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どうしてこうなるんだ!  作者: みずきなな
【どうしてこうなるんだ!】
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第五十五話【俺もシャルテも運が無いな】

幸桜こはると別れた行幸みゆき。電車に乗って自宅へと向かう。そして電車を降りると…

シャルテ編のスタートです!いや、シャルテ以外も出ますよ?

ちなみにですが、シャルテ編はちょっとえっちい場面もあります。ご注意ください(ぇ

 ここは墨田区のとある公園。中央にあるベンチでシャルテはうなされていた。

 

『や、やめろ!僕は天使だぞ!?』

 

 うなされているだけならともかく、声がおもいっきり漏れている。

 

『あっ…や、やめ…ろ…うっ…そこは、だめっ!』

 

 どう聞いてもやましい夢を見ているようにしか聞こえない。

 

『触るな…いやだっ…んっんんっ…』

 

 シャルテは体をぴくんとさせて悶える。

 これは、やっぱり何かやましい夢を見ているとしか思えない。

 

『はぁはぁ…に、人間とは…こういう事をしちゃ…駄目なんだ…だから…やめっ…て』

 

 そう寝言を言うと、シャルテは体をくねらせてベンチの上で体を丸めた。それと同時に顔を赤くして震える。

 もぞもそ動くシャルテは相変わらず顔を赤くしていた。そして、ビクンっと体を痙攣させると、とたんに静かになる。

 シャルテはしばらく動かなかったが、少しすると再びもぞもぞと動き始める。

 そして、何もない空中に両手を伸ばすと、幸せそうな顔で言った。


行幸みゆきっ…僕ね、僕…本当に行幸みゆきがす…』

 

 しかし、台詞の途中でバランスを崩したシャルテ。そのままベンチから垂直落下。

 ゴドっと硬いコンクリートに後頭部を直撃。

 

「!っ…」

 

 声にならない痛みとはこの事だ。

 シャルテは先ほどとは別の意味で悶える。


「くっ…うっ…」


 数分間は動けなかったが、何とか復活。そして後頭部を右手で撫でながら起き上がり、周囲を見渡たした。

 くぅ…痛かった…って…ここは何処だ?僕は何をしてたんだ?

 

 まず、シャルテの視界に入ったのはまったく見覚えの無い公園の風景だった。

 解ったのは、この公園はかなり小さいという事。自分がいるのは中央のベンチ。そして、斜め上には高速道路が通っているという事だ。

 車の『ガー』という通行音が真上から聞こえる。これは高速道路から聞こえる音か。

 あたりには人気はまったくなく、すっかり暗くなっている。

 

 その瞬間、シャルテはふと先ほどの夢を思い出してしまった。

 鮮明に蘇る夢。それもフルカラーノーカットでだ。白黒じゃない。カラーで夢を思い出す。

 みるみるシャルテの顔が熱くなり、そして体が火照ってゆく。

 

 ぼ、僕はなんて夢を見てたんだ!?それも行幸みゆきと…あんな事を!?い、いやらしい!天使の癖に僕は…あぁぁ…

 いや、待てよ?でもこれは夢だ!夢なんだ!

 だいたい、僕が行幸みゆきなんて相手にするはずない!何で行幸みゆきなんかと…

 

 そう言うっている間にも行幸みゆきを思い出す。そして、行幸みゆきの事を考えると、シャルテの心臓はドキドキと強く鼓動した。

 

 何で?どうして男の行幸みゆきに…だ、抱かれる夢なんて見たんだ。

 僕はやっぱり行幸みゆきを…

 いや違う!僕は天使だぞ?そんなのあるはずないじゃないか…

 

 シャルテは自己嫌悪に陥った。しかし、流石は天使と言った所だろうか、復活は早い。

 首をフルフルと左右に振ると、右拳をぐっと握り締める。


 さっきのは悪夢だ!そうだ!悪夢なんだ!

 だいたい、僕は行幸みゆきとそういう行為をしたいなんて思ってない!

 無い!絶対にない!行幸みゆきが相手とか九十九パーセント無い!※ここ重要

 

 しかし、言葉とは裏腹にフルカラーの夢を思いだす度に、体はどんどんと火照る。


 くそっ!顔が熱い…体が熱い…あんな夢なんて見たから…だからこんなに僕はおかしくなった…

 あーもうっ!忘れろ!忘れるんだ!早く悪夢から覚めるんだよ!

 

 頭を両手で抱えて再び、ふるふると首を振る。

 

 でも、なんていうか、かなり過激な内容だったな…

 …して…して…こうなった…で…行幸みゆきと!?

 あれ…おかしい、何で夢の中の僕は行幸みゆきに抵抗しなかったんだ?

 

 カーッと顔がまた熱くなる。再び夢をリピート再生。行幸みゆきに抱かれる自分。

 何度おもいだしてもはずかしい!そこでシャルテはハッとする。


 そ、そうだ。そうだよ…天使は夢を見ないはずなのに…なんで僕は夢を見たんだ?

 もしかして、将来の暗示?予知夢?僕は行幸みゆきと…結ばれる運命だったり?

 な、無い!それは無い!だいたい、僕は恋愛対象者じゃないんだぞ?違うんだ。違うんだ!


 取りあえずすぐに否定する。 

 しかし、シャルテの胸は『ギュ』っと締め付けられる。そして胸を押さえるシャルテ。

 

 うっ…何だよこれ…これってやっぱりそうなのか?

 いや、駄目だって…人間に特別な感情を抱いちゃ駄目なんだよ…何度言えば…

 

 しかし、行幸みゆきの顔が何度も思い浮ぶ。脳裏から離れない。そして胸はさらに痛くなった。

 

 ぶんぶんとまた首を振るシャルテ。

 

 駄目だ!忘れろ!これは予知夢なんかじゃない!そうだ、これはやっぱり悪夢だ!悪夢なんだ!そして行幸みゆきは人間だ!人間なんだぞ!

 

 それからシャルテは深呼吸をすると空を見上げた。まったく星が見えない都会の空を。

 しばらくするとシャルテの表情は穏やかになる。そしてゆっくりと立ち上がった。

 

 そうだった。僕は人間になっているんだ。だから夢を見たのか。

 でも…夢は現実じゃない。夢は夢なんだ…。

 夢のほとんどは敵う事なく消えるもの。

 願望、理想、欲求、そして望み?でも、夢なんだ…現実にはならない夢…

 

 シャルテはふと自分の気持ちの変化に気が付く。

 あんなに嫌いだと思っていたはずの行幸みゆき。逢いたくもないと思った行幸みゆき。でも今は…

 僕は行幸みゆきが嫌いじゃない。そして行幸みゆきに逢いたい。

 認めたくないけど僕は…行幸みゆきに好意を抱いているんだ。

 

 自分の手を見る。こんなに寒いのに汗ばんでいる。

 なるほど、恋をすると人間はこんなにも情緒不安定になるのか。まったくもって厄介だな。

 でも大丈夫だ。役目を果たせばきっと元に戻る。すべてがリセットされる。僕は天使なんだぞ。

 

 自分を納得させると、シャルテは周囲を再び見渡した。

 

 僕は何で公園にいるんだ?

 

 シャルテは思い出す。今までの経緯を。

 

 そうだ、リリア姉ぇに魔法で束縛されて意識を失ったんだ。それでここに連れて来られたって事か。

 

 しかし、何で僕はベンチで寝てたんだ?人間の女子がベンチで寝てるってすごい状況だろ?

 リリア姉ぇも考えてくれよな。人間のおすでも襲われたらどうするんだよ。

 

 その瞬間何かを感じた。何かの気配?上空を見渡すが何の姿も無い。

 

 気のせい?確かに何かの気配を感じたんだけど…

 

 辺りをよく観察するが、やっぱり何の姿も無い。

 

 やっぱり気のせいか…まぁ…今はやる事をやろう。

 

 シャルテは腕を組んで考えた。

 

 さて、これからどうしようかな。リリア姉ぇの言ってた通り、行幸みゆきの所へ行くべきなのか?行くべきだろうな。それが僕の役目だしな。でも、ここが何処かわからないと…

 

 そんな事を考えていた時、シャルテはベンチの下にバッグが置いてあるのに気が付く。そして、バッグを手にとって中を見る。すると天使語でシャルテへと宛名の書いてある手紙が入っていた。

 内容はというと、行幸みゆきの所へゆきなさい。必要なものはバッグに入れてあります。というリリアからの伝言だ。

 

 リリア姉ぇが用意したのか?で、必要な物って何だろう?

 

 シャルテはバッグを手に取ると中を探る。すると中には公園近隣の詳しい地図。そして水とカイロと現金…と、ここまでは解る。確かに必要な物だ。しかし、その奥に入っていた物は…

 

 シャルテはそれを手にとるとジッと見る。それを見ているシャルテの顔はまたしても真っ赤になった。

 もう一度、手紙を確認する。すると、最後にこんな事が書いてあった。

 

『殿方のお家へ泊まる時には勝負下着と言われる物が必要だと聞いてます。そして、もしもの時には一緒に入れておいた物も使って下さい。シャルテ、明るい家族計画ですよ?』


 シャルテはバッグの中を再び覗く。そして、奥にある赤い布を取り出した。


 それを直視いたシャルテは顔を真っ赤にしたまま頭を抱える。

 

 何だこのキワドイ下着は!ひ、ひもで結ぶようになってじゃないか!あと勝負って何だよ!僕が行幸みゆきの家に行く目的とは違うだろ!


 シャルテは下着を丸めてバッグに押し込むと、今度はその横にある箱を取り出した。


 これって…避妊具だろ!

 意味がわからない!だいたい、明るい家族計画って何だよ!リリア姉ぇは僕に何をさせたんだ!?

 待て…今の行幸みゆきも女なんだぞ?そういう行為自体できないだろ…

 

 と考えているうちに、無意識に行幸みゆきの事をまた思い浮かべる。そして先ほどの夢も。

 

 と、とりあえず…これは使わないよな?だいたい、こんなものを持っているのを行幸みゆきに見られたらどうするんだ!こんなもの捨ててやる!

 

 シャルテは下着と避妊具をゴミ箱へ捨てようとする。


 「……」


 しかし、捨てなかった。

 

 ま、まぁ…折角用意をしてくれたんだし…絶対に使わないけど…持っておくか…

 

 下着と避妊具をバッグの奥底に仕舞い込んだ。

 

 シャルテは更にベンチの横にグレーのコートがかかっている事に気が付く。

 

 リリア姉ぇが寒くないように考えてくれたのか?しかし、準備万端すぎるだろ。いらない準備物の準備まで万端すぎるし。

 って…まぁ文句を言っても仕方ないな…よしっ…僕は僕のやる事をやる。

 

 シャルテは地図を広げて位置関係を確認する。

 

 この赤いマークがここで、この青いのが行幸みゆきのアパートか?

 しかし、リリア姉ぇは本気で行幸みゆきのアパートへ潜り込んで監視した方が良いと思ってるのかな?

 だいたい、それに何の意味があるんだ?僕が潜りこんだ方が色々とややこしくなるんじゃないのか?リリア姉ぇは僕の気持ちにだって気がついてるだろうし…

 まぁ僕は平常心でいられる自信はあるけど…でもなぁ…うーん…

 

 シャルテはとても気が進まない。

 

 さっきのリリア姉ぇもちょっと強引だったし、僕の担当だったフロワードを自分の担当にするとか普通じゃアリエナイ。束縛して眠らせて転送するのも意味がない。

 でもなぁ…リリア姉ぇは間違った事をした事はないし…うーん…

 あっ、フロワードと行幸みゆきはどうなったんだ?もしかして恋人関係になったなんて無いよな?

 

 二人の事を考えると、心拍数が急上昇。

 

 な、何で僕がドキドキしてんだよ…僕には関係ない事じゃないか!

 ま、まぁ…引っ付いてないよな?そうなっていたら、流石に僕にも連絡があるはずだし。

 心配しても仕方ないか。取り合えず移動しよう。

 

 シャルテは地図とバッグを持つと公園から出た。

 道路幅六メートル位の道を進む。道には街灯はある。しかし、あまり明るくない。

 道路の先の方まで見て見るが、まったく人気がない事だけは確認出来る。

 シャルテは周囲を、そして民家を見渡しながら歩く。

 

 こんな人気の無い道を女の子が一人で歩くとか、人間だったら本気で怖いんだろうな。

 

 そんなシャルテも今は人間だが自覚はあまりない様子だ。

 

 そして歩き始めてから五分が経過した時、突然、空が白く光った。シャルテは空を見上げる。

 

 雷?

 

 空には知らない間にどんよりとした雨雲がかかっている。そして雲の隙間を稲妻が横へと走っていた。

 雨が降る?そう直感で感じた。バッグを探るが傘が入っていない。

 

 リリア姉ぇ…水やカイロや…あんなのよりも傘だろ!なんて文句を言っても仕方ないよな。とにかく急ごう!

 

 シャルテは小走りで雨の降り始めた歩道を行幸みゆきのアパートへと向かった。

 

 その頃、両国駅には行幸みゆきの姿があった。

 

 雨だと!?何で?電車に乗っている時は降ってなかったのに。

 

 駅を出たらいきなりの雨に呆然とする。

 仕方なく近くのコンビニに駆け込んでビニール傘をゲット。するつもりが今日発売のアニメ雑誌を発見!以前から気になっていた特集が掲載されており、ついつい読み込んでしまった。

 そして本を読んでいると『ザー』と激しい雨音が耳に入る。ガラス越しに見えるのは凄まじい雨。行幸みゆきは急いでコンビニを出てると愕然とした。

 

 何だよこの大雨は…この時期にゲリラ豪雨?

 

 まさにバケツをひっくり返した雨とはこの事を言う。視界が三メートルくらいしかない。

 

 ほんの数分立ち読みをした間にこんな事になるとは…

 

 じっとビニール傘を見つめる。そして傘に向かって思念を送る。

 

 おい、お前はこの雨に耐えれるのか?

 

 答えは返ってこない。当たり前である。

 しかし、行幸みゆきはニヤリと微笑むと傘をバっと開いた。

 

「さぁ見せて貰おうか!お前の耐久性とやらを!」

 

 行幸みゆきはどこかで聞いたような捨て台詞を吐くとゲリラ豪雨に突っ込んでいった。

 

「ぐっ…この雨、ニュータイプかっ!」

 

 さっき読んでいた某アニメ雑誌の旧作品アニメ特集を見て、某アニメの影響をもろに受けている行幸みゆき

 

「この雨は化け物か!」

 

 豪雨は容赦なく行幸みゆきを襲う。ビニール傘は凄まじい雨に今にも壊れそうに歪む。

 ビニール傘、風前の灯。

 

「くっ…シャフトを一本やられただとっ!ってどうしてこんな十二月に大雨とか降るんだよ!」

 

 文句を言いながら行幸みゆきは考えた。ここからアパートは時間にして十分程度。濡れても風呂に入れば問題はない!

 凄まじい雨に歪み骨が折れた傘を、強引に進行方向へと傾ける。そして気合で進む。

 ちなみにワンピースは既にびっちゃりで、スカートが足に纏わりつき歩きずらい。

 

「まったく!なんて歩きづらいんだこれは!おまけに寒い!」

 

 文句たらたらで行幸みゆきは雨の中を進んでいった。

 

 その頃、突然のゲリラ豪雨はシャルテも襲っていた。

 傘の無いシャルテはずぶぬれになりながらも行幸みゆきのアパートを目指す。

 

 この雨は十二月の雨じゃないだろ。

 

 行幸みゆきと同じような事を考えているシャルテ。

 

 豪雨の中、視界の悪い道を懸命に前に進むシャルテ。そして後ろを振り返る。

 シャルテはある事に気がついた。

 誰かが僕の後をつけてる?公園を出てちょっと経った時から男がついて来ているな。

 

 そう、シャルテの数メートル後ろを黒い傘を差した男がついて来ていた。

 

 なんだ痴漢か?変質者か?強姦魔か?天使の僕を襲おうなんて馬鹿な人間だ。とりあえず…撃退準備を…

 

 右手に魔力を送る。魔法具の具現化…のはずだったのに何も現れない。

 

 あれ?

 

 当たり前だ。今のシャルテは人間。もしも襲われても天使としての能力は使えない。

 

 くそっ、そうか…そうだった…

 

 シャルテは軽く唇を噛むと、再び振り返った。そして、雨の中でも姿が確認できる程に接近されている事に気がつく。

 人影を確認したシャルテは身の危険を感じる。それは天使としての直感。

 

 やばい!あいつは絶対やばい!

 

 シャルテは全力で走り出した。

 

 続く


不運なシャルテ…果たしてシャルテは逃げ切れるのでしょうか?

シャルテの運命やいかに!って…最近コメディー要素が激減してるような…

いや、コメディーにもシリアスは必要なんです!

最初から恋愛ジャンルにしとけよ!という突っ込みを受けそう…

皆様のご意見、ご感想をお待ちしております!

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