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どうしてこうなるんだ!  作者: みずきなな
【どうしてこうなるんだ!】
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第六十三話【俺のコレクションの裏書きは読んだら駄目だって!】

シャルテの様子がおかしくなってる?うん、おかしくなってるね。はいはい!ふふふ…えっと…これから先はちょっとえっちい展開になります!覚悟してくださいね?(いや、そんな酷くないよ?)

 シャルテの視界には行幸みゆきの表情が飛び込んだ。

 心臓は張り裂けそうな程に高鳴る。


 「僕は…やっぱり…」


 シャルテは本当の気持ちに気がついた。いや、前からそうだった事を認めざる得なかった。

 しかし、シャルテはそれを否定する。否定しようと気持ちを抑え込む。

 駄目なんだよ…僕は天使なんだぞ?恋なんてしちゃ駄目なんだ…人間を…行幸みゆきを好きになっちゃ駄目なんだ!

 

 これが、シャルテにとっての初恋。天使として生まれて始めての恋。

 恋愛を担当しているシャルテは、まだ自分で恋をした経験が無かったのだ。

 

 何だよ…何でこんなに胸が痛いんだ。苦しいんだ。うぐぅ…

 恋ってこんなに辛いものなのか?人間はこんなに辛い想いをして恋愛をしているのか?

 そっか…僕は全然理解していなかった。人間の恋の苦しみを…辛さを…うぅ…


紗瑠しゃるさん?本当に大丈夫?」

 

「だ…大丈夫…」

 

 シャルテはそう言って拳を握った。ぐっと力を込めた。

 

 駄目だ…このまま側にいると僕はもっと行幸みゆきを好きになってしまう。

 そうだ、行幸みゆきには早く恋愛対象者と恋人同士になって男に戻って貰らえばいいんだよ。

 そして…早く天使に戻るんだ。早く行幸みゆきの側から離れるんだ。

 頑張れ僕…この気持ち、行幸みゆきには悟られないようにするんだぞ。

 

 シャルテは両手で胸を抱くように抱え込んで俯く。

 

紗瑠しゃるさん大丈夫?どうしたの?胸が痛いの?」

 

 すごく心配そうに声をかける行幸みゆき

 

「あっ、ごめん…大丈夫。すぐ収まるよ」

 

 シャルテは胸をぐっと押さえながら顔を上げる。

 

「そっか…えっと…今日は色々あったんだし、余計に体調もよくないんだと思うんだ。だから、早く休んだ方がいいよ?」

 

 行幸みゆきは優しい笑みを浮かべてそう言う。

 シャルテは微笑みを作りながら行幸みゆきを見た。

 

 行幸みゆきは馬鹿だな。僕がまだあの事件を引きずってると思っているのか?

 僕は天使だぞ?まったく、心配性だよな。僕は大丈夫。あの事件に関してはね…

 でも…別の意味で大丈夫じゃないよ。どうしてくれるんだよ行幸みゆき

 だけど…鈍感な君は僕の気持ちなんてきっとわからないんだろうな。だが、それでいい。それでいいんだよ。

 

 その時、目覚まし時計がじゃんじゃん鳴り響く。

 これは行幸みゆきがMMOの為に掛けた目覚ましだ。

 行幸みゆきは慌ててその時計を止めた。

 

「ご、ごめん!これはちょっとえっと…ま、間違って鳴っちゃって」

 

 そして、懸命に言い訳をする行幸みゆき

 

「あはは…MMOの更新時間なんでしょ?わかってるよ…」

 

 シャルテは微笑みながら言った。

 

「えっ?よ、よく知ってるね?」

 

 行幸みゆきはシャルテの反応に唖然とする。

 シャルテはハッとした。そうだ、僕がこの事実を知っている訳が無いんだった。でも、僕はそのゲームをプレイしている事になってるんだよな?だったら大丈夫か?

 

「わ、私も更新時間はチェックしてたんだ。そうだ、今日はパソコンしないの?」

 

「えっ?パ、パソコン?」

 

 パソコンをチラリと見る行幸みゆき

 

「もしかして私に遠慮してた?遠慮しなくていいのに」

 

 シャルテは思った。いっそパソコンをやってくれた方がいいのにと。

 

「いや、別に遠慮はしてないよ?」

 

「本当に?私もMMOやってるんだから、本当に遠慮しなくていいからね?」

 

 シャルテは無理に笑顔を見せた。すると行幸みゆきも笑顔を返してくる。

 

「そうか、そうだよね!あはは…」

 

「うん…」

 

 しかし、行幸みゆきはパソコンディスプレイに麻で出来ている布を被せて隠した。

 

「あ、あれ?やらないの?」

 

 シャルテがそう言うと、行幸みゆきはニコリと微笑む。

 

「今日はいいよ。別に毎日プレイしなくてもいいかなって…」

 

「そ、そうなの?僕は別にいいけど…行幸みゆきは…やりたいんじゃないの?」

 

「いや、今日は…あれ?」

 

 行幸みゆきは突然笑顔になる。

 

「え?な、何?どうしたの?」

 

「今、紗瑠しゃるさん、『僕』って言ったよね?」

 

「あっ」

 

 シャルテは口を右手で押さえた。

 

 油断してた!もしかして僕がシャルテだってばれる!?

 

 しかし、結論、焦る必要はまったくなかった。

 

「いいじゃん。『僕』って言い回し、私は好きだよ?」

 

 そう言って行幸みゆきはニコリと微笑む。まったく疑う事も無く。

 

「そっか、紗瑠しゃるさんってそだったんだ?そうだよね、普段使わない口調で無理に話をしていると、なかなかうまく話せないよね。わかるわかるよ!」

 

 シャルテの元気が無い理由をまたもや勘違いしている行幸みゆき

 

「遠慮しないで、『僕』って言っていいからね?」

 

「う、うん…」

 

「そっかぁ…僕かぁ…紗瑠しゃるさんってなんだろ?可愛いいよね」

 

 意識なく行幸みゆきはそう言った。しかし、今のシャルテに効果抜群だ。

 

「か、可愛くなんてない!」

 

 顔を真っ赤にして両手を両頬にあてて否定するシャルテ。

 

「ほら、そういう反応も可愛いよ?女の子らしくてね」

 

 行幸みゆきの追い討ち。

 シャルテは嬉しくて恥ずかしくて耐えられなくなった。

 

「ちょ、ちょっと、お手洗いにいってくる」

 

 何とか逃げ出そうと、真横にあったカラーボードに手をかけて立ち上がろうとする。

 その瞬間、カラーボックスが揺れて上からバサリと一本のゲームソフトが落ちた。

『ドン!ボテッ』っと音がしたと思うと、そのゲームは床を器用に転がってシャルテと行幸みゆきの間でとまった。

 慌ててそのゲームのタイトルを見る行幸みゆき

 パッケージには『僕のスゥートエンジェル~天使は僕に恋をしました~』と書いてある。

 

 行幸みゆきはごくりと唾を飲む。緊張が走る。嫌な汗が出る。そう、それはまさにエロゲーだった!

 

「ご、ごめんね。紗瑠しゃるさんの足の上に落ちなくってよかった」

 

 わざとらしくそう言うと、行幸みゆきは慌ててそのゲームを手に取る。そして、自分の後ろに隠した。

 しかし、いくら隠そうがシャルテにはどんなゲームかは解っている。だが、突っ込もうとは思わない。

 

「じゃあ、私はお手洗いに行って来るね…」

 

 シャルテはそれよりも、この場から逃げ出す事が先決だった。

 行幸みゆきの横を通過してトイレに向かおうとしたその時、シャルテの足がもつれた。

 

「きゃっ!」

 

 シャルテが声をあげると同時に、右にいた行幸みゆきに覆いかぶさるように倒れた。

 それと同時に例のエロゲは行幸みゆきの手を離れて宙を舞う。そして床へと落ちた。

 

 体が密着する二人。お互いに息を感じる距離。

 

「ご、ごめんなさい!」

 

 シャルテは慌てて体を起こそうとした。その瞬間、互いの目が合う。

 

【ドクンドクン】

 

 シャルテの心臓は強く鼓動する。気持ちが高ぶる。行幸みゆきいとおしくて堪らなくなる。

 

 どうしよう…このまま行幸みゆきに触れたい…ぎゅっと抱きしめたい。

 だ、駄目だ!だから特別な感情は駄目だって!

 

 しかし、シャルテの思考とは裏腹に、シャルテはまるで磁石に引きつけられるように体を寄せた。

 ぴとっと引っ付くシャルテの体。ぎゅっと押し付けられるおっぱい。

 

「ちょ、ちょと!?」

 

 行幸みゆきはすさまじく動揺する。

 一旦離れたはずのシャルテが、また引っ付くように上に乗って来た!

 胸をぎゅっと押し付けられて、首筋には「はぁはぁ」と息が吹きかかっている!

 

「ちょ、どうしたの?ねぇ!」

 

 シャルテの脇を両手で持って懸命に持ち上げる。しかし、まったく持ち上がらない。

 重いのではない。行幸みゆきが非力なのだ。


 シャルテは酔った時のように目をとろんとさせる。そしてゆっくりと行幸みゆきの胸に耳を当てた。

 

行幸みゆきって暖かいな…心臓の音が聞こえる…」


「な、何?ねぇ!どうしたの?」


 行幸みゆきも緊張してるんだ…僕もすごく緊張してるんだよ?聞こえるかな?僕の心臓の音…

 

 シャルテがふと横を見るとそこにはゲームが落ちていた。そう、先ほどのエロゲーだ。

 シャルテは無意識に横に落ちているゲームを手に取った。

 行幸みゆきはそれを見て更に動揺する。

 

「だ、駄目!それは見ちゃ駄目!駄目だから!本当に見ちゃだめだから!」

 

 しかし、シャルテは虚ろな目で裏表紙の卑猥な絵をじっと見た。

 そこには両手両足を縛られて自由を奪われた女性が、とてもじゃないがR15指定の許可範囲の文章では表せないくらいの事をされている絵が載っていた。

 

 すごいなこれ…僕はまだこういう経験が無いんだ…そうだ…確かリリア姉ぇが言っていたよな…天使でも人間になればセックスだって出来るって…愛しあえるって。

 

 そしてふと男の時の行幸みゆきの顔を思い浮かべる。公園で見た卑猥な夢を思い出す。

 

 行幸みゆきが相手だったら僕はいいのかな?うん、いいかも…ううん、行幸みゆきじゃないと嫌だ…行幸みゆきがいいよ…

 

 下敷きになっている行幸みゆきは、シャルテが平然と裏表紙を見ている姿に戸惑う。

 すると、今度は声をあげて裏表紙の解説を読み始めるシャルテ。

 

『このゲームは…天使と人間との恋愛模様を楽しむR18指定ゲームです…』

 

「ままま、待って!こ、声なんて出して読んじゃ駄目だよ!それは声を出して読むもんじゃないから!」

 

 しかしシャルテは止まらない。

 

『あなたの前に恋愛を司る四人の天使が現れた。その天使達は、貴方に恋人をつくってもらう為に地上にやってきたのです。恋愛スキルを磨く為に四人の恋愛を司る天使で色々練習しちゃおう。そして自分の彼女にして好きなタイプに教育も出来ちゃう。今までになかった天使との恋愛ゲーム、マルチエンディングでエッチシーン多彩です!もちろん人間のヒロインも四人も登場っ!そしてフルボイス』

 

 ふーん、天使が人間の恋人になれるゲームなんだ…天使が人間の恋人に…か…

 自分と行幸みゆきとの関係がゲームの内容と被る。

 

 やっぱり公園で見た夢、あれは予知夢だったのかな…

 僕と行幸みゆきが恋人同士になる…そんな未来もあるのかな…

 

 行幸みゆきは体を懸命に動かして、シャルテからゲームを取り戻そうとする。

 

「か、返して!もうおしまい!十分に見たでしょ?」

 

 シャルテはにこりと微笑む。そしてゲームをぽいっと投げた!

 

「へっ!?」

 

 そして、シャルテは上半身を起こし、行幸みゆきの両頬にやさしく手をあてた。

 

行幸みゆき…僕達もそういう関係になろうか」

 

「えっ?それってどういう意味ですか!?」

 

 行幸みゆきは焦る。そしてシャルテの目を見て更に焦った。

 

 な、なんでそんなに虚ろな目をしてるんだ…まさか?

 

 ここで思い出したのは幸桜こはるの暴走。あの時もまさに今回と同じような展開だった。

 幸桜こはるもいきなり暴走したんだ。切欠きっかけが今回も似すぎてるだろ。

 行幸みゆきは焦る。まさか紗瑠しゃるさんがフェロモンの影響を受けてる?

 

「おい!おい!紗瑠しゃるさん!」

 

 虚ろな目で何も聞こえていない顔。

 この表情は完璧に…何で?何でこの子がフェロモンの影響を受けてるんだ?おかしいだろ?

 俺を意識していない人間は影響を受けないんじゃ?まさか…前から俺を意識してた?のか?

 

 シャルテはまるで酔ったような感覚に襲われていた。天使としての理性が心の奥に押さえ込まれてゆく。そして、行幸みゆきに対する想いが、感情が気持ちがどんどん高ぶり表に出る。

 エロゲーの影響も受けてその想いは怪しい方向へと変化していた。

 

行幸みゆき…」

 

 続く

『僕のスゥートエンジェル~天使は僕に恋をしました~』


天使を題材としたエロゲーである。

4人の天使が主人公の恋愛をお手伝いという名目で、主人公とエッチな事をしまくる。

どの天使をパートナーにするかはプレイヤーが選択でき、実は天使と恋人関係にならなくても、人間のヒロインとのエンディングもある。

人間の女の子は4人。天使を落とすか女の子を落とすかはプレイヤーの自由。

だが…タイトルにある通り、エッチシーンが激しいのは天使。もう何をやっってもOK牧場だ。

行幸みゆきは卑猥なので、もちろん天使を相手にしている。

縛って吊してもう酷いプレイヤーです…


予約特典はわくわく天使ぶっくす。というイラストの描いてある本。


※もちろん仮装ゲームです。

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