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どうしてこうなるんだ!  作者: みずきなな
【どうしてこうなるんだ!】
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第八十四話【俺が二人になった場合…ってどうしてこうなった!?Ⅲ】

行幸みゆき達の前にいきなり天使が現れた!というか今までの行為を全部見られてた!?しかし、重要なのはそこじゃない。って感じで進みます。

 行幸みゆき達の前に降り立った天使を見て二人(両方行幸みゆき)は固まった。

 舞い降りてきた天使は腕を組み、そして『お前らは変態だな』と声を出さなくても解るような表情で二人を見ている。

 この状況を見ればそう思われても仕方ない。ぶっちゃけ変態です。

 しかし、二人が驚いたのは天使が現れて、そういう目で見られたからではない。

 いや、それもある。あるけれど、それ以上に驚く事があったのだ。


 もう一度、舞い降りた天使を見る。

 降り立った天使の瞳は透き通った青空のような青。そして、髪は肩まであり、色は美しいエメラルドグリーンだ。

 スタイルは良く、美少女と言っても過言では無い、いや、美少女だ。

 そう言っても過言じゃない位に纏まりのある顔つきだった。


 そして、この美しい天使を行幸みゆきは知っていた。

 そう、二度と逢えないと思っていた天使…その名前を『シャルテ』と言う。


「シャ…シャルテ?」


 行幸みゆき(男)がそう声をかけると、シャルテは怪訝な表情をする。


『何で僕の名前を知ってるんだよ?』


 口調は変わっていなかった。あの幼女体型の時の口調のままだ。

 しかい、行幸みゆきの記憶はすっかり飛んでいるようだ。


「いや…リリアから聞いてたから…」


 行幸みゆき(男)はここで『俺を覚えてないのか? ほら!行幸みゆきだって!』と言いたいところだったが、それをぐっと押さえ込んだ。

 シャルテは俺を元に戻そうとした。それで俺の記憶をなくした。なのにここで覚えてないかなんて声をかけるべきじゃないよな。


『リリア姉ぇから? ふーん…まぁいいや…で、お前らは何をしてるんだよ?』


 ジロリと睨みつけるシャルテ。そして、その瞬間、行幸みゆき(男)の首元に暖かい吐息がかかった。

 はっと正面を向きなおす。そこには顔を赤くした自分(女)が…

 そ、そうだ!こういう状況だったんだよ!


『天使長に、二人にしたままだから元に戻せといわれて来たら、まさか自分を相手に性行為をしようとしてるなんてな…なんて変態だ』


 酷い言われようだ。とは言い切れない…


「いや、これには色々と事情があってだな!?」


『事情って何だよ?女の自分にシャワーを浴びさせて、バスタオル姿で抱き合って、そして女の方がすっごいもう興奮状態じゃないか?これで何の事情があるんだ?』


「いや…あれだ」


 まさか、自分を相手にエッチな事をしようとしていたなんて言えない。

 だいたいそれは事情では無く、シャルテの言ってる事が正解ですと答えているようなものなのだから。


『とにかく、戻すぞ?』


「も、戻すって何だよ?」


『二人を一人にするって事だ』


 すると、行幸みゆき(女)がびくんと反応した。そしてシャルテの方を見る。


『ま、待って!そうしたら俺はどうなるんだよ?』


『男の方がメインだから、女は男に取り込まれる』


 行幸みゆき(女)の顔が青くなった。

 いくら分裂している片割れだからと言って、今は一人の人間になっている。

 自分が消滅する。そう聞いて始めてこの分裂のリスクがわかった。

 行幸みゆき(女)に消滅するという恐怖が芽生えたのだ。


『と、取り込まれたら俺はどうなるんだよ?完全に消えるのか?今の記憶は?また分裂したときはどういう風になるんだよ!?』


 焦った表情で矢継ぎ早に質問をしまくる行幸みゆき(女)。

 シャルテはちょっと呆れた表情でそんな行幸みゆきを見る。


『安心しろ。お前の記憶はメインに、ようするには男に引き継がれる。もともとが一人だったんだ。決して死ぬわけじゃないんだぞ?まぁ、ちょっと記憶が混乱すると思うが、妄想した時の記憶みたいな感じで脳内で再現されるし、変態オタクなお前なら対応可能だろ?』


 変態オタクって…

 しかし、シャルテがちょっとおかしい…

 何がっていうと、こいつは天使のチート機能。ようするには心を読んでいない気がする。

 さっき、俺が心の中でシャルテの事をいっぱい考えていた。もしも、心を読めたら、そこを突っ込んでくるんじゃないのか?

 だけど、こいつは平然としている。こいつは天使なのに心が読めない?

 確か、前にリリアが、見習いは心が読めないって言ってたけど…確かこいつは見習いを卒業したはずじゃないのか?


『じゃあ、戻すからな?』


『駄目ですっ!シャルテ!触らないでっ!』


 シャルテが行幸みゆき(女)に触れそうになった瞬間、いきなり目の前にリリアが現れた。


「リ、リリア!?何でお前まで!?」


 リリアは焦った様子で行幸みゆきを触ろうとしているシャルテの腕を掴もうとする。しかし、シャルテはそれより先に行幸みゆきに触れた。


『リリア姉ぇ?』


 シャルテはそのままバスタオル姿の行幸みゆきの背中を押す。同時にリリアに腕を掴まれる。

 同じく、同時に行幸みゆき(女)の体が半透明になり、男の方へと吸い込まれてゆくじゃないか。


『えっ!?何だこれ!?』

「うわっ!俺が俺に吸い込まれる!?」


 ずぶずぶとめり込んでゆく行幸みゆき(女)。

 そして、あっと言う間に行幸みゆきは一人の体になった。

 それと同時に、『ブワン』と体が盛り上がるような感覚を覚える。

 行幸みゆき(男)は慌てて自分の体を触った。


「えっ!?胸がある!?あそこがない!?お、女に戻ってるだとぉぉぉ!?」


 行幸みゆきは頭を抱えながら、リリアとシャルテの方を見た。


「シャルテ、リリア!何で俺が…って?な、どうした?」


『うぅぅぅ…あぁぁ…ぐぅ………』


『シャ、シャルテ?』


 シャルテまで頭を抱えていた。そして、そのまま力なく膝を折ると、ぺたんと床に座り込んでしまう。

 その表情は先ほどまでの強気で蔑んだ目で見ていた時とはまったく違う。血の気は引いて青白い顔になっていた。


『な…な…なに…これは…頭が痛い…』


『シャルテ!?何で…何でシャルテが行幸みゆきさんの所に来るのですか!天使長様ですね…何を…何を考えているのですか!』


 シャルテの肩に腕をまわしながらリリアは涙目で憤慨していた。

 その時、行幸みゆきの脳内が何か鈍器で殴られたかのような衝撃に襲われる。

 まるで録画した番組を再生するように、どっと脳内に行幸みゆき(女)の記憶が流れ込む。

 男の記憶と女の記憶が入り混じる。すさまじい頭痛。

 シャルテが気になって仕方なかったが、もうそれど頃じゃない。

 行幸みゆきはそのまま床に倒れて気を失ってしまった。



 ☆★☆★☆★☆★



 行幸みゆきが気がついて目を開く。

 窓からは薄っすらと光が入り込んでいる。

 慌てて目覚まし時計を確認すると、朝の七時を刺しているじゃないか。


 朝?って事は…俺はあの時、気を失って…そのまま寝てしまったのか!?

 そうだ!リリアは?シャルテは?

 慌てて周囲を確認するが、もちろん二人の姿は無い。


 何だったんだ?あれは一体…

 シャルテが苦しんでた…リリアが怒ってた。

 ……でもって…俺は一人に戻った?


 うーん…あれってマジだったのか?なんか夢っぽいな…あんなのあるか?

 昨日の夜の事がどうも信じられない行幸みゆき

 ちょっと胸をもみもみしてみる。柔らかかった。


 何してんだろ?俺…


 行幸みゆきは立ち上がってキッチンへと向かった。

 キッチンへと移動した行幸みゆきは、ふと視線をバスルームの前へ移す。

 すると、そこには脱ぎ捨てられた下着があった。


 これって…昨日…シャワーを浴びたんだよな?


 記憶がある。昨日はここでシャワーを浴びた。

 そして…シャワーを浴びながら…


 行幸みゆきはまるで火がついたかのように顔が熱くなる。


「な、なん…だ…これ…」


 カーッと顔も耳も真っ赤になる。思わず自分の体をぎゅっと抱いてしまう。


「な、何?俺が俺に全部あげてもいいとか?思ってる!?っていうか、思ってた!?って!やっぱり昨日の事は夢じゃねぇのかよ!」


 一気に女の記憶を思い出す行幸みゆき


「やば…これは合体の後遺症なのか?あいつの記憶が入り乱れて…っていうか、あいつ、ちょっとヤバすぎだろ…何て事を考えてるんだよ!うぐぐぐ…こ、この火照りをどうしてくれるんだ!!!!!!!!!!」


 そのままヘタンと床に座り込み、膝を抱えて涙目になる行幸みゆき


 男の記憶もイヤラシイ。女の記憶もイヤラシイ。相乗効果でイヤラシサ数倍かよ!

 こうして自分で自分がどれほどエッチで変態かを自覚した行幸みゆきだった。



 ☆★☆★☆★☆★



 シャルテ達の事が気になりつつも、時間は過ぎてゆく。

 あれからはシャルテにもリリアにも合わず、そして平穏な日々が続いた。

 すみれとは、何事もなかったかのようにバイト先で一緒に働き、そして、幸桜こはるとは普通にメールのやりとりなんかをした。

 一切次回のデートには触れない。


 ちょっと俺からデートの件をすみれに聞いてみた。

 すると、デートまではお互いに行幸みゆきにはちょっかいを出さない協定を結んだらしい。そして、一切触れない事にしたらしい。

 なるほど…なるほどね…

 ちょっと納得した。


 そして、ついに前日の夜。

 明日はすみれ幸桜こはるとのダブルデートを決行する。それも分裂してだ。

 正直、元に戻る時の気を失う程の激痛と、記憶が流れ込んだ後のパニックを考えると、分裂なんてしたくもない。

 しかし、これは仕方ない。今回で分裂も最後だし…


 覚悟をしてパソコンの電源をつけた。

 ちなみに、オフ会から一度もMMOをやってない。

 正直に言うと、行くのが怖かったからだ。

 フロワードの件も、あの三人組の件も…

 だから…すげー勿体ないけど、俺はこのままあのMMOを引退する事にした。

 しかし、フロワードにゲームの中でもいいから謝罪しておいてって言われたんだよなぁ…


 行幸みゆきはメール画面を起動する。

 そこにはMMO内でメッセージが貯まっているという案内メールがいっぱい来ている。

 うわぁ…と内心で思いつつも、行幸みゆきはフロワードへメールを打ち始める。

 そう、とりあえず、ゲームの中というよりは、メールで謝罪しようという訳だ。


 行幸みゆきは謝罪文を書いて送信を押した。ら…二分で返ってきた!

 早いだろ?おいおい…まさか、俺からの連絡をずっと待ってた系?

 恐る恐るメールを開く。

 すると…フロワードからはきちんとした文章で返事が戻って来ていた。


 MIYUKIへ


 お久しぶりだね。あれから全然INしてこないからどうしたのかなって思ってた。

 俺もすっごく酷い事をしてしまったから、謝らないといけないなって思ってたんだ。

 MIYUKIは悪くないし、俺を殴ったホワイトだって悪くない。

 あの状況の俺はおかしかったから。

 何であんなにおかしくなったのかな?あはは…(お、俺のせいだけど)

 でも、解ったよ。俺とは付き合えないんだね。

 そっか、好きな人がいるんだ。そうだよね?MIYUKIくらい可愛い女性ならそれが普通だよね?(えっと、本当は男だけどな)

 うん…了解。

 あと、報告。俺も引退する。(えっ?)

 俺さ、実は転勤が決定してたんだよね。(えぇぇぇ!?)

 北海道なんだけど、別にMMOは出来なくはないんだけど、会社の寮がネット環境が無いみたいでね。そして、ネットカフェがないらしいよ?(なんという…)

 MIYUKI。改めて御礼を言わせて欲しい。

 ありがとう。俺、恋なんてした事が無かったけど、MIYUKIと出会えたから恋が出来たよ。(何処のエロゲの台詞だよ!)

 本当に君を好きになってよかったって思ってる。(だから何処のエロ…)

 また…機会があったらメール下さい。

 そして、あのアイテムは返すな!(命令口調!?)

 俺がもしも復帰して、MIYUKIも復帰したら…あれがあると、俺には酷い事できないでしょ?(なんという事だ)

 なんて冗談だけど(マジだろ!)返すなよ?どうせ俺も使えなんだ。(うーん)


 じゃあ…メールもらえて嬉しかった。

 またいつか、何処かで偶然出会える時があれば…


 フロワード


 ………くそキザすぎてワロタ!

 と思いつつ、ちょっと瞳が潤んでしまった行幸みゆき

 俺の騒動に巻き込んで、フロワードには何のいい思いもさせてやらなくって、酷いよな俺…

 でも…ここでメールを返信すると、フロワードは淡い期待を絶対にもつ。だから…しない。

 ごめんな…フロワード。


 行幸みゆきはメール画面を閉じると、パソコンの電源を落とした。

 そこでふと気がついた。後ろに何かの気配がある事に。


『フロワードさん…ちゃんと振れたみたいですね』


 リリアがやさしい笑みを浮かべて立っていた。


「まぁ…そうかな?うん…なんかネカマもやりすぎ注意ってマジで思った。人の人生を変える程の影響ってマジでありそうだもんなぁ」


『そうですね。絶対悪ではありませんが、人を騙している事には変わりないのですからね』


「ああ…」


『では、分裂させますね』


「うっ…そうだな…よ、よし…来い!」


 行幸みゆきはすくっと立ち上がると、リリアの方を向いた。

 リリアは一歩前に出て、行幸みゆきの頭に触れる。


『いきますよ?』


 そう言われた時、行幸みゆきはふとシャルテの顔を思い出した。

 そうだ。シャルテは?シャルテはどうなった?あれからどうなったんだ?


「ま、待った!」


『はい?』っと言いながら首を傾げるリリア。


「一つだけ聞きたい事があったんだ」


『何でしょうか?』


「シャルテは?前に俺を合体させにシャルテが来てて、あの時にすっげー苦しそうになってたじゃないか?あの後、どうなったんだよ?」


 リリアはちょっと俯いた。何か思う所がある様子だ。しかし、すぐに笑顔で言い切る。


『大丈夫です。心配には及びませんので』


「でも…」


『いえ、まぁ…大丈夫だったと言った方がいいでしょうか?』


「何があったんだよ?」


『いえいえ、気にしないで下さい。今はシャルテを気にするよりも、明日のデートを気にして下さい』


 妙に言葉が引っかかる。

 行幸みゆきは問い詰めようかと考えた。しかし、きっと心を読めるリリアは聞きたいという事は、口に出さずとも解ってるはずだ。


『です…』


 リリアは小さく頷いた。


「わかった…じゃあ…やってくれ…」


 リリアは行幸みゆきの頭を持って二人に分裂させた。


 続く

次から最後のデート編です!

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