第76話 ひさしぶり
異世界転送後215日目、何かに照されて目が開く。今日は晴れたようだ。肩が重いのでそちらを向く。リズがいた。
「へっ」
しかし思い返すと自分から同じマントに入っていたので気にしないことにする。リズを起こす。
「リズ起きろ、朝だぞ」
起きない。肩を揺する。
「………今起きるよ、………ぱぱ」
寝ぼけているのか、昔の事を夢に出ているであろう父親と勘違いされたようだ。まあ早く起きる必要はないかと思いそのままにしておく。また昨日の雨のせいで服が湿っており気持ち悪いので着替えたい。その為に寝ていて貰った方が気恥ずかしくなく着替えられそうだ。荷物を漁り服を取りだし、着替える。すぐに着替え終わるがリズはまだ寝ている。食べ物があるのならなにか作ればいいのだが、食べ物はチューブしかないし、動物なんか狩っても解体できないし、植物の見分けもつかないし、そもそも火もつけられない。仕方ないから先に食事をする。
食べ終わる。さすがにリズを起こす。
「リズ朝だぞ」
「………おはよ、おはようございますタナカさん」
「ああ、おはようリズ」
「寝過ぎました、すぐに準備しますね」
「別にゆっくりでもいいんだけどな」
リズが慌ただしく準備している。自分も自分で荷物をまとめる。
「準備できました」
「じゃあ行こうか」
昨日と同じようにまた森の中を進んでいく、今更ではあるが今朝の事もあるので食べられる野草を教えてもらいながらと言うゆっくりめな感じではあるが。
「でこれも食べられる野草ですよ」
「………さっきとどこが違うんだ」
「えっと、さっきのとは」
「なあ話は変わるがいいか」
「ええいいですよ」
「今朝の事なんだが、リズ本当は家族の事が大事なんじゃないか」
リズの足が止まる。自分も足を止める。
「どうして、そう思うのですか」
「寝言で呟いてたぞ、ぱぱって」
「………そうですか」
「だから大切なんじゃないかって」
「………家族が」
「ん」
「家族が大切じゃない人なんていないですよ、けどそれ以上に私は1人がもう嫌なんです、もう1人は」
リズはそう叫ぶ。
「だから、タナカさんと、いえ私の大切な誰かと一緒ならあそこにいてもいいと思ってたんです」
「そうか」
「タナカ、どうか私から離れないでください、わたしをひとりにしないでください」
リズが体を自分に預け泣き出す、少しすると疲れていたのか寝息に変わった。
「どうしようか」
まず一旦地面に寝かせ、リズの荷物をまとめ背負い、リズの腰の辺りが肩に来るように担ぐ。映画とかで兵士が負傷した仲間を運ぶときの見よう見まねだ。向かう方向はこれまで歩いてきた通りにそのまま進んでいく。
すぐにバテる、当たり前だ。体を鍛えたわけでもなければ、チートを貰ったわけではない。それでも歯を食い閉め歩いていく。独り言を呟きながら。
「1人にするわけないよ、リズ。だって死にたくないし、リズの家族に会わせる約束も叶えてないし」
大きな壁が見えてくる。街についたようだ。辺りは大分暗い。ゆっくりではあるが少しずつ壁に近づいて行く。入り口の門は閉まっている。それでも誰かいないかと近づく。
「おいタナカ、タナカか」
上を見る。
「アルフ」
「タナカ、今開けるわ」
「イリア」
「………リズもいる」
「メリベル」
3人とも門の見張りをしていた。門が開く。3人がそこにいる。
「ひさしぶり」




