第七十六話【俺達の恋愛模様Ⅰ】
ちょっとBLっぽい展開だぞ?いいのか?いいのか作者!はい、私は全てを受け入れます…と、作者の意見は無視でOK!しかし、行幸よ!女心が解るとは…はい、続きをどうぞ!
行幸は顔を真っ赤にしたまま頭を抱えた。
な、何で俺は店長を相手に胸キュンしてんだよ!くそっ!こうなったのも店長が優しすぎるんだ!男前すぎるんだ!
自覚は無いのか?女になって気が付いたけど、店長の優しさって天然なんだよ…きっとこの優しさで数々の女性陣の気を引いてるんだろうな…
やばい…何だか俺、ちょっと女の気持ちが解ってきてる…早く男に戻らないと危険な香りが…うわぁあ!
頭を抱えてぶるぶると悶える行幸。
「お、おい!どうしたんだ?落ち着け!」
「て、店長の責任ですからね!」
行幸は真っ赤な顔で店長を睨んだ。
「お、俺の責任?どういう意味だよ?」
店長はちょっと動揺しつつも不思議そうに首を傾げた。
「お願いだから、早く彼女をつくって下さい!」
「えっ?彼女だと?どうしてそうなるんだ?」
「じゃないと俺が安心出来ないから!」
「どうして行幸が安心するんだ?」
店長はやっぱり自分の優しさと男らしさに気が付いてなさすぎる。
天然ジゴロなのか?そうだ…前に店長がラガーマン?喫茶とか怪しい店に誘われてるって言ってたよな?何か妙に納得出来る。店長がいれば流行る気がする…
もったいない…何でこれでリアル女に興味が無いんだ!
「ゴメンナサイ…もうほって置いていいです。どうしてこうなったかはあまり深く追求しないでください…」
「…まぁ…何だかよく解らないが…解った。追求はしない。だから落ち着こうか?さぁ、行幸…目を閉じて…」
行幸は店長の言う通りに目を閉じた。
「よし、まずはゆっくりと深呼吸をしてみよう。はい、吸って…吐いて…もう一回吸って…吐いて…どうだ?」
「ちょ、ちょっと落ち着きました…」
「そうか…よかったよかった」
店長は「ふぅ」と大きな溜息をついた。
「で、落ち着いたばかりで申し訳ないんだが…俺が聞きたかったのはお前が男に戻る方法だ。そろそろ教えてくれないかと思ってな?」
店長は真剣な表情で行幸に尋ねた。本気で知りたいという表情で行幸を真剣に見詰める。
「えっ?お、俺が男に戻る方法ですか?」
「そうだ。そろそろ俺にも教えてくれてもいいよな?」
そうだ…店長は俺がどうすれば男に戻れるかはまだ知らないんだ。
菫と幸桜は知ってるけど、店長は知らないんだった。どうする?教えてもいいのか?
でもここまでくれば、もう話してもいい気がするよな?でもまぁ一応…
行幸は事務所の中を見渡す。
(リリア?いるのか?)
一応はリリアを思念で呼んでみた。しかし何の返事も無い。
(いないのか?まぁ、返事をしなくっても居る事も多いから言っておくぞ?店長になら話してもいいよな?)
それでも再び思念を送ってみる。しかしやはり反応はない。
しかし、行幸は店長に話しをすると決断した。
「行幸?どうした?」
「いや、何でもないです…えっと…店長には話します。俺が男に戻る方法」
そして、行幸は店長に全てを話した。店長は話を険しい表情で唇を噛んで聞いていた。
女になった経緯。幸桜と菫が恋愛対象者だという事。天使の存在も話した。しかし、行幸はシャルテが天使だとは教えなかった。
何かとややこしくなりそうだと予想したからだ。
「という事で、俺は男に戻る為に恋愛をしなきゃ駄目なんです」
腕を組んで「ふぅ…」と息を吐く店長。
「なるほど…本当にゲームみたいな展開だな」
「本当ですよ…マジでエロゲーです」
「それにしても、その恋愛対象者が菫と幸桜ちゃんとはな…」
「あと一人いるんですが、それは男なのでそっちはパスで」
フロワードの扱いが酷い件。
「で?お前は菫と幸桜ちゃんのどちらを選ぶつもりたんだ?」
店長にそう聞かれて眉を歪める行幸。
「どっちと言われると困るんです…俺…迷ってるっていうか…なんていうか…」
「行幸、俺は菫がお前に好意を持っていた事をずっと前から知っていた。でも、だからと言って、菫にしろとは言わないが…」
店長の言いたい事はなんと無くわかる。店長は菫推しなんだ。
まぁ…幸桜とは接点もないし、あたり前か。
「まぁ…決めるのはお前だ」
店長はそう言いながら椅子に腰掛けると、くるりと椅子を回してパソコンに向かった。そして表計算ソフトの入力を始める。
そんな店長の後ろ姿を見ながら行幸は言った。
「二人の気持ちが解った今は、ずるずる行きたいとは思いません。それに俺は男に戻り多。だから早く結論は出そうって思ってます。そう、シャルテとも約束したんです」
「んっ?シャルテ?って!昨日の【あやせ】の事か!?」
店長のキーボード入力をしていた手が止まった。そしてガタンと机に膝とぶつけながら再び行幸の方へ振り向くと勢いよく立ちあがった。
妙にシャルテに対する反応が過剰な店長。
「え、えっと?その【あやせ】ってどういう意味が解らないけど、店長が俺を探していた時に一緒にいたシャルテですけど?」
「そ、そうか…で、行幸…ちょっといいか?」
「はい?」
先ほどまでの落ち着いた大人の店長は何処へやら。今は落ち着きがまったく無くなっている。
何度か咳払いをすると、店長は行幸に質問をした。
「えっと…あれだ…シャルテって…あれだ、お…女…だよな?」
小声で恥ずかしそうに聞く店長。
「はい?何でそんな事を?」
「い、いや!あれだ…」
そう、店長は昨日からシャルテが男か女かが気になって気になって仕方が無かったのだ。
そしてさっき気が付いた。行幸に聞けばわかるんじゃないかと。だがいざとなると聞きづらい。
「いや…やっぱり何でもない…」
店長はそう言うと、頭をかきながら椅子に座った。
「えっと…シャルテは女ですよ?」
その一言を聞いた店長は「おぉ!」っと、何故か満足そうな笑顔になった。
「そうか!よかった!リアル男の娘だったらどうしようかと思ってたんだ。胸があったし、現実にあのレベルの男の娘とかがいたら俺の世界観が変わる所だった」
「えっと?男の娘?胸があった?世界観が変わる?」
「い、いや!何でも無い。ありがとう。助かった」
何が助かったのか、まったく解らない…
昨日、シャルテと店長の間で何かがあったのか?
「あの…店長とシャルテの間で何があったんですか?そういえば、昨日は一緒に俺の所まで来てたし…いつシャルテと合流したんですか?」
「えっ?いや、別に何も無いぞ?たまたま逢っただけだ」
態度が男前じゃない…って事は何かを隠してる!
何故か店長の態度でそんな事を推測できるようになった行幸。
「何かあるんですよね?教えてください」
行幸がそう問いかけると店長はニコッと笑みを浮かべた。そして、仕方ないか?という表情で行幸に向かって言った。
「解った。行幸になら教えてやるよ。どうせ俺が二次元フェチだって知ってるしな?」
「へっ?それとシャルテと、どういう関係が?」
この後、店長があの日どういう行動をしたのか、そしてシャルテとどう出会ったのかを教えてくれた。
そして、実はシャルテも俺と同じアニメ『私がメイドでごめんなさい』の登場キャラの一人と容姿も声もそっくりだった事実を知った。
しかし…どこまであのアニメが好きなんだ?天使は!
☆★☆★☆★☆★
いつの間にか菫が事務所を出てから一時間が経過していた。
話に夢中になると、時間が過ぎるのは早い。
行幸は店長に挨拶をすると急いで店の外に出た。
外は六時を過ぎた時間だと薄暗くなっていた。そして、秋葉原の派手な光がキラメキ始めている。
すっかり遅くなったなぁ…今日は自転車だからもうちっと早く出たかったんだけどな…
そんな事を考えつつビルの谷間から薄暗い空を見上げた。その時だった!
「遅かったね…」
誰かに声をかけられた。っていうか、この声は!
行幸が慌てて声をする方向を向く。すると、そこには菫の姿があった。
薄暗い裏口の外に菫が一人で立っていた。
お前は確か一時間前に事務所を出たはずだろ?何でそこに居るんだ?もしかして俺を一時間も待っていたのか?っていうか?何で?
行幸の頭の上には疑問符が大量に浮かぶ。
「あのね?行幸…」
チラチラと行幸を見ながら話し掛けてきた菫。行幸の心臓が一気に鼓動を早めた。
「な、何だよ?」
「あのね…ちょっと聞いていいかな?」
な、何を聞く気だ?俺と妹の関係か?今までの一時間は何をしてたかって事か?まさか…私を好き?なんて、直接に聞いてくるつもりか?
「あ、ああ…いいけど…何だよ?」
行幸の心臓は激しく鼓動する。手には汗が滲む。顔もだんだんと熱くなってきた。
平常心を保っている様に見せかけたいが、息も苦しくなってきて難しそうだ。
「クリスマスイブなんだけどさ…」
「ク…クリスマスイブ?」
「イブの夜って…予定ある?」
菫が聞いてきたのはイブの予定。そして、そう聞いてきた菫は、暗闇の中でも解るくらいに頬が桜色に染まっている。
菫は緊張で唇が乾いたのか、ぺロリと唇を舐めるとチラリと行幸を見た。
行幸の心臓はMAX鼓動モード突入寸前!という位に鼓動が強くなる。
え、えっと?俺は菫にイブは空いているかって聞かれたんだよな?これってデートの誘いなのか?いや、普通に考えてもイブの夜の予定を聞くなんて、デート以外に無いじゃないか!
でも、突然こんな事って?菫は俺と妹の関係が気になってないのか?何でそれを追求して来ないんだ?
「…よ…予定あるよね?そうだよね?」
行幸が考えている間に、菫は自己完結モードに入っていた。
やばい!時間制限付きの選択肢だった。待たせたら自動的に返事は「NO」になる。ここでの選択肢はこれだ!
「いや、空いてる。予定は一切ない!」
行幸はちょっと震える声でハッキリと言い切った。
それを聞いた菫は一瞬だけど笑顔を見せた。
しかし、その笑顔はすぐに消える。いや、菫が自分で消した。
「そっか…そうなんだ?予定無いんだ…へぇ…」
「…ん?」
予定では「じゃあ…私と食事でも…」とか言われると思ったんだけど?おかしい…何でそういう反応になる?
「無いけど?何だよ?」
「えっ?いや…行幸はイブはどうするのかなーってふと思っただけ」
確認だけだと?いや、確認だけでそもそも俺を一時間も寒空の下で待つか?
そうだ。恋愛ゲームでもそうだろ?主人公を長時間待っていた女の子は主人公に好意を寄せていて、高感度も劇的に程度高まった状態。
そして、その女の子は99%の確立で主人公をデートに誘う!
「……」
何かを言いたそうにモジモジしている菫。
行幸はそんな菫を見てゲームの女の子キャラと重ねる。
そうか、女の子にも色々な種類があるんだよ。
ゲームだと、女の子の心理も文字で表示されるからわかりやすいが、今はリアルだ。心の中は読めない。だが…
行幸の脳がエロゲ攻略モードに突入!
こういう場面の女の子の反応は大きくは2パターンに別れる。
パターンⅠは平気で誘ってくる女の子だ。
これは普通にデートに誘えるオープンな子。さっきのような展開なら、間違い無くデートに誘っていたはず。
幸桜ならきっとこのタイプだろう。
そして、パターンⅡは誘いたいけど誘えない女の子だ。
これは誘いたい気持ちはあるけど、恥ずかしくって誘えない系だ。
そうだ…よく考えてみろ。今の菫がこれじゃないか?
菫はずっと前から俺が好きだった。それなのに、一度も俺をデートに誘った事はないし、告白もしていない。
そう、菫は見た目はオープンそうだが、実はすごく内気な女なんだ!そう!パターンⅡなんだ!
っていう事は?ここは俺から誘うべきなのか?デートフラグが立つように誘導すべきなのか?
「じゃ…じゃあ行幸、妄想が忙しそうだし、またね」
菫はその場から立ち去ろうとした。
「ちょ!す、菫!ちょっと待って!」
行幸は慌てて菫の左手を掴んだ。
腕を捕まれた菫は、ハッとした表情で振り返る。
行幸と菫の視線が合う。そして菫はすぐに恥ずかしそうに視線を外した。
「な、何よ…用事が無いならその手…離してよ…」
緊張した菫の声。
「お前、俺に何か言いたい事があったんじゃないのか?」
行幸は菫にそう問いかけた。これでフラグ回収だ!
すると、菫は視線を行幸に向ける。
「な、何の事よ?」
「何の事って?じゃあ何でイブの夜に空いてかって聞いたんだよ?」
「ちょ、ちょっと聞いてみたかっただけだって言ってるでしょ?」
「それで一時間も俺を待っていたのか?」
「ま、待ってないわよ!私は買い物をして、それからここに戻ってきたら…そう!たまたま行幸が出て来たんだよ!」
そう言う割にはお店を出た時の格好とまったく変わりなさすぎだろ。
それに、そんな事を確認する為に、それも俺が出てくるタイミングにここに戻ってくるなんて出来るはずがない。こいつ嘘つきだ。
「そうか?本当にそうなのか?」
「そ、そうだよ!何で私が嘘をつかなきゃいけないのよ!」
「もう一回だけ言うぞ?俺はイブの夜に予定はいってない。だから誰かの誘いを受けるのも可能なんだけどな…」
菫の顔が真っ赤になった。
こいつ、緊張してる。握った左腕からドキドキって伝わってくるぞ。
「え、えっと…そ、そうだ…聞きたかった事…あるんだ…あの…れ…恋愛対象者…最後の一人…わかったのかな?」
いきなり話を変えてきただと?でも、そこは確かに聞きたい所だろうが…
「ああ、恋愛対象者は全員わかった」
菫の顔は赤いまま不安そうな表情に変化した。
今更気が付いたが、なんて素直に顔に出るやつなんだ。これで俺はこいつの気持ちに気が付いてなかったとか…これじゃ鈍感って言われても仕方ないよな…
「そ、そっか…解ったんだ?」
「そうだよ!その一人が菫さん、貴方なんだからね!」
突然、割り込んできた聞き覚えのある女性の声。そしてその一言に硬直する菫。
こ、この声は!?
行幸は慌てて声の方向を向いた。
続く
読者の皆様には、最後の声が誰の声だか解りましたよね?
解った方は、応募シールを貼って作者までメッセージを!
正解した方にはもれなく粗品を差し上げます!
なんて事をやってみたいなーって思う今日この頃です。
さて、終盤も終盤です。あとちょっとです。こんな下らない小説に今までお付き合い頂きありがとうございます。
なんとか終わりそうな気配が見えました。最後まで、是非ともお付き合いを宜しくお願いします。
評価もして頂けると私が喜びます。宜しくお願いします。
では、続きはちょっと来週までお待ちください。




