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どうしてこうなるんだ!  作者: みずきなな
【どうしてこうなるんだ!】
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第八十六話【俺の本当の最終決戦(幸桜《こはる》編)Ⅱ】

 あ…あっ!や、やばっ!

 何を俺は言ってるんだよ?好きとか!? いや、事実だ、事実だけど、今がそれを言うタイミングか?


行幸みゆき…今…なんて?」


 ここで『冗談だよ』とか言ったら幸桜こはるとは終了フラグが立ちそうだよな…

 …って馬鹿か!?

 こんな涙目で『本当に?』って顔されて、そんな事を言えるはずないだろ!? 

 すげー俺は馬鹿だ! 深く考えないですぐに言葉にする。

 女の子を傷つけまいとして、優しい言葉や期待してるだろうなっていう言葉を投げかける。

 でも、これって自己防衛なんだよ。

 現実には俺が傷つきたくない。嫌われたくないだけなんだ。

 今までこれで何度失敗してると思うんだ?

 考えなきゃわかんねーのか? 

 こういう状況に追い込まれないと理解できないのか?


「ねぇ…それって本当?本当なの?」


 どうするんだよ俺?

 このまま黙って流すのか? そうしたらそれでも終了フラグが立つぞ?

 …俺はどうなんだ? 今いった事はどうなんだ?


「俺は…」

「……うん」


 自分の気持ちに正直になれ!

 ………好きなんだろ?


「お前が好きだって言ったんだよ!」


 幸桜こはるの瞳からツーッと頬を涙が流れ落ちた。


「…本当に本当に?」

「だから…嘘を言ってどうするんだよ…」

「それって妹としてじゃなくって…私を一人の女性として好きって事で…いいの?」

「………そ、そうだよ…女性としてだよ」


 幸桜こはるはそう言うと両手で顔を覆うと震えながら俯いた。


「…嬉しい……私…行幸みゆきに一回も好きだって言われた事が無かったから…だからすごく嬉しい…」


 幸桜こはるの足元にポタポタと雫が垂れている。

 俺が何か声をかけようかとした時。幸桜こはるが勢い良く抱き付いて来た。


「私も!私も好き!行幸みゆきが大好きっ!大好きだから!」


 周囲に聞こえる程の大きな声で俺が大好きコールをした幸桜こはるは、その勢いに任せてキスをしてきた!

 俺は動揺していたのと、イキナリのキスに避ける事すら出来ず、そのまま幸桜こはるの唇を受け入れてしまった。

 すると、後ろから『パチパチ』と拍手が聞こえるじゃないか。

 拍手だと!?えっ?


 ゆっくりと後ろを振り返る。すると…

 はい、後ろに人がいましたっ!それもカップルです!それも笑顔で拍手してます!


 俺は恥ずかしさのあまり、慌てて幸桜こはるを引き離した。


「やだっ!やだっ!もっとするぅぅ!」


 だだをこねてキスをおねだりする幸桜こはる

 いや、可愛いよ?可愛いけど今はそれ所じゃない!

 見られてるんだって!


「あ、後でな?」


 後ろのカップルをちらりと見た。

 すると、顔を見合わせるとお互いに頷く。そして、その場を後にしようとしているじゃないか!

 なんという気遣いの出来るカップルなんだ。

 なんて感心してる場合じゃないだろ!


「ま、待って下さい!もう俺達は行くので大丈夫です!」


 何がどう大丈夫なのかは不明だが。


「えぇーーーー」


 幸桜こはるは不満そうな声をあげた。


「あ、いえ、彼女さんがまだこちらに居たい様子ですし…」


 カップルの女性の方が優しくそう言ってくれた。

 しかし、いつ後ろからまたカップルか来るか解らない。

 こんな場所にずっといても超絶はずかしいだけじゃないか!


「だ、大丈夫ですから!」


 俺は不満そうな幸桜こはるの手を引いてそこを後にした。

 ちなみに、気遣いカップルとのすれ違いざまに、二人に『お幸せに』っと言われてしまった。

 もう、思わず恥ずかしくって顔が熱くなる。


 それにしても気がつかなかった。いつからあそこに人が?

 っていうか、ここはおもいっきりデートスポットだ。

 それもあそこはカップルが来る場所。

 普通に考えても人が来ない訳がない! 馬鹿か俺は!?


 俺は顔がすっげー熱いまま、また別のカップルとすれ違う。

 やばいやばい…俺達が二人きりになれたのは運が良かったんだな。


「後で…また…してね?」

「は、はぁ?」

「さっき言ってたじゃん…キス…」


 真っ赤でとっても恥ずかしそうな中にも幸せそうな幸桜こはる

 はい、言いました! さっき、勢いで言うのがダメだとか考えてたのに、また勢いで言いました…


「あ…わ、わかった…」


 俺はそれしか言えなかった。



 ☆★☆★☆★☆★



 俺達はとても静かな港町の浜辺をイメージした場所にやってきた。

 ここにはあまり人気はなく、本当に穴場的な場所だ。

 幸桜こはるは「こっち来て」っと俺の腕を引っ張ってゆく。

 そして、丁度二人が腰掛られるベンチを見つけると、そこに座った。


「ねぇ…行幸みゆき、知ってた?」

「何をだよ?」

「私ね? 行幸みゆきに告白してからちょっと変えた事があるんだ…」

「変えた事? って何だよ?」

「うん。何だと思う?」


 俺は考えた。変えた事?

 俺を好きになったとか? 積極的になったとか? 服装を変えたとか?

 って!待て待て!変わった事が多すぎて、答えがわかんねー!

 とりあえず何かを言ってみるか。


「洋服とか?」

「ブブー!」

「違うのか?」

「変えたけど、そんなんじゃない」


 いや、変えたのは何かなんだから、正解じゃないのか?

 しかし、洋服じゃないとすると? 感情が変わったなんて当たり前だし…

 そうか! やっぱり明るくなったって事か!

 …って…昔はこのくらい明るかった記憶があるな…


「わかんないの?」


 全然まったく解らない。怒られるかもしれないけど…


「すまん…降参」


 でも、幸桜こはるはそんな回答にも怒る事は無かった。ニコリと微笑むと、答えはね…と続ける。


「私が行幸みゆきに告白してから…実はお兄ちゃんって呼んでないんだよ?」

「えっ? そうだったっけ?」

「うん…あれからはずっと行幸みゆきって呼んでるんだ」


 あれ? そうだったっけ?

 でも、そう言われて見ればそうかもしれない!

 確かに、最近はお兄ちゃんってまったく呼ばれなくなった。前はほとんどがお兄ちゃんだったのに。


「何でだよ?」

「だって…あたり前でしょ?」


 幸桜こはるの顔が赤くなったぞ?


「だって…行幸みゆきは…もうお兄ちゃんじゃないもん…私の大好きな、大好きな、一人の男性なんだもん…」


 うごぉおおおおぉぉおおおおおお!

 破壊力抜群の台詞すぎ!

 幸桜こはる! お前はいったいどのギャルゲーのヒロインだ! っていう位に強烈すぎる…

 やばい…幸桜こはるにこんな能力があったとは…(能力って何ですか?)


行幸みゆき、顔が真っ赤」

「えっ?」

「もしかして…照れてるの?」

「ば、馬鹿か!誰がっ!」


 ごめんなさい!照れました!

 っていうか、ごめん、俺は今になって幸桜こはるを他の男に取られなくってよかったなんて思ってるよ。

 って! 待て! 待て!

 まだ幸桜こはるを選んだ訳じゃないんだぞ!?

 でも、これはあれなのか? 俺はやっぱり幸桜こはるに惹かれてるって事なのか?


「照れてる行幸みゆきも可愛いね!」


 まるで小悪魔ジャマイカ。

 この小悪魔めっ!なんだその笑顔は!


「お、お兄ちゃんをからかうのもいい加減にしなさい!」


『ガン』っといきなり頭をバッグで殴られた。


「いてぇぇぇ!何すんだよ!」

「お兄ちゃんじゃないでしょ!」


 とても不服そうな顔で俺を見る幸桜こはる

 やっぱり「兄妹」を想像させる単語は聞きたくないらしい。


「ごめん…」

「次にまた言ったら…おしおきだからね?」

「はいはい…」

「ハイは一回でいいです!」

「ハイ!」

「よろしい!」


 年下の幸桜こはるに言い負かされてるな…俺…


「どうしよう…」

「んっ?どうしたんだよ?」

「幸せなんだもん…」


 幸桜こはるはそう言うと俺の肩にトンと頭を寄せて来た。


「お、おい?幸桜こはる?」

「幸せなんだもん!」


 可愛すぎて、俺は幸桜こはるの肩を抱いてしまった…


 そしてしばらく俺達は港を見ていた。

 何故だろう? 幸桜こはると一緒だからなのか、寒さを感じなかった。

 しばらく経ってから、幸桜こはるの小さな声で「ねぇ」と聞こえた。

 俺が幸桜こはるに目をやると、幸桜こはるが俺を見詰めている。


「私ね…ついこの前までは行幸みゆきとデートが出来るなんて思ってもなかったんだ。ずっと、ずっと夢には見ていたけど、それが叶う日がくるなんて…思ってもなかったんだ」

「俺も…まさかこういう展開になるとは思ってなかったよ」

行幸みゆきは私の事なんて相手にもしてくれないんだって思ってたんだ」

「事実、そうだったかもしれない」

「だよね…」

「だな…」

「でも…でも…こうやって……」


 幸桜こはるは右手で瞳に溢れそうな涙を拭う。


「やだ…今日の私ってすぐ泣いちゃうよ。…おっかしいなぁ…何してんだろ…もう本当にやだなぁ…」


 本当に今日は幸桜こはるはよく泣く。

 でも、こんなに喜んでくれると俺も一緒にいて嬉しくなる。そして、幸桜こはるの愛情をすごく感じる。

 俺を本気で好きなんだって…


「大丈夫だって。昔のお前は泣き虫だっただろ?」

「もうっ!それって私が小学校とかでしょ?今と一緒にしないでよ…」


 そう言いながら、幸桜こはるは子犬のように体を寄せてきた。


幸桜こはる?」

「………」


 たまに目の前を通るカップルが笑みを浮かべながら過ぎていった。

 たまに目の前を通る男のグループは睨みつけてきやがった。

 たまに目の前を通り女性のカップルが羨ましそうに見ていった。


 実感。

 俺達は本気でリア充実シネ状態なカップルなんだ。


 しかし、まさか俺がこんなゲームみたいな恋愛をするなんてなぁ…

 妹なのに血が繋がってなくって、実は昔から思われててって、現実的じゃなさすぎるだろ?

 でも、それが現実なんだよな…

 そして…やっぱり幸桜こはるは可愛い…

 ずっと俺は幸桜こはるを見てれば…でも俺は駄目な奴だ。

 こんな時にふと他の女性のことを思い出す。

 幸桜こはるが好きだとと思うと、じゃあすみれはどうなんだて思ってしまう。

 おまけにシャルテやリリアの顔まで浮かんでくる始末だ。


 あいつらはどうなってるんだろう?

 すみれとのデートはうまくいってるのかな?

 俺は圧倒的に幸桜こはるにやられてるんだけど、あっちはどういう感じになってるんだ?

 って!気にしたら駄目なのにきになる!

 やっぱり俺って駄目人間だ。

 もしかして、俺って幸桜こはるすみれも両方とも手に入れたいのか?

 いや、シャルテやリリアも…

 って何だこのハーレムエンド願望は!

 これじゃ駄目男すぎだろ? おまけにデート中なのに…

 落ち着こう…落ち着け落ち着け…


 目線を落とすと、そこには幸せそうな幸桜こはるの姿がある。


 そうだよ…今は幸桜こはるとデート中なんだぞ。

 今は幸桜こはるの事を考えないと…


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