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どうしてこうなるんだ!  作者: みずきなな
【どうしてこうなるんだ!】
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第七十八話【俺達の恋愛模様Ⅲ】

人間って結構後先を考えないで行動する時ってありますよね?私もそうなんです。

よしっ!って覚悟を決めて言い放ったとしても…その後を考えていなかったり。

コメディー要素よ、何処行った?そんな感じで続きをどうぞ!

 ついに行幸みゆき幸桜こはるすみれに恋愛対象者だと打ち明けた。


 行幸みゆきの手には嫌な汗が滲む。心臓はドキドキと脈打つ。

 後悔先に立たず。そんな言葉が脳裏に浮かんでくる。


 …解ってるよ…解ってるんだ。

 本当は二人に恋愛対象者だなんて打ち明けるべきじゃなかって事は。

 この二人に変に意識させるのは良くない事だし、恋愛対象者なんて、言われなきゃわからない事なんだからな。

 でも、幸桜こはるのせいですみれが恋愛対象者だとバレた。

 二人にばらさすに結果を出せればベストだった。けど仕方無い。

 後から幸桜こはるにもバレて泥沼より、俺から先に言ってしまって、それから一気にケリをつけるしかないだろ。

 って…考えてたんだけど…な…くうう。


 浮かぬ顔の行幸みゆき

 覚悟を決めて言い切ったはず。結果を出すという決心はした。

 しかし、ここで行幸みゆきの詰めの甘さが出た。


 で…これからどうすればいいんだよ…おい…


 打ち明けたは良いが、これから先の事をまったく考えていなかった。

 マジで詰めが甘い行幸みゆき

 エロゲームでも、攻略しようと目論んでいた女の子のルートに入ったと思い、余裕でプレイしていると、その子以外のルートに突入してたりする。これもこの甘さからだろう。


 行幸みゆきの額から冷や汗が出る。

 考えが纏まらない以前に、どうすればいいのかが解らなくなっていた。


 行幸みゆきが言い切ってから十秒が経過。

 幸桜こはるが「くっ」っと息を吐くと、すみれの腕を放して行幸みゆきに迫り寄る。


「ねぇ行幸みゆき!それってどういう事なの?私が恋愛対象者って何なのよ!」


 納得出来ない表情で、少し怒りの感情を込めて行幸みゆきに迫る幸桜こはる。 


「だ、だから、お前も恋愛対象者なんだよ…」


 気迫に押されてか、行幸みゆきは一歩後退した。

 すると、幸桜こはるの顔が曇る。そして瞳が潤む。


「嘘だ…絶対そんなの嘘だ」


 小さく首を振りながら幸桜こはるは俯いた。


「嘘…じゃないからな…」


「だって…じゃあ、何で私の告白を受けてくれなかったの?やっぱり私は行幸みゆきにとってはただの妹でしかなかったの?」


 恋愛対象者なのに既に受け入れて貰えてないと思い込んだ幸桜こはるは、瞳に涙を浮かべながら言った。


「あれだぞ、告白をされた時は、まだ幸桜こはるは恋愛対象者じゃなかったんだからな」


 行幸みゆきは本当の事を言った。が、しかし、幸桜こはるはまったく信じてない様子で顔を覆うとその場に崩れ落ちてしまった。


「嘘だよ…絶対に嘘だ…そんなの信じられる訳ないじゃん…私はどうせ行幸みゆきにはただの妹なんだ…」


 背中を丸めて地面にへたり込んだ幸桜こはる

 今まで頑張って強気でいた分の反動が一気に来た。

 そして、震える声と背中を見れば落胆している様子が一目でわかる状態になっている。

 行幸みゆきはそんな幸桜こはるの背中に手を当てると、フォロするように言う。


「嘘じゃない!お前が告白した時には本当に恋愛対象者じゃなかったんだ」


 幸桜こはるから言葉はなく、背中は小刻みに震えている。


「おい、思い出せって!幸桜こはるには恋愛対象者は二人だって教えてただろ?ほら、考えてみろよ。お前があの時に恋愛対象者だったら対象者は三人になってるはずだろ?」


 幸桜こはるはゆっくりと顔をあげる。顔は涙でぐちゃぐちゃになっている。


「じゃあ…嘘じゃないの?」


「嘘じゃないって言ってるだろ?」


 遠めで二人のやりとりを遠目で見ていたすみれ

 その表情は暗く、落ち込んでいるようにも見える。

 実際に、すみれは自分が恋愛対象者だと解り嬉しい気持ちが溢れていた。しかし、幸桜こはるが恋愛対象者だと解った事と、そして、この行幸みゆき幸桜こはるに対する優しい対応に複雑な心境になっていた。

 そんな事も気が付かずに行幸みゆき幸桜こはると話をする。


「最初の二人はフロワードとすみれだからな?」


「ねぇ、じゃあ、何で私は恋愛対象者になれたの?」


 幸桜こはるは可愛く首をカクリと首を傾げた。


「あれだ…お前は元々から恋愛対象者候補だったらしいから…それであれだろ…お前と色々あったし、それでまぁ、お前は俺の対象者になったらしいな」


「あっ…もしかして私のファーストキスが原因とか?」


 そう言いながらそっと自分の唇を右手で触った幸桜こはる

 そして、【キス】という単語にすみれがピクンと反応した。

 すみれは「えっ?」っと驚きの表情になったかと思うと、すぐに険しい表情になる。そして、幸桜こはると話をしている行幸みゆきに迫って行った。


「ねぇ!行幸みゆき!キスってどういう事なのよ!」


 真っ赤な顔で行幸みゆきに向かって怒鳴るすみれ

 流石にキスはすみれにとって想定外だったらしい。


「えっ?いや、待て!これには色々な事情があってだな!」


 すっかりすみれを蚊帳の外にしていた行幸みゆきは、今更あせりまくる。

 そして、あわふたと弁解を始めた。

 しかし、それを見ていた幸桜こはるは、すみれに対する攻勢の好機だと感じて、すみれに向かって大きな声で言った。


「私のファーストキスの相手は行幸みゆきなんだから!」


 すみれの目が点になる。と思ったら、今度はいきなり涙目になった。そして最後には怒り始める。

 なんとも喜怒哀楽の激しいすみれ


「な、何よ!実の妹が恋愛対象者とか変態だわ!も、もう行幸みゆきなんて嫌いだから!」


 すみれはまた顔を真っ赤にして行幸みゆきに向かって怒鳴った。

 それを聞いた幸桜こはるはさっきまで泣いていたとは思えない程のハイテンションですみれを畳み掛けようとする。


「そうだよね!妹が恋愛対象者だなんて変態だよね?やっぱりすみれさんには行幸みゆきは勿体ないよ」


 しかし、すみれはその言葉で逆に冷静になった。幸桜こはるの魂胆を感じ取ったからだ。


「駄目っ!やっぱりさっきのは撤回!」


「えっ?撤回しなくていいよ!だって事実じゃん。私にキスをして恋愛対象者にしちゃったんだよ?妹をだよ?やっぱり変態でしょ?」


「何かがおかしいわ。絶対に何か裏があるんでしょ?だって、妹が恋愛対象者なんて普通にアリエナイもの。何か深い事情がきっとあるのね。そうだ、教えて行幸みゆき。何があるの?」


 MMOでもリアルでも、パニックになりやすいすみれがここでは冷静だった。

 幸桜こはるは策略がうまくゆかず、悔しそうに唇を噛みながらと立ち上がる。


すみれさん。でもね、行幸みゆきはネカマでネットゲームとかプレイして女にされたんだよ?それに、妹の私とキスしたんだよ?あと、男も恋愛対象者になってたんだよ?そんな人の何処がいいのよ?」


 それでも、すみれに向かって行幸みゆきの駄目さをアピールする幸桜こはる。しかし、すみれは真に受けない。


「何でそんなにムキになって、私に行幸みゆきを嫌いにさせようとするの?ねぇ幸桜こはるちゃん?何で?」


 幸桜こはるは言葉に詰まった。それでも懸命に言い返す。


「だ、だから、私はすみれさんの為を思って言ってあげてるんだよ?行幸みゆきなんかよりいい人がいるはずだよ!だから、すみれさんは新しい恋を探せばいいんです!」


 行幸みゆきはと言うと、無言で女の壮絶なバトルを見ていた。


 幸桜こはるが酷い事を言ってすみれに俺を諦めさそうとしているけど…ある意味、それって逆効果だよな。

 幸桜こはるが俺をけなせば貶す程、すみれは俺を諦めたくないってオーラが出てる。

 しかし…これってどうなるんだ?俺はこんな悠長に見ててもいいのか?

 でも…まぁ…触らぬなんとかに祟り無しって言うしな。

 女の戦いは傍観が一番だ…なんて逃げていた。


 ヘタレの行幸みゆきはやっぱりヘタレだった。


幸桜こはるちゃん…」


「な、何ですか?」


「私ね?」


「はい?」


 すみれ行幸みゆきを横目で見た。行幸みゆきもそれに気がついてすみれを見返す。

 夕暮れの薄暗い秋葉原の路地でも行幸みゆきにはすみれの瞳が何故だかはっきりと見えた。

 すると、視線があったすみれは嬉しそうにニコリと微笑み返す。


 その微笑みに「ズキューン」と胸を打ちぬかれたような感覚に襲われた行幸みゆき

 自分の意志とは関係なく心臓は強く鼓動を始め、そして、顔が熱くなっていった。


 すみれの微笑みは今までに行幸みゆきが見たどんな微笑みとも違った。

 今回の笑みは、とても優しい微笑み。そして何かを決めたような笑みにも見えた。


「こんな所で言うのは可笑しいって思うけど…」


 すみれは再び行幸みゆきの方を向く。そして見詰め合う二人。

 それを見て何か不安を感じた幸桜こはるは、慌てて二人の間に割り込もうとする。


「な、何が可笑しいんですか!」


 幸桜こはるが割り込んでもすみれは動じなかった。

 行幸みゆきは真っ赤な顔のまま、息を呑んですみれの瞳を見る。

 すみれはちょっと照れくさそうに少し顔を俯けると、ぽっと頬が紅色に染まった。そして、ゆっくりと顔を上げる。


「あのね…今更だけどさ…私、言うね?えっと…もう知ってると思うけど、私は行幸みゆきが好きです。ずっとずっと前から好きでした…」


 すみれは耳まで真っ赤にして口を押さえた。

 焦る幸桜こはると動揺しまくるの行幸みゆき


 行幸みゆきは思わず胸を押さえた。ドキドキとさっきよりも強く心臓が鼓動している・

 すみれが自分を好きなのは知っていたが、まさかここで告白なんて思っていなかった分、動揺は凄まじい。


「だ、駄目!すみれさん!待って!駄目!駄目だって!」


 幸桜こはるは別の意味で顔を赤くして両手を振りながら叫んだ。

 そんな慌てる幸桜こはるに向かってすみれが言う。


幸桜こはるちゃん。いくら私に向かって行幸みゆきの悪い所を言っても無駄だからね?私はどんな行幸みゆきでも好きなんだから」


 その一言で幸桜こはるは悔しそうに唇を噛んだ。そして頬を膨らませながら涙目になる。


「わ、私だってどんな行幸みゆきだって好きだもん!ずっと前から好きだったんだから!すみれさんよりずっとずっと…好きなんだから…」


 行幸みゆきは動揺しつつも状況を理解しようと考える。

 え、えっと…これがいわゆる修羅場って奴なのか?

 修羅場ってどうやって切り抜ければいいんだ?

 ここで俺に二人が迫ってきたら、俺はどう対応すればいいんだ?

 やばい、これはやばい…思考ルーチンが働かない!

 これは冷静にならないと…と、とりあえず落ち着こう。

 全てが俺の予想外の展開だが、ここは落ち着かないと駄目だよな。


 行幸みゆきは深呼吸をした。

 そしてすみれ幸桜こはるはと言うと?


「ねぇ、幸桜こはるちゃん?」


「な、何ですか!」


幸桜こはるちゃって…本当は行幸みゆきと血が繋がってないんじゃないの?」


 せっかく深呼吸をしていた行幸みゆきだが、ここで思いっきり吹き出した。

 そして、幸桜こはるすみれの言葉に絶句する。


「な、何で解ったんだよ?」


 思わず行幸みゆきはそう聞いてしまった。

 すみれはその一言で確信したのかニコリと微笑んだ。


「だって、恋愛対象者って恋人候補って事だよね?そして、結婚する可能性だってある訳でしょ?そう考えると、血の繋がりがあったらオカシイって思ったの。それに…普通に考えれば兄妹の恋愛なんてありえないもの」


 なかなか鋭いな、こいつ…


「あと、天使が近親相姦をOKするとか…無いよね?」


「うーん…まぁ…そうなのか?」


「でも…そっかぁ…ふーん…そうだったんだ」


 すみれは硬直する幸桜こはるの方を向いた。


「そっか、じゃあ幸桜こはるちゃんは行幸みゆきの義理の妹って事になるんだね?」


 幸桜こはるは泣きそうな顔で唇を噛んでいる。


すみれ、実はな?俺はつい最近まで、幸桜こはるは本当の血の繋がった妹だと思ってたんだ」


 行幸みゆきの一言にすみれは驚く。


「そ、そうなの?」


「そうも何も…最近というか、知ったのは昨日なんだけどな」


「えっ?ちょっと待って?じゃあもしかして、恋愛対象者になったのも昨日?」


「そうだ。昨日だ…」


 すみれも絶句した。


 そして、無言になった三人。

 ここにすばらしく居心地の悪い空間が完成しました。

 誰も話さない。誰も移動しない。誰も動かない状況。

 行幸みゆきはこの状況を打開すべく考え始める。


 何だこの状況は…これはどうすればいいんだ?このままじゃ収拾がつかないよな…

 これって…もしかして、俺がこの場でどっちかに告白するフラグだったり?

 い、いや待てよ?ただ告白しても、もう片方が簡単に諦めるようには思えない状況だよな?それに、俺も本気で告白が出来る状況じゃない。

 確か…そうだよ。俺が本当に好きにならないと、本当の恋人として認めてもらえないはずだ。

 だから、無駄に告白しても結果女のままっていう最悪の事態があり得る訳か。

 でも…じゃあどうするんだ?


 行幸みゆきが真剣に悩んでいると、自分の胸がつんつんとつつかれる感じが伝わってきた。


「へっ?」


 行幸みゆきは慌てて視線を下げる。するとそこには小学生くらいの女の子が立っているじゃないか!

 その少女は肩まで伸びた黒髪に黒い瞳で、雨でも無いのに何故か青い雨合羽を羽織っていた。もちろん靴は長靴だ。


「こ、この子は何なんだ?」


 この子はいつの間にここに!?

 行幸みゆきは混乱する。確かにさっきまではこんな子は居なかった。


「うむ!なんとも面白い奴じゃな!」


 女の子はそう言うと、満面の笑みで行幸みゆきを見た。


 いや、えっと?何時の間に居たなんて今はいい。取りあえず、この子をどうにかしないと…


「えっと?もう暗いけど、お母さんはどこかに居るのかな?」


 行幸みゆきは苦笑を浮かべながら女の子にそう問うと、女の子は溜息をつく。


「まったく…いきなり子ども扱いとは酷いのぉ」


 いや、子供だから子供扱いが普通だろ!と、心の中で突っ込む行幸みゆき


「えっと?子供扱いの前に子供だよね?あのね?冗談を言ってなくていいから、もうお家に帰った方がいいと思うよ?」


 女の子は唇をつんと尖らせると、右手を斜め上に伸ばしてくるっと振った。

 すると、何も持っていなかったはずの右手には赤と白のストライプのステッキが現れたじゃないか!


「えっ!?魔法?」


 驚く行幸みゆき


「まったくもって不愉快じゃ。そうか、大人になれば良いのか?それで満足か?」


 少女はそう言うとステッキを頭上でくるくると回し始めた。


 続く

ここに来て新キャラだと!?

作者は何を考えているのだろう?あっ、私が作者だった。

そして今週も一話更新です。更新ペースが遅くってすみません…

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