第五十九話【俺の横の女子のコートの下が気になるんだが】
強姦魔を撃退?した二人はアパートへと向かう。そして途中で行幸は女性にあるお願いをされるのだが…
頑張って続きをどうぞ!
倉庫を出ると先ほどの雨が嘘のように止んでいた。まるで最初から降っていなかったかのように突然雨は止んでいた。しかし、やっぱり降っていたのだと解る。道路には大雨の名残か大きな水溜りが残っている。
「雨…止んでるね」
行幸はそう言って右手を胸の前に出して空を見上げた。空には雲すら消えさっている。
「うん、そうだね」
シャルテもつられるように空を見上げる。そしてそのまま視線を行幸に移す。
それに気が付いたのか、行幸もシャルテを見た。
「じゃあ…行こうか」
行幸は笑顔で言った。そして、先に歩き始める。すると後ろから「待って」と行幸を制止する声がした。
立ち止まって後ろを振り向く行幸。
「何?どうしたの」
「行幸の携帯を貸して貰えるかな?」
「えっ?携帯?あ、はい…」
行幸は疑う事もなく素直に携帯を貸す。
すると、シャルテはおもむろに電話をかけ始めた。掛けた先は…
「警察のかたですか…ぐすっ」
えっ!警察!?
そう、シャルテは警察に電話をかけていたのだ。
「私…強姦されたんです…」
わざと弱々しい声で電話に向かって話しているシャルテ。警察もそれなりの対応をしているようで、何度もやりとりをしている。
「はい…○○×△の倉庫の中で…」
行幸はその行動を見て狼狽えた。
な、な!?さっきは警察には届けないって言ってたじゃん!何で警察に今さら電話してるの!?
「大丈夫です…暴風で壊れたドアに強姦魔が頭をぶつけて気を失ったから、なんとか逃げ出しました…」
「はい…いえ、私は名前も明かしたくないです…はい。ごめんなさい」
「男は気絶していたので…紐で縛ってます…はい…」
「はい…そうです…お願いします」
シャルテは電話が終わったのか、通話終了ボタンをぽちっと押す。
「行幸、はい…携帯」
そして、笑顔で携帯を行幸に差し出した。
先ほどまではとても弱々しかった声が普通に戻る。
「えっ?あ、う、うん」
なんとも言えない表情で携帯を受け取る行幸。
「これで、あの男もただじゃ済まないよね」
「そ、それはそうかもだけど…で、でも…強姦した証拠もないし…ちゃんと捕まるのかな?」
行幸が疑問を投げかけると、女性はニヤリと笑みを浮かべた。その笑みが何故か怖く感じる。
「大丈夫だよ。引きちぎった私の下着をあそこに置いて来たから」
笑みを浮かべて言う台詞じゃないだろ!そして下着って何!っと動揺する行幸。
「えっ!?えっと?下着?」
思わず声に出して聞いてしまった!というか、マジでどういう事?
まさか…現在進行形で…ノ、ノーブラだと言うのか?というか待って!もしかするとぱんてーかも知れないぞ?ノーパンなかもしれない!
行幸は女性の胸を見て、股間を見る。ええ、股間ですよ?お尻じゃないんですよ?
しかし、もちろん服の上からだと中は見えない。
どっちだ?コートに隠れてるからどっちも見えないじゃないか…いや、でも下は無いかな?なんて悩んでいると。
「ブラとか置いてあると証拠っぽいでしょ?」
答えきましたっ!答えはブラでしたっ!
行幸の視線は自然と胸にゆく。はい胸にです。つけてない胸にですよ。
だってノーブラですよ?意識するなって方が無理だろ!
胸を凝視していると、そこで感じた視線。視線を上げると女性がジッと行幸を見ている。
ばれてる!俺がおっぱいを見ているのがばれてる!?
焦る行幸。しかし女性はにこりと微笑むだけだった。
あ、そ、そっか…俺は今女だから助かったのか?それにしても…
行幸は悟った。この女は敵にしては駄目だと…
☆★☆★☆★☆★
アパートへ向かう途中の道。シャルテはコートを重ねて胸を隠していた。
先程まで暖かめであった気温も、晴れてから一気に下がってくる。今は肌寒さを感じる。
そんな中でたまに風に煽られて女性のコートがゆれる。そして、風で捲れたコートの隙間から、肌色の胸の膨らみ上部が行幸の目に飛び込んで来る。
シャルテもしっかり押さえれば捲れないのにも関わらず、何故か片手で軽く押さえているだけだった。
ちなみに、ブラをしていないので見えるのは肌色の膨らみオンリーです。
そう、男子たるもの女の胸は気になるもの。そして、ブラジャーをしていない事実を知っていれば尚更である。
本来であれば、先ほどあんな事件があったばかりだし、もっと心配してあげないといけないのだが…
だが、行幸が心配なのは胸だった。いや違った。心配なのではない、胸が気になった。気になるのだ!
ちらちらと見ていると、ぶわっと突風吹いた。行幸は心の中で叫ぶ「神風がきたこれっ!」
強風はシャルテのコートを大きく揺らし、そして捲った!
女性の手から離れて揺れるコート。女性は慌ててコートを戻す。
コートが女性の手から離れた時間は約一秒。しかし…
さきっぽまで見えた!見えたよ!神様ありがとうっ!ありがとうっ!
思わず腰の横でぐっと拳を握る。こっそりガッツポーズである。
シャルテは慌てて行幸を見た。しかし、横目で見ていた行幸は、咄嗟に視線を元に戻してばれなかった。
さっき見たおっぱいを脳裏に焼き付け作業。それと同時に幸桜の裸もリピート再生。
鮮明に思い出す幸桜の胸。
うーん…幸桜と比べると、この子の方がおっぱいが大きいよな。幸桜ってまだ大きくなるのかな?
いや、幸桜の胸はあれでいいじゃないのか?たぶんBだけど、形はあれだ、よかったじゃないか。それに…張りもあったし…
やばい…興奮してきた…妹で興奮するなんて駄目だろ!?
はい、その通りです。
行幸が顔を赤くしてエッチ妄想をしていると、「くしゅん…」とシャルテのくしゃみが聞こえた。
我に帰る行幸。そして女の子を見る。見れば小刻みに震えているじゃないか。
「寒い?」
「うん。でも大丈夫」
「本当に大丈夫?すごく寒そうだけど?」
行幸は震えるシャルテの肩にそっと手を伸ばす。
肩を抱くまであとちょっと!という所で手の動きが止まった。
ここで肩を抱き寄せて暖めてあげたいなって考えてたが…出来ない。ヘタレにはそんな事は出来ない。
伸ばした右手はシャルテの肩上でぐっぱぐっぱと妙な動きを見せる。そして、引っ込んでいった。
そんな行幸の怪しい行動と視線を感じたシャルテ。ふと行幸を見る。一瞬だが目が合う。
目が合うのは何度目か数え切れない回数になっている。しかし、またドッキっとする。
シャルテもここだけはちょっと制御不可能の様子で、また無意識に視線をはずした。そして…
「ほ、本当は大丈夫じゃない…」
思わず素直に本音を答えてしまう。
「そ、そうだよね!寒いよね?アパートまであと少しだから、もう少し我慢してもらえるかな?」
行幸は苦笑いを浮かべならがそう言うと、先ほどまで肩を抱こうしてしていた右手を見た。
くそっ…おしかったなぁ…
いや、あんたが引っ込めたんだろ?
ちなみに、さっきまでのエロ思考は見事に脳内から消えていた。
実はこの考えの切り替えの早さは行幸の特技だったりする。
そう、行幸は実家にいた時に鍛えられていたのだ。
以前、実家にいた時だった。自室でエロゲをやってたり、いやらしい漫画を読んだりしていた時、まるで何かを察知したかのように幸桜が部屋に入ってきていた。
幸桜はノックはするが、行幸が許可を出す前に毎回入ってくる。
正直ノックの意味は「入るね」であって。「入ってもいい?」では無かった。
そこで行幸は瞬時にエロ画面から別の画面へと切り替えるのだ。
最近のエロゲは緊急回避が常備されているものも多い。だからどうにかなるケースが多い。しかし、漫画には緊急回避はない。ボタンを押せば参考書になる漫画などない。
その場合は事前の準備である。行幸は参考書を用意しておいて、読んでいた。
幸桜のノックと同時にその用意した参考書を入れ替えるのだ!
え?入れ替える必要はあるのか?無いですよ?行幸が入れ替えていただけです。
っと、話を戻すが、何時の間にかそれがスムーズに出来るようになっていたのだ。
スキル【緊急回避】を習得済です。
えっと、ここで言っておきますが、行幸はバレてないと思ってますが、見事なほどにはばれてますよ?そして幸桜は狙って入ってました。そんな経験、あなたにもありませんか?
シャルテはと言うと…
行幸の手の怪しい動きなんてどうでもよかった。
本当に行幸に心配されている事が嬉しくてたまらなかった。そして、行幸に対する想いがどんどんと増幅される。
本人の自覚はないが、行幸に恋愛感情がフェロモンの影響を確実に受けていたのだ。
「心配してくれてありがとう…」
気持ちに素直になるシャルテ。思った事を言葉にする。
行幸は、そんなシャルテの言葉にちょっと照れてか頭に手を当てる。
そして、「ううん、だって……」そこまで言って重要な事を思いだした。
あ…あれ?この子の名前なんだっけ?
俺はこの子の名前を知らないっていうか、聞くのを忘れているじゃないか!
ここは恥ずかしいとか言ってられないよな?流石に聞いておかないとまずいだろ。
「え、えっと、貴方の名前教えて貰えるかな…ごめんね、思い出せなくって」
恥ずかしさを忍んで頑張って聞く行幸。
すると、シャルテは行幸をチラリと見る。そしてすぐに答えた。
「紗瑠…天河紗瑠です」
名前を聞いたら、行幸は鮮明に思い出した。
「あっ、そうだ!そうだった!エレベーターでも一緒だったね!」
って…あれ?なんか名前がシャルテに似てるなぁ…
ある意味、感が鋭い行幸だが、まさか本人だとは気が付いてはいない。
でも、シャルテは今は天界にるんだよな?とリリアの言葉を信じていた。
それに…シャルテは…っと視線が胸にゆく。
まさか、実はこいつがシャルテな訳ないよな?あいつは幼児体型で胸は皆無。そして、こんなに女らしくないしな。というか、まったく別人だなろ。俺は何でシャルテを思い出してんだよ。っていうか、あいつ何してんだろなぁ…
行幸は何気なく空を見上げた。
「どうしたの?」
シャルテが空を見ながら呆けている行幸に向かって問いかけた。
すると行幸はハッとした表情で造り笑顔。
「い、いや、ちょっと知り合いの事を思い出しててね」
「知り合い?」
「そう、知り合いの女の子なんだけどね…ちょっと男の子っぽくって、我がままで、素直じゃなくってね…」
シャルテはすぐに自分の事だと解った。そして、まさか私がシャルテだと気が付いたのかと不安になる。がしかし、その不安はすぐに打ち消された。
「その女の子の名前と、紗瑠さんの名前が似てたんだ…だからちょっと思い出した」
「ふーん…で、その子って行幸の何なの?」
フェロモンの影響か、素直に思った事を聞いてしまうシャルテ。
「えっ?えっと…そうだな…ちょっと特別な存在かな?い、いやあれだよ?彼女とかじゃないよ?ただの知り合いなんだけどね」
シャルテの予想外の答えが来た。
特別な存在と言われて悪い気がなんてするはずもない。思わず目を細めつつもほくそ笑んでしまう。
「ふ、ふーん…そっか。まぁ、世界には似てる人間が三人はいるっていうからね?」
「いや、それって容姿でしょ?名前が似てる人ってもっといると思うけど?」
「な、いや、だって、わ、私の名前は珍しいから、そんなにいないって!」
「そっか、そう考えればそうかもね?」
そう言って笑顔になる行幸。
まったく憎めない笑顔だなぁ…そっか、行幸の癖に僕の事を気に掛けてくれているんだ。
「でも、結局なんで両国に来たの?あの倉庫の近くが家って訳じゃなかったよね?」
「あ、えっと…」
シャルテが何て答えようかなって思った瞬間、とても冷たい風が吹き抜ける。
シャルテは悪寒に襲われ、寒さで体をビクンと震わした。
それを見た行幸はしまった!口を押さえる。
「ご、ごめん…さっきの事を思い出しちゃった?そういうつもりは無かったんだよ?」
思いっきり勘違いで咄嗟に謝る行幸。
そんな行幸を見てシャルテは確信した。
行幸は僕がシャルテだって気が付いてない。
僕の演技は完璧だ。これで僕は行幸のアパートへ潜入できる。
でも…何でだろう?胸が痛い…僕が行幸を騙しているからなのかな?
いや、これは任務遂行の為に必要な事なんだ…割り切らないと…
シャルテは行幸を見た。行幸は先ほどの勘違いで妙に大人しくなっている。
視線がまた合うが今度は行幸の方から視線をはずした。
そんな行幸を見てシャルテは考えた。
今の行幸は、最初に会った時の行幸と違う。本当に優して、凄く気を使ってくれる人間だった。
そして…リリア姉ぇが仕組んでいたにしても、あの事件でも僕を助けてくれた。
これが本当の行幸なのか?この優しい行幸が本当の行幸なのかな…
行幸をじっと見ているとまた目があった。
今度はシャルテの顔が熱くなる。そして、胸が【キュン】と強く締め付けられる。
くっ…ま、まただ…
人間の体って不思議だな…病気でもなのにこんなに顔が熱くなるなんて…胸が痛むなんて…
でも、天使に戻ればきっと元に戻る。それまでの我慢だ。
それまでは僕はシャルテではなく紗瑠として行動しなきゃ駄目なんだし。よし…
「あの…行幸…」
「あっはい」
「無理なお願い…聞いてくれるかな?」
シャルテは行幸を訴えかけるような目で見た。
続く
後書きはこの先ちょっと書かない場合が多いかも?
では続きをお楽しみに!