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どうしてこうなるんだ!  作者: みずきなな
【どうしてこうなるんだ!】
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第八話 【俺に訪れた悪夢②】

 すみれが店長に抱きついて制止した。

 店長は背中から受けた衝撃に手を止めると、その原因がすみれが抱き付いてきた事だと気づく。


「よかった…やっと止まったわ」


 菫が安堵の表情を浮かべていると、店長がきょとんとした表情で見る。

 店長は行幸が気を失っている事にはまったく気がついていないようで、なんで抱きつかれたのはまったく理解してない様子だった。


「す、菫? 何で俺に抱きついた? ま、まさか? ダメだ! 俺は店長でお前は店員だぞ?」

「変な勘違いをしないでください! 私はまったくもって店長に好意なんてもってません!」

「じゃあ何で俺に抱きついた? 抱きつくのは愛情表現じゃないのか?」


 普段の店長と違う、馬鹿な発想に菫は眉間にしわを寄せた。


「私は別に店長に抱きつきたくなかったんです。ただ、行幸を揺らすのを止めないから体を張って止めただけですから! だいたい、何で私が店長なんに愛情表現とかしないといけないんですか? ぶっちゃけ店長って私の好みじゃないしキモイわ!」


 真っ赤な顔で言い切った菫に、店長は納得のゆかないのか菫を睨んだ。


「おいおい、キモイとか酷くないか? 大体、俺はみゆきの意識が戻らないから揺らしてただけだぞ? そうしたらお前が突然抱きついて来たんじゃないか」

「あのですね? 店長が揺らし初めてからすぐにみゆきは気がついてたの! それなのに店長は揺らすのを止めないし! だから私はやめてほしいって事を懸命に訴えてたの!」

「な、なにぃ?」


 店長は菫にそう言われて慌てて行幸を見た。

 すると、行幸は真っ白い顔のまま白目を剥いていた。

 どうみても先ほどよりも状況は悪化している。


「ま、まったく気がつかなかった……」

「店長、しっかりしてよ! 何であんなに夢中になって揺すってたのよ!」

「あ、いや? あれ? 何でかな?」


 先ほどまでの馬鹿な反応していた店長から、菫の知っている普段の店長に戻っていた。

 しかし、行幸は店長に両脇をしっかりと掴まれて持ち上げられた気を失っていた。

 その姿は本当に糸の切れた操り人形。

 真横から見たら何かの対戦格闘ゲームでメイドの格好をしたキャラが、店員の格好をしたキャラに吊り上げ技か鯖折りか何かを喰らってKOされた姿にも見えなくもない。


「行幸っ!」


 菫は店長に抱えられたままの行幸を覗き込んだ。


「酷いよ、店長やりすぎだよ! 完全に気を失ってるじゃん!」


 すみれの瞳に涙が浮かぶ。


「も、もしかして俺のせいか?」

「もしかしても何も、どう考えても店長のせいでしょ!」

「いや、だから俺はただ起こそうとしただけでなんだけど?」

「だから、さっきも言ったけど行幸は店長に揺すられてからすぐに気がついたの! それなのに気がつかないで揺すりまくって気絶させたんでしょ!」

「え……すまん、揺らすのに夢中だったみたいだな」

「揺らすのみ夢中になるとか信じられないよ!」


 店長は流石に申し訳ないと思ったのか、肩を縮めて俯いた。

 菫は相変わらず涙を浮かべながら肩を震わせている。


「わかった。俺が責任もって行幸を起こす」


 店長は行幸を一旦床へと下ろすと、再び両脇を掴み直して持ち上げた。


「ちょ、ちょっと待ってよ! 何をする気? まさかまた揺らすとかないわよね?」

「ん? そのつもりだが?」

「ななななな、何を考えてるのよ!? 店長は行幸を殺す気なの?」

「殺すだと? 大丈夫だ! 今度は目を開けて揺らすから!」

「目を閉じてたの!?」


 また店長の雰囲気が変化した。屈託のない笑顔でとんでもない事を言っている。


「だめだったか?」

「だめだったかじゃないです!」

「そうか、うむ、ではこんどはきちんと目を開けてだな」

「駄目! もう揺らすの禁止です!」

「えっ? 何で?」


 菫は店長に抱えられた行幸にぎゅっと抱きついた。


「見てよ、こんな壊れたお人形みたいになっちゃって……今の行幸を強引に揺らしたら首の骨とか折れちゃう! 行幸は今は女の子なんだから!」


 店長は行幸の全身をじろじろと見た。


「確かに壊れた人形みたいだな。しかし、人間は気絶すると自己防衛のためか体が柔軟になって力が抜けるんだ。そうなるとそうそう簡単には骨は折れない状態になる。だがしかし、確かに関節を痛める可能性は否定出来ないかもしれないな」

「そんな蘊蓄うんちくはどうでもいいの! もうやめなさいって事!」


 店長は涙目で行幸を抱く菫をじっと見てニヤリと微笑んだ。


「そんなに大事なのか?」


 菫は急に顔を真っ赤にする。


「だ、大事って、そ、そ、そりゃ、バイト仲間だし?」

「なるほどな。菫に免じて今回はやめといてやろう」

「あ、ありがとうございます? って何で私がお礼なんか言わなきゃいけないのよ!」

「だが、うむ」

「?」


 店長は行幸を見てうんうんと頷いた。


「こいつ、本当に女になったんだな。すっごく柔らかい」

「えっ? えぇぇぇ!?」


 菫がハッとして店長の手の先を見た。

 すると、店長の手が行幸のふくよかな胸に若干かかっているじゃないか。


「ちょと店長! どさくさに紛れてどこを触ってるのよ!」

「何だよ? ちょっと胸に手が触れているだけだろ? これは不可抗力だ。俺はこいつを起こそうとしてたまたまこうなっただけだぞ?」


 まったく悪気の無い店長。


「それは言い訳ですよね? 店長! 店長はスポーツマンなのに言い訳するなんてダメだと思います! そう、店長は卑怯な男です!」

「なっ? 何だと!? それが目上の人に対して言う台詞か?」


 店長は菫を見下げながら重低音の迫力のある声で半分怒鳴るように叫んだ。

 普段の菫ならばここで店長に気押しされる。しかし、今日の菫はまったく違った。


「わかったわ! 店長は行幸のおっぱいに手が触れちゃったから、そっちに意識がいっちゃって起きたのに気がつかなかったんだ! へぇ、部下のおっぱいに夢中になってたんだ? この変態!」


 今日の菫の攻撃力は半端無い。ファンネルを搭載したガンタンク並に。(それって強いのか?)


「ち、違う!」

「なぜ違うって言い切れるんですか?」

「うぐっ…」


 店長はどう見ても動揺している。


「気を失った女の子の胸を触るなんて、やっぱり変態だわ!」

「待て待て! 俺は変態じゃない。考えてみろ! 行幸は男だ!」

「こんな時にだけ男だとか、なんて都合の良い言い訳なのかしら?」

「言い訳じゃない! 俺は事実を言っているだけだ!」

「真実って、じゃあ言い直します。今の行幸は女です。体も女の子なんです!」


 流石に目の前の行幸の状況からして言い返せなくなった店長。


「だ、だがな? さっきも言ったが、これは不可抗力であって、俺は変態じゃないんだぞ?」

「だから何で言い訳ばかり言ってるんです……か?」


 ふっと菫の表情から殺気が消えた。


 あれ? 何で私ったらこんなに興奮してるんだろ?

 いきなり心の制御が効かないみたいにムキになちゃってた。

 別に店長と言い合いするつもりなんてなかったのに。


 そして店長の表情もまた普通に戻っている。


「ど、どうしたんだ?」

「もういいです。店長が変態だろうが変人だろうが変質者だろうが犯罪者だろうが私には関係なかったです」


 しかし、冷静になっても言ってる台詞の酷さは変わらない菫さん。


「待ってくれ。どんどん俺の扱いが酷くなってないか? 犯罪者とか流石にないだろ?」

「気のせいじゃないですか? 別に気にしなくていいですよ? で、ちょっとお願いがあります」

「いや、絶対に気のせいじゃないと思うんだが? ってお願い?」

「はい。行幸を事務所のソファーまで運んでくれませんか? 但し、今度は胸を触らないようにお願いします」

「なっ? 俺はそんなに信用な……」

「無いですね」


 先読み即答。


「……いのか?」


 即答が早すぎて店長の言葉がついてきてなかった。


「見切り即答はやめろ!」

「さあ、私も手伝いますから」

「……(聞いてないし!)」

「店長、お尻に手が触れてる」

「う……」

「手つきがいやらしい」

「うぐぐ」

「店長自身もいやらしい!」

「じゃあ、お前が運べっ!」


 結局、店長と菫が一緒に気を失ったみゆきを事務所まで運んだ。



 ☆★☆★☆★☆★


 

「……行幸みゆき?」


 誰かが俺を呼んでる?

 あれ? 俺は寝てたのか?

 なんだろう、ひどく嫌な悪夢を見ていた気がする。 

 なんだったっけ? えっと…確か…

 そうだ! 俺が女になった上に酷い目に遭ってしまう夢だ!


「……行幸みゆき?」


 また呼ばれたぞ?

 ふう、よし、そろそろ起きなきゃいけない時間か。 


 行幸はゆっくりと目を開けた。すると視界には菫の姿があった。


「あれ? 菫? なにしてんだ?」

「やっと起きた……」


 少し瞳を潤ませている菫がほっとした表情を浮かべている。

 行幸にはなぜ菫がそんな表情なのか、まったく理解できてなかった。


「え? やっと? 起きたって? どういう意味?」


 行幸はゆっくりと周囲を見渡した。

 ここは暗くって窓の無いちょっと機械油の匂いのする個室。


 ああ、そっか、ここは事務所だ。

 俺はいつの間にこんな場所で寝ちゃったんだ?

 でも、何か胸やけがするなぁ。って、そういえば何かあったような?

 あれ? 何だったっけ? えっと? 思い出せない……。


「なぁ菫、俺って結構寝てた?」

「うん、三時間くらい寝てた」

「三時間? って今は何時だよ!」

「もうすぐ四時かな?」

「四時だって!? ってバイトが終わる時間じゃないか」

「そうだね」

「そうだねって、バイト中なのに何で俺はここに寝てたんだっけ?」

「え? 何でって? さっきあった事を何も覚えてないの?」


 菫は本当に記憶に何もなさそうな行幸を見て驚いた。

 普通ならあんな目にあったら覚えているはずなのに、現実逃避をするかのように行幸はあっけらかんとしている。


「えっ? えっと? 何かすっげー変な夢をみちゃったような気がする」

「夢?」

「そうそう、俺が女になっちゃう夢なんだよね。それで店長にメイド服を着せられてさぁ……マジで最悪な悪夢だったよ」

「み、行幸……」


 菫は小さく溜息をついた。


「菫どうしたんだよ?」 

「ダメだよ……ちゃんとしなきゃ」

「ちゃんとしなきゃ? どういう意味だよ?」

「現実逃避してても何も解決しないんだから!」

「現実逃避? 何だそれ?」


 そこまで言われても行幸は現実逃避を続けている。

 自分の格好を確認しないし、自分の声の違和感すら無視している。


「そりゃショックだと思うよ? 突然女の子になったりしたらさ、店長にメイド服を着せられたりしたらさ……」 


 行幸はゆっくりと自分の両手をあげて見た。

 前に浮いていた血管が浮いてない。そこには白くて綺麗な手があった。


「ゆ、夢じゃないのか?」


 声だって違った。違和感を無視してたけど、それでもやっぱり違う。

 今までずっと聞いていた自分の声じゃない。


「これって……」

「そうよ、行幸は女の子になった。それが現実なの」

「菫、鏡あるか?」


 菫は慌ててロッカーから小さな鏡を取り出した。中を覗く行幸。


「あはは……マジか?」


 そしてそこに存在していたのは。


「何だよこの格好? メイド服? それに何だよこの饅頭みたいなものは」


 行幸は慌てて自分の胸を触った。

 ふにゃふにゃと柔らかい感触が手に伝わる。それと同時に脳へと伝達される。胸が触られたって。


「や、やっぱりこんなの夢だ。俺が女になるなんてありえない。菫、夢から覚めるために寝るから。じゃあおやすみなさい」

「み、行幸!? 寝ても無駄なの! これは夢じゃないの!」

「いやいや、いくらなんでも男が女になるとか、どんなエロゲだよ」


 菫は苦笑する行幸の頬をつねる。

 すると頬に激しい痛みが走った行幸は思わず「痛いっ!」と声を上げた。


「夢でも痛みって感じたっけ?」 

「だから言ってるじゃない。これは夢じゃないって! 行幸は現実に女の子になって、店長にメイド服を着せられたんだから!」


 もう一度鏡を見る行幸。自分の手を見る行幸。

 そしてまだ信じられないような表情で自分を見た。そして顔がだんだんと赤くなる。


「うおぉぉぉおおぉぉおおぉお! う、嘘だろ? これは夢のはずなんだよ! そして、夢落ちをするはずだったんだ! そうだよ、最終回としては最悪の終わりパターンである夢落ちをあえてここで炸裂されるはずだったんだ……」

「落ち着いて! いくら騒いでも男に戻れる訳じゃないんだよ? 私も一緒に男に戻る方法をちゃんと探してあげるから! だからそんなに自暴自棄にならないでよ」

「ダメだって、俺はもうダメだ。夢だと信じてたのに……」

「だから私が一緒に男に戻る方法を探してあげるって言ってるでしょ!」

「夢だ、夢だ、夢であってくれ」 

「くっ……」

「あのさ、これってやっぱり寝て起きれば男に戻ってるって展開なんじゃないのか?」


 行幸は先ほどまで寝ていたソファーに再び横になった。

 すると強い視線を感じた。

 見れば菫が憤慨した表情になって涙目で行幸を睨んでいた。


「ねぇ、あんた元は男でしょ? だったら今の現実をちゃんと受け止めてよ! 私が一緒に男に戻る方法を見つけてあげるって言ってるでしょ! もう、なんでそんなになっちゃうの? 何でなのよ! 私だって辛いのに……私は行幸の事を……」


 その時、ガチャ! という音がして事務所の扉が開いた。

 そしてまったく空気を読んでいない店長が部屋の中へ入ってくる。


「お? やっと起きたのか?」


 行幸は店長の顔を見た瞬間に一気に記憶を取りもどす。

 店長に激しく揺すられた事を鮮明に思い出す。


「ん? どうした?」


 そ、そうだった。俺は店長に揺さぶられて気を失ったんだ。


「お、おい、何で行幸まで俺をそんなに睨んでるんだ?」

「思い出したよ……」


 その言葉に菫は涙目で笑顔を浮かべた。


「行幸っ!」

「ごめん菫、ちょっと俺おかしくなってた。でもって店長、よくも俺をふるふるゼリー缶みたいにシェイクしやがったな!」


 行幸はソファーから立ち上がると店長に一気に詰め寄った。


「あ、あれか? あれはみゆきを起こそうと思ってだな?」

「何が起こそうと思ってだ! ホントにマジで死ぬかと思ったじゃねーか! 三途の川が見えかけてたぞ! 急に視界が明るくなって記憶も飛んだんだぞ!」

「落ち着け、あれはちょっとやり過ぎたと俺も思ってる。謝るから落ち着け」

「許さない! 絶対に本気で悪かったと思ってないだろ!」

「思ってるから言ってるんだろ? ほら、みゆきが寝てた時間もちゃんとバイト時間で換算してバイト代金は出してやるから」

「そんなに当たり前だろ! バイト代金が貰えなかったらこんな店になんか!」

「こんな店になんか?」


 行幸が固まった。そして怒りの表情から困惑した表情へと変化する。


 し、しまった……バイト代が無いと生活がやばいんだった。


「い、今まで通り働きます」


 働かざるもの食うべからず。働かないと生きていけない。

 行幸は現実をつきつけられて選択肢を失ったというか、最初からなかった。


「ファイトだよ、行幸、私も応援してる」


 菫は行幸の肩をぽんぽんと軽く叩いた。


「大丈夫だみゆき。お前はここでずっと働いていい」

「あ、はい、これからも宜しくお願いします……」


 自分の情けなさに涙も出てきそうだが、実際には店長も嫌いじゃないし、店だって嫌いじゃない。

 衝動のまま辞めるなんて言えるはずもなかった。


「で、あれだぞ?」


 頬を赤くして照れくさそうな態度にかわった店長。それを見て表情を険しくする菫。


「あれ? あれってなんでしょう?」

「あれだよ、もしもさ、一生女のままだったら、あれだ、一生俺の元に就職してもいいんだからな?」

「はい、その時はよろし……くないだろ! 馬鹿か! 何だそれ! プロポーズかよ!」

「そうだな、そうとも言う」

「ば、馬鹿なのか? 俺は男なんだぞ? 一生戻らないとか想像もしたくない!」

「そ、そうよ! 行幸は戻るんだから」

「いやいや、もしもを考えて、保険だと思っておいてい」


 店長が相変わらず狂ってる!?


「そ、それでもお断りだ!」

「チッ」


 何で俺が店長の嫁になる未来があるんだよ? なさすぎるだろ。そして舌打ちされた?


「しかしお前の体は本当に柔らかいな」


 気が付けば、店長が自分を舐めまわすように見ているジャマイカ。

 思わず背筋がゾッとする。


「そ、それはどういう意味だよ?」

「店長、それは行幸の体じゃなくって胸がでしょ? 行幸、気をつけた方がいいよ? 店長は変態だから」


 菫は店長をすっごく冷たい視線で見た。


「店長? まさか俺の胸に触ったとかないよな?」 

「え…いや? ごちそうさまでした?」


 よく見れば店長の視線がまたもや行幸の胸にロックオンされてる。

 行幸は咄嗟に両胸を両手でしっかり隠した。

 だけど溢れる。今の行幸のおっぱいは思った以上のボリュームがあるのだ。


「み、見るな変態!」

「そうよ! 見るな変態!」


 菫と行幸のダブル変態攻撃にも屈しない店長。


「俺は変態じゃない。男は自然と視線を女性の胸に持ってゆくものだ。行幸だってわかるだろ? それにさっき菫が言っていた事だが、あれは行幸を起こそうとした時にちょっと、本当にちょっと触れただけだ。よって不可抗力に決定されている」

「何が決定されているよ! 店長はふくよかな行幸の胸に触れたせいで意識がそっちにいっちゃったから、行幸の声に気がつかなかったんでしょ?」

「げ、マジ? 俺が懸命に訴えかけても揺れが収まらなかったのはそういう事なのか?」

「いや、だからそれはだな?」

「菫に胸を揉まれるわ、店長に触られるわ、揺らされて気を失うわ、俺はお前らのおもちゃか!」

「……」


 店長と菫が苦笑しながら固まった。


「おい! 否定できるならしろよ!」

「すまん、正直、ちょっとだけおもちゃだったかもしれないな」 

「いや、肯定すんなよ!」


 店長がゆっくりと行幸の前までゆくと、いきなり手を取った。


「な、何だよ?」

「行幸、よかったら一生俺のおもちゃになってくれないか?」

「変な告白するなぁぁぁ!」 


 紳士的だけど変態な告白に行幸の顔は真っ赤になった。って何で照れる?


「ば、馬鹿店長! 何やってんのよ! そんな事を言ってるとまた行幸が放心状態になっちゃうかもしれないでしょ! あのね行幸、本当にごめんね。私達が悪かったわ」


 菫は本気で謝ってきているように見えたが、コロコロ態度のかわる二人がちょっと信じられなくなっている行幸。


「どうせお前も俺の事をおもちゃみたいに思ってたんだろ?」

「え? 違う! 違うわよ!」

「違うって言われてもそんな簡単に信じられるか!」


 行幸はついに怒鳴りながら菫を睨んだ。

おまけ情報

みゆきの出身地は何処なのか? 答えは埼玉県です。

え? 近いのになんで両国に住んでいるのか?

それは家にいると自由にパソコンが出来ないからというのと、埼玉は埼玉でもちょと遠い所だからです。

まぁ結局一番は自由にパソコンが出来ない(MMOが)って事ですね。

あと、小説に出てませんけど妹がいます。現在高校3年です。

妹はMMOなんか興味なくってパソコン=オタクっていう偏見の目で見ている女の子です。

しかし、行幸みゆきは決して妹に嫌われていた訳ではありません。

という事で今回はこの辺で…

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