第六十九話【俺は思うんだ、こういう題名の付け方にするから今になって困るんだよ】
題名が酷いのは私のせいです!(作者)
さぁ!店長とシャルテは行幸を見つける事が出来るのか!?
久々の更新です。
店長はシャルテが自転車の後ろに乗ったのを確認すると、ハンドルを握る手にグっと力を込めた。
「おい、飛ばすからな?よーくつかまっておけよ!」
そう言うと、店長は前屈みになりペダルに一気に力を込めた。その瞬間、まるで急発進するバイクの如く自転車は走り始める。
店長が全体重を自転車の前方に乗せたにも関わらず、自転車の前輪が空中に浮く。しかし、店長はしっかりとバランスと取ると、まるでサーカースの出し物かのように後輪だけで突き進んでゆく。
「うぉぉぉ!落ちるなよ!」
あまりの急発進とあり得ない走行スタイルに言葉を返せないシャルテ。
今にもふるい落とされそうになり、店長の背中を掴んで背中にぴたっと体をひっつけた。
店長の背中にもにゅんと柔らかい感触が…そして、その瞬時に気が付く店長。
そうだ…こ、こいつ、女かっ!っと今更なにを?と思うような事を心の中で叫ぶ。
柔らかな感触は日常では感じられないもの。二次元が好きな店長でもこの感触は嫌いじゃない。いや、男だったら嫌いでどうする?
そして、店長は無言のままほのかに頬が染まっていった。
ちなみに、店長はリアル女に対する耐性がほとんどない。胸を触るどころか、体すら触れられない。
実際に彼女いない暦は年齢と同じである。ここは行幸も同じだが…
やわらかい感覚が背中に伝わり、意識がついつい背中に移ってしまう。
ええい!これしきの事で理性を失う訳には行かないっ!そうだ、これは肉まんだ!メロンパンだ!そう思うんだ!っとまた心の中で馬鹿な事を叫ぶ。
店長はすぐに意識を切り替えた。つもりです。
行幸を探すのが先だ!行幸を探すぞ!背中は意識しないぞ!と思っている時点で意識してるじゃないか…
「行幸、待ってろよ!」
店長はそんな台詞を吐いてペダルを踏み込む足に更に力を加えた。自転車はどんどんと加速する。加速する!前輪はドスンとやっと地面に着地!その瞬間、また押しつけられる!
うぐぐぐっ!考えらだ駄目だ!考えたら駄目だ!考えたら駄目だ!
店長は叫ぶ「うおうおうおお!加速そーーちっ!」
ネタ的に古すぎませんか?
「うぉぉぉぉ!全力全開全開だ!俺の本気を見せてやる!」
後ろに女性を乗せたのなら、もっと安全運転をすべきだろう?っと突っ込みたくなる程にシャルテの事なんてまったく考えていない店長。
背中の感触を忘れる為にも加速する。
しかし、加速する程、シャルテは懸命に店長にしがみつく。
「どけどけどけぇ!」
店長は鬼神の表情で叫びながらスクーター追いついた!追い越した。追い越しただと!?
ちなみにだが、店長の自転車は俗に言うママチャリである。そんな自転車で時速にすれば40キロ以上は出ているという事実。
そんな猛スピードで走る自転車に乗っているシャルテの目に入る景気は、もちろんすさまじい勢いで流れてゆく。そして風圧で声も出ない。
「行幸の奴どこだぁぁ!」
店長は風圧も気にせずに大声で叫びながら深夜の道を突き進んだ。
シャルテは店長に掴まっているのが精一杯。しかし、周囲だけは見渡していた。
しばらく進んだ時だった。急に自転車のスピードが落ちる。そして、先ほどまでの勢いはまったくなくなってしまった。
シャルテは頭に疑問符を浮かべながら店長の背中から体を離すと、後ろ頭を見あげる。
すると、店長が前を向いたままシャルテに声をかけてきた。
「おい、そういえば、あんたの名前きいて無かったな。名前はなんて言うんだ?よかったら教えて貰えないか?」
唐突に名前を聞かれたシャルテ。少し考えたが素直に答る。
「シャルテだ」
「シャルテ?珍しい名前だな。本名なのか?」
店長はそう言いながら後ろをちらりと振り返る。
「本当の名前だ」
「ほう…おまえ、外人なのか?」
店長の中ではカタカナ系の名前はすべて外人らしい。
「……まぁ…似たようなもんかな?」
というか、天使は外人なのか?
「へぇ…そうか。あ、挨拶がすっかり遅くなってすまん。俺は茨木っていうんだ。行幸の働いている店の店長だ。よろしくな」
「ああ…」
「それにしても、シャルテは何処で行幸と知り合ったんだ?」
「僕か?…まぁ…成り行きかな…」
「成り行き?もしかして、あいつのやってるオンラインゲームの関係の知り合いなのか?」
「まぁ…それも不正解じゃない」
そのゲームで行幸がネカマをしてたから女にしたんだしな。
「なるほど…」
二人は大通りに差し掛かり赤信号に引っかかった。目の前の大通りは、流石にこの時間であっても車が行き交っている。
ヘッドライトが自転車に乗っている二人をすーっと照らしては消えていった。
店長はそんな中で今度は体ごと後ろを振り返る。
「で、結局の所さ、シャルテは行幸とどういう関係なんだ?」
真面目な表情でシャルテに質問をする。
「僕か?僕は…だからちょっとした知り合いだ」
店長は眉間にしわを寄せる。納得がゆかないらしい。
「ちょっとした知り合い?シャルテはこの近くに住んでるのか?」
「いや…」
「じゃあ、何でこんな時間にあの公園にいたんだ?」
店長の質問攻めにシャルテの表情が不満そうになる。店長が自分から色々な情報を引き出そうとしているのがおもいっきり解るから余計にイライラした。
「何だよ?そんな事を聞いてどうするんだ?僕と行幸の関係が気になって仕方ないのか?でもな、そんな事を聞いてもどうなる訳でも無いだろ?今は行幸を探す方が先じゃないのかよ?」
「…まぁ…それはそうだが」
「言っておくぞ?僕と行幸はお前が思ってるような変な関係じゃない!」
「ま、待て!俺がいつ変な関係だって言った?」
「どうせ、僕が行幸の部屋にいて、そこから飛び出してあの公園にいたとでも思ってるんだろ?ああ、そうだよ。僕はあの部屋にいた。だからどうした?僕は何も…疚しい事は………」
シャルテの顔が少し赤みを帯びた。その表情からは、どうみても疚しい事をしたとしか思えない…
「わ、解った。もう解った。それ以上は聞かない。そうか、行幸の部屋にいたんだな?でもシャルテは行幸が行方不明だって知らなかっただろ?それって、シャルテが部屋にいたときには行幸はいたって事だよな?」
「…は…早く!行幸を探すぞ!」
「それも…答えられないのか?」
シャルテは顔を赤くしたまま唇を噛んだ。そして今度は唇をつんと尖らせて話す。
「い…いたよ。僕が部屋を飛び出す時にはまだ行幸は部屋にいた…でも…」
「でも?」
「僕が部屋を飛び出したら…行幸は僕をおっかけて来たんだ…」
「えっ?」
シャルテは強ばった表情で唇を噛んだ。
「…なるほど」
店長は心の中の動揺を外には見せず、冷静にそう答えると前を向く。そして青になった横断歩道を渡り始めた。
こいつと行幸は恋人じゃないかもしれないな。そういう感じじゃない。でも、何か深い繋がりがありそうだ。それは間違いない…
チラリとシャルテの右足を見る。血が滲む足が目に入る。
何で裸足で部屋を飛び出した?行幸と喧嘩をしたのか?
店長は眉間にしわを寄せると、頬の肉がぴくんっと動く。
待てよ?おい、何かおかしくないか?
今の行幸は女になってるんだぞ?とういう事は…
何でシャルテは行幸が女になっている事を知ってるんだ?何で?
行幸が連絡したのか?それで行幸に逢いに行ったのか?それで何かあって部屋を飛び出したのか?
わかんねぇ…わかんねぇ!くそっ!
こうなったら…まずは女になった事を知っているかを探ってやる。
「おいシャルテ」
「なんだよ?」
「シャルテは今の行幸の現状を知っているのか?」
「行幸の現状?」
「ああ、そうだ」
「どういう意味だよ?」
「どういうもこういうも無い。昔のあいつと今のあつは違うだろ?」
知っている人なら意味が解るように質問をする店長。シャルテが知らなければ答える事は出来ないだろう。
シャルテは店長の事を知っている。そして、店長が行幸が女になっている事を知っている事も知っている。だから普通に答えた。
「ああ、知ってるよ。行幸が男から女になっている事だろ?」
店長の表情が険しくなった。あまりにも素直に答えが返ってきからだ。それも直接的に。
「お前、行幸と本当にどういう関係なんだ?」
「だから、色々あるんだよ」
言葉を濁すシャルテ。
「待てよ。色々じゃ解らないだろう?教えろ、行幸にいつ女になったって聞いたんだ?お前と行幸はどういう関係なんだ?俺はシャルテの話なんてこれっぽっちも行幸から聞いた事が無い。お前は何者なんだ?」
冷静に装いつつも、つい口調が強くなる店長。
「もういい、下ろしてくれ。僕は一人で行幸を探すから。お前は何がしたんだよ?僕と行幸との間柄を詮索したいのか?それとも行方不明の行幸が心配なのか?どっちなんだよ!」
そう言われて店長は言葉を返せなくなった。
確かにこいつの言う通りだ。俺のはこいつの詮索をするのが目的じゃない。今は行幸を探す事が先だ。どうしてシャルテが行幸が女になった事を知っているのか、くそ…気になる…だが…やっぱり行幸が優先だ。
「…すまん…シャルテの言う通りだ」
店長はそう言って「ふっ」っと鼻から息を出した。
「ほら、信号も青になってる。早く行幸を見つけよう」
「ああ」
その後、店長とシャルテは自転車で行幸を探して回った。
「くそっ…高速道路の近くにいるんじゃねーのか?」
「…高速道路?」
「ああ、行幸の電話から、高速道路の下で聞こえる特有の音が聞こえたんだ」
「なるほど…でもあれだろ?行幸だってずっとそこに居るわけないし、だから今は高速道路の近くとは限らないんじゃないのか?」
「そ、そうかっ!そうだな」
「…で?これからどうする?」
「くそっ!こうなると探す範囲が広くなりすぎるだろ…どうすればいんだ…くぅ」
店長は自転車を漕ぎながら顔を顰めた。シャルテも今は天使の能力は使えない。本気で行幸のいる場所がわからない…
二人が悩んでいたそこ時だった。シャルテの頭に思念が飛んでくる。
『行幸は川沿いをもっと北だよ…』
シャルテはハッとすると空を見上げた。しかし誰も見えない。
誰だ?今の思念は…
その思念はリリアのものではなかった。しかし、思念を飛ばせるのは天使しかいない。
本当に誰なんだ?
シャルテは考えた。そして結論は一つ。
今は…さっきの思念を信じるしかない。
「おい、北だ!川沿いを北に向かってくれ!」
シャルテは店長に向かって険しい表情で言った。
「北へ?川沿いを?どうして北なんだ?行幸の家からは反対方向だぞ?」
「どうしてもだ!そこにきっと行幸がいる!僕を信じてくれ」
店長はシャルテの表情を伺う。そして言った。
「解った。行こう!」
それから二十分後。行幸のアパートから数キロ北上した両国公会堂という建物の付近。
行幸は一人で薄暗い道を歩いていた。
「ここ…どこだろ…」
目的を持っていた訳ではなく、ただ歩いていた行幸。今の自分のいる場所がわからない。どうやって来たのかすら記憶にない。
周囲を見ると、大きな建物の前だという事だけがわかる。
「ああ…俺は何をやってんだろ…」
そう言って行幸は溜息をつくと、大きな建物を見上げた。
続く
続きも頑張ります!宜しくお願いします!
あと、好きなキャラクターとか活動報告で募集してたり…
よかった是非一言でも下さいっ!書く気力になるのと、その子に結構いれこむようになります。
以前ですが、幸桜ちゃんが好きな方がいらっしゃって、その愛情に登場回数が増えたという実績が(おい