儘だから緊張せず普段通りに話くれればいいから。」


 極上の笑みを浮かべるリーリアンネの言葉を信じてしまいそうになるが、んなわけない。どう考えてもこの場は俺の見定めの場だ。他国の密偵、国に牙向く危険思想者、盗賊の一味等あらゆる疑いがかけれているとみて間違いないだろう。

過去の経歴一切不明の20歳くらいの新進気鋭の3級支援者。戦争で活躍し名を挙げ、ボストロルをはじめとするCランクの魔獣を単独で仕留め、盗賊とはいえ同じ人間を情け容赦なく責め殺す。攻撃的に近づくパーティーは行方不明となっていれば警戒してしかるべきだ。客観的に自分を振り返るとびっくりするくらいの危険人物だ。国やギルドの立場からすれば使えることは使えるがいつ牙を剥くかわからない狂犬のように見え、首輪をつけれるならつけてしまいたいはずだ。

この女との受け答えが俺の今後を左右するといっても過言ではない。気を引き締めていこう。


「わかりましたリーリアンネ。それで俺に何を聞きたいんですか?」


「…ふふ、賢いこは好きよ。

 そうねあなたのことなら何でも教えて欲しいけど、答えられないことや答えたくないことは答えなくて結構よ。

 それじゃあ…」


 リーリアンネは微笑みをうかべて俺の目を見つめながら取り留めもない会話を続ける。使っている武器のことだったり、好きな食べ物のことだったり、最近流行りの吟遊詩人のことだったり、近隣の国の情勢についてだったり、ワイバーンを討伐したときの話しだったり、耳長族についてだったり、使えない部下の愚痴だったり、本当に取り留めもない話だった。迂闊なことは言うまいと構えていたのがバカらしくなるくらいだった。


「今日は楽しかったわリョー君。今度はお酒でも飲みながら、ね。

 あなたなら今後も精進を続ければ間違いなく特級になれるはずだから頑張ってね。もし相談があるならお姉さんのところに来なさい、手とり足とり教えてあげるから…」


「いえこちらこそ楽しかったです。今度は是非俺から誘わせてもらいます。美味い果実酒を出す店を知っていますので。」


 社交辞令を言いながら席を立つ。

 我ながらパーフェクトな対応だったと言えるんじゃないだろうか。リーリアンネも間違いなく最初より雰囲気が柔らかくなっているし、年上キラーを名乗ってもいけるはず。


「ああ、それから最後になるけど、あなた2級に昇級するから。領主からもお話しがあるそうだから、こちらの方から話しを進めておくわ。日取りが決まったら連絡するわね。」


 ……はっ!?




◆◆◆◆◆


唖然とした顔で出ていくリョー君の顔、なかなかそそられるわね。

やぱっり隠し玉は最後の最後に使うのが効果的ね。


それにしても久しぶりに見る逸材だったわ。

近接での戦闘なら何もできずに殺されるわね。

あの若さであれだけの強さ。

才能だけでなく血反吐を吐くほどの、それこそ拷問ともよべるような鍛錬を積んだことは間違いない。


「マスターどうでしたか、リョウ=サクラは?」


隣室に待機していたライナスが護衛の4人を引き連れてくる。リョウー君が暴れたら時間稼ぎもできない護衛達が…


「とてもおもしろいこね。足運び、姿勢、息づかいどれをとっても一流だったわ。おまけに肉体的な強さだけじゃなくて、頭の方もなかなかキレるようね。ただ少し腹の探り合いには経験不足な部分もあるみたいだけれど、そこは年相応でかわいらしいくらいよ。」


「それで本題ですが…」


ライナスの顔が陰を帯びる。この子の役職がら仕方ないこととはいえ少し過敏になりすぎじゃないかしら。


「大丈夫よ、他国の密偵ではないわ。

 それからこの国に対しても敵意や害意は持ち合わせてないわ。

 こちらが敵対しないかぎり、彼の牙が振るわれることはないはずよ。」


まあ敵意も無いかわりに興味も、愛着も一切ないようだったけれど。


「マスターの【読心】の結果なら安心できます。」


【読心】、ライナスたちは勘違いしているようだけど別に心を読んでいるわけでわない。善人も悪人も、老いも若いも、種族も関係なく多くの人と長い年月接してきたことから、相手の考えがなんとなくわかるというだけのこと。別にわたしじゃなくてもそれなりに経験を積めば誰でもできるようになること。

ライナスたちは私が特級支援者で且つ耳長族ということで特殊な魔法とでも思っているようだけど…まあ訂正する必要はないでしょう。


「それからリョー君についてだけど、ハスブル王国について調べなさい。何か関係があるはずよ。そうねここ10年に何か大きな事件がなかったかまずはそこからね。」


穏やかな会話の中でハスブル王国の話が出た時だけ彼の感情が昂ぶった。

それも負の方に大きく。

あれは、怒りであり、恨みであり、殺意だった。

それもドロドロと粘りつく黒く大きな。

120年の人生の中でもあまり出逢ったことがないレベルの。

リョウ=サクラは間違いなく復讐者、それも自分を含めて全てをなげうってでも目敵を果たそうという狂信的な信念を持った復讐者。

できることなら救ってあげたいけれどわたしの言葉に耳を貸すようには見えなかった。

他人のことを信じていない目をしていた。


「ああそれと彼が今まで討伐した賊の記録を見せてちょうだい。簡易版ではなく詳細版の方で。」


わたしの指示にライナスたちが部屋を後にする。仕事が早いようでなによりだ。


リョウ=サクラ、経歴一切不明の凄腕の若者。

整った容姿の微笑みの下に苛烈なまでの復讐心を宿した若者。

他人を信じず寄せ付けず一人我が道を行く若者。

久しぶりにおもしろそうな子を見つけたわ。


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