第21話 さて二人とも一緒に来てもらおうか
「おい待てー」
少年を追いかけて街中を全力で駆けていく光景が、すぐに展開されていた。
「そう言われて待つ奴がいるかよ」
「それはそうだが、けど何となくだが言わなくちゃならないだろ」
「けどまああんたのサイフあんまり金が入ってないな」
「はぁだいぶ入ってんだろ」
「なんだ、宝石ジャラジャラ入ってるわけでもないしよ、金貨だけなら大金じゃないんだよ。関係ないがそう叫んでるお前より、帽子かぶったねえちゃんの方が速くないか」
「だったら諦めて早く返しやがれクソガキ、そしてお前も十分早いんだよ」
「やだね、こののろまな貧乏貴族」
叫びながら走ったせいか、或いは全力疾走をしたせいか流石に朦朧としてきた。多分止まればすぐにでも倒れ込む自信がある。なので少しなぜこのような状況になっているのか思い出していた。
盗まれたと気付き探すために来た道を戻る。狭い通路などを確認しながらゆっくりと戻る。が一向に見つからない。
「タナカ様ついてきた手前言いづらいのですが本当に盗まれたのですか」
「他の所は入れてないか確認したし、流石に落としたら音でわかるだろ」
「じゃあギルドに置いて来たとは、後荷物あるのでギルドに預かってもらいませんか」
「じゃあギルドに戻りますか」
来た道をさらに戻り、ギルドへとたどり着き、中に入って確認を取る。
「金貨の入った袋は見かけてないですかね」
「いえありませんよ。このギルドで落としたものはすぐに持ち主に返すようにしてますし、もしできなくても預かってはいるのですが、今日は何も預かっていませんね」
「そうですか、あと荷物預かってもらえないですかね」
「よろしいですよタナカさん」
それを聞くと荷物を預け、すぐさまぶつかって来た少年を探そうと外にでて歩き始める。
探している途中また人にぶつかる。
「すいません」
「こちらこそす…………お前だー」
「えっなんです…………あっ」
「金返せよ」
「いやだね」
そう言うと少年が走り出す。
「リズ追いかけるぞ」
そして少年の捕まえるため全力疾走を始めだした。
思い出してみたが、1つふとした疑問が。
「なにその貧乏貴族に2回もスリしようとアホよりはましだね」
「はっ、何言っちゃてんだがお前の顔が地味だからこう言われてんだよこののろま貧乏貴族」
しかしそう叫んでいるその少年も辛そうな顔をしている。少年の足が、もつれて倒れる。そしてリズがそれに飛びつき。そこに自分が追いつく。
「はぁはぁ……早く返しやがれクソガキ」
「はぁはぁ周りを見ても同じ事言えるかいこののろま貧乏貴族」
そう言われて辺りを見渡す。辺りは見る限りボロボロの家が多くありギルドのそばにある高級住宅街にも似てもにつかない物であった。
「早く離させなよお前のその地味な顔にでかいアクセサリー付けてやるよ」
そしてそのボロ屋の上にはクロスボウのような物を持った、少年少女達が。
「リズ手を離してやれ」
「分かりました」
そう言ってリズが即座に手を離す。
「これで帰っていいかな」
「いやいやいや」
そういう少年の手にはどこかに隠してあったのクロスボウが握られていた。
「さて2人とも一緒に来てもらおうか、貴族様」




