第八十三話【俺が二人になった場合…ってどうしてこうなった!?Ⅱ】
まさかの女っぽい反応に男の行幸はタジタジに。そして、まさか…『おい待て!ちょっと待てっ!』って感じの展開です。
※ちょっとエッチな展開なので苦手な方は注意して下さい。
まるで本物の女性みたいに恥ずかしがる行幸(女)。
流石の行幸(男)もまさかの反応に動揺しまくった。
「な、何がキャーだよ!お前は女じゃねーだろうが!」
そして動揺のあまり思わず怒鳴ってしまった。
しまったと思うが遅い。
行幸(女)はキリっと行幸(男)を睨むと、スタっと立ちあがって、再度行幸(男)睨んだ。
「…お、おい?」
『風呂入ってくるからな!ぜ、絶対に覗くなよ!』
行幸(女)は恥ずかしいのやら、悔しいのやら、複雑な表情でダイニンへと消えて行った。(ちょっと涙目で)
ダイニングと居間との間の扉を『バタン』と閉めて胸を右手で押さえる行幸(女)。
何故か心臓がドキドキと激しく鼓動をしてる。
ば、馬鹿か?何でこんなにドキドキしてんだよ!何であそこで恥ずかしくなったりするんだよ?何だ?俺は俺を意識してるのか?待て待て!これじゃ俺は変態じゃないか!
そう言いながらも体の火照が止まらない。
くそっ…別に自分が好きって訳じゃないのに…
何だかなぁ…俺は妄想癖があるから、ついつい俺同士の絡みとか妄想しながら服を脱いでたらアイツに見られてるって気が付いて…
天使みたいに心を読まれる訳じゃないのに…くぅく!
ちょっと居間を振り返る。しかし扉が閉まっていて中は見えない。
もし…そうなったら………【俺×俺】ってBL扱いになるのか?
ちょっと危ない事を妄想しは締める行幸。
そうなると、女になっている俺が受けだよな?あいつが攻め?
それって普通に男女と同じじゃないのか?普通に…普通…
カーっとまた真っ赤になる行幸。
待て待て!何を考えているんだよ!そんなのある訳な…い…
カーっとまた体まで火照る。
うがあぁ!どんなエロアニメの世界なんだよ!俺の考えが卑猥すぎるだろ!
自分相手に…自分相手にぃいぃぃぃぃいいいいいいいいいい!
行幸は頭をもしゃもしゃっとかくと目を閉じた。
忘れろ…
冷静になれ…
そんなのないからな?
今はそういう事を考える前に、今週末の決戦デートを考えるんだよ。そうだ、風呂で頭を冷やそう…頭を冷やせばきっと…
☆★☆★☆★☆★
居間兼寝室に残された行幸(男)。
こちらも心臓がドキドキと張り裂けそうに鼓動していた。
やばい…何で自分相手にムキになってんだ?
自分の裸を見てムラムラきてるんだ!?
久々に男に戻ったらからか?でも、自分相手に興奮するとか駄目だろ?
考えろ。あいつは姿こそ女だけど俺なんだぞ?俺も昨日まで女だったじゃないか!
行幸(男)は、額に手を当てて頭を垂れた。
でも違うんだよなぁ…
普通にそこにいると、普通の女に見えるんだよなぁ。それに可愛いし…
おまけにあの無防備さだろ?ここのアパートに戻ってから、あいつ、ずっとTシャツだったし…
あいつは気が付いてないのか?薄手の白いTシャツだと、色ものの下着がしっかりと透けて見えるんだ。
おまけに、あんなでっかい胸を俺の前で晒しやがって!マジで危険感が無さすぎだろ。
まぁ、まさか俺があいつを襲うなんて思ってもないだろうし、警戒しないのは理解出来なくもないんだけど…
でも、ヤバイよな?自分を見てムラムラきてる俺ってやっぱり変態なのか?
「うぉぉぉおおおおおおおおお!」
行幸(男)は両手で頭を抱えて吼えた。(超絶小声で)
冷静になれ!落ち着け…あいつは俺なんだぞ?
しばらくしてお風呂の方向からドアを開く音が聞こえた。
どうやら行幸(女)が風呂から出たみたいだ。
いくら自分が相手だからってあんな事を考えるとか失礼だったな。それに、俺の行動も駄目すぎた。
仕方ない、自分に謝るのは何か嫌だけど、やっぱり謝るか…
そんな事を考えながら、行幸(女)が部屋に戻ってくるのを待つ。
正面を向いて待つのも嫌なので、扉を背にして待っていた。
☆★☆★☆★☆★
しばらくしてダイニングの扉がスーッと開く音が後ろから聞こえた。
どうやら行幸(女)が風呂から出たみたいだ。
よし…ちゃんと謝ろう。
行幸(男)は開いた扉の方へと振り返りながら謝罪を始める。
「えっと、さっきはごめん。いくらお前が俺だからってぇーーーー!えぇえぇ!?」
行幸(男)は反転した瞬間、謝罪の言葉が出なくなるほどに驚いた。
そう、そこに立っていたのはバスタオル姿の自分(女)だった。
バスタオルで胸から太股の上部まではなんとか隠れている。しかし、隠し切れない綺麗な太腿がチラチラと見え隠れしている。もう少しで危険な場所まで見えそうな位に危険な状態だった。
胸を見れば、ちょっと先っぽの膨らみが見えたり見えなかったり…って…おい待て。これはどう見ても裸の上にバスタオルだよな…
行幸(男)は観世に脳内フリーズしてしまった。
しかし、フリーズをしても体はフリーズしない。
体中が熱くなって、久々の男性機能全開状態に突入してしまった。
おまけに、乾かしきっていない濡れた髪と、部屋に漂うシャンプーやボディーソープの匂いがなんともいえない空気をつくる。
み、見ちゃダメだ!っと行幸(男)顔を背けた。
「な、何だよその格好は!」
『何だよ…いまからあやまったって許してやんないんだからな?』
行幸(女)は何故がツンキャラっぽくなってる。ちらりと顔を見ると…
何で頬を染めてる!?恥ずかしがってる!?恥ずかしいならパジャマくらい着ろよ!あっちに置いてあっただろうが!
心の中で文句を言った。
一分が経過した。
行幸(女)が動かない。
裸バスタオルという最低の防御力装備なのにまったく動かない。
何故?どうして?
「何してんだよ!早く服を着ろよ!」
思わず大きな声をあげる行幸(男)。というか、早く今の変な状況から脱出したいからだ。
『な、何だよその言い草』
「言い草も何も無いだろ?早く服を着ろって言ってるんだよ」
しかし、行幸(女)から返事はない。そして、動かない。
一分がまた経過。やっと行幸(女)が口を開いた。
『………いいのかよ?着ても』
「へっ?」
意味深な行幸(女)の台詞に『ドキ』っとする行幸(男)。
「い、いいのかってどういう意味だよ?いいに決まってるだろうが!」
待て待て…何だ?こいつどうしたんだよ?いいのかだと?いいに決まってるだろ?
正直、マジでその姿でいるのは止めて欲しいんだけど?
そんな格好でいたら否応にも…あぁぁぁあ!俺だって男なんだぞ!?
懸命に色々と我慢する行幸(男)。しかし、体は正直だった。心臓は高鳴り、さっきよりも興奮状態に入っているのが自分でよく解る。
しかし、まさか流石に自分に発情する訳にもいかない。冷静になろうなろうと努力をする…が、行幸(女)が追い討ちをかけてきた!
『えっと…お前…俺に触りたいとか思ってるんだろ?この胸とか…』
またもやドキッとする行幸(男)。
いやいや、何言ってるのおまえは!?
「いや、何いってるのか解るか?自分で自分をからかっても面白くもないだろ!?」
『からかってなんかない…』
「はぁ!?」
『……俺さ、ちょっと考えたんだけど…きっと俺がお前の立場だったら、あの時もきっと下着姿を見てただろうし…そして、触りたいとか思っただろうし…やっぱり…男なら普通だよな?それって…』
行幸(女)はちょっと照れた表情でそう言った。
しかし、もう照れるとかそういう問題じゃなくなっている男の方は、またしても混乱を極める。何を納得してんだよと。で、この行為は何だよと。
「いやいや待て!お前は確かに俺だから俺の考え方も解ると思うけど、そりゃ俺も少しはお前の裸を見たいなとか、触りたいなとか思ったけど、やっぱ駄目だろ!?」
『な、何が駄目なんだよ?俺はお前だから…だから許してやろうかって思ったんだぞ!』
「いくらお前が俺だからって、許さなくていい!許すなよ!本当は見たいのにすっげー我慢してんだぞ!我慢の甲斐が無いだろ!」
行幸(男)は思わず本音を言ってしまった。
『が、我慢すんなよ!俺が良いって言ってんだぞ?俺だってすっげー恥ずかしいけど、自分が相手なら…浮気でもないし、いいかなって思ってるんだ!』
行幸(女)よ、風呂場で冷静になって何を考えたんだ?(by作者)
「良くない!自分×自分とか、どんなBL同人誌だ!」
『BLじゃねぇ!自分同士なんだから、これは自慰行為なんだよ!』
何処からそういう結論になった?
『それとも…お前、不満なのかよ…俺じゃ…』
「ふ、不満とか!自分が相手はアリエナイって言ってるだけだろ?今はこんな事をしてる場合じゃないんだぞ?俺達は、週末には人生をかけたと言っても過言じゃないイベントが控えてるんだぞ?なのに…なに言ってるんだよ!」
『イベントは重要だよ!わかってんよ!でも…俺が二人なんて今しかないんだろ?お前は興味ないのかよ?俺はすげー興味あるんだ!』
「う…ううむ…」
『いいんだぞ?俺…覚悟してるから…』
「おい、マジかよ…」
『…うんマジだ』
行幸(男)の心臓はもう張り裂けそうな程に早く鼓動をする。 顔からは汗が滴り、興奮している下半身がフルチャージ完了状態になってしまっていた。
もう一度、行幸(女)を見る。照れる行幸(女)がすこぶる可愛く見えてしまう。いや、実際に可愛いのだ。
やばい…自分が相手なのに、こんなに可愛い子に覚悟しているとか言われて…やっちまってもいいじゃないのかとか思ってる俺がいる。
マジで自分相手にやっちゃうフラグなのか?
いや待て…やっぱ駄目だろ?普通に考えればそんなフラグはへし折らなきゃ駄目だろうが!
結構頑張る行幸(男)。
「駄目だっ!やっぱ駄目だ!いくらお前がOKでも駄目だ!」
ビシっと言い切った行幸(男)。そんな行幸(男)見て行幸(女)はちょっと驚いた。
俺って、女に迫られたら断れずにやっちまうと思ってたのに…なのに…なのに…
『俺の癖に生意気だっ!』
行幸(女)は背を向けて座っている行幸(男)に思いっきり飛びついた。
もにゅんと行幸(男)の背中に柔らかい感覚が伝わる。
「や、やめろ!やめないと、マジで自我を保てなくなるから!」
『馬鹿…そんなの解放していいって…いってんだろ?』
突然、女の行幸の声が寂しそうになった。
まるで女みたいじゃないか。って女か。
そして、行幸(男)は動揺を継続中。
「だ、駄目だ…解放し、しないからな?」
『お前も俺なら悟れよ…俺なら解るだろ?俺はエッチに興味があるんだ…さっきも言ったけど、俺達が二人になれるなんて今しかない。こんなゲームみたいな経験なんてもう二度と出来ないはずだ。俺さ、別の男の相手をしたいなんて思わない。だけど、自分が相手だから…だからさ…』
そう言う女の行幸が震えている。
こいつ、実はそんな事を言いながらも怖いんだろ?興味があって、エッチもしてみたいけど、経験も無いし、きっと怖いんだろ?なのに…
行幸(男)はゆっくりと振り返えった。そして、震える行幸(女)の背中に両手を廻した。
ぎゅっと抱くと、ぎゅっと抱き返される。
「こ…後悔してもしらねーぞ?」
『アホ…自分相手に後悔とかあんのかよ…』
「ば、馬鹿か…今のお前は俺であって俺じゃない…俺にとったら…普通に可愛い女にしか見えてないんだよ…そう、お前は【神無月みゆき】なんだ…」
『な、なるほど…そっか…』
「おい、本気で後悔すんなよ?」
『しねーよ。だけど…相手が俺だからって無理矢理はやめろよ?』
「やらねーよ!大丈夫だ…」
『…優しくしてね?』
わざとか?わざとだろうが、行幸(女)は女っぽくそう言いながらニコリと微笑んだ。
『何、こいつら自分同士で何やろうとしてんだよ…まったく』
行幸二人が覚悟を決めた時、空中から、正確に言うと天井から女性の声が聞こえた。
慌てて上も見上げる二人。すると、そこにはとても美しい天使が天井に張り付いていた。
『天使長様にちょっとおかしいとは聞いていたけど、これっておかしいというよりは変態だよな?』
「……………へっ?な、何だ!?」
驚愕する二人。蔑んだ目で見る天使。
『さっさと仕事を終わらせて戻ろう…気持ち悪い』
天使は大きな溜息をつくと、行幸二人の前にふわりと降りて来た。
続く
いきなり現れた天使。この天使は何者なのか!?そして行幸は結ばれるのか!?(え?)
というか…シリアス展開どこいった!?
※更新までまたちょっとお待ちくださいっ!