第71話 4330時間
意識が戻る。体全体に力を込める。目を開く。眩しくて外が見えない。声が聞こえる。
「タナカさん、タナカさん、タナカさん」
リズが空中を叩いている。体を動かそうとするが動かない。
『ロックを解除します、ロックを解除します』
カチャンと言う音とともに手首の冷たさが消える。
『バイタルチェック………正常、医療カプセル解放します』
何か筒のようなものに入れられていたらしく、それが開く。
「タナカさん、タナカさん」
リズが抱きついてくる。泣いている。
「えっと何がどうなっているのか」
『タナカ様目を覚まされましたね』
『えっとどうなってるんだ』
『ではご説明させていただきます』
スライムの話を聞く。簡単に言えば、地面に叩きつけられて心肺停止となる。通信機を通してアルフ達に呼び掛け遺跡に運ばせる。その後医療カプセルで管理していたらしい。
『呼び掛けるってどうやって』
『タナカ様の通訳である程度言葉は理解できましたのでそれを使って』
『なるほど、ついでに言えば心肺停止してたのにどうやって生きたまま』
『そちらは通信機となっていた流体金属を血管に流し込み、心臓を直接可動させました。酸素の方はリズさんに協力をいただき』
『………人工呼吸か』
『ええ』
リズが泣き止む。
「すっすいません」
「いやいいよ、こっちこそなんか助けてもらって」
「当たり前です、私はタナカさんのどれ、いえ仲間ですし」
「でどれくらい寝てたんだ、と言うかアルフ達は」
「日時はちょっと、ずっと着きっきりでしたし」
『何日ぐらい寝てたんだ』
『4330時間、180日10時間です』
かなり寝ていたらしい。つまり異世界転送後212日目と言うことだ。
「まあいいや、でアルフ達は」
「それが、ここに着いた時アルフさんにイリアさん、メリベルさんは対魔王レジスタンスに参加しまして、魔王と戦った街の方に向かいました」
「なっなるほど、それはそうとリズ」
「何でしょう」
「家族は」
「対魔王レジスタンスの方と話す機会があったのですがいませんでした」
「そうか」
「ですがタナカさん気にしなくても大丈夫です。レジスタンスの方々が助け出してくれます、それよりもタナカさんが私の前からいなくならないでください、お願いですお願いします」
「そう簡単にはいなくならなよ、多分」
「絶対ですよ」
「ああ」
「それはそうとお腹空いてますよね、お食事お持ちします」
そう言うと駆け出していった。それはそうといつまでも医療カプセルには言っているわけにはいかない、なので立ち上がろうと動く。が体が力が入らず立ち上がろうとして転んでしまう。
「あれ」
『タナカ様間接可動訓練のみはしておりましたが、さすがにすぐ立ち上がるのは』
『間接可動訓練って言うのは』
『はい、間接が動かなくなるのを防ぐ為の訓練です』
『なるほど』
「タナカさん」
リズが料理を投げ捨てて駆け寄る。
「タナカさん大丈夫ですかタナカさん」
「いや大丈夫だ、起こしてくれないか」
「はい」
リズの肩を借りて立ち上がる。
「あっ食事が」
「もう1回持ってくればいいよ」
「はいわかりました」
『なあどこかに横になれる場所は』
『こちらです』
「リズスライムについて行ってくれ」
「はい」
スライムに案内されてベッドがある部屋に進む。ベッドに横になる。すぐに睡魔が襲う。
「ごめん眠い、一旦眠るよ」
「わかりました、お休みなさい」




