Good-bye, mother.
私は生まれの親である母が嫌いだった。
兄貴、姉貴達を嫌い、私だけを愛している、母が。
だから、母が好きだという私を演じ続けてきた。
本当に、心から母を愛している私を、ずっと演じ続けた。
父がいなくなってから、ずっと、ずっと・・・・・
父は事故で死んだはずだった。
母が殺したのだ。父を。
兄貴、姉貴達は腹違いの姉弟。私だけが、あの母と父の子。
だから、私だけを愛し、兄貴、姉貴を愛さない。
父は皇だった。この国を守る皇だった。
父がいない今、代わりは母がやっている。憎い。
父を殺したのは、今の母を父が愛していなかったことと、皇の権利をもらうため。
ただ、それだけ。
私の心は、深い傷を負った。
父を殺され、姉弟を愛さない、そのことが傷の原因だ。
だから、あの時、私は己に誓った。
〃母を殺す〃
と・・・・・・
母の部屋で、つまらない勉強をしていた私は、あることを母に言った。
「ねぇ、お母さん。死んだ人はどこへ逝くの?」
「どうしたの、急に?」
「別に」
「死んだ人はね、天国っていうところに逝くのよ」
「天国?」
「そう。死んだ人が逝くところなの」
「死んだら、誰でも逝ける?」
「それは、違うわ。いい子だった人は、天国に逝けるの」
「悪い子だったら?」
「地獄っていう、恐ろしいところに逝くの」
「じゃぁ、私は地獄に逝くんだね」
「え?」
「だって、お父さんを殺して、兄貴と姉貴を愛さない、お母さんの子だから。だから、私は地獄に逝くんだね」
「あ・・・・」
「だから、お母さんも地獄に逝くんだよね?」
「ねぇ、お母さん。地獄ってどんなところ?」
「・・・・・死神とかがいるところよ」
「違うよ」
「え?」
「地獄は闇なんだよ。どこまでも、どこまでも続く、深く、底のない闇なんだ」
「また、あの子達に吹き込まれたの?」
「本に書いてあった。信じられるのは、己だけ。あるいは、本かもしれない・・・・・お父さんの口ぐせだよね、この言葉」
「え、ええ。そうだったわね」
「もし、愛せる人ができたなら、お前はそれを守らなきゃいけない。お父さんは、お母さんを愛せないんだ。私の権力を取ろうとするから。だから、私は、お母さんの子である、お前が愛せないんだ。お母さんの血が、お前にも流れているから」
「お父さんの最後の言葉だよ」
「ダメよ、そんなこと言っっちゃ!天国いるお父さんに失礼でしょう?」
「自分が殺したのに?」
「あ・・・・」
「バイバイ、お母さん」
ガタン!
私の得意とする暗示殺。
私はふっと笑みを母に向け、言う。
〃Say hello to father.
Mother of murder〃