起
「晶“ちゃん”おはよー」
「あ、おはよー!」
私は学校の友達に挨拶をする。いつもの光景だ。
「ねえねえ!昨日のテレビ見た?」
昨日のテレビ…ああ、恋愛ドラマか。
「見たよ。でも、よくわからなかったなー」
内容が難しくてわからなかった。
「そう?面白かったけどなー」
本当に女の子というのは精神が早熟と言うか、凄いなー。
「まあいいや!今日のお昼何する?」
「うーん。どうしよっか。…お外でお絵かきはどう?」
「いいね!じゃあ私、他の人誘ってくるね!」
「うん。僕も誘おうっと」
その時、
「正義の味方とーーーじょう!」
紅くんが現れた。
そうだ!紅くんを誘ってみよう!
「ねえ紅くん!」
「ん?お前はクラスの女子か。どうした?」
どうやら名前を覚えられて無いらしい。
「今日のお昼休みに一緒にお絵かきしない?」
「フッ、悪いが、正義の味方に休みなど無いのだ!」
格好良く決めポーズをして、自分の席にランドセルを置いたら一気に教室の外へと走っていってしまった。
「紅くんね。格好良いけど、問題ばっかり起こすのよねー」
「だねー」
適当に相槌を打つ。
でも、紅くんには不思議なところがある。それは、遅刻はしないのだ。どんな問題を起こそうと、何故か時間ギリギリには間に合い、絶対に遅刻はしない。不思議だ。
あ、友達を誘わなきゃ。
そうやって友達を誘い、しばらくして、
「わかったー。私も行くねー」
「うん!楽しみにしてるね!」
時間がそろそろ迫ってきた。私は自分の席に戻ろうとしたところで、
「ちょっといいかしら氷野」
うっ、私の苦手な人だ。
「…木嶋さん」
木嶋 奈央。
「どうしたのかしら氷野。私から話しかけてあげてるのにその反応は無いんじゃない?何とか言いなさいよ」
こういう人だ。えっと、こうあつてき?って言うんだよね。ちょっと怖い。
じょうおうさまきゃら?だっけ。多分、木嶋さんのような人を言うんだよね。でも、じょうおうさまって劇とかの女王様の事かな?でも優しいイメージあるし、違うよね。
「…あの、えと」
「…ふんっ!」
…何で嫌われるんだろう?理由がわからない。
私は暗い気持ちのまま、自分の席に座った。
「セーーーフ!!!」
ギリギリだったが間に合っている。本当に不思議だ。
・・・
・・
・
「正義の味方に算数なんて必要無い!」
「この先生きていくには必要なんだ!」
…算数の時間です。
…いつもの掛け合いです。
「じゃあ何に必要何だよ!」
「生きるのは金が必要だ。金を手に入れるには就職しなきゃならない。就職するには経歴が必要だ。経歴を作るのは進学が1番だ。進学するには頭が良くなきゃならない。算数に限った話では無い。勉強が大切なんだ」
「む、難しい話して騙そうだって、そうは行かないぞ!」
「お前みたいな勉強をしない奴は生きていけないと言っとるんだ!」
…?勉強は大切って事でいいんだよね?
「とにかく、文句言ってないでさっさと7の段を言え!」
九九の勉強です。7の段って難しいんだよね。
「うー。…しちいちがしち。しちにじゅうし。しちさんじゅうに」
「何故7×3の答えが7×2の答えより低いんだ」
クラスは笑いで満ちた。ちょっと悪いけど、私も笑っちゃった。
「もーう!皆だってできない癖に笑うなー!」
「たしじゃに紅の言う事も一理ある。織田、お前やってみろ」
「えー!?」
頑張って!
・・・
・・
・
「ご馳走様でしたーーーー!!!」
今は給食の時間。給食でのお代わりは早い者勝ちなんだよね。ついでに今のは紅くん。
「おっしゃお代わりー!」
「くそー!早いよ!」
紅くんはいつも1番乗りで食べ終わる。私はお代わりしなくてもお腹いっぱいだから、男の子みたいにお代わり合戦に参加はしないけど。
…あ。私も男の子か。
「晶ちゃん晶ちゃん」
「どうしたのかなめちゃん」
クラスメイトのかなめちゃん。友達です。
「お昼休みのお絵かき何処でする?」
「裏庭なんかどう?」
「いいね!じゃあ、終わったら見せ合いっこしよ?」
「いいよ!」
こうやって、決めていく。早く休み時間にならないかなー?
キーンコーンカーンコーン
あ、なった。
「晶ちゃん。行こ!」
「うん」
私たちは食器を片付けて筆記用具と画用紙を準備し、外へ出た。
・・・
・・
・
「できた!」
「見せて見せて!」
私は自分の描いた絵を皆に見せた。私が描いたのは花に止まった蝶々の絵だ。
「上手ー!」
「すごーい!」
みんなに褒められて私は嬉しくなった。
他のみんなの絵を見たりする間に、時間はあっという間に過ぎていった。
「あ、そろそろ時間だ」
「やば。急ごっか」
急いで玄関に戻った。
・・・
・・
・
「…あれ?」
どういうこと?“私の靴が無い”。
「晶ちゃん。どうしたの?」
「あれ?靴どうしたの?」
「あ、んと、…無い」
「えー!?何それ!イジメじゃん!」
イジメ。そう聞いて、私は怖くなった。私が、イジメられてる?
「でも、私、何もしてない」
「うーん」
「とりあえず、スリッパ使お?」
「…そうだね」
玄関に置いてあるお客様用のスリッパを履く。
「ん?どうしたー?」
そこに紅くんは現れた。
「あ、紅くん」
「あ、そうだ!紅くんにも相談しようよ!」
え?先生にはしないの?
「先生にもして、紅くんにも協力してもらうの!」
「何かあったのか?」
んー。凄く不安だけど、でもイジメられるのも嫌だし。でも、今は靴が無くなっただけだし。
「あのね紅くん!」
「あ!」
勝手に説明を始めてしまった。
「…成る程。それは悪だな!任せろ!靴も見つけて、黒幕もやっつけてやる!」
更に不安になった。紅くんがもし、本当に黒幕を見つけて、倒してしまったら、もし、何らかの理由で紅くんにたのんだのが私たちだってばれたら、
…絶対やり返される。
「わ、私も協力する!」
つい、いつもより声を荒げてしまった。
「お、おう。が、頑張ろうぜ」
紅くんが暴走しそうになったら、私が絶対に止めなきゃ!
こんな小学生いねえだろ!と思った方、すみません。