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火渡さんの転校から一週間。


見事に火渡さんは孤立していた。


いや、孤立”している”、と言う方が言葉的には合っている。何故なら、火渡さんは転校初日の自己紹介の挨拶からして皆と仲良くなろうとはしていない。

話しかけても無視、授業中は教科書すら出さない。先生が怒って問題を解けと指名するが、思考時間3秒ぐらいで答えを言う。算数などで式を求められたら迷い無き動きで教科書よりも簡潔に答えを出す。そのため先生も怒ろうにも怒れない。休み時間も気を遣ったクラスメートの一人が火渡さんに声をかけて、絵を見せたりするが、「下手くそ」の一言でバッサリだ。クラスメートが泣いて、騒ぎを聞きつけた先生が「友達でしょう!どうして泣かすようなことするの!」と言うと即座に「喧嘩するほど仲がいいともいいます。それに大丈夫です。友達じゃ無いので」と切り返す。

他にもいろいろあったのだが、長いようで結構短い一週間の間に、火渡さんは依然として一人だった。そして、誰も話そうとはしなくなった。

…とある人物たちを除いて。


・・・

・・

「なあ火渡、明日の休みどっか行こうぜ!」


「………」


まあ、紅だけどね。紅は初日からずっと火渡さんに声をかけてる。無視されても気を悪くする事は無い。本心から「友達になりたい」と行動する。なんか紅らしい。


「火渡さん。ダメかな?」


「………」


僕もその声をかけてる人物たちの一人だけどね。

なんか、初日の寂しそうな目が気になってしょうがない。それに仲良くなることは悪いことじゃ無いしね。


「ねえ火渡さん」


「ああ、もう!うるさい!一人にしてよ!」


『え?何で?』


ハモる僕と紅。クラスメートが「あいつら勇者だ」とか言ってるけど、どういう意味かな?


「なんでそこでハモるの!?わかってる!?私の態度に皆距離を取ってるのに、君たちだけが私に話かけてくるんだよ!?」


たしかにそうだ。けれど、


「それと僕と紅の行動に関係無いよね?」


「同じく」


大分考え方が似てきたなー、僕と紅。


「紅くんと晶くんは私以外を大切にした方がいいと思うんだけど」


「おお!名前覚えてくれたのか!」


「そりゃあこんだけしつこく来られたらね!」


そんなことお構いなしに喜ぶ紅。クラスからも賞賛を受けている。僕も何だか嬉しいな。


「よっしゃ!この勢いで友達なろうぜ!」


「お断りよ!」


紅はグイグイ行くなー。


「だいたい、何で私?楽しく遊びたければ私なんか無視すればいいじゃない」


「それは、一人が寂しいからだよ」


ここでは僕が答える。

…あれ?何か空気が変わったぞ?待って!僕はこんな重苦しい空気は望んでないよ!?僕のこの一言にどれだけの重さがあるの!?


「なにそれ。経験談?適当に言ってるだけなら「経験談だよ」…え?」


「少し前まで、僕は虐められてたんだ」


待ってええええええええーーーーーーーーーーーーーーーー!?!?!?シリアスやめて!?お願いだから!クラスの皆も一斉に顔を逸らさないで!?


「…どういう、こと?」


火渡さんも真面目に聞いてくるんですけど!?誰か空気を変えて!?…ええい!勢いだ!真実を言えばいい!


「ちょっとクラスの女の子に恨まれちゃって。その女の子ね、結構クラス内だと力持ってて、クラスの皆に僕を無視するよう言ったんだ。クラス内は完全にアウェーで、さらに女の子本人も靴に画鋲やら腐った食べ物やらいれるし、机や椅子も隠されたし、教科書もゴミ箱に捨てられるし、冷水かけられるし、罪でっち上げられるし、鉛筆折られるし、ドッチボールなんてもっぱら集中攻撃で的にされるし」


ああ、思い出すな。あの別の意味での黒歴史。恥ずかしいとかそういうんじゃ無くて、本気で黒色で塗り潰して思い出したくもない記憶。


「まあ、そんなこんなでしばらく一人だったんだ。頼れる人もいなくて、ずっと塞ぎ込んで、実際に屋上ダイブもしたよ」


急にざわつく教室。…あ。屋上ダイブなんて言わなくていいじゃん!?さらに教室の空気が重くなっちゃったよ!やめて皆!そんな罪悪感で押しつぶされそうな顔をしないで!


「え、えと、よく生きてたね?」


火渡さんもそんな申し訳なさそうにしないでええええええええーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!


「あ、あはは。紅とその妹の蒼ちゃんが助けてくれたんだ。本当命辛々助かった、て感じだよ」


「そ、そう。よかったね」


…そして、僕らは何か暗い雰囲気のまま解散した。ちゃんと解決するところまで説明したけど効果はあまり無かった。

…でも、火渡さんは悪い人じゃない。そう実感できただけでも良しとしよう。…でなきゃ、僕のメンタルが今にも壊れそうだった。

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