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どうしてこうなるんだ!  作者: みずきなな
【どうしてこうなるんだ!】
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第九十話【俺の本当の最終決戦(菫《すみれ》編)Ⅲ】

 今、俺は園の入口にやって来ている。

 すみれはコスプレ姿のままでは園の中に入れないので、着替えにコインロッカーへと戻っている。


 俺は入口付近にやって来ると空いていたベンチに座った。

 流石にこの時間にもなると人は少なくなっている。しかし、昼を過ぎていても入場をするカップルがかなりいる。

 ここは人気があるデートスポットなんだなぁとつくづく実感する。

 そして俺もそのデートをしている一人なんだが。


 それにしても、まさかなぁ…

 すみれがあの時のコスプレイヤーだったとは…

 しかし、すみれって着やせなんだな…

 結構あったよな…胸が。

 勿体ないよな。あいつはあんなに可愛いし綺麗なのに、それを隠すとか。

 コスプレ姿の時は男が寄って来るってあたりまえだよな? あんなに可愛くて綺麗な子がいたら、男だったら寄りたくもなるだろう? 声だってかけたくなるだろ?

 っていうかさ…なんでこんな俺なんかを好きになったんだ?

 好きになった理由を一応は聞いたけど、別にこれと言った事はやってなかったと思うんだけどな…

 …これが、いわゆる運命ってやつなのかな?


行幸みゆき?」

「へっ? す、すみれ!?」

「どうしたの?」


 やばい! ボーと考え込んでた! って…そっか、やっぱりその格好で戻ってきたんだな。

 その格好とはダボダボパーカーに赤渕眼鏡という、いつもの格好。


行幸みゆき、いこっ」

「ああ」


 俺がベンチから立ち上がると、何故か横ですみれがモジモジとしている。


「何だよ?どうした?」

「え、えっと…う、腕…組んでいいかな?」

「腕? …腕だと!?」

「だ、駄目ならいいよ? で、でも…デートだし…」


 何と言う事でしょう!

 すみれから腕を組みたいとか言ってきた! それも顔が真っ赤ときたもんだ!

 やっぱりこいつはすげー純情なんだな。このくらいで顔を真っ赤にするとは。っと、そうだそうだ、返事だ。


「駄目って言うと思ってんのか?」


 俺がベンチから立ちあがって腕を差し出すと、ちょっと照れくさそうにぎゅっと腕を抱くすみれ


(やったぁ…夢が一個叶っちゃた…)

「んっ?何か言ったか?」

「あっ、ううん! いこっ!」


 って、実は聞こえてました!

 うぉぉぉヤバイ! コスプレからイキナリすみれツンが無くなったぞ?

 ツンデレからツンを取ったら、ただのデレしかないじゃないか!

 それにしても、なんて可愛い事を言っているんだ、この生物は!


「い、行こうか…」

「うんっ…」


 照れた笑顔で俺を見上げるすみれ

 これがいつも俺に文句ばかり言ってきていたあのすみれと同一人物だとは信じられない。

 女の子ってデレるとすごいんですね…

 ゲーム神様。俺は、こういうのってゲームの中だけだと思ってました。

 何かこう…ありがとうございます! (おぃ)



 ☆★☆★☆★☆★



 午後、俺はすみれと一緒にアトラクションを回った。

 すみれはこの『ねずみーらんど』を熟知していて、何が何処にあるのかもすべて把握済みらしい。

 効率よく色々なアトラクションを楽しんで、あっと言う間に夕方になった。

 夕方を過ぎると、この園最大のイベント、そう花火が上がる時間が迫る。

 俺はすみれと話をして、この花火を見てから帰る事にした。


「私、花火が見れるいい場所を知ってるんだ」


 すみれはそう言うと、俺の手を引っ張って路地裏を進んで行った。

 狭くて通りづらい、普通にお客を案内するような場所じゃない。

 スタッフオンリーと書かれたドアの横を通過して、更に奥へと進んで行く。


「おいおい、こっちは建物がいっぱいあるし、見えないんじゃないのか?」

「いいからついて来て!」


 すみれはどんどん進む。そして、行き止まりまでやってきた。

 周囲は完全に建物に囲まれていて、とてもじゃないが花火が見えるようには思えない。

 しいて言えば、今きた通路の方向だけが見通しが良かった。が、この狭い通路から花火は無理だろ?


「おい…ここじゃ花火は見えないだろ?」


 俺がそう言うと、すみれはニコリと微笑む。

 いやいや、意味がわかんねーし。


 なんだかんだで花火が上がる時間になった。


『ドドドーン』


 案の定、花火はまったく見えずに音だけが聞こえる状態になる。


「やっぱり見えないじゃないか!」


 俺が文句を言うと、予告なしですみれが抱きついて来た。

 すごく不意打ちで全俺が動揺してます!

 文句言う→抱き付く。

 これはエロゲでもなかなかない展開だろ!?


「す、すみれ?」

「ずっと…こうしたかったの…」


 台詞の破壊力がありすぎる!

 そして、すみれは完全に俺に密着。

 密着してから俺は気がついた。

 すみれが押し当てた隠れ巨乳の柔らかさに…じゃなくって! ドキドキと緊張の鼓動が伝わってきている。


「ずっと…って…」

「そのままだから…でも…花火の見える場所だと人がいっぱいいるから…」


 すみれはぎゅーっと俺を抱きしめる腕に力をこめる。

 これはまさか? 花火が見られる場所に人が移動するのを見越して、人気の無いここに連れて来たのか?

 それは俺に抱きつく為に?


行幸みゆき…」

「な、何だよ」

「大好き……」


 こ、告白がここで来た!?

 やばい、いきなり俺の方が緊張してきた。っていうかすげー緊張してる!

 顔も一気に熱くなし、心臓がすごい事になってるんですけど!


行幸みゆきがドキドキしてる…もしかして緊張してるの?」

「当たり前だろ! 女の子から好きって言われて緊張しない奴なんていないだろ!」

「うん…嬉しいよ…こんな私が相手でもこんなにドキドキしてくれるんだ」


 やばい…台詞が、声が、全部が可愛いすぎるだろ…

 バイトの時とのギャップが凄まじすぎるだろぉぉぉぉぉ!

 絶対に言わなさそうな台詞を言ってくれているこのギャップ。

 あぁ、萌えるぅぅ!

 なんて思ってたら、すみれは急に俺の体から離れた。

 少し距離を離すと俺をじっと見る。

 そして、かちゃりと眼鏡を取るとそれをバックに入れた。


「す、すみれ?」


 どうしたんだ? 突然…眼鏡まで取って…


「ねぇ、行幸みゆき…」

「何だよ…」


 俺は思わず息を呑んだ。


「えっと…こ…告白しても…いいですか?」


 えっ? えぇぇぇえっぇえぇぇぇぇえぇぇ!?

 告白していいですかって? ちょっと待て! それって聞くもんじゃないだろ?

 っていうか、さっきしなかったか? 俺を大好きとか言わなかったか? あれは告白じゃないのか? 違ったのか? って、そ、そんな事を考えてる場合じゃない? 返事? 返事だよ!


「い、いいとも?」


 うがぁあぁぁあ! 何がいいともだぁぁぁ! 俺は某番組のテレホンショッキングか!

 なんて俺の動揺を知らないすみれは、とてもやさしい声で俺に「ありがとうと」と言った。


 俺は唾を飲んだ。緊張で喉がからからになる。心臓が爆発しそうな程に鼓動する。手の平には怪しいほどに汗が滲む。

 やばい! やばい緊張感だ…


 目の前のすみれがニコリっと柔らかく微笑んだ。


「じゃあ…告白します…」


 俺はいっぱいエロゲとか恋愛ゲームとかやってるけど、告白しますと言われてから告白をするヒロインは見た事が無い。

 すみれはいわゆる、レアキャラなんだな!

 そんなレアキャラすみれは右手で胸を押さえながら「ふぅ」と小さく息を吐いた。

 俺も緊張しているが、すみれは相当なものなのだろう。俺に告白をするんだからな…


「わ…私は二年前からずっとずっと行幸みゆきの事が好きでした。毎日、お店で行幸みゆきに会うのが楽しみでした」


 き、聞いてる方も緊張しマッスル…


「でもね…私って駄目な女だから自分に素直になれなくって…ずっと行幸みゆきに冷たい態度をとっていました。本当に馬鹿だよね?えへへ…」


 すみれは右手を拳にすると、こつんと頭を軽く叩いた。

 いやいや、すみれは馬鹿じゃないよ? 十分可愛いよ?


「私は料理も下手だし、洗濯とか掃除とかも得意じゃないの。いわるゆ女子力が無いの。だから、一般女子に比べると全然駄目な女だと思うんです…」


 いや、サンドウィッチは形はともあれ美味しかったって。


「でもね? 行幸みゆきを想う気持ちは誰にも負けない! 幸桜こはるちゃんにも! ううん、他の誰にも負けないって思ってる!」


 幸桜こはる


「私は恋愛に不器用です! あ、あと、彼氏とか彼女とかそういうのって経験した事が無いです! だ、だから…えっと…ま、まだ…」


 どうしたんだ? 暗いのに解る程に真っ赤になってるじゃないか?


「私は…ま、まだ…しょ…処女です!」

「へっ?えぇえぇぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえぇぇええええ!」


 ま、待て! 何を言い始めた!? 告白にそういうのは必要じゃないだろ?


「け、経験値は無いけど、だから、行幸みゆきのやってるエッチなゲームの女の子みたいに気持ちよくさせられないかもしれないけど、彼女になったら頑張るから! 行幸みゆきが喜んでくれるように頑張るから!」


 ま、待てぇぇぇぇ! これってエロゲの告白だっけ? いや、違うだろ? リアルの女子からの告白だろ?

 おいおい? すみれ? 何を言い出すんだよ!?


すみれストップ!」

「えっ? な、何?」

「え、えっと…すみれ? 経験ないとか、俺を気持ちよくとか…そういうのは言わなくてもいいから! そこまで言う必要ないし、俺は別にエッチゲームのヒロインを彼女にしたい訳でもないからな? がんばるとかも言わなくてもいいからな?」


 すみれは俺の言葉を聞いて、両手で口を覆った。


「えっ!? や、やだ! 何? 言っちゃ駄目だったの?」

「駄目っていうか、言いすぎだって…」

「う、嘘っ!? でも、でもね? 愛ちゃんが…」


 すみれがすっごい動揺してるぞ。大混乱すぎるだろ!?

 って言うか、その愛ちゃんって誰だ! そいつかよ! すみれにこんな事を言わせたのは!


「うぅぅ…やっぱり私って駄目なんだ…折角真面目に告白しようとしてたのに…もう、ぐてぐてになっちゃったよ…うぅぅぅぅ」


 すみれが俯いて目頭を押さえた。って? 泣いてる!?


「いや、伝わった! すみれが俺を想う気持ちはいっぱい伝わった! 全然ぐてぐてじゃない!」

「…えっ?」

「あのな? 俺が言うのもなんだけどさ………うまく言葉で伝える必要なんてないと思うんだ。そういうのって気持ちが大事だと思うんだ。だから…俺には十分伝わった」

「ほん…とう? に?」


 不安そうな表情で、涙目のまま首を傾げるすみれ


「本当だよ」

「………よかった…うん…ありがとう…行幸みゆき


 こうやって見る弱々しいすみれは普通に可愛い年下の女の子なんだな。

 いつもの勢いも無い、初心で恥ずかしがりやな普通すぎる女の子。

 これが本当のすみれなのか?


 その時だった。

【ドーン!】と激しい爆音が俺の後ろから聞こえた。

 正面に立っているすみれの顔が花火の色に染まる。


「あっ! 行幸みゆき、後ろ! 後ろを見て!」


 俺は慌てて後ろを振り返った。

 すると、でっかい花火がちょうど通路の正面から見える位置に上がった。

 再び【ドーン!】と音がすると、同時に空中でとても綺麗な花を咲かせる。


「お前、もしかして…ここからこれが見えるって解ってたのかよ?」


『ねずみーらんど』を知り尽くしたすみれ。だったら、この穴場を知らない訳がない。

 そう、すみれは初めからここでこれだけを見るつもりだったんだ。


「うん…そうだよ」


 空で色鮮やかに花を咲かせていた花火は消えた。

 俺はくるりとまたすみれの方を振り返る。と、それとほぼ同時だった。

 俺の顔にすみれの手が触れた。俺の頭が固定された。目の前にはすみれの顔。

 俺は驚くと同時にすみれをじっと見る。すると…


「私の始めてを貴方に捧げます…」


 言葉が終わると同時にすみれの唇が俺の唇に重なった。


「……」


 またしても不意打ち。と思いつつも俺は何処かでこうなる展開を予想していたのかもしれない。素直に受け入れたのだから。


 すみれの唇がしっかりと俺の唇と重なる。

 俺の心臓は外に音が漏れそうなくらいにドキドキしている。

 そして、十数秒の時間が流れただろうか?

 ゆっくりと、すみれの唇は俺の唇から離れていった。

 すさまじい緊張の趣のすみれ。目の前で「ふぅふぅ」と息を荒くしている。

 俺も人の事なんて言えない。もうドキドキが止まらない。


行幸みゆき…」

「何だよ…」

「よかった…行幸みゆきでよかったわ…」

「もしかして…キスの事か?」

「うん…私ね、始めては行幸みゆきとってずっと前から決めてたから…」


 ドキッ! ドカーン!

 うおぉぉぉおおぉぉぉお! それはどこのエロゲヒロインの台詞ですか!?

 そう言いたくなるような台詞をすみれは吐きやがった!

 そして、俺の目の前のエロゲヒロイン(すみれ)はさらに破壊力のある台詞を俺に向けて発射してきやがった!


行幸みゆき…」

「な、何だよ?」

「私の…私の始めてを順番に貰ってもらえませんか?」

「えっ? ええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!」

「だ…駄目かな…」

「だ、駄目とか…そ、そういうもんひゃいじゃなは」


 噛んだ! すげー動揺して噛みまくったぁぁ!

 やばい、俺、震えてる!?


「じゃあ…よろしくお願いします…」


 何がよろしくなの!?


「ちょ、ちょっと待って…始めてを順番にって? ど、どういう意味だよ?」


 聞かなくても解るのに俺は何を聞いてるんですか!


「いまキスしたから…つ、次は…B的なこと…かな?」


 やっぱりそっち方面ですよね!


「いや、いや、すみれさん? 何を言ってるか解ってるのかな?」

「わ、解ってるわよ! 私だってもう二十歳だよ? だから解ってる…」

「ほ、本当かよ?」

「み、行幸みゆきだから全部あげるって言ってるんだからね!」


 オーマイガーーーーーーーーーーーーーー!

 まてぇ! ヤメロ! だからこれはエロゲじゃないんだぞってさっきから言ってるだろ? いや、リアルには言ってないけど…

 やばい! 壁に頭をガンガンぶつけたくなる! 「うぉぉぉぉ!」って叫びながらガンガンぶつけたくなるぅぅ!

 れ、冷静になれ!俺よ、冷静になるんだ!


「そ、そういうのは付き合ってかららひゃらな?」


 声が上ずったぁぁぁ! おまけにまた噛んだぁぁぁ!


「うん…わかった…」


 解ったのかよ…うぐぐ…



 ☆★☆★☆★☆★



 俺とすみれは出口に向かって移動中だ。

 俺はもう、さっきのすみれの告白もあって、色々といっぱいいっぱいな感じになっている。

 もしもライフポイントが表示出来たら、ほぼ0だろうな。

 誰かに回復魔法をかけてもらいたい気分だ。

 しかし、ゲームで聞きなれた台詞もリアル女子から言われるとこれほどまでの破壊力があるとは…


行幸みゆき? 疲れてるみたいだけど大丈夫?」


 そして、こんな場面でも心配してくれるリアル女子!

 そして、疲れたのは君のせいです。なんて言えない…


「ちょ、ちょっとハシャギすぎました」

「うん…私も…」


 出口を出た所で、すみれは「ちょっと待ってて」っとコインロッカーへと向かった。

 コスプレ衣装等が置いてあるから取りに行ったのか。

 ふぅ…でもこれで少しだけ休憩できるな。

 すみれと一緒だと、もうなんていうか、ずっと緊張しまくりだよ。

 しかし、普段通りの格好であんなに破壊力があったんだよな。もし、これで昼みたいなコスプレ姿だったり、無いと思うけど、前のオフ会の時みたいなおしゃれでもしてきてたら…俺はいったいどうなるんだろう?


 というか…なかなか戻って来ないな。


 十五分経過…

 二十分経過…


 まさか? 帰り間際にコスプレをしてるとか無いよな?


 続く。

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