第29話 やめてくれーーー
「……………………………………」
「……………………………」
誰が近くで叫んでいる気がする。ただ耳鳴りがひどく何と言っているかがわからない。
その声がする方に行こうとする。だが体が動かない。目を開けているかもわからなければ、どこがどうなったかもわからない。何が起きているんだ。そしてまた意識が薄れていった。
また少し時間がたった。叫び声が近づいて来る。それに伴って足音もだ。
「………………なにお……」
「………………………ケル………たお…………」
「……………………………………なか…………………」
何かを探しているようであった。そう言えばケルベロスはどうなったんだろう。聞こえてくる音に騒がしい様子はあるが、ケルベロスの鳴き声は聞こえてこない。
さらに時が経った。声はほぼ聞こえる。
「ここケルベロスを倒した地点じゃんこんな処にタナカいないだろ」
「でも他の所には居なかったじゃない後はここだけよ」
「いくらタナカでも離れて撃つだろあいつ革鎧さえ来てないんだから」
「じゃあどこにいるのよ」
「さぁ先に酒場でも行ってて、俺たちを驚かそうとしてるんじゃないか」
「それはあるのかな」
「あるあるだから俺は酒場に」
「タナカ様何処にいますかタナカ様」
自分を呼んでいる声であった。だから声を上げる。
「………ここ…………だ」
「タナカ様タ…………今タナカ様の声が」
「気のせいだろ、さっ酒場に行こう」
「…………………ここにいるぞ」
「今瓦礫どかします、もう少し待ってください」
体を動かせなくしていた何かが退かされていく。その頃になって少しずつ目が見えていくようになる。
そこには、リズとイリヤとならない口笛を吹かせているアルフが。
「タナカ様全身に血が」
そう言われて全身見てみるが血がついている。ただ何と言うか痛みはあるのだが、カッターの刃で指を切ってしまった時の痛みはないし、献血時の血の抜けていく感覚はなかった。
「いや血は出てないと思うよたぶん」
「そうですか、でも確認のため服の下も見させていただきますね」
「ああ」
リズにされるがままにされている。服をめくられ、そしてそのまま上に。
「って服脱がすのかよ」
「そうですよ、怪我してないか確認しなければならないので」
「いやいやいや大丈夫だから、せめて人目につか」
「いえ今確認しなければ、今タナカ様は血まみれなのですよ」
「いや多分返り血だよ返り血、返り血だから脱がせるのをやめてくれーーー」
確認してもらったが打ち身や多少の出血が全身にあったが、致命傷となるものはなく、リズに包帯を巻いてもらっている。
「それで結局どうなったんだ、酒場に行こうとしたアルフさん」
「いやいやそんなことはないですよタナカさん」
「………………まあいいや、で結局どうなったんだ」
「私の魔法弾が全弾命中したのはいいんだけどね、まだテイマーやらネクロマンサーがいたみたいで増援が来そうだったんだけど」
「ここからは私がお話します。そのテイマー達にこっそりと近づき、銃を突き付けて投降させました」
「と言うことは、問題解決したってこと」
「そうですね解決したかと思います、ただ」
「ただどうした」
「このような手紙が」
手紙を渡される。
「なになに『スラム街から奇襲せよ、教団』教団って何だ」
「すみませんそのようなものは聞いたことが」
「そうか、アルフは」
「俺も知らないな、ってかそんな手紙あったのか」
「ありましたが、アルフさんは主人ではないので」
「なるほどな」
「イリヤは」
「私も知らないわよ」
「まあそんな事は置いておくとしていいことが3つある」
「なんだ」
「1つはケルベロス換金の賞金が入ること、多分500G位だな、後お前とリズが使った銃を譲ってもらった」
「俺のはジャムって投げ捨てたんだが、残り1つは」
「掘り返せば見つかるだろで最後の1つは」
「それは私から言うわ、私も貴方達のパーティーに参加するわ、よろしくね」
「えっ、ああよろしくイリヤ」
ちょうどその時リズのが離れる。
「巻き終わりましたが2,3日は安静にしてくださいね」
「ああありがとう、なんかいつも頼りっぱなしでゴメンな」
「いえ、御主人様のためですから」
「まあタナカは安静だから同じ間休暇、後昨日と同じ場所で寝ていいらしいぞ」
「ああ先に休むよおやすみみんな」




