第99話 チートなしの転送者に任すなよ
「もう1回言おうか、誰でもいい俺を殺してくれ」
「するわけ、ないだろ」
「なぜだ、お前らも理由があって俺を殺しに来たんだろ。あの勇者だってその仲間だってあったんだ」
「いやそれがなら」
「ならそこの男は」
「俺は仲間がいくからここに」
「そこの鎧を着た奴は」
「………私も同じ」
「じゃあそこの獣人は」
「家族を探しに、けどもう見つかりました」
「じゃあイリアは」
「タナカが行くから」
「じゃあお前らは俺を殺す理由は」
「持ってないな」
「ならなんで俺と戦ってたんだよ」
ササキに切れられたが無いものは無いのだ。
「一応かすかにある理由としては襲われたからか」
もうそれしかない、襲われて身を守るためにやったとしか言いようがない。
「ならもう一度」
ササキが武器を構えようとしたのだがイリアがササキの前に出る。
「撃てるの、自分の孫を撃てるの」
「くっ」
武器を下ろす。
「ならお前らに反応弾を」
「そっちは逃げ道あるから気にしないよ」
「くそ、ならお前はどうすれば俺を」
「聞きたいんだが」
「……なんだ」
「その彼女を探さなかったのか、転生者ならチートのひとつやふたつあったんじゃ」
「それが今更ながらバカらしい事なんだがやつらの言い分を鵜呑みにしてな、それに俺のチートは鑑定と不老、膨大な魔力、それに魔力プラス代償を支払うことでゲーム中の物を召喚するってやつだ、探す能力はねえよ」
「鑑定使えば」
「鑑定は見えてるものだけだしかも名前なんか出てこない」
「なら膨大な魔力使って探せば」
「召喚にほぼ使われてて魔術はほとんど使えない、さっきのお前を襲った魔術もほぼ見せかけだ」
「なら約束の場所とか思いでの場所とかには探しに行かなかったのか」
「行けなかった、彼女のことは死んだもんだと思っていて近付きたくもなくなってた」
「そうなのか、ついでに聞きたい何であれあんなに頑丈なんだ」
「あれはゲーム中に出てきた、不破壊オブジェクトだ。その性能をそのまま召喚した」
「え、なら」
「質問はもう終わりだ、もう決心した」
ササキは銃を手放す。
「これじゃあでかすぎるからな」
足元に転がっているS4を拾う。
「俺は死のうと思う、だから伝言を」
「ふざけんな」
「ごめんと、それだけでいい」
「伝えるかよ、自分で伝えろよ」
気をそらせているので誰かに銃を奪えないかと目配せする。
「それはそうとタナカ、敵に確実に当てるにはどうしたらいいと思う」
「知るかよ」
「敵が動かなければいい」
「で」
「俺が唯一使えると言っていい魔術に拘束魔術がある、体内の魔力を利用動きを止めるってやつだ。これなら俺の鑑定スキルを無効化するほどの魔力の持ち主であるお前でも動きを止められるだろう、じゃあな」
陣が5つすでにあり、最後のひとつが点灯する。ササキが魔術を発動させたのと同時に目をつぶり銃口を加える。発動させたのは拘束魔術だろう。だがこの体は魔力のまの字もない世界の体だ、この世界では1人で火もつけられ無い体だ。瓶に入った液体で擦り傷ひとつ治らない体だ。だけど、だからこそ、今この瞬間だけは動ける、止められる、ぶん殴れる。
「ふざけんなよ」
ぶん殴る。
「うっ」
手に痛み。
「いってぇ」
痛みをこらえてササキが落としたS4を蹴りとばす。ササキが目を見開きながら叫ぶ。
「何で、何でお前は動ける、いやその前に何で止めた」
爆撃機を指差し、叫び返す。
「それわな、あんな危険なもの残して死ぬなよ、どうにかしてからにしろよ」
「えっ」
「あんな誰でも使えて、絶対に壊せなくて、世界を滅ぼせる物なんて残すなよ。守ってろってか無理だ、何のチートもないのに守れるかよ」
「は」
「お前がやった事だろうお前が何とかしろよ、その為のチートだろうが。チートなしの転送者に任すなよ」
「えっ、お前まさか」
「体力も無ければ魔力もない、さらに言えばチートもないただの転送者だ。そんなんだからすぐに奪われるだろうよ、それでまた世界の危機だ。そんなやつに託せるのかよ。ひとまず自分はこんな世界の危機に関わってるだけで場違いなんだよ」
「けど俺は多くの人を殺したんだどうやって償えばいいんだよ」
「ならお前の力で、チートで戦争やら差別やらをなくせばいいだろ。力はあるんだろう、時間もあるんだろう、そうやってればいつか誰かに認められんじゃないのか、自分を許せるんじゃないのか、多くの人から許されるんじゃないのか」
「それで本当に」
「知るかよ、未来予知のチートも無いやつに聞くなよ、どうなるかは」
右手で拳をまた握りしめ、左手でササキをつかむ。
「自分で、考えろ」
ササキの顔面を、ぶん殴る。




