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10話 トロル討伐3

 解体、めんどくさい。血で手は汚れるわ、内臓は臭いわでもうほんとにめんどくさい。しかし適切な処理をしないとせっかくの成果もただの生ごみに成り下がってしまう。

 肉が食えるトロルと土トカゲはしっかりと血抜きをしておく。これがいい加減だと肉が不味くなる。自分でも食うつもりなので適当な仕事はできない。ほんとなら木に吊るしておきたいけど、でかすきて厳しいんで、穴を掘って傾斜を作って血抜きしている。腕がパンパンなんですけど…

 コボルトと四ツ手猿は皮が売れるけどたいした値がつかないんで今回はパス。つーか皮剥ぎとか無理っす。細かい作業してると頭がガンガンしてくるんだよな。魔結晶を探して胸を開いてみたけど今回はハズレ。まあコボルトだと百に一つ、猿だと五十に一つくらいの割合でしか魔結晶持ちなんていないから、あんま期待してなかったからいいけど…悔しくなんてないんだからねっ。


パチッバチ


 うーんいい匂い。跳蜘蛛ちゃんが焼けたみたいだ。アホな一人芝居はやめてお食事にしますか。

 メニューは蜘蛛の丸焼きだけど…防具の素材にも使われる頑丈な甲殻をもつ跳蜘蛛の解体、調理は結構難しい。しかし俺には魔力による身体強化と抜群の切れ味を誇る【カチ割り】がある。脚を付け根から切り落とし、関節で更に切り分ける。切れ目を入れてから熱さに気を付けて甲殻を力任せに割ると、プリプリの肉が飛び出す。食欲をそそる匂いを我慢して塩を一つまみふりかけてからかぶりつくと


「うまいっ、ズワイガニ最高!」


 味はまんまズワイガニ。しかし身は肉厚でカニでは感じられない、肉を食い千切るという充足感を与えてくれる。おまけに旨みはしっかりあるのにカニほど脂っこくなくていくらでも食べられる。正に夢の食材、ビバ跳蜘蛛ちゃん。Dランクという強さと解体の難しさから、町で食えばかなりのお値段で庶民ではお祝いのときくらいしか食べることができない。

 仕留めてから2,3日はもつはずなので、ハヅキやアイリとミリーにお土産としてもってかえってやろう。直接火にぶち込めば、強靭は甲殻のおかげで身を焦がすことなく蒸し焼きのように調理することができるのもポイントが高い。地球でいうところのホイル焼きみたいなかんじだ。焼き加減さえ間違えなければ中までしっかり熱が入り、食材の旨みを引き出し、しかし加熱で堅くなりすぎることもない非常に優れた調理法だ。まあ跳蜘蛛で実践する場合は一般人であれば相応の器具と腕力が必要になるけどな。

 さてそれではお待ちかねの脳ミソちゃんをいただきますか、まあ普通のカニといっしょで〝脳ミソ“とはいうものの肝臓なんだけど。胴体部分は脚より若干柔らかいけどけっこう力がいる、慎重にはがさないと腸とかの内臓を傷つけて食えなくなってしまう。っしょっと、上手に割れた、それでは塩を一振りして


「うんまーいい。とろけるー。」


 脚はズワイガニだが、ミソは毛ガニのそれ。まったく、なんて素敵な食材なんだ。美味すぎるぜ。ボイルしたことで熱が通って、トロトロになったミソから食欲をそそる芳醇な香りが漂い解体で辺りに漂っていた血生臭さを一掃して食欲を刺激してくれる。また野外で、自分が狩った獲物を、自分で調理して食べるということで征服欲、支配欲を満たしてくれる。

 ああ、今俺は生きることを体全体で感じて楽しんでいる。結構手間もかかるんで毎日したいとは思わないけど月一くらいでならやりたい。今度はハヅキを連れてピクニックだな。


 ウゥウブウー グォオオオ ゴォオゴ


 っと、ようやく集まってきたか。同族の血の匂いで怒りに興奮し、大好物の焼ける匂いに頭をとろかしたトロルどもが。手間をかけて探したり、罠をはるのはめんどうだったんでダメ元でやってみたけど(解体もしなきゃだし腹も減ってたし)ラッキーだったな。それじゃトロルハントといきますか。




 数は全部で5体。俺が確実に狩れるギリギリの数だな。木を振り回してるのが2体に、素手が2体、投石用の石を握りしめてるのが1体。厄介だな、間抜けが多いトロルの中で道具が使えるだけの知恵あるエリート個体を相手にせにゃならんとは。気を引き締めるか。まずは石持ちから潰す。


「しっ」


 気合を込めて【静かな花火】を発動。頭を狙ったんだけど外れて、胸に着弾。パン、パンという音とともに弾けとぶ胸肉、しかし致命傷には足りない。がしかし十分に怯ませ隙を作ることができた、イケる。全身に魔力を行き渡らせダッシュ、一気に間合いを詰めて右手に【弾ける怒り】をかける。


「おらっ」


 跳躍してトロルのぶっとい首筋に右手で手刀をぶち込む。イメージはマサカリで木を切り倒す感じで。


ズドン


 頸椎を圧し折る感触と爆発の余韻が右手を痺れさせる。結構ビリビリするが、肉を打ち、命を刈り取る甘美な痺れに興奮する。

 爆発とともに吹き飛ぶ生首。醜悪なトロルのツラが痛み、怒り、驚愕を貼り付けて空を飛ぶさまはかなり笑える。


 仲間をあっさり殺されて茫然としている木持ちに突撃する。突っ込んできた俺に慌てて木を振り回すが無駄、そんな大振りのスイング余裕でかわせるぜ。スライディングで木を避けてすれ違いざまに膝を左手の【カチ割り】で切り付けると立っていられないようで無防備な後頭部が目の前に。サクッと首を斬りとばす。


 これで2体。所要時間は10秒ちょいってとこかな。トロルどもは仲間が殺されて怯むのではなく、怒りを燃え上がらせて突撃してくる。実力差を悟って逃げることもできない哀れなおバカさんたちだ。連係もなにもない単なる突撃。トロル同士の距離が近すぎてお互いが十分な力を発揮できんだろうに。


「うおっ!?」


 木持ちが仲間ごと木を振り回してきやがった、あぶねー。バカな攻撃だけど喰らったらただじゃすまない、現に吹き飛ばされてヤツはフラフラしている。バカだと侮ると痛い目をみそうだ。バカだからこその予測できない攻撃には注意が必要だ。


「らっ」


 吹き飛ばされてフラフラのヤツの膝にローキックを一発。蹴りの威力に足甲の堅さが上乗せされた一撃はトロルの膝関節を粉砕する。異常な回復力を誇るトロルも内臓や関節といった箇所は修復に時間がかかるみたいで転げまわっている。

 同士討ち大好きな木持ちがチャンスとばかりに大木を振り下ろしてくる。でも来るかもと心の準備ができていたので右にずれて回避。ついでに手首を切断すると、木を取り落して一瞬何が起きたか理解できていないようで歯並びの悪い口をポカンとあける。そんな隙を見逃すはずもなく蹴りで膝を破壊してから耳に抜き手を突き込み頭を内部から爆砕する。首なしとなった体は轟音を立てて倒れる。


ガアァアー


 叫び声に振り返ると素手の2体が愚直に突っ込んくる。ほんと学習しないやつらだ。なんだか憐れになってくる、まあ手は抜かないしぶち殺すけど。


 両手で【静かな花火】を発動して2体の顔面に。今度は狙いたがわず顔面で炸裂。致命傷には全然至らぬものの、目や鼻が吹き飛んでいる。視界を奪われ、痛みに惑乱する2体の首を【カチ割り】で優しく刈り取って状況終了。

 戦闘時間は1分少々だが、かなり疲れた。魔力も4割ほど消費したし、短時間とはいえ激しく動いたため息も上がっている。何より楽勝とはいえ一撃でももらえば即、死につながる張りつめた状況に精神的につかれてしまった。

 この後の解体は面倒だけどかなりの稼ぎになるだろうし、帰ったら美味いモノをたらふく食って、風呂入って、ハヅキに思いっきり癒されよう。


ブルルルッル


コクオウの嘶き。なにかあったの「おっごっ」


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