第五十七話【俺はぶっちゃけ格闘は苦手だ】
シャルテが襲われている時、そこへ現れる行幸。果たしてどうなるのか!?
なんて結構先を読まれてるような気がします。いえ、それも狙いですよ(ニヤリ
行幸が倉庫に激突する少し前。
恐怖に引きつるシャルテは懸命に助けを呼んだ。
最後の力を振り絞った攻撃が、ダメージすら与えられなかった。このままでは好きにされるだけだ。もうシャルテには反撃する力も残っていない。
出来るだけ大声を張り上げるシャルテ。
「誰か助けて!助けて!リリア姉ぇ!助けて!んぐっ」
「煩い!黙れ!」
しかし、男はシャルテの口を強引に塞いで声を出させない。
「んぐっ!んぐぅ!」
それでも暴れるシャルテ。男の手をがぶりと噛みつく。
男は「痛っ!」と声を上げるとシャルテに頬を平手うちする。そして床へと押しつけた。
「あばれんじゃねー!どうせ誰もこねーよ!」
しかし、シャルテもただでは諦めない。そこは流石天使と言った所か?再び暴れ出す。
「んんぐっ!んぐぅぅ!」
男はあまりに暴れるシャルテに苛つくと、ついにシャルテの腹に拳を打ち込んだ。
「ドス」っと鈍い音が聞こえた瞬間、シャルテの腹部に激痛が走った。
こ、こいつ…殴り…やがった…人間の…分際で…僕…を…殴った…
激痛が走ったと同時に意識が飛びそうになる。シャルテの体から一気に力が抜けてゆく。しかし耐える。我慢する。瞳から自然と涙が溢れる。
泣くな…頑張れ…きっと…リリア姉ぇが…助けにきてくれる…
自分にそう言い聞かせてなんとか意識を保つが、体の震えが止まらない。いう事をきかない。
人間の体…は…なんて…やわなんだ…これしきの事…で…
ぐったりとしたシャルテを見ると、男はニヤけてコートを乱暴に引きちぎろうとする。
シャルテはそれを見ているだけだった。もう抵抗をしない。いや、抵抗出来ない。
そして、シャルテが見ている目の前で「バチバチ」とコートのボタンがはじけ飛んだ。
「厚着しやがって、脱がしずれーな」
悔しい…なんで僕が…なんで僕が人間ごときにここ…までされる…
「や……だ…」
力が出ない。言葉が出ない。そして涙も止まらない。
嫌だ…嫌だ…こんなのやだ…早く助けて…
「助けて…行幸…」
シャルテは無意識に行幸に助けを求めた。
「みゆき?なんだ?お前の彼氏か?へへ」
「え…み…ゆき…」
僕はなんで…リリア姉ぇじゃくって、行幸の名前を…
「残念だな?相手が彼氏じゃなくって」
男はそう言いながら服の上からシャルテの胸を乱暴に揉む。
嫌な感触が神経を伝わり脳へと伝達される。
気持ち悪い…こんな変態男に触られてる…
懐中電灯の光に照らされた天井を見る。その間も男はわしゃわしゃと乱暴にシャルテの胸を、そして色々な場所をさわりまくっていた。
最悪最低だ…もう駄目なのかな…駄目かもしれない…
そんな気持ちがシャルテの心に沸いてくる。
誰も来るはずなんてない。リリア姉ぇが来ないんだ…行幸がここに来るはずなんて無い…
なのに何で僕は行幸の名前を…
シャルテは目を閉じた。好きにされている自分を見たくない。
人間に襲われたなんて…天使のみんなに笑われるかな?
シャルテは体の力を抜いた。もう自分の力ではどうしようもないと悟ったから。
好きにさせてしまえばいい。どうせ僕を犯したいだけだろ。それが終われば開放される。
暴れなければこれ以上は乱暴もされないだろう。
そうさ、気にしなきゃいいんだ。僕は天使なんだ。この体も本当の体じゃない…
偽りの、そして魔法で創られた物なんだ…
穢されてもいい…どうでもいい…魔法でいくらでも…元の状態に戻る…
しかし、シャルテの深層心理はそれを拒んでいた。そしてそれは序所に表へと出てくる。
でも…やっぱり嫌だ…こんな奴が僕の始めての相手だなんて嫌だ!
「みゆ…きぃ…たすけ…て」
「黙れ!彼氏は来ないって言ってるだろ!」
男はコートを脱がし終わり、今度は服を引きちぎるように脱がし始めた。
ここでシャルテは再び抵抗を始める。少しでも時間を稼ぎたい。そうすればもしかして…ほんの僅かな淡い期待。
だが、力任せに頭を、そして腕を床に押し付けられる。とてもじゃないが、力では勝てない。
「うぜぇな!ほらっ!これでどうだ?」
ブチブチとボタンが飛ぶ音が聞こえる。バリっと避ける音が聞こえる。目を開くと、目の前には露出した下着。その上からがっと強く男が胸を掴む。
痛みが走る。そして男はついに下着に手をかけた。
シャルテは思わず再び目を閉じた。流石にもう駄目だと諦めた。
その時だった。激しい爆音が聞こえ、そして雷光が入口の隙間から倉庫内へと差し込む。それと同時に激しい破壊音が響くと倉庫の扉が破壊された。
「な、何だ!?」
男は焦った様子で入口を振り返る。それと同時に破壊された倉庫の入口から、女性が、行幸が飛び込んで来た!
「痛いっ!すげー痛いっ!やあぁぁぁ!」
どうやら激突して両手が痛かったらしい。すさまじい悲鳴をあげている。
行幸は壊れた扉に足を引っかけると、そのまま前転!
そしてパンツを丸見えにさせながら空中を一回転した。
『ガコーン!』と激しい音が倉庫に響く。「ぐぼっぶっ!」と蛙がつぶされたような声が聞こえた。
シャルテが目を開くと、上に乗っていた男が体を捻りながらシャルテの左横に顔面を打ち付けた。
飛び込んだ行幸の浴びせ蹴りが頭部にヒットしたのだ。
さらに、行幸は着地に失敗。つるっと滑り、男の顎にスライディング!見事な追撃!
「はぐぁ!」
男はまるでゲームキャラがやられた時の「ズサー」と床を這って倉庫の奥の壁に激突した。
行幸は勢いあまってそのまま仰向けに倒れた。ワンピースは捲り上がり、パンツは丸見えである。
シャルテはきょとんとした表情で、左横に倒れた女性を見る。暗闇の中でも解った。そう、それはパンツの色が白…ではなく、それが行幸だという事。
嘘…本物?本物なのか?まさか…そんな?
雷の閃光が倉庫に差し込む。倉庫の中が青白く照らされる。
なんで?…なんでここに…何で?
シャルテの目からは涙が再び溢れる。
「いたたた…何だ?何がおこったんだ?って!スカートがっ!パンツ見えてるし!」
何が起こったのか理解できていない行幸。
ただ、スカートが捲れていたのだけはすぐに理解できたらしい。
そして体に起こしてスカートを元に戻す。
ここは?俺は倉庫に激突して…
行幸はキョロキョロと周囲を見渡した。すると真横に、女の子が仰向けに倒れているのが見える。そしてその奥には怪しい男が体をくねらせて倒れているじゃないか。
よく見れば、女性の服は肌けており、スカートも捲れ上がり、パンティーもブラも丸見えだ!
その状況から、行幸の結論は一つしかなかった。
そ、そうか…この女はここでエッチな事をしていたんだ!
行幸の心臓がすさまじく鼓動を早める。それは緊張からきたものだ。決して下着を見たから興奮した訳じゃない。
ええと、これはまずいよな?よりによって、プレイ中にお邪魔してしまうとは。
ど、どうしよう…奥で男の人が倒れてるるけど俺がやったんだよな?さっきそういう感じの感触が足から伝わってきてたし…やばい…まじでやばいぞ…
青ざめる行幸。怪しい汗が額から滲む。寒いのに熱い…
行幸は女性に自分が見ている事がばれないように、顔は動かさずに視線だけを向ける。
そこで行幸は気が付いた!まさか…ここで見られるとは…
そう、よく見れば後ろで両手を縛られているじゃないか!
し、縛るなんて、なんてマニアックなプレイを…まさか現実でこんなプレイが行われているなんて…
羨ましい…羨ましすぎるだろ!
行幸はぐっと拳を握る。
倉庫で縛ってエッチとか…どんなエロシーンなんだ…羨ましいっ…
「ガタン」っと倉庫内に音が響いた。風に煽られて壊れたドアが揺れた音だ。ハッとする行幸。
ってそうじゃない!そうじゃないだろ!
行幸は現実へと戻ってきました。
「え、えっと…お邪魔しましたぁ」
行幸は苦笑を浮かべると、そっとその場から立ち去ろうとした。いや、逃げ出そうとした。
しかし、同時に聞こえたのは行幸を呼ぶ女性の声だった。
「行幸…」
「は、はいっ!」
思わず返事をする行幸。そして、行幸は驚いた表情で声の方向を見る。
そ、空耳だよな?俺の名前を呼ばれたような気がしたけど…っていうか…返事しちゃった。
「行幸!」
今度ははっきりと呼ばれた。空耳じゃない、確かに自分を呼んでいる!?
よ、呼ばれた!?そこの女に…?って…ど、どうしよう?い、行くしかないよな?
行幸は恐る恐る女性に近寄る。表情は苦笑い。
「わ、私の事を呼びましたか?」
おかしい…この女性、何で俺の名前を知ってるんだ?
女性をじっと見るが、暗くてよく見えない。
と、とりあえず、言葉遣いには気をつけよう。
行幸は女性モードを発動させた。
ちなみに、倒れている女性がまさかシャルテだとはもちろん気が付いてもいない。
それ所か、オフ会で出会った事すらすっかり忘れている。
「起こして…」
「は、はい…」
行幸はゆっくりと女性を起こした。
「腕が縛られてて痛いから解いて…」
「へっ?そういうプレーじゃないの?」
思った事が思わず口に出る。そして、女性はすさまじい形相で睨んだ。
「あっ、と、とってあげますね」
行幸はシャルテの腕のロープを解いた。そしてやっと開放されたシャルテ。
「行幸…」
「あ、はい…って言いますか…あの…ええと…すみませんが、どちら様でしょうか?何で私の名前をご存知なのですか?」
とりあえず質問する行幸。しかし、シャルテは返事をしない。
「もしかして、私と面識がありますか?えへへ」
しかし、やっぱり返事がない。女性はムッとしているだけだ。
「ええと…」
行幸が困っていると、シャルテは行幸にもたれ掛かるように抱きついてきた。
「えっ?えっと!?何なんっすかこれ!」
抱きついた女性をシャルテだと知らない行幸は動揺しまくりだ。
質問を無視していた女性がイキナリ抱きついてきたのだ。それもほぼ半裸状態である。おっぱいもむぎゅーである。
しかし、単純に喜んでいる訳にもいかない。逆に頭の上は疑問符でいっぱいになる。
シャルテは心の中で喜んでいた。
行幸が来てくれた…僕を助けてくれた…くそっ何でだろう、嬉しい…喜んじゃ駄目なのに…でも…やっぱり嬉しいじゃないか…
しかし、感情を表に出しては駄目だ。僕には任務があるんだ。僕がシャルテだと悟られちゃ駄目なんだ…
でも…いいよな?ちょっと位は。人間なら助けてもらった時にこうするだろ?する。きっとするだろ。
シャルテは自分を納得させると抱きしめる腕に力を込める。ギュッと行幸を抱きしめる。
行幸は焦る。下を見ると、押し付けられる胸が自分の胸に重なり、そしてぺちゃんと変形していた。
え、えっと?こ、これって何?と、とりあえず何か言わないと。
「え、えっと?どうしたの?な、何かあったの?」
頑張って質問。しかし、返事は帰ってこない。
そして数分の時間が流れた。
壊れた扉からは雨が吹き込む。寒い…
行幸は戸惑っていた。
この状態!俺はどうすればいいんだ!
行幸は思い切ってもう一度声をかけた。
「ね、ねぇ…」
しかし反応が無い。それ所か、なんとその女性は眠っていた!
「あ、あれ?お、おーい…寝たら風邪ひきますよー?」
って言うか!な、何で俺に抱きついてそのまま寝る!?
行幸はゆっくりと女の子を体から離してみる。すると、露骨に胸が、ブラがもろ見えだ。
か、形がいい胸ですね。大きいですね。
とりあえず、心の中で女性を褒めてみた。
そして、女の子が眠っているのを確認するとブラをじっと観察する。
あと少し下にずれれば…さきっちょが見えそうだな…
卑猥だった。やっぱり男だった。そして、今そんな事をしてる場合かよ!なんて読者から突っ込まれそうだが、行幸の視線はシャルテの胸を完璧にロックオン。
うむ…このおっぱいは本当に形がいいな…弾力とかどんなんだろ?
そして、よく見れば顔も可愛いじゃないか…
そこで行幸は「あれっ?」と思い出す。
っていうか…何か見覚えがあるぞ?どこかで見たような…
行幸はやっと何かを思い出した。
続く
後書きがないっ!