第69話 なあ魔王
必死に知らない街を駆け回る、知らない裏道を行き止まりがないことを祈りながら走り抜ける。
「死ぬって、死ぬって」
他の4人とはどこかで別れてしまった。が魔王ササキが追って来るのは自分だけだ。ある意味では仲間のことを気にしなくていい分楽かもしれないが、仲間を追っているうちに少しでも体を休めたい気持ちが強くなる。
「はっはっはっ早く力を見せてみろタナカ」
走りながらふと思う。魔王は余裕だ、なぜならこちらに何度か当てられそうなのに1発も当ててこないためだ。なのでわざと止まり振り返り構え、撃つ。
「なんだそれだけか」
弾が空中に浮かんでいる。
「……………なんだよそれ」
「これだけではない、こんなことも」
空中に浮かんだ弾が動き出す。弾がこちらを向く。危なく思い横に飛ぶ。
「できるのだよ」
ダン
音がした方を見ると壁に穴が開いている。
「なんだよ、何なんだよ」
叫びながらまた逃げ出す。
逃げる、逃げる、逃げる。足がもう動かないが無理をして走る、走る、走る。
「タナカさんこっちです」
「リズ」
建物の中に飛び込む。
「リズ…………どうした」
「ここなら少し位時間を稼げるはずです、それで」
「………それで」
「申し訳ありません、私がこんなこと言い出さなければ」
「いやあの口ぶりだと何処にいても襲ってきてるようだし」
「ここだな」
銃を横に振って撃っているのか穴が少しずつ近づいて来る。
「伏せろ」
2人で伏せる。
「タナカさんこっちです」
伏せたままリズに従い移動する。
「こっちに裏口が」
「ああ、でリズさっきの話だがあんまり気にしてないからな、あんまり思い詰めないでくれ」
「ですが」
「詳しい事は後で」
「はっはっはっここか」
リズには悪いが、逃げることを再開する。
「くそっもう諦めろよ魔王」
「はっはっはっならお前の力を見せてみろ、なんなら追い込んで引き出してやろうか」
また逃げる。
全力で逃げ続ける。はっきり言ってもう限界を通り越してなんだか楽しくなっている。笑いが込み上げてくる。
「ははっ、ははは」
「どうした力を見せる気になったか」
足を止める、振り変える。魔王も止まる。
「それとも諦めたか」
「ああ」
「なら死ね」
「お前がな」
アルフが魔王の横の建物から飛び出し切りつけ、メリベルが魔王と自分の間に飛び込み撃たれた弾を盾で防ぐ。
「………タナカ大丈夫」
「助かった」
アルフと魔王が対等にやりあっている。魔王は接近戦が苦手なのか大分善戦している。
「タナカこっち」
「今行く」
イリアに呼ばれ建物に入る。
「今なら銃弾当たるんじゃないかしら」
「かもしれないな」
「この建物の上から狙えるわよ」
「ああ」
2階に上がり、窓から魔王を狙う。心を落ち着かせる。狙いが定まる。撃つ。
「それが君の本気かな」
「えっ」
魔王が消え後ろにいる。
「君の本気かな」
「………いや」
振り向きながら腰に指しているソートオブショットガンを抜く。
「まだだ」
撃つ。また空中に弾が止まる。
「ほぼゼロ距離なら止められないとでも」
即再装填。
「いや五分五分くらいで止められると思ってたさだから」
だからそれに備え覚悟だけしていた。
「だからなんなのかね」
魔王が何か言っている。気にせず狙いを定める。
「無駄だな」
「なあ魔王」
狙いを定めた後は。
「爆風は止められるのか」
ソートオブショットガンに始めに込められ、空中に止まった爆裂弾に向けて弾を撃つ。
爆発。
光が目のなかに無理矢理入り、熱を感じ、体が中に舞う。
一瞬の浮遊感。
そして衝撃を一瞬感じ、何かの叫び声を聞きながら闇のなかに沈んでいった。




