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16話 お礼は3倍で

リョウは男女平等に扱います。

 血やら肉片やらが付いた服を着替えて地下室に戻ると、賊の4人がビクビクと震えながらこちらを窺ってきた。みんな顔面蒼白で涙や鼻水をたらしている。いい大人が情けないことこの上ない。まあそれもしょうがないか、赤毛クン結構酷いことになってるし、たとえ親や恋人でも判別つかないツラに…我ながら惨いことをしたもんだ、南無。


 推定主犯クンも目に怯えをにじませて、震えながら許しを乞うように見上げてくる。ヤローの上目遣いなんて気持ち悪いだけだが、まあすんなり喋ってくれそうでなによりだ。めんどくさい拷問なんてマネをした甲斐もあったってもんだ、血は以外と頑固な汚れだから洗濯やら掃除が手間でしょうがないんだよな。赤毛クンの犠牲も無駄にならなくてすみそうだ。


「口裏合わせられても面倒なんで一人ずつ隣の部屋で尋問させてもらうけど、嘘ついたら赤毛クンよりきついことするからよろしく…そんじゃ金髪のおねーさんからやろうか。

 ああ、俺がいないからって暴れたりしないように、暴れた場合も赤毛クンよりきつい思いをしてもらうから。

 素直に俺の知りたいことを教えてくれたら解放してあげるからシャキシャキ答えてくれるように。」




 金髪のおねーさんを隣の部屋に連れていき、椅子に縛り付けてから猿轡を外すと凄まじい勢いで命乞いをしてきた。助けて、なんでもする、抱かれてもかまわないむしろ抱いて、知ってることはなんでも話す、死にたくない、痛いことをしないで、許して、助けてとそんなようなことを涙ながらに、大声でキャンキャンとわめいてくる。あまりの勢いにちょっと茫然としてしまった、がこのまま喋らせてても話しが進まないんで


「おごっ、…ああああああ。」


 腹パンからの指折りで立場をわからせてあげる。


「訊かれてないことをベラベラと喋るな。質問の答え以外を口にする毎に指を1本折る。

 わかった?」


 うめき声を押し殺して涙をこぼしながらカクカクと首を縦にふってくる。

 よしよし、立場をわかってくれたようでなによりだ。


「それじゃあまず名前から教えてもらおうか。」


「ナルーカ=ベントール。…あぐっ」


 髪を掴んで動けなくしてから軽くツラをはたくと奥歯が折れたみたいだ。呻き声をあげながら首を縦に振る。敬語も喋れないとは育ちがしれる。


「自分の立場わかってる?敬語で話そうね?

 じゃ次、どうして俺を狙った?」


「ごほ、えほ…1年半前あなたにこ、恋人と兄を殺されたから…その復讐に。」


「恋人?いや覚えないんだけど。もうちょっと具体的に。」


「っ、【閃光の剣】というパーティーに覚えはないかしら?

 当時、期待の若手と呼ばれていた6人組よ。ザカの村を双首狼の群れから防衛する依頼を受けて壊滅したパーティーよ…あなたに見殺しにされて、私を残してみんな死んでしまったわ。

 あの時あなたが手を貸してくれていれば誰も死ぬことはなかったのに…あなたは追い込まれた私たちの助けを呼ぶ声を無視して、いえカイマスや兄さんが喰い殺される様子を眺めていただけだったわ。それだけの力を持ちながら、助けられる私たちを助けずにただ見ているだけだった…どうして、どうして助けてくれなかったのっ、そうすればカイマスや兄さん、みんなも死ななくてすんだのに…」


「ザカの村…双首狼…ああ、あん時か。

 っておねーさん、そりゃ逆恨みもいいとこでしょ。俺が受けた依頼は村の防衛であってとろくさい同業者の尻拭いじゃない、なんで見ず知らずのヤツなんて助けにゃならんのよ?

 だいたいこんな商売やってるんだから生きるも死ぬも自己責任だろ。

 おねーさんのお仲間は弱かったから死んだの、それは俺のせいでもなく、双首狼のせいでもなく、ただあんたら弱かったから。誰かに責任を求めるなんて甘えだよ、甘え。そんな程度の心構えならそもそもこんな商売するべきじゃないんだよ。」


「なっ…冒険者は助け合うものでしょ。それに人が人を助けるなんてあっぐうう、痛い、痛い、やめてください、許してください。」


「だから立場をわきまえろって、あんたの青臭い考えなんて聞いてないんだから。繰り返しだけど訊かれたことだけ答えてよ…でないと。」


「す、すすすいません。」


 涙と鼻水に涎と血、出せる体液を全て滲ませながら懇願してくる。

 痛いのはイヤだろうに学習しない女だ。


「わかればいいけど、本当に次はないから。

 それじゃあ二つ目の質問だけど、どうやって俺がここにいることを知った?」


「それはザブが、詳しいことは聞いてませんがギルドにツテがあると言っていました。」


「ふーんザブね…どいつ?」


「あなたを襲った一人です。ベイオウは先ほど…」


「ああ彼ね、やっぱり彼が主犯か。手首ふっ飛ばしても向かって来たから根性あるとは思ってたけど。

 最後の質問、他にお仲間はいる?資金と情報とかで間接的に援助してるヤツとか、おねーさんみたいに実力行使してくるヤツとか?」


「それも詳しくは知りませんが、ザブがバルック商会がお金を出していると言っていました。」


「おーけー、わかったよ。これでおしまい、協力ありがとね。

 なら次は主犯クンに訊いてみよう。」

「し、知ってることは全部喋りました。嘘もついてません。み、見逃してくれるんですよね?」


 寝言をほざいているバカ女を無視して拷問部屋に戻る。命を狙ってきた相手を見逃すほどこっちは平和ボケしてないから、あとできっちりぶち殺すから。痛みと恐怖からちゃんと解放してあげるから。


 やっぱりあのギラギラした目の彼が主犯だったか、他のヤツとは気合が違う目つきをしてたからそうだろうとは思ったよ。そもそも主犯なら直接俺を殺りにくるだろうし予想の範囲だったな。っと老師が手招きしてる、なんだろ?


「リョウさんどうネ、何かわかったカ?」


「ええ、たいしたことは知ってませんでしたけど…主犯はわかりましたし、これからそいつを尋問します。」


「あの右手首のない人ネ?なら多分喋らないヨ。あの人怯えてるけど、覚悟ある目をしてるカラ。」


 まじか…賊の中じゃ一番根性ありそうだから多少は苦戦するかもと思ってはいたけど。人生経験豊富な老師が言うならそうかもしれん。

 ひょっとしたら怯えたフリして嘘をつき俺を陥れることも考えてるかもしれない…うーめんどうだ。


「私に任せてみるネ。リョウさん痛めつけることなかなか上手だけど、痛みでは心が折れない人間もいるヨ、あの人は多分そういう人間ネ。」


「老師はどうするんですか?」


「これ使うヨ。」


 言いながら懐から小瓶を取り出す。この世界ではガラス製品はそれなりに価値があり、希少な薬品などの保管に使われることが多い。


「これ【エバの蜜】といって、人の理性を融かす毒ネ。これ飲むとお酒を飲んだみたいに気持ちよくなって心が無防備になるヨ。飲ませる量を間違えると頭がバカになってしまうカラ注意必要だけどネ。」


 要は自白剤みたいなものか。そういうことならプロに任せましょう。


「お手数をおかけしてすいません。」

「気にしないでネ。そのかわりといってはだけど、あの人たちもらっていいカナ?

 曾孫たちのいい練習台になるネ。失敗気にせず人の体弄る機会なかなかないカラ。」


 おおなんと素晴らしいこと。あんな酸素を無駄に消費するしかないクズどもが医学を志す若者の糧になれるなんてすばらしすぎる有効活用じゃないか。賊どもの使い道のない体が明日の医療の礎になるなんて、価値のない人生を送ってきたヤツ等にとっても本望だろう。


「もちろんです。そこそこ頑丈だと思いますんで存分に弄り倒してしっかり勉強させてあげてください。」




 老師の尋問は神業だった。わずか20分程で必要な情報を全て聞き出してくれた。情けないけど初めから老師に全てお任せすればよかったと思える程に…

 必要なことも聞けたし、サクッとギルドのバカどもとアホ商会にお仕置きしてきますか。もちろん3倍返しで。


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