第57話 悩む
異世界転送後29日目、朝起きるとだいぶ早かったのかリズしか起きていなかった。
「おはようございますタナカさん」
「おはようリズ」
「朝食に例の食べ物をスライムが持ってきてましたよ」
そこには昨日も食べたチューブがあった。昨日食べたのと同じのを選ぶ。
「あのタナカさん」
「ん、なんだ」
「もし故郷の村がなくなっ………」
その後はリズは何も言わずにもくもくと食べていた。
全員が起き、食事をとり、荷物をまとめ準備をする。
「全員準備できたか」
一応魔王の支配地域らしいので食料をすべてチューブにし、いつでも撃てるように銃全てに弾を込め万全の体制であることを確認する。
「準備はできた」
「準備できました」
「準備できたわ」
「………………終わった」
「もうすんでるよ」
『皆さん行かれますか、ならばついてきてください』
スライムの言葉を訳し全員でついていく。
『おいタナカあれなんだ』
『鑑定でなんとかならないのかよ、言えるのはロボットってことぐらい』
『そうかよ』
『ここが目的地です』
目の前には電車と言うかリニアモーターカーが。
「おいタナカなんだよあれすごいな」
「これがタナカの世界の」
自分も含め全員驚いている。
「何でリニアが」
全員が乗り込み席につく。
『目的地までは3分です』
「速いんだなこれ」
「……………揺れない」
「タナカのいた世界ってこう言うのがどこにでもあったの」
「これよりもいくらか遅いのなら多くあったよ」
「すごいわね」
それを最後に全員が静かになった。
『目的地につきました』
降りる。そこには先程と変わらずスライムがいた。
『お疲れさまでした』
「あれタナカ移動したんだよな」
「ああ」
「なんの代わりもないんだが」
『いえ移動しておりますよ、それはそうとタナカミツオ様見ていただきたいものが』
空中にモニターが現れる。
「うおっ」
『こちらなのですが』
そこには剣やら鍬などで武装した村人が映っていた。
「リズ知り合いいそう」
「いえタナカさんいません」
「声とか聞けないかと言うか彼らはどこに」
『音は拾えます、また彼らはこの核シェルターの中間辺りにおります』
カメラが声を拾って流し始める。
「くそ、……………」
「……………班はまだか」
「そん……………食べ…………」
音が悪くこれくらいしか聞き取れない。
『すみません、あの人らしき何かがいて整備が行えませんでした』
「いやいいよ、どうするアルフ」
「ひとまずその空中に浮いてるのは本物なのか、まあそれくらいはいいとして助けられるわけないだろ」
「だよな」
「そう……………ですよね」
ユーリは話に混ざってない。
「かといってこのままここで待つわけにもいかなし」
「…………………蹴散らす、のはダメ」
「ダメだろう」
「…………………だよね」
悩む、こう言うとき大抵の主人公なら何も考えずに突っ込むのだろうがそれはできない。こちらはただ冒険者なのだ、疑われて警戒され戻ってこれなくなるのなんてまだいい方だろ、捕まって食料を奪われ何かの尖兵にされる可能性だってある。かといって食料を提供するわけにはいかない、彼ら全てに与えられるだけの食料は持っていない。
「もういっそ協力するか」
「それだと遺跡の奥から来たのが怪しくないか」
「そうだよな」
「私が行きます」
リズが手をあげる。
「私が交渉してきます」
リズは言葉を続ける。
「私が言い出したんです、私がどうにかします」
「………………わかったやろうか」
一応銃を構える。
「やるか」
「やりましょう」
「…………………やる」
「はいはい」
少し歩きたどり着く。リズが前にでる。
「あの」
「んなんだ」
少し怒りながら振り替える。
「っリズ」
「おっおじさん」




