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第98話 俺を殺してくれ

 横からイリアがぶつかり、倒れる。そこにS5を突きつけられる。

「答えろ、お前の名前は」

「タナカ」

「お前じゃない彼女だ」

「イリアよ」

「何でお前がその名前を名乗ってる、その名前は彼女にしか」

「ふざけるな、同じ名前のヤツなら」

「姿も似てるんだよ、髪の色も何もかも。違うのはただひとつ彼女はエルフだった、こいつみたく人じゃない」

「タナカ大丈夫か」

 アルフが駆け寄ろうとする。ササキの視線はそちらを向くが銃口は向けられたままだ。

「来るな」

 今なら戦えるだろうが自分達は確実に撃たれるだろう。それに抵抗したいが無理だ。動けないし、武器は手放してしまって手元にない。

「彼女は死んだ、死んだんだ。だからその名を汚すな」

 彼女に銃口を向ける。

「イリア」

「その名を口に出すな」

 2丁ともこちらに向けられる。

「彼女はあのとき死んだ、彼女を逃がした後にやつらがそう言ったんだ」

「死体は見たのかよ」

「やつらが傷つけ投げ捨てた死体をな、だからあいつら1人1人をそれ以上に壊した、そしてそれ以上に苦しめ殺し破壊してやることにした。そう決意するほど大切な名前だ、だからその名を名乗るな」

「私は」

「黙れ黙れ黙れ、しゃべるな目障りなんだよ」

「クォーターよ」

「っ」

「そして、お婆ちゃんから同じ名前を名乗ってるの」

「嘘だ」

「あれ前にハーフって」

「タナカごめん、ハーフでも珍しいのにクォーターってなるとさらにややこしくなると思って。それであなたの彼女は元奴隷で名無しだった、違う」

「違、わない」

「だから、買ってくれた主人に、名前をもらい、自由をもらったって」

「なら、なら何であの時に死んだって、死体だって見たんだ」

「お婆ちゃんが言うには盗賊に襲われたエルフの死体が変わりに持っていかれたから助かったって言っていたわ」

「なら彼女は」

「生きてるわ、その息子も、そのまた娘も」

「……なら俺はなんのために、やつらを殺し、世界まで滅ぼそうとしたんだ」

 ササキが武器を下ろし、乾いた笑いを続けていた。

「タナカごめんあの時嘘ついて」

「いやいいよハーフだろうがクォーターだろうがはたまたエルフだろうが関係ないし」

 アルフやリズ、メリベルも駆け寄ってくる。

「タナカさん大丈夫ですか」

「タナカ無事か」

「………タナカもイリアも無事なの」

「ああ」

「ええ」

 そこで笑い声が急に途切れ、ササキが話しかけてくる。

「なあ、タナカ」

「なんだ」

「俺を殺してくれ」

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