わすれんぼうゆーちゃん
ゆーちゃんはとってもわすれんぼう。
いつも、いろんなことをわすれます。
がっこうにつくと、みんなしゅくだいをせんせいにわたします。
「せんせい、しゅくだいわすれました」
でも、ゆーちゃんはときどきしゅくだいをわすれます。
「ゆーちゃん、またしゅくだいわすれたの?」
せんせいはいつもがっこうでこまっています。
しょうがっこうでは、ときどききゅうしょくではなくて、おべんとうのひがあります。
「あ、おべんとうばこ、がっこうにおいてきちゃった」
でも、ゆーちゃんはときどきおべんとうばこをわすれます。
「あら、はやくとりにもどらなくちゃ」
おかあさんはいつもいえでこまっています。
いえのなかでは、あそんだあとゆーちゃんはぐーぐーねてしまいます。
「あ、おかたづけするの、わすれてた」
でも、ゆーちゃんはあそんだあとのおかたづけをよくわすれます。
「おかたづけしないと、だいじなおもちゃがなくなっちゃうわよ?」
おかあさんはいつもおかたづけのてつだいをします。
いつもいつもいろんなことをわすれる、わすれんぼうゆーちゃん。
おかあさんは、ゆーちゃんのわすれんぼうがどうにかなおらないか、かんがえました。
あるひ、おかあさんはおとうさんとおでかけすることになりました。
でもゆーちゃんは、いえのなかですやすやねています。
がたん、とげんかんのドアがしまるおとで、ゆーちゃんはめがさめました。
「あれ、おかあさんとおかあさんは?」
ゆーちゃんは、いえのなかをさがしまわります。
しかし、おかあさんもおとうさんもいません。
ふとげんかんにむかうと、そとからこえがします。
「あ、そういえばゆーちゃんわすれてたね。でももうじかんがないわね」
おかあさんのこえがします。
ゆーちゃんはドアをあけようとしますが、かぎがかかっています。
かぎのあけかたがわからないゆーちゃんは、ドアをあけることができません。
「おかあさん、ゆーちゃんはここだよ! ゆーちゃんをわすれないで!」
ゆーちゃんがいっしょうけんめいおかあさんにさけぶと、またこえがきこえてきます。
「ゆーちゃんも、わすれものがおおいから、おかあさんもわすれものしても、しかたないわよね」
おかあさんのこえがきこえたあと、くるまのエンジンがかかるおとがしました。
「おかあさん、ゆーちゃんおいていかないで! ゆーちゃんわすれものにしないで!」
さいごにゆーちゃんは、わんわんとなきだしてしまいました。
しばらくすると、ドアがひらくおとがしました。
そのおとをきいてドアのほうをみると、おかあさんがたっていました。
「あらあらゆーちゃん、どうしたの?」
おかあさんは、めそめそしているゆーちゃんのかおをみてにこにこしています。
「だって、だっておかあさんが、ゆーちゃんをわすれものにするから」
ひくひくとないているゆーちゃんのあたまを、おかあさんはなでなでします。
「ごめんなさいね。でも、これでわすれもののきもちがわかったかしら?」
ゆーちゃんのかおをハンカチでふきながら、おかあさんはつづけます。
「ゆーちゃんのわすれものたちも、きっとさっきのゆーちゃんみたいにないてるのよ。それでも、ゆーちゃんはわすれんぼうさんになりたいの?」
ゆーちゃんはしばらくかんがえて、おかあさんにいいました。
「もう、わすれものしないから! わすれんぼうさんにならないから!」
「そうね、じゃあ、おかあさんとやくそくね」
それからゆーちゃんは、わすれものをしないように、こえをだしてなまえをいうようになりました。
「ノート、しゅくだい、えんぴつ、けしごむ、きょうかしょ、ぜんぶあるね」
きょうからわすれんぼうゆーちゃんは、わすれものしないゆーちゃんになりました。
あなたには、わすれもののなきごえが、きこえますか?
「童話」という以上、子供への教訓が含まれないといけないですよね。
実際は大人にも言えることなのです。童話って奥が深い。
私もよく忘れ物するんですけどね。