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どうしてこうなるんだ!  作者: みずきなな
【どうしてこうなるんだ!】
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第七十話【俺はどうやら心配されていたらしい】

天の声を聞いたシャルテ達は川沿いの道を北上する。そしてついに…という感じでまともな前書き?

 店長は川沿いを北へ向かって自転車を走らせる。

 自転車の後部座席にはシャルテが乗っていた。

 ふとシャルテは今まで軽快に走っていたママチャリの速度が凄まじく落ちている事に気が付く。

 店長の背中から感じる熱。じわじわと滲む男臭い汗。そして背中で息をしている?

 ふと斜め後ろから店長の顔を見ると、表情はとても辛そう変化していた。

 そう、店長が行幸みゆきを探し始めてからすでに二時間が経過している。

 時間も深夜だ。店長は今日は店員も少なくフル稼働で働いた。その疲労と二人のり自転車を一時間以上走らせた結果、ここに来て店長に疲労と眠気が一気に襲い掛かってきていたのだ。


「おい、大丈夫か?」


 シャルテがそう声をかけると、店長は「大丈夫だ」と返事をした。

 しかし、どうみても大丈夫そうには見えない。そして、シャルテは別の不安も覚える。

 行幸みゆきだって疲れて眠いんじゃないのか?もしかして、どこかのベンチで寝てたら…

 そこで思い出したのは公園のベンチで寝ていた自分だった。そしてその後に僕は…

 シャルテの体が震えた。


「ごめん、疲れてて辛いと思うけど頑張ってっ!」


 あのシャルテがなんと店長に激励を飛ばした。

 店長はチラリと後ろを見る。心配そうに自分を見ているシャルテ。

 店長は笑顔を浮かべると「任せろ!」と答えて再びペダルを踏む足に力を込めた。


 そして…しばらく走っていると、シャルテは前方にふらふらと歩く女性を発見した。

 直感で感じる。あれは行幸みゆきだ!


「おい、行幸みゆきだ!あそこにいる!」


 シャルテはそう叫ぶと前方を指差した。。


「えっ?行幸みゆき!?」


 店長は指をさされた方向を見る。するとそこには女性の姿があった。


「あれが行幸みゆきなのか?」


「ああ、そうだ!行幸みゆきだ!」


「よしっ!」


 行幸みゆきの姿を発見した店長は、疲れた体に鞭をうって自転車を全力で漕ぐ。

 そして行幸みゆきの近くまで行くと自転車を止めた。


行幸みゆき!」


 店長が自転車を降りながら叫ぶ。その声に反応して振り返る行幸みゆき

 行幸みゆきはシャルテと店長の姿に気が付いた。


「店長?…紗瑠しゃるさん?なんでここに?」


 行幸みゆきはその場に立ち止まり、驚いた表情で二人を見た。


行幸みゆき!探したんだぞ!この野郎!」


 両手を広げて行幸みゆきに全力で駆け寄る店長。


「店長…?もしかしてずっと俺を探してたのか…」


「いきなりあんな電話しやがって!心配させるんじゃねぇ!」


 店長はそう言いながら、そのたくましい体で行幸みゆきを抱きしめ…れなかった!


「ごめん!」


 後ろから聞こるシャルテの声。


「へっ?」


 店長の背中に何か加重が掛かった。そして、疲れた体は制御が出来ず、行幸みゆきの横を通過。

 いや、本当は真っ直ぐに両手を広げて自分に向かってくる店長の姿を見て、素早くかわした行幸みゆきが要因としては大きかった。


 後日の行幸みゆき談話だんわ

「あの時の店長は…そう、フライングパワーボムを狙うザンギエフに見てたんです…あのまま掴まれると死ぬ。そう直感しました」


 そんな事を知らない店長はブレーキをかけてなんとか停止。後ろを振り返る。


「シャルテ!何するんだ!」


 店長は振り返りざま、シャルテに文句をかました。

 行幸みゆきには文句を言わない所がミソである。いや、女になった行幸みゆきに文句を言えないだけだったり…

 しかし、そんな店長を一切無視してゆっくりと行幸みゆきの側に寄るシャルテ。そして、店長の一言に固まる行幸みゆき


 《今…あれ?店長なんて言った?シャルテ?えっ?》


「ちょっと待て!おいこら!無視するな!」


 怒り気味の店長がシャルテの横へとやってくる。するとシャルテは店長に向かって言った。


「ごめん、悪いと思ったけど、でも、行幸みゆきと先に話をしたいんだ」


 そんな事を言われても納得のゆかない店長は不機嫌そうな顔で文句を言った。


「それは俺だって同じだ!話たいのはお前だけじゃないんだぞ!俺も同じだ!」


 シャルテはそんな怒り気味の店長を真剣な眼差しで見た。そして両手をいきなり取ると、ぎゅっと握る。

 その動作に少し動揺する店長。ここでまた女性に対する抵抗の無さが仇となる。


「な、何だ!手なんか握ってもダメだぞ!俺が先に行幸みゆきと話すんだからな!」


 しかし、この時だった!店長は重大な事実に気が付いてしまった!

 シャルテを直視した時、脳裏にあるアニメキャラが思う浮かぶ。


 ま、待て…なんだこいつ?ま、まさか!?

 呆けている行幸みゆきに視線を移す。そしてシャルテに視線を戻す。つーっと汗が頬を滴り落ちた。

 誰かに似てると思ったら…こいつ、『わたしがメイドでごめんなさい』の【水無月あやせ】にそっくりじゃないか!?

 服装がアニメの時と違うから気が付かなかったが、顔つきも、髪型も、声も全部が本物そっくりだ…

 な、何だと?行幸みゆきに続いてこいつまでアニメキャラだと?

 そ、そうだ…【水無月あやせ】、あいつは確か男の娘だよな…でもこいつは女?

 背中にあたった柔らかい感触を思い出す店長。

 やっぱり女だよな?胸もあったし…

 いや、待てよ…もしかして男なのか?胸があるから男という安直な考えは駄目かもしれない。

 いや待て…でも声は女だぞ…待て待て!考えてみろ!声が女とかいう前に、声もそっくりなんだぞ?アニメの中であの声で男という事は、やっぱり男かもしれないじゃないか!

 いや、あのキャラの声優は確か女だったな?女が男の娘の声を出してるんだ…

 くぅぅ…結局こいつは男なのか?女なのか?何者なんだ?アニメから飛び出して来た?いや、無いだろ?

 しかし、行幸みゆきが女になったんだぞ?男が女になるって非現実的な事が実際におこったんだぞ?アニメから飛び出すなんて非現実的な事がある可能性も無い訳じゃないだろ…

 いや、そうじゃない!こいつももしかしたら元が男なのかもしれないじゃないか!

 そうだ、その可能性だってある訳だ…男から女にされたのか?行幸みゆきと同じなのか?

 で、行幸みゆきとどういう関係なんだ?同じ境遇?う、うーん…ぐぐぐ…


 店長大混乱である。もはや行幸みゆきと話を出来る状態ではなくなった。


「お願いです…僕に先に話しをさせて下さい…」


 潤んだ瞳で真剣に店長を見詰めるシャルテ。


 うぐぐ…


 目の前で、あの【水無月あやせ】が自分にお願いをしてきている。

 店長はリアル女に手を握られるよりも緊張する。心臓は爆発しそうである。呼吸も苦しい。

 リアル男の娘が(本当は女かもしれない)目の前にいる…こんな現実を想像できただろうか?

 やばい…俺、今までずっと【水無月あやせ】と一緒にいたのか?自転車の後ろに乗せていたのか?うぉぉ!

 そして、再び思い出す。おっぱいの感触。温かい息がかかっていた背中。実は気になっていたシャンプーの匂い。

 うぁぁぁあ!体が熱いっ!胸が苦しいっ!頭が痛いっ!眠い…


 《こ、これが恋なのか?》※違うと思うよ?


 もう行幸みゆきよりもシャルテが気になって仕方ない店長。


「わ、わかった。話は先にしてもいい。だが…一つだけ教えてくれないか?」


「えっ?な、何だよ…」


 真っ赤な顔で鼻息を荒くする店長にすこし引いてしまうシャルテ。ちょっと恐怖を感じる。


「えっと…シャルテは…あれだ…お、男の娘なのか?」


 シャルテの目が点になった。

 そして、しばしの沈黙。

 沈黙の中をずっと手を握りあっているシャルテと店長。見詰め合う二人。

 数十秒が経過した。そこでシャルテはハッと気が付いた。そう、自分の設定に。


「えっ!?えぇぇぇぇ!」


 シャルテは思わず驚きの声を上げる。超絶遅い反応で。

 同時に顔がみるみる高揚して真っ赤になってゆく。

 ま、まさか僕の設定を知っているとか!?で、でも大丈夫!僕は女だっ!男の娘じゃない!ない…よな?

 チラリと股間を見てしまったシャルテ。


「ま、まさか!マジで男なのかっ!」


 その視線に気が付いて店長は過激に反応した。というか、行幸みゆきはどうした!行幸みゆきは!


「ち、違う!僕は男じゃない!どう見たら男に見えるんだ!ほら、胸だってあるだろ!こ、これでも…い…一応は…あれだ…女の子だ!」


 自分の胸をむぎゅっと揉むシャルテ。店長はじっとその胸を見る。

 た、確かに胸はある。ように見える…だが、何で一応ってつけたんだ?や、やっぱり?

 どうしても男の娘が気になるらしい…いや男の娘も女の子も大好きです!(二次元優先)

 シャルテの全身を見る店長。しかし、迷えば迷う程に性別不明という結論になってしまう。

 まさか、裸にひんむいて確認する訳にもいかないよな…(はい、それは犯罪です)

 うぐぅぅ…やばい…また頭が痛くなってきた…

 店長は目を瞑るとふるふると頭を左右に振った。


「やっぱりお前が先に行幸みゆきと話していい…終わったら呼んでくれ…俺はちょっと頭を冷やしてくる」


 店長はそう言うとシャルテの手を自分から離す。そして、くるりと方向転換をしたと思うと、おでこに右手を当てて項垂れたままどこかへ歩いて行った。


 店長が離れたのを確認してシャルテは周囲を見渡す。

 すると、行幸みゆきが口を開けてシャルテの方を見ていた。

 そう、まさに呆気にとられたというのはこういう表情を言うのだろう。

 シャルテは行幸みゆきが何故そんな顔をしているのかをすぐに理解した。


 あ、そうか、さっきあいつが僕の名前を叫んだから僕がシャルテだってばれたのか?

 まぁ…仕方無いな。どうせばれる予定だったんだ…


 そんな事を考えながら行幸みゆきの側まで寄る。

 行幸みゆきを見ているだけなのに心臓は鼓動を強めた。今すぐにぎゅっと抱きしめたい衝動に襲われる。

 なんだよ、フェロモン効果がが無くってこれか…まったく恋は厄介だな…くぅ…

 シャルテは目を閉じて「ふぅ」っと息を吐くと目を開いた。


 よし…落ち着けシャルテ、行幸みゆきと話をするぞ。

 だけど、僕が行幸みゆきを好きだった事は行幸みゆきには絶対に教えちゃダメだからな?悟られても駄目だぞ?

 シャルテ、行幸みゆきを好きだったのはまやかしだったんだと思え。リリア姉ぇの魔法で好きにさせられていたと思うんだ。そして、今から僕のやる事は一つ。僕は行幸みゆきのフェロモンを消す事なんだぞ…解ったよな?うん…解った…


 シャルテは行幸みゆきの顔をじっと見る。そして唇を噛んだ。

 ……行幸みゆきの事なんて早く忘れてしまうんだ。早く終わらせてしまおう…


行幸みゆき、何してんだよ?何でこんな所にいるんだ?」


 行幸みゆきは小さく顔を振った。

 意味はわからないが、呆気にとられた表情のまま、口を開けたまま小さく顔を振った。

 シャルテは一歩づつ行幸みゆきに近づいて行った。

 街頭が行幸みゆきの顔を淡い光で照している。そんな淡い光の中でも行幸みゆきの目は真っ赤なのが解かる距離にまで接近する。


 泣いていたのか…行幸みゆき


 そんな行幸みゆきを見ていると、シャルテの胸は更に痛くなった。


「本当に…シャルテなのか?」


 やっと口を開いた行幸みゆき。そしてやはりバレていた。

 行幸みゆきは驚いたというよりも、信じられないような表情をしている。

 ここで僕がする事は、シャルテだと認める事。そしてあまり悲観的にならない事。あくまでも僕らしく。普段通りに対応するんだ…

 シャルテは拳に力を込める。


「ああ、ぼ、僕はシャルテだ!ふんっ」


 シャルテはそう言うと腕を組んで右横を向く。まさにツンな反応だ。


「嘘だろ?紗瑠しゃるさんはシャルテ…だったのかよ…」


「こ…これには色々な訳があるんだよ!」


「訳って…どういう訳なんだよ!意味がわかんねぇし…」


 やばいな…行幸みゆきがかなり動揺してる…心が乱れている。

 ここは本題に早く入って、僕は退散するべきかもしれない。今のままじゃ僕は行幸みゆきの足かせにしかなってない…


「気にするな!天使の事情ってやつだ。そんな事よりも、僕は重要な役割を持ってここに来たんだ!」


「シャルテ、そういえばお前、俺のフェロモンの影響を受けてたよな?なんて受けてたんだよ?フェロモンの影響を受けるっていう事は…もしかしてシャルテは…」


 き、聞いてない!?僕の話を聞いてない?というか、この話題はやばいっ!

 行幸みゆきの話を途中で遮るようにシャルテが割り込んだ。


「あれだ!僕はリリア姉ぇにフェロモンの影響を受けるようにされてたんだ!この姿はリリア姉ぇが勝手に変えたんだ!」


 天使であるシャルテは基本的に嘘は言えない。いや、言えない訳ではないが、嘘をつくといつかは嘘をついた相手にきちんと伝えないといけないというリスクがある。

 しかし、リスクを回避する方法がある。それはきちんと質問を受けない事。シャルテはなんとかそれで誤魔化そうとしていた。


「リリアが?何でそんな事をするんだよ?」


 話題がずれた!よし…


「僕にだって理由はわからないんだ…教えてくれていないんだ。ただ、最初の目的は行幸みゆきの監視のはずだった。なのに、フェロモンの影響を受けるようにされていたんだ。僕も被害者なんだ。その点に関してはね」


「……ふぅ…」


 行幸みゆきは大きな溜息をついた。

 その溜息はシャルテに大きなダメージを与えた。ぐっと痛む胸がシャルテを苦しめる。


行幸みゆき、ごめん…僕はフェロモンの影響で行幸みゆきに酷い事をした」


 シャルテは素直に謝った。すると行幸みゆきは顔を左右に振る。


「いや…いい…もういい…あれは俺から出ていたフェロモンが悪い訳だろ?シャルテのせいじゃない…でも、本当に何でシャルテは俺を襲ったんだよ」


 シャルテの表情が強ばる。

 やばい…また質問された…うまく嘘を言わないように答えないと…


「ほら、あれだよ、僕が行幸みゆきのえろいゲームを見ただろ?だから多分、そのせいで行幸みゆきを襲いたくなっただけだろ?」


「それって…もしかして俺の事がす…」


 ま、また話を聞いてない!行幸みゆきの馬鹿!


「聞け!フェロモンはその時の感情を増大させるんだ!エロゲーを見て僕は行幸みゆきを襲いたいと思った!だから行幸みゆきを襲った!これだけだ!」


 シャルテはまた行幸みゆきの話の途中で割って入った。

 そして嘘は言っていない。確かに、あのゲームを見たせいで襲いたくなったのも事実だから。

 このままじゃやばい…早く僕の役目を果たさないと…バレる…このままじゃ僕が行幸みゆきが好きな事がバレる!


行幸みゆきに率直に言うぞ?なんでここに僕が来たのか?それは、僕は天使長様の命令で行幸みゆきのフェロモンを消しに来た!」


「えっ?」


「だから、行幸みゆきのフェロモンが消えるんだよ!もう変な奴らに絡まれ無くなるんだよ。他人の暴走を見なくていいんだよ!」


 行幸みゆきは信じられないと言う表情でシャルテを見た。


「でも…俺はまだ恋愛対象者と何も出来てないぞ?」


「ああ、解ってる。でもフェロモンは今回の恋愛にはもう必要ないと判断されたんだよ」


「…そ、そっか…」


 フェロモンが消えると言われた行幸みゆき。しかし、その表情に笑顔は無かった。


 続く


ヒロイン分析そのⅠ

すみれちゃん

すみれは表面上はとても強がりで、負けん気満点に見えますが、女友達の前では実はかなり大人しい子です。

愛と一緒のシーンでは激怒などまったくしてません。

しかし、行幸みゆきの前ではまったく別です。

まぁ、読者の皆様ならおわかりでしょうが、はずかしいのでそういう行動に出ているだけだったりします。

小学校で、好きな子を虐めるってありますよね?そんなものです。

基本は初心で、臆病で、慎重な女の子です。

そうじゃなければとっくに行幸みゆきに告白しているはずですしね。

次回のヒロイン分析は幸桜こはるです。

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