第61話 よし行ってみますか
「それでさリズ」
「………何でしょう」
リズは落ち着いた。がしかしリズは後ろの男を殺すためにナイフを持って突っ込んできたはずである。
「ナイフ刺さってない」
「離れてみてみましょうか」
「痛いけど耐えられる痛みなんだもし離れて刺さってたら」
そうそれが怖い、はっきりいってそんなもの見ただけで倒れる自信がある。と言うか倒れると断言できる。
「けど見なくちゃならないですよね」
「だよね、だれか包帯とか持ってきてると言うより医者を」
「……………今持ってくる」
メリベルがどこかに行く。
「戻ってくるまで待ってようか」
メリベルが戻ってくるまで数分間自分とリズは、離れずにいた。やっと戻ってくる。
「……………取ってきた」
「よしじゃあ離れようか」
「それはそうなのですがタナカさん私の手」
「1、2の3」
離れる。と同時に叫ぶ。
「痛ーーー、くない」
服を捲り、刺さっていた所を見る。赤くなっているだけだ。服を見る、穴が開いてない。
「問題…………ないのか」
再度確認してみるが何ともない。赤くなっているだけだ。
「タナカ、大丈夫なのはわかったから服戻してくれない」
恥ずかしそうにイリアが言う。ふと自分の様子を振り返るがお腹を出している状態だ、しかも太ってないとはいえ見せられるような筋肉もついていない。思い返すと少し恥ずかしい。服を元に戻す。
「あのそれはいいんですがナイフの刃がないのですが」
リズが刃が折れたナイフを持っている。
「と言うか折れたの」
「みたいですね」
そこで思い出す軽くて忘れていたが、刃が折れたのは防弾チョッキを着ていたからではないだろうか。と言うかチートもないし鎧も来てない自分にはそれくらいしか思い当たらない。
「タナカ黙ってないで探してくれ」
「ああ」
隅々まで探すがない。元の場所まで戻る。
「ないな」
「なかった」
「見つかりませんでした」
「ないわね」
「………ない」
「あったぞ」
声がしてそちらを見る。
「まあ脅しに使うんだけどな」
立ち上がりながら折れた刃を持ち、リズに襲いかかろうとしている男がいた。
「はっはっはっもらった」
掴みかかるその直前リズがしゃがみこむ。男の手が帽子だけに辺り落ちる。そしてアルフが男に剣を向けて動きを止めた。
「動くな」
「ちっ」
「リズ大丈夫か」
「ええ大丈夫ですよタナカさん」
「獣人かよくそ」
「ええ狼の血を引いてるので耳も鼻もいいんですよ」
リズは狼だったらしい、今さらであるがはじめて知った。そんな事は置いといて男をもう一度縛り直す。
情報を得るために男に質問していく。
「それであんたはなんなんだ」
「言うと思うか」
「いや思わないが、言いたくさせることはできると思うぞ」
「なんだ、拷問でもかけるのか」
一応映画とかで拷問のシーンがあったりするので、見よう見まねならできるかもしれないがそれに自分が耐えられそうにない。安全なやつも何個か見たことはあるが時間がない。
「いやしない、と言うか時間がない」
「それもそうだな」
「聞きたいことはひとつだ」
「なんだ聞くだけ聞いてやろう」
「獣人って言うのは労働力として便利なのか」
「なんだ後ろの嬢ちゃんに家でも建てさせるのか、はっはっはっそれは早くできそうだ」
「よしじゃあ質問だ、この近くの村にいた獣人はどこにいる」
「なんだ質問は一個だけだろ」
「いやさっきのは仲間に聞いたんだ、それをお前が勝手に答えただけだろう」
「ちっ。けどな答える義務もない」
多分こいつはリズの家族がどうなったか知っている。死んでいるなら死んでいると答えればいい、そうしたら質問は一個だけだとごねるだけだ、なのにこいつは答えなかった、なのでどこにいるのか知っているのだろう。
「ならいい魔王軍の集結地点は大きな街だな、リズこの辺りで大きな街は」
「えっとありますが」
「そこにもしかしたら家族がいるかもしれない」
「…………本当ですか」
「多分」
「わかりました、今すぐ準備して案内します」
リズは走り去っていった。
「でタナカ本当なの」
「いやリズの村が襲われた時血が少なかったらしかったけどそれって連れてかれただけなんじゃないかなって」
「それだけで」
「まあ後は勘かな」
「おうタナカ準備できたぜ」
「………準備できた」
いつの間にかアルフとメリベルの準備ができていた。
「早いな」
「さすがに暇だったから縛った後荷物すぐまとめて今取ってきた」
「………私も」
リズも戻ってくる。
「これ皆さんの荷物です」
3人分の荷物をもって。
「ありがとうリズ」
「どういたしましてタナカさん」
「よし行ってみますか、リズの家族に会いに」




