第六十話【俺の妄想は並じゃないって自覚はある】
前置きなどいらぬわ!続きをどうぞ!(いえ、前書きが考えつかなかった訳じゃないですよ?)
無理なお願いと言われた行幸は少し身を引く。
何故身を引くのか?それはな…
今までの経験上の話だ。いや、実際の恋愛じゃないぞ。もちろんゲームの話だけど。
そう、ゲームの中で女の子が無理な願いをしてくる場合は、たいていが本当に無理なお願いだ。又は、頑張っても到達できない願い…
稀には「なーんだ、そんなことか」なんてケースもある。
しかし、リアルはどうだ?俺の予想ではろくでも無いお願いな気がしてならない。
ゲームであれば、ここでセーブをして色々な反応を何度も伺えるのに、リアルじゃどうしようも無い。
でも、悲観的になってても仕方無い。とりあえず、聞くだけ聞いてみようか…
「無理って何かなぁ…?えっと…聞いてから考えてもいいかな?」
断りたいオーラが抜群に出ている行幸。表情がお願いを聞くのは嫌だと物語っている。
そんな行幸を見てシャルテは一瞬だが苦しそうな顔を見せた。目を瞑り小さく頷く。そして、もう一度行幸に向かって口を開いた。
「本当にお願いなんです…」
言葉に本気が見えた。本当のお願いなんだなと行幸は感じる。
流石に「本当にお願いとなんです」なんて言われるとまったく聞かないという訳にはいかない。
行幸は心の中で、『仕方ないだろ?可愛い女の子のお願いだぞ?お願いくらい聞いてやれよ』と自分で言い聞かせた。
「じゃあ、言ってみて…」
行幸がそう言うと紗瑠は視線を下げて首を振る。
「ご迷惑そうなので…やっぱりいいです」
えっ?予想外の反応すぎるだろ!
行幸はその反応に戸惑ってしまう。
こういう反応をされると、行幸はもしかして俺のせい?なんて思いこんでしまう。そして、後ろめたい気持ちになった。
実は、これはシャルテの作戦でだった。こういう会話のやり取りのスキルに長けているシャルテ。演技力も抜群である。
しかし、そんな事だとは気が付いていない行幸はシャルテから話の内容を聞きたくてたまらなくなっていた。
「えっ?言ってよ。言いかけて止めちゃうとか気持ち悪いし。だから遠慮しないで言ってみてよ」
いつの間にか遠慮しなくて良くなったらしい。そして、シャルテの予想通りの反応をしすぎる行幸。
「えっ…でも…」
シャルテは【もじもじ】っと女の子をしてみる。言葉と態度の連携コンボ攻撃だ。
「いいから、そこまで言われて聞かない訳にはいかないでしょ?」
巧みな連続技に行幸は予想通りの反応。所詮、行幸はこんなレベル。
もはや行幸は話してくれないと困っちゃうんだ!という顔になっていた。
「じゃあ言います…行幸のアパートに泊めてほしい」
紗瑠は行幸の瞳を見ながら言った。ここ重要。話は目を見て話そうね。
「へ?今なんて?」
きょとんとする行幸。
「えっ?…えっと…行幸のアパートに…泊めて欲しいです…」
申し訳なさそうにもう一度お願い。ここも重要。
「俺の?アパートに?」
こくりと頷いた紗瑠。
行幸の顔がだんだんと真っ赤になってゆく。そして、【ドカーン!】と脳内で爆発事故が発生した。
な、なんだ?何だと!?ほぼ裸状態にコートを纏った可愛い女の子から『あなたの家に泊まりたいな…』(一部脳内変換されています)なんて言われてしまっただと!?
これって!これって!どういう意味だ?もしかして…俺に気があるのか?
あ、あれだろ?エロゲーで主人公の部屋に女の子が泊まるときはまずヤル展開だ。
という事は…まさか、セ、セセッセ?石鹸?
うぁああ自分でボケでどうするんだよ!石鹸ってなんだよ!そうじゃない!じゃないだろ…
まさか、これはそういうイベント?エッチシーンのフラグが立ったのか!?
行幸はちらりと紗瑠を見た。紗瑠と目が合う。すると紗瑠の頬が少し赤くなり、顔は動かさなかったが視線を外している。
あ、あれー?紗瑠さんの顔がちょっと赤くなってる気がする!?照れてるのか?
この反応は…まさか!まさか!やっぱりそうなのか?
行幸の脳内で、某エロゲーで二人で下校しているシーンが思い出された。
※ここからは行幸がプレイしたゲームの回想です。
『今日、行幸くんの家に行ってもいいかな…』
少女はそう言うとちらりと主人公に視線を送ってきた。
主人公を見ている少女の頬を紅色に染まっており、恥ずかしそうに自分の髪を右手でくりくりと弄っている。
主人公が少女を見るとふいに目が合う。すると、少女は恥ずかしそうに視線を外した。
『だめ…かな?』
彼女はアスファルトに視線を移すと、照れ笑いを浮かべた。
ここで選択肢。
『別にいいけど…』
『今日は駄目だ』
『今度にしないか?』
行幸は『別にいいけど』を選択。
少女は背中の後ろで手を組むと、照れながら空を見上げる。
その表情は本当に嬉しそうな笑み。
『嬉しい…行ってみたかったんだ…○○君の部屋に』
そう言って少女は照れ笑いを浮かべた。『えへへ』と照れながら笑う彼女がとても可愛い。今日は普段よりも一段と可愛く感じられる。
【場面が変更されて主人公の部屋】
『へぇ…これが○○君の部屋なんだ?思ったよりも男の子らしくないんだね』
彼女は物珍しそうに部屋を見渡す。
「男らしくないって?桃歌はどういう部屋を想像してたんだ?」(強制主人公台詞)
『えっ?えっと…もっといっぱい女の子のポスターとか張ってあったり…もっと散らかってたりするのかなって思ってた…』
「へぇ…そういう想像してたんだ?」
『えっ?え、えっと、あの、ごめんね!変な意味じゃないんだよ?ほら、男の子の部屋って始めてだし、よくドラマとかで見る男の子の部屋って、ああ、男の子なんだなって感じでしょ…だ、だからだよ?』
彼女の顔がどんどんと真っ赤になる。そして両手をパーに開き、胸の前でふるふると振る。
「あははは。別に気にしてないよ?」
『あ、ありがとう…わ、私っていつもこうなの…思った事をつい言っちゃうっていうか…本当に人の気持ちを考えないというか…ごめんなさい…こんな女の子…嫌いだよね?』
彼女は癖なのか、また自分の髪の毛を弄り始めた。そして顔を赤くしたまま俯いてしまった。
「そんな事ないよ。俺も結構そういう事を言っちゃう事もある。それに、桃歌の事、嫌いじゃないし…」
彼女はゆっくり顔を上げる。その瞳は潤み、顔は「えっ」と、驚いた表情になっている。そして彼女は主人公を見詰める。
『それって…あの…えっと…ああっ!また私って変な事ばっか考えてるっ』
「多分、桃歌の考えている事は間違ってない。そうだ、俺はお前が好きなんだ…」
(そう、ここだよ!何でエロゲの主人公はハッキリと好きだと言えるんだ?その勇気を俺に分けてほしいよ…)
桃歌は信じられないという表情で主人公を見た。
主人公は桃歌の手をぎゅっと握る。そして瞳に涙を浮かべた桃歌は主人公に言った。
『私も…私も○○くんの事が好きだったよ…ううん…今でも好き!この先もずっと好きです!』
「俺も好きだよ…この先もずっとな」
『どうしよう、嬉しい…やだ、嬉しいのに涙がでちゃうよ…』
主人公は優しく桃歌を抱きしめる。桃歌は主人公を抱き返した。
周囲の空気が変わる。心臓が高鳴る。胸の中で小さな可愛い少女が潤んだ瞳で自分を見ている。
この子を、桃歌を離したら駄目だ。心の奥で主人公は強く思った。
そして…主人公は右手の人差し指で桃歌の瞳から溢れる涙を拭う。
「ほら、泣かない」
『だって…止まらないんだもん…』
見詰め合う二人。そして自然と二人の顔は近づいてゆく…そして二人は口付けを交わした。
触れる唇と唇…少し震える桃歌は目を閉じて何度も何度もキスをした。
ゆっくりと唇を離す主人公。桃歌もゆっくりと瞼を開いた。
主人公はそのままギュッと桃歌を抱きしめる。
彼女の柔らかさを感じると心の中から何かが湧き出してくる。
桃歌が欲しくてたまらない。桃歌のすべてが知りたくてたまらなくなった。
主人公の心臓は鼓動を早く強くしてゆく。
すると、俺の心を読み取ったのか、桃歌は小声で言った。
『私…○○君に全部あげたい…私を○○君のものにして欲しいです…もう何処にも逃げれないくらい愛して欲しい…』
主人公は無言で桃歌を見た。
桃歌はしまったという表情で口を手で覆う。
『ご、ごめんなさい!私は何を言ってるんだろう…け、軽蔑したよね?また思ってた事を言っちゃうとか…幻滅したよね…私の事、嫌いになったかな…きっと、こんなエッチな子だとは思ってなかったよね?でもね…本当の私はすごくエッチなんだ…いつも○○君を見て変な事ばっかり考えてた…やだ…私って駄目すぎる…本当に駄目だよ…』
主人公はまた泣きそうになっている桃歌をぎゅっと引き寄せた。
「俺は桃歌が好きだ。全部好きだ。だから軽蔑も幻滅もしない。俺もずっと桃歌が欲しいって思ってた。桃歌を見ていやらしい事ばっか想像してた。だから…俺も駄目な奴なんだ」
『違うよっ!○○君は駄目なんかじゃないよ!』
「駄目だって…だってまたキスしたくなってる」
『私もしたいもん…キスだけじゃない。いっぱい色々な事したいもん』
そして主人公はベットに桃歌を押し倒した。
桃歌は仰向けに倒れると両手を主人公の方へと伸ばす。
『私を…あげる…』
主人公はその後、何度も何度もキスをした。
※これ以上は【R18】なのでここで終了です。(クレームは受け付けます)
行幸は脳内で最後まで妄想完了です。
やばい!どうしよう…そんな展開になったらどうしよう…
行幸は腕を組んで考えた。腕を組んだ瞬間に自分の体の一部分に腕の感触が…
そして、行幸はやっと気が付く。
むにゅっと凹む自分の胸の感触が腕に伝わっている。そう、男にはないその感触…
そうだよ…俺、いま女じゃん…女じゃないか!だめじゃん!出来ないじゃん!
明るい未来が絶望の未来になってしまった…女じゃ駄目じゃないか…
そうか、俺が女だから泊めて欲しいって言ってるんだ…
そうだよな…俺は何を勘違いしてるんだ。変な期待してどうするんだよ。
あんなゲームみたいな展開になるはずないじゃないか!女同士だぞ?
いやまて…もしかすると、百合?百合的なあれを期待しているのか?
どうやってもエロい方向に思考がいってしまう行幸。
※行幸の回想そのⅡ
『私…○○先輩の事が前から好きだったの…』
そっと顔を近寄らせる少女。頬を赤く染めて、虚ろな目で体を寄せてくる。
『…女の子同士じゃ…駄目ですか?先輩』
抵抗できない主人公。ゆっくりと近寄る彼女の唇。そして二人の唇は重なった。
相手は女の子なのに主人公の心臓はドキドキと心拍数を高める。体は自然と火照ってゆく。
彼女はキスをしながら主人公のブラウスに手をかけた。上から順序良く、ゆっくりと丁寧にボタンは外されてゆく。
『私…先輩とエッチな事したいです…先輩の全部しりたいです…だからいいですか?』
そう言いながら彼女の手は主人公のブラウスの中から背中に回る。『プチ』っと下着の外れる音。主人公の胸は露になった。
『先輩…とても綺麗です…』
※これ以上は【R18】なのでここで終了(クレームは受け付けます)
行幸の脳内ではまた最後まで妄想終了。
ひゃあぁあぁぁああ!と心の中で叫ぶ行幸。そして、顔が真っ赤になる。
いや、あれだよ?俺も実は興味が無くはないんだよな?
だってさ、紗瑠さんって結構かわいいし、胸もでかいし、下手に知り合いとちちくり合うよりもいいかなーとか思うんだ。(いや、そういう問題じゃないだろ)
あれだよ。女になったのは、本当に稀な経験な訳で、女としてそういう経験も人生の中で必要なのかなって少し思うんだ。(ぶっちゃけ必要ないです)
あれだろ?読者の男性陣は女の子になったら、まずエッチな事に興味を持つだろ?
でも男相手はちょっと駄目だな。だって初めては痛いんだろ?それに、もし子供が出来たらどうする?男に戻れなくなるだろ。(えっと、そういうのが前提ですか?)
まぁ、女の子同士ならね…後くれさもないだろ。(間違い無くあります)
さっき目に入った紗瑠の綺麗なおっぱいを頭に思い浮かべる。
しかし、その時だった。幸桜がいきなり脳内に登場。それも怒っている。
えっ?なんで幸桜が登場するんだよ!?それも怒ってるとか?
も、もしかしてこれって浮気になるのか?だから怒ってるのか?女同士でも浮気になるのか?いや、幸桜も女じゃないか…そして俺の中身は男だ!そうか、そうなのか?
…いや待て!浮気も何も俺は幸桜と付き合ってないじゃないか!付き合ってないのに浮気とか無いだろ?これは浮気じゃねー!
「………の?」
んっ?何か声が?
「あの…駄目ですか?」
はっ!そうだ!紗瑠さんの事をすっかり忘れてた!
どうする?どうすればいい?どう返事すればいいんだ?
ま、まずはあれか?本当にうちに泊まる必要があるのかを確認してみよう。
「え?ええっと?もう一度確認してもいいかな?紗瑠さんの家って近くじゃなかったよね?」
「近くないです…」
「ご親戚とか近くには…」
「いません」
「知人とか…」
「いません」
「泊まるあては?」
「ないです」
「じゃあ、本当に何で両国に来たのさ!」
「…言わないと駄目…ですか?」
紗瑠はそう言って俯いてしまった。
「えっ、いや…う、うーん」
どうしよう、これ以上は聞けない…
いや、今の問題はそんな事じゃない。この子が俺のアパートに泊まると言っている事だろ。
まずエッチな妄想をする前に考えてみろ行幸!
何気に俺の部屋は男の部屋なんだぞ?短時間なら誤魔化しもきくかもしれないが、ずっと居るとなるとヤバイだろ。悠長にエロゲーの妄想してる場合じゃないだろ!
今から急いで戻っても大量のエロゲーにH漫画、全部を押入れの奥へ封印するのは無理だ。
「やぱり駄目ですか?」
紗瑠は不安そうな表情で行幸を見ていた。
続く
『君の笑顔が眩しい 初回限定版』
春から夏休みまでを限定とした高校生活を主としたエロゲーである。
5人のヒロインが主人公と関わりを持つタイプで、選択肢は各ヒロインにつき4つしかない。
春風桃歌はそのヒロインの一人。
身長153センチの小柄な女の子で、主人公のクラスメイト。
昔から主人公に好意を抱いていたが、ずっと告白できていなかった。
この子は実はとてもエッチな子で、乱暴に犯されると喜ぶタイプ。
そう、行幸の大好きな縛れる女の子である。縛ってアブノーマルなエッチシーンが多彩で、行幸は何度もお世話になりました。
初回限定版はエッチシーンが各ヒロインに一場面追加となる。
サウンドトラックと書き下ろしポストカードもついてくる。
※もちろん仮装ゲームです。
という感じで続きます!