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どうしてこうなるんだ!  作者: みずきなな
【どうしてこうなるんだ!】
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第六十七話【俺はこの先どうすれば良いのですか?神様おしえてください!Ⅲ】

リリアに恋人になりたいのかと問われたシャルテは「それは…」と答えて…

あのツンデレシャルテがどうしてこうなった!?

そんなこんなで続きです!

 シャルテは「それは…」と答えた所で俯き、そして大きく息を吐いた。

 どう答えるかをここに来て迷っていた。

 シャルテは自分で自分の事をもう完全に理解している。だからこそ悩んでいた。

 

 何でここまで来て迷ってるんだよ…

 僕が行幸みゆきを好きな事は紛れもない事実だ。そして、恋人になれると聞いてすごく嬉しかったし胸がドキドキして今でも止まらない状態だ…

 でも…だからといって僕が恋人になりたいなんて安直に答えていいのか?

 だから、僕は…本当に僕は行幸みゆきにどうなって欲しいんだよ!

 僕は…行幸みゆきが…くそっ!

 

「ごめん…答えが出ない」

 

 シャルテの精一杯の結論だった。

 

 そんなシャルテを見ていたリリアは『ほっ』と息を吐く。柔らかな笑顔をつくる。

 もしここでシャルテが『恋人になりたい』と答えた瞬間、試練は失敗になっていたからだ。

 だが、ここでその答えは出なかった。しかし、まだまだ危険な状態なのは確かだ。

 しかし、リリアはここで行幸みゆきを選んではいけないと忠告をする事は出来ない。それがこの試練のルール。だからこそリリアは言った。

 

『シャルテ…今はまだ迷いがるようですが、近いうちに結論は出さねばなりません』

 

「ああ…わかってるよ…」

 

『結論を出す上で大事なのはシャルテの気持ちです。貴方の未来は貴方が決めるのです』

 

「うん…」

 

『ただこれだけは言っておきます。答えが出ないという事。それは、シャルテが行幸みゆきさんと一緒になりたいと思っているという事なのです』

 

 シャルテの心の想いをリリアは鋭く指摘した。それがシャルテの為だと思ったから。

 そんなリリアの言葉にシャルテの心臓の鼓動は強さを増す。

 

「そ、それは…ちが…うぅ…僕は…天使だ。人間の恋人になんてなら…なら…」

 

『ならない!』と否定しようとした。しかしシャルテは否定できなかった。

 

 駄目だ…リリア姉ぇの言う通りだ。僕は行幸みゆきの恋愛対象者になりたいと思ってる。でも…でも…

 

『もう一度言います。自分の未来は自分で決めるのですよ』

 

「……」

 

 シャルテは小さく頷いた。

 

『それではこの話はここまでしておいて…行幸みゆきさんのフェロモンを解除する方法をシャルテに教えておきます』

 

 その一言にハッとするシャルテ。

 

「あっ…そうだ!どうすればいいんだ?早く行幸みゆきからフェロモンを解除してやりたい!僕が、僕が何かしないといけないのか?」

 

 一瞬だが、リリアの表情が曇った。シャルテはすぐに自分に関わる事だと理解した。

 

『では…お教えします…』

 

 リリアはシャルテの頭上に手をかざして呪文を唱えた。

 すると、シャルテの表情が一気に曇る。複雑な表情になる。

 

「リリア姉ぇ…これって…僕がやらなければダメなんだよな?」

 

『はい…そうです…』

 

「そうか…でも僕は…」

 

『しかし、そうしなければ行幸みゆきさんのフェロモンは永遠に消えません。そして、その瞬間ときがタイムリミットです。シャルテが人間になり行幸みゆきさんの恋愛対象者になるか…天使になり行幸みゆきさんを忘れるかを…その時に決断するのです』

 

「うっくぅ…」

 

『そう、そして…恋愛対象者になった時、貴方は一時的ですが天使ではなくなるのですよ。そして天使だった時の記憶を失う…ですが…』

 

「僕が行幸みゆきの恋愛対象者にならないと決めたら…僕は行幸みゆきを忘れるんだな…」

 

 行幸みゆきのフェロモンを解く方法。それはシャルテにとっての究極の選択だった。

 シャルテは葛藤する。行幸みゆきとずっと一緒にいたい。例え、自分が好きだという事を感づいて貰えなくても、ずっと側にいれるだけでも幸せだ…

 でも天使をやめる事も考えられない。僕は天使としてこの世に生まれてきたんだ。これからも恋愛担当の天使として、幸せの橋渡しをしてゆきたい…

 

 想えば思う程にどんどん苦しくなる胸。

 

 辛い、苦しい…

 

 苦悩するシャルテを見てリリアも表情を曇らせる。

 

『あと…これも伝えるべき事です…今、私の記憶も転送しておきます』

 

 するとシャルテが本当に?という信じられない表情に変わる。

 

「こ、これ…本当なのか?」

 

『はい、嘘ではありません。幸桜こはるさんが恋愛対象者になりました』

 

幸桜こはるまで!?なにやってんだよ!行幸みゆきの馬鹿っ!」

 

『本当に…行幸みゆきさんは不思議な人です…偶然に偶然を重ねて、本来であればそうならないルートで恋愛対象者を増やしてしまいました…シャルテ、貴方も含まれているのですよ…』

 

 行幸みゆきは本当に不思議な奴だ。最初はあんなに大嫌いだったのに。逢う度に嫌いになっていったはずなのに…何で?知らない間に僕の嫌いは好きに変換されていたんだ?

 いや、今でも大嫌いだ!でも…大嫌いなのに…大好きなんだ…

 僕を助けてくれたり、僕の予想外の事ばっかりするからだ…って、そうだ…あの時の事!

 

「リリア姉ぇに聞きたい事があるんだ!」

 

 確認しなきゃ。あれはリリア姉ぇが仕組んだ事だったんだって。あれのせいで僕は行幸みゆきを本当に好きになったんだ!

 もし、あれが仕組まれた事だって確認できたら…僕は行幸みゆきを諦める事が出来るかもしれない。

 僕も引かれたレールの上を走って恋愛なんてしたくない!

 でも…なんて酷い仕打ちだよな。これってまるで何かの試練みたいじゃないか…

 

『聞きたい事?ですか?』

 

 シャルテはこくりと頷く。そして、唾を「ゴクッ」っと飲むとリリアに向かって話しを始めた。

 

「僕が…強姦魔に襲われたのは知ってるよな?」

 

『はい』

 

 やっぱり…リリア姉ぇは知っていた。僕が襲われた事を…という事はやっぱり?

 

「あれって、リリア姉ぇが仕組んだんだよな?」

 

 シャルテはリリアが仕組んだ事を確認する意味で聞いた質問だった。しかし…なんとリリアは首を横に振った。シャルテはそれを見て戸惑う。

 

「えっ?じゃ、じゃあ、天使長が仕組んだのか?そうだよな?」

 

 リリアは再び首を振った。シャルテは絶句した。

 

『私も天使長様も何もしていません。あれは…あれも本当に偶然の出来事なのです』

 

 シャルテは苦笑する。ありえない。あんな事が偶然に起こるなんてありえない。

 じゃあ行幸みゆきは?行幸みゆきが助けてくれたのは?あれも偶然なのか?

 まさか…そんな馬鹿な。

 

「ま、待って…あんな偶然が起こるはずないじゃないか!」

 

 シャルテはリリアの言葉を強く否定した。

 

『それが、起こるのです』

 

「そんな…嘘だ…」

 

『シャルテは気が付いてますよね?私達も含めてですが、行幸みゆきさんに関わった人間や天使にはありえない事が普通に起こっている事を。幸桜こはるさんが恋愛対象者になった事もそうですし、貴方は行幸みゆきさんに恋をした事もそう…』

 

「待って…言ってる事は解る。でも、待ってくれよ…だってさ、これってゲームみたいな展開じゃないか…でもこれってゲームじゃないんだぞ?ありえないだろ?」

 

『そうです…ゲームではありません。ゲームであれば一度閉ざしたルートが復活するなんて事はありえません。しかし、ゲームではないからこそ、行幸みゆきさんは幸桜こはるさんを恋愛対象者にしてしまったのです。そして、一人に対して恋愛対象者が三人になったという事実。これもおかしな事なのです。本来であれば、同じ時間ときには一人の対象者しか存在しないはずなのに…想いの一番強い人が恋愛対象者になるはずなのに…だからこそ天使長様も興味を持たれたのでしょう。いえ、行幸みゆきさんが特殊な人だと、天使長様は解っていたのかもしれません』

 

「……」

 

『シャルテまで本当に行幸みゆきさんを好きになってしまうなんて私は思っていませんでした…予想外の出来事でした。正直に言います。私はシャルテが好きという感情を、恋愛感情を今回の様な特殊なケースで理解できるとは思っていませんでした。行幸みゆきさんには好意はあった事は知っていました。しかし、嫌いな気持ちも強かったはずなのに…』

 

「……うぅ」

 

『そうですね…あの偶然の強姦魔事件が無ければ、シャルテの恋心はここまで強いものにはなっていなかったのでしょうね』

 

「ずっとリリア姉ぇや天使長が仕組んだ事だって思ってたよ…」

 

『流石に私達もあそこまではしません』

 

「…そっか…そうだよな…」

 

 大きな溜息をついて項垂れるシャルテ。

 

『それにしても…』

 

 リリアははニコリと微笑む。まるで天使のような笑顔で…いや、天使だった。

 

『シャルテが本当に恋する乙女になるなんてね…』

 

 その言葉にシャルテは顔をあげた。そして、その顔は見る見る赤くなる。

 

「な、何だよ!僕は元からお、乙女だ!」

 

『あらあら、そうだったんですか?良くも悪くも、行幸みゆきさんのお陰で乙女になったのでしょ?』

 

 リリアの鋭い突っ込みにシャルテは胸を押さえる。【グサッ】っと鋭い所をつかれた。

 

「た…確かに行幸みゆきのお陰で…って何を言わせるんだよ!」

 

『本当にシャルテは変わりましたね』

 

「…まぁそれは自覚してる…」

 

『あんなにツンツンしてたのに…恋に胸を痛める乙女になるなんて』

 

「べ、別に好きでツンツンしてた訳じゃないし、僕だって遅かれ早かれ誰かを好きになったりする事だってあったはずなんだ…」

 

『まさか、相手が行幸みゆきさんとは…本当にわからないものですね』

 

「本当だよ!なんであんな奴を!」

 

『でも、好きなんでしょ?』

 

「…な、何度も聞かなくっても、もう解ってるだろ!」

 

『何度も確認したくなっちゃうんです』

 

「リリア姉ぇこそ性格かわっただろ!」

 

『えっ?』

 

「絶対に行幸みゆきの影響を受けてる!意地悪さがあいつにすっごく似てる!」

 

『そうかもしれませんね』

 

「即答で認めるのかよっ!って…リリア姉ぇまで行幸みゆきに…」

 

『ないですね』

 

「これも即答かよっ!」

 

 いつの間にか、先ほどまでの重い空気は消えていた。シャルテの表情にも笑顔が戻っている。リリアはそれを見て少し安心した。

 

『ふふふ』

 

「あっ…もう一つ思い出した事があるんだけど」

 

 そう言うと、急に顔が赤くなるシャルテ。

 

『はい?何でしょうか?』

 

 しかしリリアは至って冷静である。

 

「えっと…リリア姉ぇが用意してくれたバッグなんだけどさ、その中にあれだが…あれだよ…ひ、避妊具とか…しょ、勝負下着とか入っていたんだけど?あれってどういう意味だよ…」

 

 照れるシャルテにリリアはニコニコと笑顔で答えた。

 

『子供が出来たらまずいでしょ?』

 

 ぶっと吹き出すシャルテ。顔は更に赤くなる。

 

「いや、意味がわからないし!だいたい僕は女だぞ!避妊具なんてつけれないだろ!」

 

 その台詞を聞いて、リリアはハッと口を押さえた。

 

『わ、私とした事が…シャルテを男性にするのを忘れていました!』

 

「えっ!?な、何を言ってるんだ!」

 

『いえ、シャルテのモデルになったアニメキャラは男の娘ですよね…シャルテが気を失っている間に男の子にするはずだったのに…うっかり忘れてしまいました…あぁ…とても本当に残念です…』

 

 リリアは本気で残念そうな顔をしている。

 

「リ、リリア姉ぇ!何を訳の解らない事を考えてんの!?僕を男にしてどうるするんだよ!?いやいやおかしいでしょ?だいたい、僕を人間にするのに参考にしたのがアニメっていう時点でおかしいし、僕は女なのに参考にしても男の娘を選ぶのもおかしいから!」

 

『だって、私はあの子が可愛いと思ったから…』

 

「くぅ…可愛いは認める…でもまぁ、結局は女のままだったからもういいんだけどさ…それに胸も…」

 

 チラリと自分の胸を確認するシャルテ。小さく頷く。

 

『私は男性になって行幸みゆきさんのアパートに潜入したシャルテを見てみたかったのです…』

 

「いや何それ!それで何を期待してるんだよ!?僕が暴走して行幸みゆきを襲う所か?」

 

『いえ、私は暴走はあまり考えてなくって…ほら、合意の上で行為に至る可能性もあった訳で…』

 

 そう言って、ちょっと照れるリリア。

 

「ない!ないから!」

 

行幸みゆきさんは縛られるのが好きみたいですよ?』

 

「いや、その情報いらないし!」

 

 シャルテの脳裏に思い浮んだのは裸で縛られた行幸みゆきの姿。

『へへへ…行幸みゆき…いい格好だぜ?』

 そう言って行幸みゆきを見下すシャルテ。

 ※これは妄想です。

『いやっ!止めてっ!こんな酷い事しないでっ!』

 涙目で訴えかける行幸みゆき。そんな行幸みゆきの顎をぐっと持ち上げる。

『口では嫌がってるけど…本心はどうなんだ?』

『わ、私は…』

 ※もう一同言いますが妄想です。そして、これ以上はR15ですので読者の皆様の妄想でお願いします。

 

「ひゃぁぁあ!」

 

 真っ赤な顔をしたシャルテの声が裏返った。

 

 駄目だってっ!ぼ、僕はなんていやらしい事を考えているんだ!

 

『おしかったです…シャルテも男になって、行幸みゆきさんを縛って、そして処女を奪っちゃえばよかったんです』

 

 リリアは笑顔で卑猥で過激な台詞をストレートに吐いた。

 

「ちょ、ちょっと待って!リリア姉ぇどうしたの?いや、それは無いからっ!何で僕が行幸みゆきのしょ、しょ…ひゃああ」

 

 ゆでダコの様に顔を真っ赤にして頬に手を当てる。

 シャルテは思った以上に純情だった。はい、未経験です。

 

『ふふふ…シャルテは面白いですね』

 

 リリアは口に右手を当てて、本当に楽しそうに微笑んだ。

 

「面白くない!」

 

 シャルテは本当に恥ずかしそうに両手で顔を覆う。

 そして、深夜の公園に女性二人の声がしばらく響いていた。

 

 続く

シャルテの立ち直りが早いのは天使だからです。

リリアが卑猥なのは行幸みゆきのせいです。

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