第五十四話付近の別の話【俺の知らない時間・愛ちゃんはすごいよね】
五十四話付近の同じ時間帯での愛と菫のお話です。
ぶっちゃけると読む必要はまったくありません。
内容がうわぁぁってなった場合は飛ばしてもOKです。
あと、短いです。
幸桜が菫に負けないと宣言をした時間。別の場所にその本人がいた。
「はっくしょん!」
菫は大きなくしゃみをする。
すると、横にいた愛が満面の笑みになった。
「何?何?噂されてるの?もしかして、高坂君かもよ?」
そう言ってニタニタと怪しく微笑む。
「な、何を言ってるの?ないよ!寒いからくしゃみが出ただけだよ」
菫はあわあわと対応する。愛は『ぷっ』っと吹き出すとイキなり菫の肩を抱いた。
「ふふーん?そっか?」
「な、何?そのニタニタしてる笑顔はやめてよ…」
「いいでしょ?」
そんなこんなで愛と菫は、玄関ドアの前に到着。
「菫がうちに来るのって久々だよね?」
「うん、そうだね」
「あ、今、鍵あけるから、待ってね」
愛は鍵を取り出すと、玄関ドアを開いた。
「汚い部屋だけどさ、さぁどうぞ!」
バッと開かれた瞬間、飛び込んでくるのは玄関に散乱するゴミ。そして異様な匂いが…
そうだ…忘れていた…愛ちゃんって…
愛は玄関のゴミを見るとハッとした表情になる。そして慌てて慌てて室内へと入って行った。
「ちょ、ちょっと待って!散らかってるから!」
しかし、そんな声は無視して、追いかけるように菫も室内に入る。
すると…目の前に広がっているのはゴミ、ゴミ、ゴミ…そして脱ぎ散らかった服、下着…溜息が出るほどに汚い部屋だ。
「こ、これはね!掃除する暇がなくって!」
愛は両手をハタハタと無意味に動かして、意味のわからないジェスチャーをする。
と言うか…そういう次元を超えているでしょ…っと突っ込みたくなる。
「愛ちゃん…まずは掃除しよっか?」
「えっ?いや、でもほら、今日の目的ってさ、菫とのお話だしさ、いいよ。今度やっておくからさ?」
苦笑いの愛は、ソファーの部分のゴミをぽいぽいとダイニングに投げた。
見ていた菫は大きな溜息をつく。
「あのね、正直に言うと、この状態で話なんて無理」
菫が意気消沈する姿を見て、愛は苦笑いをする。
「そ、そっか…ごめんね」
そしてお片づけ大会が始まった。
ごみ収集をしていると色々なものが出てくる。
「愛ちゃん…」
「何?」
「愛ちゃんって…こういう趣味があるの?」
そう言って、菫が手に取っていたのは下着だ。それもかなりの露出度。
「そ、それはっ!ほ、ほら!ハイレグ系のコスプレしたら見えるじゃん!だから!」
愛は言い訳したつもりだろうが、ぶっちゃけその系統のコスプレを愛はしない。
「へぇ…まぁいいけど」
「あ、信じてないでしょ!い、い、今すぐそのコスプレしてあげるからっ!」
そう言うと、おもむろにクローゼットを開く愛。
そして、菫は驚いた。クローゼットの中は異常に綺麗だっ!
部屋からは想像がつかないレベルで整理整頓されている。
「ええと…どうしてそこは綺麗なの?」
しかし、愛は話を聞いてない。ばっばっと服を脱ぎ捨てるとちょっと危ないSM系のコスプレに手を伸ばした。
えっ?それ着るの?待って!それは愛ちゃんには似合わないっていうか、前に他のメンバーが着てたやつじゃん!胸のサイズが合ってなさすぎだよ!と、とてもじゃないけど口には出せない。
「わかったよ、信じる!信じてるから!だからストップ!」
菫は慌てて愛を制止した。
愛は涙目で菫を見る。
「ほんと?信じてくれるの?」
「う、うん。本当に信じるよ」
まったく、どっちが年上なのか解らない。
愛は結局、そのままパジャマに着替えた。
しばらく掃除をしていると再び怪しいものを発見。
箱?何だろうこの箱…
菫は箱を開ける。するととてもいびつな形の物が入っている。
「わぁぁぁあ!わあああああぁぁぁぁぁぁ!」
愛の絶叫と共に、それはあっという間に没収された。
「こ、これは菫にはまだ早いからっ!」
「早い?」
「じゃない!じゃないよ!じゃないけどさ…」
愛がまた涙を流すので菫は追求を辞めた。
愛いわく、それは知人から預かっていると言う事。でも…多分、嘘だと思う。
また掃除をしているとBL同人誌が出てきた。それも一冊や二冊では無い。すさまじい量だ。
パラパラと中を見ると…内容がかなり過激。
「あ、愛ちゃん!」
菫の声が思わず裏返る。実は見た目以上に中身は純情だったりするのだ。
「駄目!それも全部駄目!」
それも速攻で愛に没収された。愛いわく、それも知り合いから預かっているのだと…
でもさ…預かりものがゴミに埋もれているはずないよね?そしてこの量は…と菫は思ったがやっぱり言えない。
また掃除していると、今度はGL同人誌が出て来た。BL同人誌よりは少ないが、数十冊はある。
「愛ちゃん?これって…」
同人誌を手にする。そしてページを捲る。そして固まる菫。
「はきゃーーー!」
どこから出した声だと言うくらに高い声で愛は悲鳴を上げた。
「だ、駄目!それも見たら駄目ぇ!」
愛は慌てて同人誌を取り上げる。
「愛ちゃん、そ、それの中に描いてあった奴ね?さっきの箱にあったのと同じ…」
愛の顔は真っ赤になる。
「違う!絶対違うって!それは菫の見間違いよ!そ、そう!そうだから…ねぇ…そういう事にしておいて下さい…お願いします…」
見てると可愛そうになった…もう…きっと愛ちゃんは絶対に嘘はつけないんだろうな…というか…嘘ってすぐばれるんだろうな…と菫は確信した。
「わかった…でも、こんなに色々な同人誌を持ってたんだね?私、知らなかったよ。私は同人誌には興味ないからまったく買った事は無いんだけど」
「わ、私はね!ただ単純にね、色々な恋愛を勉強したいと思ってるだけなの!ほんとに!だから同人誌を買ってるだけなの!」
「色々な恋愛…」
でも、BLとかGLとかの同人誌はあるのに、なんで普通の恋愛漫画は無いのって突っ込むべきかな?
「これって男同士だよね?こっちは女の子同士だよね?男の子同士はあれだけど、女の子同士って…」
菫は駄目な事を想像してしまった!そして、挙動不審になる。
それを見ていた愛は、流石にすぐに気が付いた。
「大丈夫!菫にはそういう感情は持っていないから!」
「あ、あったら困るよ!」
「そ、そういう風に思ってたら、もっと早くから攻めてるし!」
「せ、攻めるって?待って、そういう問題じゃないと思う」
「でね…あのさ、ちょっとだけ話は変わるんだけど、聞いてくれるかな?」
「えっ?なに?」
「今度はじまったアニメの話しなんだけどさ」
ちょっとじゃないじゃん!ぜんぜん話題が違うし!と言うか、さっきまでの会話からどうしてここまで違う話に出来るの!?
ある意味、すごく感心する菫。
「今度のコミケでさ、あのアニメの女魔法使いのコスプレしようかと思うんだけど」
待って!それはアニメの話じゃないよね?コスプレの話だよね?
「待って…それってアニメの話しじゃないよね?」
「あ、そうだね。言い直すよ。コスプレの話をしてもいいかな?」
「もう今更いいよ…言い直さなくてもいいよ…愛ちゃんがそういう性格だってわかってるから…」
菫は再び大きな溜息をつく。
「そ、そうだよね!菫は私の事をよく知ってるもんね?だから私は菫が大好きなんだよね!」
「あ、ありがとう?」
「あーあ、私が男だったら絶対に菫を選ぶのになぁ…なんで妹なんかにねぇ…やっぱり妹の方がいいのかなぁ。近親相姦は魅力的?でも、私は菫がいいな!」
「…」
愛の余計な一言に、行幸の言っていた台詞を思いだした菫。意気消沈して項垂れてしまった。
元気を出してもらおうとして墓穴を掘った愛である。
「だ、だからさ!他に、もっといい男が寄って来るかもよ?どうする?お金持ちかもよ?高坂君よりも格好いいかもよ?」
「…」
さらに墓穴を掘る。
「ごめんね、ごめんね…私は人を慰める機能を搭載してなかったよ!いまごろ気が付いたよ…」
愛は四つん這いになってガクリと項垂れた。
「だ、大丈夫だよ。っていうと嘘になるけど、だけど…うん、ありがとう。愛ちゃんが一生懸命に私に気を遣ってくれてるってわかってる…」
「菫!」
愛は菫に抱きついた。
「もしもね、もしも駄目だったら、この愛ちゃんが貰ってあげるから!」
「ま、待って、私はそんな気はないよ?」
「遠慮しなくてもいいよ?」
「いや、えっと…遠慮してないから」
「あっ、そっか…でもね、最近になって思うんだ…なぜ私は男に生まれてこなかったのか!ってね」
「えっ?愛ちゃんって、男に生まれたかったの?」
愛は笑顔で首を横に振った。
「ないない!女でよかったと思ってるもん」
菫は頭を抱えた。
愛ちゃん…
これは続かないです。シャルテ編でまたお逢いしましょう。
愛と菫がこの後にどうなったのかはご想像にお任せします。
しかし…愛って濃いですね…
次回よりシャルテ編へ突入です。