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どうしてこうなるんだ!  作者: みずきなな
【どうしてこうなるんだ!】
7/120

第六話 【俺は男?それとも…オンナノコ?】

 店長のノートパソコンからアニメのオープニングテーマらしき音楽が流れ始めた。

 すみれの一言に意気消沈していたはずの店長だったが、アニメが始まった瞬間にまるで大好物を目の前にした子供の様に目を輝かせ始める。


 その変貌に行幸と菫はまたしても引く。

 しかし、菫はいつの間にかアニメのオープニングに釘付けになっていた。

 どうも曲とキャラが菫のつぼにはまっているようで、かわいいキャラだねとか言っている。

 行幸はロボット系のアニメこそよく見ていたが、こういう系統のアニメにあまり興味は無かった。

 メイドはメイドでもエロゲの場合は許しプレイもする。目的はエロであってメイドではないから。

 だけど深夜枠の癖にエロなしメイドアニメなんて見てもつまらない。(偏見)

 だが、このアニメを見ない事には何も始まらない。

 行幸は仕方なく画面に目をやったていた。


 ノートパソコンの小さな画面で繰り広げられる現世では考えられないハーレム展開のメイドアニメ。

 そして神がかりなチラ見え隠し。そして、約二十五分で第一話が終了した。 

 行幸の感想はと言うと。これはマニアックすぎてダメだ。


 まず、登場人物。メインであるメイドの人数が尋常でないほどに多い。

 メイドがいすぎて主人公の家はどんな金持ちだ? というレベル。

 この世の中の数多くの社長さんもあんな屋敷みたいな家には住まないしメイドも雇わない。

 あと、ストーリーもよくわからなかった。

 そして、女の子まみれなのにエロがない。スカートが捲れても怪しい光が差しこむ。

 露出が一切ないという健全さ。それで深夜枠。

 この先の話でサービスシーンが満載なのかもしれないが、この出だしはないだろ。


 確かに、第一話を見た時点では全くもって面白さが理解できないアニメだった。

 まったくなんでこんなアニメを店長は好きなんだ?

 先まで見れば好きになれるのか?


「って! うわ!」


 ふと横を見れば店長の顔がマジやばかった。

 店長はニヤケ顔で余韻に浸っている。

 ムキムキ筋肉男がニヤケると気持ち悪いというよりも怖い。


「店長、なんて顔してんだよ?」

「みゆきぃ、かわいいだろ? かわいかっただろ? 何度見てもかわいいよなぁ、神無月みゆきは……」

「おい店長、もうアニメは終わってんだぞ?」

「可愛いよなぁ…みゆき」

「無視かよ…(っていうか、みゆきって言うなよぉ! 気持ちわるいし)」


 またしても店長のイメージが壊れた。

 しかし、店長のイメージが今日一日でここまで崩壊するとは思わなかった。

 昨日まではスポーツマン店長のイメージだったのに、今は完全にオタク店長だ。

 まぁこれが本来の店長なんだろうが、どうしてここまで崩れたんだ?


「みゆき、ほっときましょう」


 気が付けば菫は行幸顔を正面からじっと見ていた。って何で正面!?


「な、何だよ? 俺の顔に何かついてるのか?」

「……」


 しかし答えない。


「そんなに見るなよ」

「……」


 しかし答えない。


「おい、聞いてるのか!」

「大声出さなくっても聞こえてる」

「じゃ、じゃあ……」

「ストップ! 動かないで!」

「えっ?」

「ふーん……なるほどね、それにしても良く似てるわね。ほんと信じられない」


 すみれは一歩下がると、今度は行幸みゆきの全身を舐めるように見た。


「本当に似てるか? 俺にはよくわからないんだけど」


 行幸も自分の格好を確認する。


「そりゃ行幸みゆきは自分の姿を自分で確認出来ないだろし、声だって自分で聞く声は私達が聞く声とは違って聞こえるから解らないだろうけど。でも似てる。いや、似てるを通り超してるわね」

「何だそれ? それじゃまるで俺が本物って事じゃないか」


 菫はパンと手を叩いた。


「そうだ! そこらへんに立ってくれる?」 

「え? 立つ? ここに?」

「ええ、そうよ」


 行幸みゆきは言われるがままにレジの前に立った。

 すると、菫はノートパソコンを覗きながら行幸に色々と指示を始める。


「な、なんだいきなり?」

「いいから、検証してんだから、言う事を聞いてよ」


 行幸みゆきは言われるがままに格好をつけた。


「検証ってなんだよ!?」

「黙って指示に従っててよ」


 何で俺が命令されないといけないんだ?


「そこはもうちっと右かな?」


 いきなり低い声。


「へっ!? 右?」


 声に反応しつつも声の方を見れば、店長がいつの間にか参加している。


「そうそう、そこで両手を胸の前で手を組んでね……うん! いい感じよ!」

「いい感じって、俺に何をさせる気だよ? あと、店長まで何時の間に?」

「俺が参加したら駄目か?」

「いや…えっと…駄目というかさ…」

「みゆき、そんな事は気にしないで続けて」


 いや待て! 気にしろよ!


「はい、そこ! そう! そうそう! ああ! うん! OK! それでいいわ! あとはそこでこの台詞を言うのよ!『私はご主人様が大好きです』って」


 今なんと?


 行幸がつくり笑い=苦笑したまま固まった。


「ちょっと待て。何だその台詞は?」

「何って? だから、今は重要な検証中なんだって言ったよね? だからやってもらえる?」

「いやいや、何で俺がそんな恥かしい台詞を言わなきゃいけない?」

「これ、ぜんぶ行幸みゆきの為だから。これで何かが解ればもしかすると男に戻る方法が解るかもしれないんだよ?」


 何だと!? 男に戻る方法が解るだと!?


「おい、マジで男に戻る方法が解るのか?」

「解るというか、戻る方法と言うか、切欠が見つかる可能性があるかもでしょ? だからわかった? 協力して」

「あ、ああ、でもさっきの台詞は流石に恥ずかしいんだけど」


 菫は大きくため息をついた。


「そんな可愛い顔で言われてもねぇ」


 いや、好きで可愛い訳じゃないんですが?


「早く、さっさとしないとお客さんが来ちゃうかもしれないじゃん」

「う……」

「あーもう! こういう感じよ! やさしく、やさしくこうよ? 胸の前で手を組んでぇ、私はご主人様が大好きです……」


 行幸は一瞬で目が点になった。


「今のはすみれの声なの?」


 菫の声がめっちゃ可愛かった。今まで聞いた事の無い声だった。

 そして、恥じらう姿も演技とは思えないくらいに可愛い。


「そ、そうだけど?」


 まさか、すみれを素で可愛いと思ってしまうとは思っていなかった行幸。

 あまりのギャップにドキドキしてしまう。


「ちょ、ちょっと! そ、そんなにじっと見ないでよ……恥ずかしいなぁ」


 ぽっと頬を染めた菫。行幸、またしてもヤラレる。


 お、おいおい、どこのエロゲのヒロインだよ!

 すみれだろ? お前はあの鋼鉄の女、すみれだよな?

 あ、鋼鉄の女は俺が命名しました。


「み、行幸みゆき! 早く言ってよ!」

「え? あ、ああ…」


 仕方ない。ここまで来たら……。


 行幸は覚悟を決めて恥かしさを我慢してついに。


『私は…ご、ご主人様が…大好き…大好きです』


 言い放った。

 同時に行幸みゆきの顔がみるみる真っ赤になってゆく。


「お、おい……ちゃんと言ったぞ? だからもういいだろ?」


 レジを見ると菫と店長がきょとんとした表情で行幸を見ていた。


「おい? 菫? 店長? どうしたんだよ?」


 行幸の声にハッと我に戻った菫と店長。


「よ、よかったわよ? なかなか…うん…ね? 店長」

「え? ああ、すごく…か…可愛かった…台詞を言った後に顔を赤らめた所なんて、すごいアドリブだったぞ?」


 いや、それはアドリブじゃないんだけど。


「本当に女の子っぽくって可愛かったわよ…悔しいけど認めてあげるわ」

「いやいや、別に認めなくていいから」

「そ、そうだ! 今の台詞を録音したから行幸みゆきも聞いてみろ」


 店長はノートパソコンをカチャカチャと動かし始めた。


「何だと!? いつの間に録音したんだよ?」

「いつって、お前が話してた時から普通に録音してただろ」

「私がお願いしたの。検証の為に必要だからね」

「そんなの聞いてないぞ? 録音するとか」

「うん、言ってないし」 

「なっ…」


 こいつらの行動がカオスだ。


行幸みゆき、ちょっとこっち来て。ちゃんと検証するからさ」

「わ、わかった」


 どうせ聞きたくないと言っても無駄なんだろ?


 行幸はため息をつきながらノートパソコンを覗いた。


「いい? これがアニメの方で……」


『私はご主人様が大好きです』


「でもって、これが行幸」


『私は…ご、ご主人様が…大好き…大好きです』


「…………マジで俺?」

「そうだよ?」


 に、似てるってもんじゃないだろ?


「結論から言うと、行幸はこのアニメのヒロインである【神無月みゆき】に容姿も声も両方そっくりである。でも、台詞についてはみゆきの方がぶっちゃけ可愛いかったと私は思う。さっきの顔を赤らめていた行幸みゆきは……その……お、女の私から見てもマジ可愛かったもん」


 何故が顔を赤らめる菫。何でお前が赤くなる?


「いや、可愛いとかそんなのはどうでもいいから。それより俺が男に戻る方法とかわかりそうなのか?」

「あんた馬鹿? そんなのそう簡単にわかるはずないじゃん」

「待て! お前はさっき見つかるかもしれないって言っただろうが!」

「かもよ! かも! かもっていうのは絶対じゃないの!」

「そうか! すみれは元からこんなんで戻る切欠なんて見つかるはずないと思ってたんだろ!」

「そ、そんな事は……」


 菫は行幸から視線をはずした。


「ほら、答えられねーじゃねーか! やっぱりな? 俺は男に戻る方法が見つかるかもって言うからあんな恥ずかしい台詞を言ったのにさ」

「ま、まぁまぁ、そのうち戻れる方法も見つかるかもしれないしさ、そんなに気を落とさないで頑張ろうよ」


 苦笑しながら行幸をフォローする菫だったが、伸ばした菫の手を行幸は叩いた。


「痛っ! なにするのよ!」

「お前は実際に性別が変わった事が無いからそんなに簡単に言えるんだ! 俺はな? 俺は今すっげー辛いんだぞ? わかってんのかよっ! わかってねーから軽々しくそんな台詞が言えるんだろ! くそ!」


 行幸が怒鳴ると菫は言葉を失い俯いた。

 ここで普段であれば反論がくるのが菫だ。それなのに直撃を受けたようなダメージを食らっている。


 あれ…ちょっと強く言い過ぎたかなと焦ったのは行幸だった。

 そんな焦る行幸の横にゆっくりと店長が側に寄ってくる。


「おいみゆき」

「何だよ?」

「大丈夫だ。俺はお前をすごく心配してる。俺は例えお前が女のままでもずっと支えてやる」


 行幸はパチパチと瞬きをした。


「い、意味がわからないから断る!」

「だから、もし戻れなくっても本当に俺が支えてやるって事だよ」

「い、いや、意味が解ったから断る!」

「安心しろ、俺がいる」

「聞けよ!」

「俺に任せておけ!」

「だから聞けよ!」


 店長は真剣な眼差しでそう言うといきなり行幸の両手をぎゅっと握りしめた。

 店手を握られた瞬間に背筋が凍るほどにぞっとした行幸。体に震えが走る。


「うわぁぁぁぁああぁぁぁぁぁあっぁあ! は、離せ! さっき断るって言ってるだろうが! 俺は絶対に男に戻るんだから! 店長に支えて貰いたいと思ってないから!」


 行幸は強引に店長の手を振りほどいた。


「別に俺に気を使わなくってもいいんだぞ?」

「使ってない! マジで遠慮する!」


 き、きもち悪い。危険だ! あまりにも今日の店長が危険すぎるぞ!

 すっげー真剣な所が危険さを際立たせてるし。


「店長、そういうきもい行動はマジでやめて欲しい」


 俯いたまま動かなかったすみれが声を発した。


「え? 何だ? 何が駄目なんだ?」

「きもい。元々男のみゆきの手を握ったりしてマジできもい」

「だから言ってるじゃないか、俺はみゆきが女のままでも大丈夫だという事を伝えたいだけで……」


 すっと店長の懐に入り込んで(行幸との間に割り込んで)菫は店長を睨みつけた。


「店長はさっき行幸みゆきが私に言った言葉を聞いてなかったの? 私は……」


 と思ったら、すみれは再び言葉を失った。


「菫? 大丈夫か? あ、あれだよ、さっきは俺が強く言い過ぎたから。謝るからさ」


 すみれは俯いたまま首を横に振った。


「大丈夫だよ。ごめんね行幸……」


 いや、全然大丈夫そうには見えないんだけど。


「行幸の言う通りだよ。私はみゆきが女の子のなった事を少し面白がってた。そうだよね? 好きで女の子になった訳じゃないのに、私って酷い女だよね? こんなにみゆき事が……なの……に……」


 再び菫は言葉を詰まらせた。

 らしくない。普段のすみれとはまったく別人だった。


 俺はそんなになるまで強く言い過ぎたのか? それとも他に何か原因があるのか?


「菫、あのさ、今日のお前ってお前らしくないぞ? そんなに元気を無くすなよ。俺はそんなお前を見ていると何だかすごく悪い事をしたみたいに感じるじゃないか」

「ううん、みゆきはぜんぜん悪くない。ごめんね、ちょっとさっきの事が胸に突き刺さるような感じがして」

「まぁそうだな。やっぱり俺はちょっと強く言い過ぎたかもしれない。でもあれだぞ? 俺は本当に男に戻りたいんだぞ? わかってくれ」

「……うん。私も戻って欲しい」

「そうか。だったらさ、一緒に男に戻る方法を本当に早く見つけようぜ」

「そうだね、解ったわ。私はみゆきが男に戻れる方法を見つけるために協力する」

「本当にか?」

「うん、本当にだよ! それと店長!」 

「何だ?」

「店長もみゆきが男に戻れるように協力しなさい!」

「え!? 俺も!? あ、わ、わかった? って何で命令口調なんだ?」

「命令してるからでしょ!」


 うわぁ。菫さん復活?


「あと、行幸みゆきに手を出したら私が許さないからね?」

「は、はい?」


 菫がぐっと拳を握ると店長のアゴにこつんとあてた。

 知らない間にすみれが完全に行幸の味方になっていた。


「で、早速なんだけどさ、今日の店頭でのキャンペーンは止めたほうがいいと思う」


 店長はカクリと首を傾げると、何で? といった表情で菫を見た。


「理由は簡単よ。行幸みゆきが【神無月みゆき】にそっくりだってわかったでしょ? それに声までそっくりという事もわかった。という事は、あのアニメを知ってる人がこの秋葉原に来ていた場合、行幸みゆきを見つけて寄って集ってくる可能性がある。正直言ってあの系統のアニメの熱狂的なファンは危険な場合もある。情報を拡散されたらすごい事になるかもだし。だから一人で立たせると行幸みゆきが危ない」


 なんとあのすみれが俺を心配してくれている。

 化粧までしておいた癖に完全に俺の味方状態に突入だ。

 しかし、何でずっと頬が赤いんだろうか? そんなの今日は暖房もきいてないだろ?


「うーむ、確かにそうかもしれないなが……」

「俺も正直やりたくない」


 店長は二人の意見を聞いても首を横に振る。納得していないようだ。


「だが、あのアニメファンの代表として言わせてくれ。あのアニメのファンが危ないかもなんて偏見だ。俺みたいにあのアニメが好きでも健全な男だっている」

「でもね店長、ごめんなさい。店長はすでに私の中では健全じゃなくなってる」

「それには俺も同じ意見だ」

「そ、そんな馬鹿なっ……」


 店長が崩れるように床にへたり込んだ。


「まぁ店長は自分から秘密を暴露したんだし、自業自得じゃないのか?」

「店長、実は止めたい理由がもう一つあるの」

「ん? まだあるのか?」

「そうよ。どっちかというとこっちの方が需要かも」

「重要かも? って、お前、何で俺の胸を見てるんだよ!」


 菫がいつの間にか行幸の胸をじっと見ていた。


「みゆき。下着をつけてないわよね?」


 その言葉に反応した店長が機敏に顔を上げた。

 まるで器械体操のピラミッドで四つん這いになった時に笛が鳴って顔を上げたような動作で。


「ほ、本当か!」


 そして笑顔の店長は行幸の胸をロックオン!


「そういう事に素早く反応するんじゃねー! っていうか、露骨に見るな!」


 行幸みゆきは思わず顔を真っ赤にして両手で胸を隠した。


「はははは! 行幸よ。お前も元が男ならわかるだろ? 今の言葉に反応しない男なんっていない!」


 言い切る店長。そして納得する行幸。

 確かに反応しない男の方が危ないかもしれない。


 店長の視線は行幸の胸をずっとロックオンしていた。それも堂々と。

 流石にここまで凝視されると、さっきの理由があっても恥ずかしくなる行幸。


「質問だ。行幸は本当にノーブラなのかね?」


 ひたすら胸を隠す行幸。

 そして店長の笑みにまた疑問を覚えた。


 何だよ店長? 何でここまで露骨にエロい質問を出来るんだ?

 今までこんな店長は見た事ないし、今日の店長はおかしすぎるだろ?

 なんか本能のまま行動してるみたいだぞ?


「店長、俺は男だぞ? 俺が女物の下着とか持ってるはずないだろ? 普通に考えればわかると思うんだけど? あと店長! 見過ぎだから!」


 行幸が店長に向かって怒鳴っていると菫がいきなりメイド服の上から行幸の胸を掴んだ。


「うわ! こ、こら! 何すんだよ!」

「ノーブラチェックよ」


 そう言って菫は数度行幸の胸を揉んだ。

 菫が胸を揉む度にむにゅっとしたなんとも言えない感触が行幸の脳へと伝わってゆく。

 店長はその光景を真剣な眼差しでじっと見ていた。


「か、かく……確認って何だよ! お、おい! こ、こら菫! やめ……やめろ…ス…トップ…」


 しかしすみれは揉むのをやめない。


「……思った以上に大きいわね」


 むにゅむにゅむにゅっと菫は先ほどよりも強く行幸の胸を揉んだ。


「も、揉むなぁ……もう確認終わっただろ? 終わり……終わりにして」


 しかし、すみれはまったく揉む事を止めない。

 むにゅむにゅっと形を何度も崩す行幸の胸=おっぱい。


「結構弾力もあるのね」


 な、なんだこの状況は?

 すでに下着の確認なんでどうでもよくなってるんじゃないのか?

 それに何だ? すみれの奴、俺の胸で遊んでるんだよ?

 さっきの俺を擁護するような言葉は何だったんだ?


 むにゅむにゅ…っと揉まれる度に体に電流のようなもの走る。


「駄目よ、こんな胸があるのに下着つけないと。形も崩れるし、肩だって凝るわよ?」

「つ、つけ…るって…持って…な…い…もんは…く…やめてくれ」


 くそ…こいつはなんでやめねーんだよ。

 うーん…あれ…何だこの感覚は…あ…何だ…体が熱い…ん…んんぁぁ。


「や…やめ……うっ……………あんっ!」


 行幸はついに喘ぎ声を出してしまった。


「あんっ! だと!?」


 店長がその声に素早く反応した。ニヤリと不気味な笑みを浮かべる。


 うわあぁぁぁ! しまった!

 俺は何で「あんっ」とか変な声を出してるんだよ!


 しかし、その喘ぎ声のおかげで菫は驚いて手を放していた。

 その瞬間に行幸は慌てて両胸を両手で隠して後退する。


「も、もう触るなよ!」

「今、喘ぎ声……だしたわよね?」 

「ば、馬鹿! 菫が悪いんだろ? お前が…くそ…」

「まさか感じちゃったとか? もしかして心も女になっちゃってたって事なの?」


 両手で口を覆って震えるすみれ


「うわー! なんでそうなる? やめろ! 馬鹿か! 俺は男だから感じるとか……」


 だけどちょっと変な気分になったのは事実。


「ああ、もう駄目だ……俺はもう駄目だぁ……わかんねー俺って何なんだよ? まさか女になったのか?」


 なってます。と誰も突っ込まない。

 そんな混乱する行幸に店長がゆっくり近寄ると、頭の上にぽんと手を乗せた。


「行幸」

「て…店長?」

「大丈夫だ」


 優しげな大人な貫禄のある表情。

 そして、店長の視線は何故か行幸の視線のずっと下。

 行幸が店長の視線をゆっくりと追うと、視線は胸の谷間にあった。


「な、何が大丈夫だ!」


 行幸は店長の手を払いのける。しかし、店長は今度は両肩に両手を乗せた。


「お前は立派な女の子だ!」

「えっ!?」

「頬を桃色に染めたあのエロチックな表情! そしてあの喘ぎ声! お前は完全な女の子だ!」

「俺が完璧なオンナノコ?」

「そうだ!」

「オレガオンナノコ? ソンナハズガナイ…オレハ…オトコ…」


 自分で自ら胸を触る。柔らかい。

 股間を確認する。ない。

 壁にかかっていた鏡を見る。そこには女の子。


「そ、そうか、俺は女の子なんだよな。女性化して女になったんだよな? さっき胸を揉まれてちょっと変な感じになったのも女になったからか。やっぱり俺は完全な女の子になったのか」


 独り言の無いようはともあれ、現実を突きつけられて自分が女になったと冷静に確認した行幸。

 そして、どうすればいいのかわからなくなってしまった行幸はいきなり気が遠くなり崩れるように膝をついた。


 続く

後書き内容紹介?

アニメ『わたしがメイドでごめんなさい』

制作会社はエンジェルぷれしす

2年前の深夜アニメで毎週月曜日の二十五時から放映していた。

全十二話で終了。続きそうであったが続編は制作されなかった。

続編を望む声も多かったが、続編以前に制作会社が倒産した。

あるお金持ちの我がまま息子の元に来たメイド達の物語で、ヒロインは神無月みゆき。他にも数人のメイドがいた。内容は恋愛系でとにかくメイドが可愛い。※私の妄想アニメなのでこんなもんで簡便を…

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