第八十話【俺達の恋愛模様Ⅴ】
どうしてこうなるんだ!の題名通りの、どうしてこうなるんだ!的な展開が今はじまるかもしれない?(なぜ疑問符)
…うーん。
行幸はゆっくりと瞼を開いた。
ぼやけた視界にとび込んできたのは大きな広い空間。
あれ?ここは何処だ?何で俺はこんな場所で寝てるんだ?
行幸は右手を額に当てて考えた。
そ、そうだ!あの訳のわからない天使に「場所を移動する」とか言われて!
すぐに思いだした行幸。慌てて首を左右に動かして周囲を見渡して場所を確認する。
周囲の壁はすべてが石造りで天井も石造りの構築物の中に俺は倒れている。
そして、床には赤い絨毯じゅうたんの敷き詰められている。ってここは何処だ?見た事ある気がするけど…
また考える行幸。そしてまたすぐに思い付く。
そうだ、ここはリリアの創った魔法世界だ!
行幸はまるで遅刻しそうでいきなり目が覚めたような勢いで起き上がった。
そして、起き上がる途中で何か自分に違和感を感じる。
「あれ?えっと…何か足元がすーすーするんだけど…」
慌てて自分の格好を確認する。
すると、黒を基調としたドレスっぽいものを着ている。もちろん足はモロに出ている。すーすーするのはそのせいだ。
「待て…これって!」
そう、行幸はメイド服姿だった。
それだけじゃない、よく見ればメイド服の中に着込んでいるブラウスが真っ赤に染まっているじゃないか。いや、メイド服も黒で目立たないが、液体がついている。
行幸はゆっくりと服についている液体に手を伸ばした。まだそれは乾ききっておらず、ぺたりと手につく。
どろっとして、そしてぬめぬめしている液体。
それをゆっくりと鼻先に持ってくると、生臭く鉄っぽい匂いがした。
こ…これって血だよな?…まさか?
そう、この液体の正体は血だった。
よく見れば、足元の絨毯には血だまりの後が残っているじゃないか。
行幸は思い出す。この血だまりの後も記憶にある。
そう、これはシャルテに空中から急降下させられて殺された時に出来たものだ。これはあのシーンの続きだ。
ハッとして再び周囲を見る。
確か、先ほどまでは誰も居なかったはずの床。なのに、今は左には幸桜が。そして、右には菫が倒れている。それも二人ともメイド服姿ときたもんだ。
何時の間に二人が?それに、何でこの世界に来るとメイド服になるんだよ…
行幸は頭を抱えながら幸桜達を見た。
すると、幸桜達の頭に何かがついている事に気がつく。
それは、人間が飼っている愛らしい動物についているもの。
ぴんと立てて「にゃんにゃん」なんて言うと、すごぶる萌えるもの。
そう、それはネコ耳!
ネコ耳?だと?ま、まさか…何故ここでネコ耳!?って!俺の頭にも!?
行幸はゆっくりと手を伸ばして自分の頭上も確認した。
するとあった。三角形の耳らしき物体が頭に乗っているじゃないか。それもしっかりと二つ!
俺の頭にもネコ耳!?
引っ張って取ろうとしたが、何故か取れない。
おいおい!ちょっと待てって!何で取れないんだよ!
その時だった、おしりにも違和感を感じる。
何かこう…ついてる?尻に何かがダイレクトについてる!?
メイド服にネコ耳とくれば…その違和感の物体は、容易に想像がついた。そう、それは…
手を伸ばすとそれがついていた。細くて長いもの。
何でこんなもんがついてるんだよ!
幸桜と菫も確認してみる。
俺についているならきっとこの二人にもついてるはず。
二人とも仰向けで寝ているので、はっきりと見えている訳じゃない。が、った。スカートの脇からちょこんと先っぽが見えている。はい、尻尾のね。
何で俺達が猫メイド姿なんだよ!
「おい、誰かいないのか!」
行幸は顔を真っ赤にして叫んびながら周囲を見渡した。
すると背後に何者かの気配を感じる。行幸は緊張した趣で慌てて振り返る。
『ほう、なかなか可愛いではないか?』
そこには一人の少女が腕を組んで立っていた。それは雨合羽の少女。あの訳の解らない天使だ。
しかし、その天使の姿までもが雨合羽じゃなくなっている。
何故だ!何故にお前までネコ耳メイド服なんだよ!?
『ん?いいじゃろ?可愛いじゃろ?どうじゃ?私も似合っておるか?』
ルンルンと頭の上に出てそうな程に笑顔の天使。
そんな天使を見て行幸は思う。
ぶっちゃけ似合ってる。だけどな、今はそんなの関係ないだろうが!
「おい、お前がネコ耳メイド姿が似合ってるとかどうでもいいんだよ!そんな事より、ここは魔法世界だよな?リリアの魔法世界だろ?」
『そうじゃ。その通りじゃ。ここは魔法世界。しかし、それよりももっと重要な事があるじゃろうが』
「何だよ」
『私にメイド服姿は似合っておるかどうかじゃ!』
それの何処が重要なんだ…
「待て…それのどこが重要なんだ?似合ってる似合ってないなんて重要でも何でも無いだろ?それよりも言えよ…早く話せよ。さっきの続きを聞かせろよ。その為に俺をこの世界に呼んだんだろ」
『私にとっては需要なのじゃ…似合っておるかどうかくらい言ってくれても良いではないか…罰はあたらんと思うのじゃ…』
体をくねくねとしながらカワイコぶる天使。マジでこの天使は何なんだ!
「そんなのどうでもいいだろ!俺は早く話を聞きたいんだよ!」
『ど…どうでもいいじゃと?ひ、ひどいのじゃ…乙女は傷ついたのじゃ…』
シュンと肩を落とした少女。
涙目の上目づかいで行幸を見た。
その仕草にちょっとドキっとしてしまった行幸。おまけに罪悪感まで沸いてくる始末だ。
って!なんでこんな奴にドキっとしてんだよ!
ずっと潤ませた瞳で行幸を見ている少女。
流石にそんな表情でずっと見られているのはたまったもんじゃない。ついに行幸も折れた。
「に、似合ってるよ………これでいいのか?」
行幸は顔を左に反らしながらそう言った。
『最後のこれでいいのか?が余計じゃが、まぁ良いか』
あっと言う間に普通の表情に戻る少女。
「なんだよ!嘘泣きかよ!可愛い顔して騙しやがったな」
『んっ?なんじゃ?もしかして、私の涙目にキュンキュンしたのか?』
「するか!っていうか早く聞かせろって言ってるだろ!」
行幸が怒鳴った瞬間だった。大広間に『天使長様!何をなされてるのですか!』っと、いきなり女性の声で響く。
行幸はすぐに反応して声の方を向く。すると、リリアが焦った表情で走って来ているじゃないか。
「リリア?えっ?って、今なんて言った?こいつが…て、天使長だと!?」
『なんじゃ?リリアめ…もう来たのか?あの仕事量をこんな短期間に終わらせるとは…出来た天使すぎてつまらんの』
『天使長様!私に急用だと言って、大量の書類整理を頼んだと思ったら…いったい何をされているのですか!』
『何をと言われてものぉ…まぁ、リリアも来たことじゃし、取りあえず能力を復活させておくのじゃ』
少女は、いや天使長と呼ばれたその女性は空中に右手を翳した。
すると、その手にはピンク色の傘が現れる。
『行幸っ!今からお着替えシーンなのじゃぞ?』
ウィンクをしながらそう言った天使長。
「へっ!?」
行幸はちょっとドキっとした。
『へんしーん!』
傘をバッと開いた天使長。男性の本能で目を凝らす行幸。しかし天使長はいきなり閃光に包まれた。
行幸はあまりの眩しさに。慌てて右手で光を遮ろうとする。
しかし、閃光弾のように輝くその光は右手くらいでは防ぎきれなかった。簡単に目を凝らしていた行幸の視界を奪う。
そして、行幸はラピュ○の某キャラのうように両手で顔を覆った。
「目がぁ!目がぁ!」
『目がどうしたのじゃ?今、ちょうどお着替え中じゃぞ?』
「何がお着替え中だ!眩しすぎて何も見えないだろうが!」
ついつい本音を叫んでしまう行幸。
そして…しばらく時間が経過した。
やっと、ちかちかする目が慣れて見えるようになってくる。
「くそ…何で着替えシーンであんな光を放つんだよ…」
不健全な文句を言いながらゆっくりと手を退ける。
行幸さん、あんたの目的は着替えシーンを見る事じゃないだろ?
視界が戻った行幸。
そんな行幸の視界には、紺色のメイド服姿の、大きくて美しい白い翼を広げた少女の姿が飛び込んで来た。
その頭上では黄金色の輪が輝き、天使だという事を証明している。
『天使長様!何をされているのですか!』
そこへリリアがやっと到着。
「リリア…」
『こんにちは、行幸さん。なんて挨拶をしている暇なんてありません!』
いや、挨拶してました…
「ちょっと、リリア聞いてもいいか?こいつがマジで天使長なのか?」
『えっ?』
ちらりと天使長を見るリリア。
『うむ!一応はそういう事になっておるぞ?』
天使長は胸を張った。
『何が一応ですか!一応もなにも、貴方は私達のトップ、リーダー!恋愛を司る天使を束ねる天使長様ではないですか』
『まぁまぁ、リリアもそんなにカリカリするでない。もしや、生理中か?』
『て、天使長様っ!』
リリアの顔が真っ赤になった。
…えっ?天使も生理がくんの?なんて行幸まで顔を赤くする。
とても不要だけど、レアな情報をゲットしました。
『さて…』
天使長は満面の笑みで行幸にいきなり駆け寄る。
ハっと驚く行幸だったが、天使長は行幸の腕をぎゅっと持って確保成功。
天使長の殆ど無いであろう貧乳がぎゅっと腕にあたる。
「な、何をやってんだよ!」
天使長は焦る行幸の瞳をぐっと見ると言った。
『行幸よ、知っておるか?どんな貧乳であってもな、このようにぐっと腕に押し付けると…その存在をしっかりとアピールする事は可能なのじゃ!』
行幸の腕には確実にふにゅんとした柔らかい感触が伝わった。
「ちょ、ちょっと待て!この世界に俺が呼ばれた理由が本気で行方不明になってるだろ!おいおい!一体、何の為に俺はこの世界に来たんだよ!っていうか離せ!」
慌てて離れる行幸。耳まで真っ赤だ。
『天使長様!?な、何をされているのですか!?天使長様が人間に関わるなど、許される事ではありません!』
リリアは天使長を無理やり行幸から引き離した。
『硬いのぉ…もうここまでお主ら、リリアやシャルテに関わておるのじゃぞ?今更私がどうこうしようが、もはやそういう問題ではない。そして…こいつの反応は楽しい。だから遊んでいただけなのじゃ』
『駄目です!遊ばないでください!』
『なんじゃ?やきもちか?』
そう言って楽しそうに笑う天使長。顔を真っ赤にするリリア。そして行幸は自覚する。俺はこいつが超苦手だ…
『そうじゃ!さっき行幸のメイド服を新品にしておいてやったぞ?』
「えっ?」
見れば確かに、血まみれのメイド服が新品になっている。
しかし、これに何の意味が…
『やっぱり、女の子は身だしなみが重要じゃ』
「イヤ待て!俺は男だ」
『しかし、今は女じゃ』
天使長は楽しそうに笑った。
マジで俺、こいつ苦手だ…
その時。「うーん」と声が耳に入って来る。
幸桜と菫がほぼ同時に意識を取り戻しのだ。
二人は頭を抱えながらゆっくりと体を起こす。そして…
「な、何!?ここは何処?何でメイド服姿なの!?」
「ひゃっ!?何があったの?どうなってるの?私はどうなったの?もしかして死んじゃった?」
二人は大パニックに陥った。
そして、このあと大変な事になりました。
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現在、天使長とリリアと行幸が、幸桜と菫に事情を説明しております。しばらくお待ち下さい。
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と言う事で続く。
さて、今日は久々にゲストの登場です!
天使長様、どうぞ!
天『うむ、私が天使長じゃ』
み「さて、早速質問です」
天『なんじゃ?』
み「その話方なのですが、○○じゃとか、そういう台詞を言う人は、妾とか普通は言うと思うのですが、何故に私なのですか?」
天『私が私で何が悪いのじゃ?』
み「いや、あれです。ちょっと違和感ない?」
天『気にしたら負けなのじゃ』
み「きっと読者の皆さんも気にしてますよ?」
天『うーむ…あれじゃ…私は普通に話すと、こう…後から出たキャラじゃし、存在感があれじゃろ?』
み「もしや…わざと?」
天『なんじゃ!悪いのか!悪いのか?私だって読者にインパクトを与えたいのじゃ!』
み「インパクト?」
天『そうじゃ』
み「じゃあ…簡単な方法が」
天『なんじゃ?』
み「全裸キャラになれば良いと思うよ?☆ミ」
この後、作者の姿を見たものはいない…