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19話 ドリガ砦1

 サレムの町から西に約70キロ、グリス河が隔ててセルゼルス帝国はある。元々はカリメア帝国の属国という一小国でしかなかったが、今の皇帝が即位してわずか20年の間に宗主国を含む4カ国を滅ぼして大陸有数の巨大軍事帝国に成り上がった。

 非常に好戦的な国で領土拡大を目指し、しょっちゅうどこかの国と戦争をしている。俺が二つ名をつけられた【エクセラの戦い】もこの国との戦争だった。普通に考えて戦争なんか金喰い虫でしかないはずだが、セルゼルス帝国は国力を疲弊させる様子もなく戦争を繰り返している。政治や経済なんて特に詳しいわけでもないが、謎の国だ。


 ドリガ砦はグリス河のほとりに築かれている。砦の周囲には木も生えてなく隠れるようなところは見当たらない。接近するだけでも苦労しそうだ。遠くから見た感じ3階建てのでっかいログハウスって感じだな。物欲はあんまない方だけどあんな別荘なら欲しいかも。


 この世界では明確な国境線みたいなモノはなく、山とか川で区切っているの一般的だ。したがってセルゼルス帝国がどこに砦を築いても誰にも文句は言えないはずなんだけど、まあ今までグリス河よりこっちはサンシスコ王国、向こうはセルゼルス帝国って棲み分けができていたから侵略行為といえばそうともいえる。俺にとってはどっちでもいいけど飯の種になるなら積極的に争ってくれって感じだ。


 砦自体は肉眼でギリギリ確認できるけど兵士とか設備なんかは見えない。

 受けた依頼は砦の調査(兵士の数、設備等 金貨1枚)もしくは破壊(砦、設備の破壊、兵士の殺害 金貨10枚)で、残念ながら俺の索敵や隠密のスキルはたいしたことがない。一般人と比べればかなりできるんだろうけどその道のプロには足元にも及ばない。

 今回既に領軍や支援者が偵察に出て失敗していることから、敵方には優れた防衛機能が備わっていることだろう。はっきりいって無理。そんなん絶対気づかれる。なので今回はサクッと皆殺しにします。砦の大きさからいって精々いても40~50人くらいでしょ、たぶん。ならいけるはず、たぶん。

 

 まあ罠とか怖いんで最低限の備えはするけど。


「はい、そんじゃ死にたくなかったらチャキチャキと突撃してね。

 まっすぐにあの砦目指して突っ込むこと、。

 途中で逃げたり、ますっぐ進まなかったらぶち殺すから、そのつもりで。」


「本当にあそこまで行ければ見逃してくれるんだろうな?」


「俺は嘘つかないよ。わかったらさっさといってくれ。」


「くそ、やってやる、やってやるぞ。」


「死んでたまるかくそったれ」


「うおおおおお」


 途中で捕まえたおバカな盗賊たちを砦に向かって突っ込ませる。30人もいたから連れてくるのに苦労したけど役に立ってくれるようで何よりだ。頑張ったかいもあったてもんだ。


 雄叫びをあげながら盗賊たち、当然砦からはまるわかりなわけで…


「ぎゃー、いてーよ」


「おげっ、し、死にたくねぇ」


 砦から放たれる弓矢によって肉の道突撃隊の第一陣はあっさりハリネズミになってしまった。弓の射程距離はだいたい250メートルってところか、外れてるのも少ないし結構腕のいい弓兵がいるな。射手は5,6人ってとこかな。今のポイントには罠はなさそうと…


「よし、そんじゃ次行ってみようか。次はちょっとずれてここからとそっちから。こっちとそっちで5人ずつね。」


「ふ、ふざけんな。死にに行くようなもんじゃねぇかっ。てめー頭おかしっうげ」


「はい余計なこと喋ると彼みたいになっちゃうから気をつけてね。

 君たち盗賊は本来なら殺されても文句を言えるような立場ではありません。

 しかし優しい俺は、砦までたどり着ければ見逃してあげよう。

 なんなら、これを機に盗賊から足を洗うっていうんなら金だってあげよう。

 君らが生き残るには、あの砦に行くしかありません。

 わかったらどんどん行こう。」


 状況がようやくわかってくれたみたいでみんな目を血走らせながら次々と突撃していく。突入場所をずらしたおかげか一人当たりに降り注ぐ弓矢の数は減っている、やっぱり射手は6人ってとこかな。おお先頭のヤツラがスパートをかけた、砦まで残り100メートル、弓矢も少ないし行けるか…


ズガン


「がぁぁああああ」


「あぢぃぃいいいいい」


 残念、炎弾によってまとめて焼き殺されてしまった。

 向こうには少なくとも弓兵6人と100メートルくらいなら殺傷力のある炎弾を飛ばせる魔法使いがいるってことか…結構充実した戦力だな。


「よし、じゃあこれで最後だ。残り全員で突撃してくれ。

 見て分かるように、弓矢と魔法が向こうの攻撃手段だ。でも遠距離攻撃ができるのは10人もいない。運と気合があれば行けるはずだ。

 健闘を祈る。」


「ふふふざけえうあああああ」


「俺にはむかうんなら待ってるのは100%の死だけだ。

 わかったら行け。約束は守ってやる。」


 罠がないことを確認したルートから突撃させる。盗賊たちは死にもの狂い突っ込んで行く。その気合があれば盗賊なんぞに身を落とすこともなかったろうに、憐れなヤツラだ。まあ人様に迷惑ばかりかけてきたんだから最期くらい役に立ってくれ。

 砦までの距離が250メートル、放たれる弓矢は相変わらず精確でごみ虫たちを突き殺していく。でも数が多いせいか10人くらいが生き残って更に先に進む。速射は難しいらしく放たれる矢は散発的で魔法の射程まで7人がたどり着いた。そこにぶち込まれる炎弾、憐れにも2人が黒こげになる。仲間の犠牲を乗り越えて5人がラストスパート、だが無情にも距離が近づいたためより精度の上がった弓矢と炎弾で砦まで残り20メートルというところで最後の一人が倒れてしまった…


 うし、わかった。あそこには罠はない、これならいける。弓兵6人に魔法使い1人。多少被弾するかもだけどやってやれないことはない。

 戦力把握もできたことだし本番といくかな。


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