承
あれから一週間経った。
内靴は見つかった。ゴミ箱の中から大量の残飯を敷き詰められた状態で見つかった。
…怖かった。
私が何をしたんだろう。
それからの一週間。内靴は洗って今も使っている。だが、毎朝の画鋲は恒例行事となった。
イジメの恐怖があった私は、あるわけ無いと思いながらも、すっごいベタなイジメパターン、靴の中に画鋲、というのが心配になり、中をチェックしたら、あった。そのおかげで怪我をする事は無かったが、恐怖が増した。
お父さんに言ったら、「強くなれ」と言われた。
初めて知ったけど、氷野家って、昔は結構有名な武術の一家だったらしい。今は廃れてしまったけど。
でも、ケンカとか、そういうのは嫌いだったから、保留にすると言いながら、自分の中ではほぼ却下していた。
紅くんがどうにかしてくれる。
クラスメイトがどうにかしてくれる。
先生がどうにかしてくれる。
そんな淡い希望を持って、今日も学校に行くのだった。
全てが壊れるとも知らず。
・・・
・・
・
「…行ってきます」
「…ああ」
最近の私は、自分でもビックリするぐらい暗くなった。
お父さんとお母さんは私のイジメについて知っている。靴の中の画鋲だけじゃない。
体育着が捨てられてたり、教科書に落書きされてたり、机と椅子の位置が移動してたり…etc.
もう辛かった。
「…晶、休んでもいいのよ?」
「大丈夫。まだ大丈夫」
そう、“まだ”。この言葉は無意識だった。無意識のうちに、私は私の運命がわかっていたのかもしれない。
信じたくないだけで。
傷つきたくないさけで。
壊したくないだけで。
きっと、全てがわかってたんだ。
「それじゃあ」
とても天気がいい朝なのに、私のところだけ影で覆われていた。
片鱗の希望を持って、私は学校に向かった。
・・・
・・
・
「…あ」
登校中にクラスメイトのかなめちゃんを見つけた。
「かなめちゃん。おはよう」
すると、こちらに気付いたかなめちゃんは少し驚くように目を見開き、周りを確認して、何かを見つけて、
「ごめん…!」
走り去ってしまった。
それに、何を見て…!?
「クスクスクス」
「木嶋…さん」
違うはずだ。でも、
そう思ってる間に、木嶋さんがこっちに近付いて、耳元で言ったんだ。
「知ってる?私、こう見えて令嬢なの」
れいじょう。
それが何を意味するかは私は知らない。でも、それが関係しているのだろう。
「どういう…?」
「…イラつく」
「…え?」
「何で!私より!あんたなんかが!」
「え?え?」
「ふんっ!」
行ってしまった。私は何をしたんだろう。
「……はぁー」
とりあえず学校行こう。
・・・
・・
・
「みんなおはよーう?」
…あれ?なんかいつもと違う?
教室に入って、挨拶して、いつもなら誰かが返してくれるのに。
少し周りを見てみる。
「………?」
「…!」
…すっごい勢いで目を反らされた。
「どういう…」
わからない。わからない。わからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからない…。
…怖い。
私は息苦しさを感じながら自分の席へと着いた。
「あれ?」
その時、机の中から一枚の紙が見つかった。それには、
<ごめんね>
一言、そう書かれていた。
確信した。
私、イジメられてるんだ。