第五十二話【俺が色々と酷い状況になっている件】
リリアのチート機能によって、行幸の考えている事がもろばれ状態になってしまった。そして、思いっきり危ない方向の思考を読まれてしまう。
行幸は立ち直る事が出来るのか?って…あれ?何か方向性が違う。
あ、そうそう…前回の後書きは今回予定の分でしたっ!(謝罪)すみません。
色々と酷い状況の行幸。
行幸はテーブルに俯せると超絶凹んだ。
リリアはちょっと言いすぎたかと反省したのか、話題を変える。
『とりあえず、行幸さんも真面目に恋愛をして下さいね?』
リリアは簡単に言うけどな…俺はな…俺は女と付き合った事が【一度も!一度も!一度も!】無いんだぞ?※すごく重要なので三度言いました。
これでも俺なりに頑張ってるんだよ!
『冷静になって下さい。私は行幸さんの性癖を否定している訳ではありません』
えっ?何で?!何で話を引き戻すの!?もしかしてリリアはこういう話が好きなのか?
もしかして…俺に縛られて襲われてみたいとか思ってるのか!?
勢いとは怖いものである。行幸は後先考えずに無茶苦茶な質問をしてしまった。
質問をしてすぐに気が付く。俺は天使になんて質問をしてるんだ!
しかし、リリアの反応は予想外な反応だった。
『え、えっと…私はですね…あの…なんて言いますか…まったくそういう経験がありませんので…』
聞いてる行幸が恥ずかしくなるような思念が返ってくる。行幸は顔が熱くなった。
ちょ、ちょっと待って!ごめんなさい。俺が変な質問をしちゃいました。
思わず謝ってしまう。
これ以上、刺激されると俺の妄想は更に危険な状態になる…
そんな事を思いつつ、冷静になろうとする行幸。しかし、リリアは追い討ち思念をかける。
『私だって一応は女性なのですよ?行幸さんの望む行為も受け入れられる体になっているますし…』
ま、待って!受け入れられるとか言わない!無理だろ!そんなの無理だろ!それに俺はリリアとしたいなんて一言も言ってないぞ!
『先ほど、心の奥で私の体を弄んで…』
きゃぁあ!やめてっ!お願い!そのチート機能は封印して下さい!本当にお願いします…
行幸は嘆願した。
やばい、もうこれ以上は駄目だ。もう変な事を考えるなよ…深みにはまるぞ…
というか…そういう経験がないって事は…リリアは処女なのか?
『はい…』
しまったぁぁ!また俺は何を考えて…いるんだぁぁぁ!
喫茶店の中、一人でバタバタと悶える女性はとても目立つ。
それも結構かわいい女の子が一人で表情を変えながら悶えているのだ。これは視線を独占してあたり前だ。
行幸にも周囲の視線が痛い程つきささるのが解る。
や、やばいな…本当にこれ以上、変な事を考えるなよ?あと、冷静になれ…
よ、よし…そうだ。真面目に、ちょっと今回の恋愛関係を冷静に整理するんだ。
フロワードは俺が好きだ。でも俺は振ったはず。
菫は俺が好きだ。俺は告白されたけど答えてない状態か。
幸桜も俺が好きだ。こっちも告白されたけどちゃんとは答えてない状態か。
こんな感じか?あれ?どれもきちんと答えが出てないような気が?
フロワードは気絶してたからちゃんと振れているのか実際には解らないな。
って…おいおい…俺はこのままで大丈夫なのか?
行幸は唾をごくりと飲み込む。考えれば考える程に気持ちが焦ってきた。
駄目だ、ここで焦ってどうする?
行幸は「ふぅ」と息を吐き気持ちを再び気持ちを落ち着かせる。
そ、そうだ!おいリリア。
『はい』
これから先に対象が増える可能性はあるのか?
『絶対に無いとは言いきれません』
嘘だろ!?可能性があるのかよ!
『しかし、その可能性は宝くじで六億円当たるくらいに低い確立です』
えっ?えっと…もしかして今回の幸桜の件もそのくらいに低確率だったのか?
『いえ、今回のケースの場合には流石にそこまでとは言いません。ですが低確率だった事は事実です。行幸さんは本当にすごい事を成し遂げたのです』
それって褒めてるのか?
『いいえ、褒めてなんていません』
ですよね…やばい、何だか男に戻れる気がしなくなてきたぞ…
『弱気ですね』
そりゃ弱気になるだろ…俺は誰も選べない。誰も振れないかもしれないんだからな。
『では、その時は男に戻る事を諦めてください』
えっ?馬鹿、そんなに簡単に諦められるか!それに諦めて下さいってどういう事だよ。
『私達が消えれば誰と恋愛をしても男性に戻る事はないですよね?安心して女性として生活が出来る訳です』
えっ?ちょっと待て!今なんて言った?お前らが消えるって!?まさか男に戻るまでリミットがあるのか!?
リリアの台詞に焦る行幸。
『リミットですか?』
そうだよ!まさかあるのかよ!
『ありません』
リリアの返事にちょっと気が抜ける行幸。
あれっ?さっきお前らが消えれば、俺が男に戻れなくなるような事を言ってなかったか?
じゃあ、さっきのはどういう意味だよ。リミットがある訳じゃないのか?
『リミットはありません。ですが私達もずっと行幸さん達の側にいる訳にはゆきません。ある程度の時間が経過すると必然的に離れるしかないのです』
おい待て!それをリミットって言うんだろうが!
リリアはちょっと考える。そして小さく頷く。
『なるほど…はい、そういう意味ではリミットはある。と言うべきなのかもしれませんね』
おいおい、なんだよそれは…
でも、リリア達がいる限りは俺は男に戻る事が出来るって事だよな。
『そうですね』
リリア達がいきなり消えるとか無いよな?
『それは無いと思いますよ』
ほっ…そっか。
『あっ、そうです。私が行幸さんから離れるとフェロモン効果も切れますので』
えっ?フェロモン効果が切れる?そうだ、フェロモン効果って魔法なのか?
『魔法効果の一種だと思います』
思います?ってリリアの魔法じゃないのか?それともシャルテの魔法なのか?
『今回のは、術者はシャルテですが、魔法を詠唱可能なのは別の天使です』
はい?術をかけたのはシャルテ?でも詠唱可能なのは別の天使?何だそれ?
『簡単に言いますと、シャルテを操作して術をかけたのです』
なるほど…じゃあ、なんでリリアが離れるとその魔法効果が切れるんだ?
『効果維持の為の魔力供給は私がしているからです』
へっ?何だそれ?
行幸の頭には疑問符が出ている。その位に考えが纏まらなかった。
えっと…俺の知ってるゲームとかだと、魔法力っていうのは魔法を使った奴が消費するはずだろ?
『それはゲームの話ですよね?私達はゲームキャラクターでは無いですし、ゲームの世界に存在する天使でもありません。一緒にしては駄目ですよ』
まぁ…そう言われればそうなんだけどな…あっそうだ!
ここで行幸はある疑問を思いつく。
おい、そうだよ。俺が女にされたのも魔法だよな?これはリリアが消えても効果は残るのか?
『はい』
くっ…残るのかよ!
『ええと、行幸さんの認識が間違っておられるご様子なのでご説明します。行幸さんは魔法によって、完全な本当の女性になっているのです。見た目を変化させた訳でも、変身をさせている訳でもありません。今のその体は完全な女性の体なのです』
…という事は?
『私達がいなくなっても女性のままです』
うぐぐ…
『そうそう、遺伝子レベルから完全な女性になっていますので、血液鑑定や検査をされたとしても、元が男性だったとは解りません』
へっ!?遺伝子レベル?元が男性だったてわからない!?もしかして、これってすごい魔法なんじゃないのか?
『はい、超高等魔法の一種ですね。私も使えません』
こんなすごい魔法を無駄に俺になんて使いやがって…
行幸は体を震わせる。
世の中にはな、女になりたいって思ってる男も結構いるんだぞ?そういう奴に使ってやれよ!俺に使わなくていいから!
『駄目です。これは罰なのですよ?それに性別を変えるなどは本来は行ってはいけない事なのです』
やってるじゃん!行ってるじゃないか!
『今回は特別です』
そういう特別はいらない…って、そうだ。さっきリミットがあるって言ってたよな?でも、俺が女になったのはお前らの魔法なんだろ?じゃあ、恋愛が成立した時に戻って来て、その時に男に戻せばいいんじゃないのか?そうすればリミットとか気にしないでいいだろ。
『そうですね、確かにそういう考えもありますが…しかし、そういう訳にはゆかないのです。一度、離れてしまえば、もう二度と行幸さん達の元には戻って来ないでしょう』
えっ?二度と?絶対に戻って来ないのか?
『はい。そういうルールになっています』
またルールかよ?天使のルールは厳しすぎるだろ。と思ったけど、結構、守ってないだろ!俺を女にするとか!
『正直申しますと…今回の件は…』
今回の件は?どうしたんだよ。
リリアはそこまで思念を送ってきた所で思念を止めた。そして全然別の思念を送ってくる。
『そうそう、その体は生理現象も女性特有のものですし、もちろん妊娠も出来ます』
おい、話題を変えるな!って!?妊娠!?だと!?
行幸は無意識に自分の腹を見た。
『はい。いくら行幸さんがネカマで人を騙した酷い男性で【とても卑猥】だからと言っても、子孫繁栄を止める気はありません』
酷い言われ方だな…あと、気のせいか?卑猥だけが強調されてた様な…
『だって…先ほど、私を妄想の中で散々…』
わわわわ!掘り返すな!
『わかりました』
ふぅ…あとな、子孫繁栄とか、そういう配慮はいらないからな!俺は男とセックスなんてしねーし、そういう配慮するくらいなら男に戻せよ!
『それは出来ません。恋愛対象の三人の何方かと恋人関係になってください』
おい、三人を振るという選択はどこへいった!
『そういう選択もありましたね…しかし、行幸さんに出来るのですか?三人を完全に振る事が…』
リリアにそう言われて行幸は返す言葉が無くなった。
へたれで優柔不断の駄目な男な行幸にとってそれは至難の技だ。
そうだよな…振るという事は全員を傷つけてしまう事になるんだよな。そんな事が俺に出来るのか?
フロワードは確かに振るしかない。それは俺が男だから…男同士は流石の俺でもちょっと抵抗がある。
でも菫と幸桜はどうなんだ?俺は二人を振れるのか?
二人を振る所を想像する。
【シミュレーション中です。しばらくお待ち下さい】
行幸は目を閉じると腕を組んで唇を噛んでいる。
そして、徐々にその表情が赤みを帯びてきた。
『卑猥ですね…また縛るなんて…』
リリアがぼそりと思念を送る。
う、煩い!
『行幸さんはどうして別れ話からそういう卑猥なシーンまで辿りつけるのですか?』
くっ…ぐぅぅ…だ、だからいちいち俺の心を読むなって言ってるじゃないか!
『あと、私だけではもの足りないのですね…』
!?お、おい待てリリア!何の話しだ!?そして、ちょっとキャラが変わってないか?
そして結果発表!
シミュレーション結果は悲惨の局地だった。そしてリリアに心を覗かれまくり最低だった…
そうだよな。簡単に振れるのならこんなに苦労しない。確かにリリアの言う通りだ。俺に二人を振るのは難しいかもしれない。
『そうですか…そうですよね』
リリアは行幸の性格を把握していた。
優柔不断でなかなか選択が出来ない。そして人を傷つけるのがすごく怖い。
それは決して駄目な性格なのでは無い。それは逆に言えばやさしい人間である証拠。
きっと恋人が出来れば、行幸も、そしてその相手も幸せになれる。
だからこそ行幸には誰かと早く結ばれて欲しいと思っていた。
人を傷つけて行幸も傷つくのであれば、結ばれて幸せになって欲しいと思っていた。
その為には他の恋愛対象者を振る事になる。傷つくかもしれない。しかし、それは仕方ない。そこは乗り越えなければならない。
しかし、リリアの予想を裏切る出来事があった。
それは幸桜が恋愛対象者になった事。そうならない為に記憶の操作までした。
そう、本来であれば、菫が一番の候補だった。だが、幸桜が恋愛対象者になった事によってリリアの考えも少し変化した。
こうなれば…二人のうちどちらかと結ばれて欲しい…と。
そしてその時、リリアの脳裏にシャルテの顔が浮かんだ。
試練だとはいえ、シャルテは行幸のフェロモンの影響を受けるようになっている。そう、今も影響を受け続けているはず…
幸桜さんを恋愛対象者にしてしまう行幸さん。
私の予想の範囲を遥かに凌駕していた行幸さんの行動。
もしかしてシャルテまで…
リリアは不安に襲われる。
シャルテまで恋愛対象者になるなんて…そんな訳ないですよね。
私が信じなくてどうするのですか…シャルテは天使です。そんな事にはならないはず。ならない…ですよね…
今のリリアには信じるしかなかった。
おいリリア、そう言えばシャルテは?最近みてないぞ?
絶妙なタイミングで行幸の思念がリリアに飛び込む。それもシャルテの話題だ。
『え、えっと…シャルテは…今は天界に戻っています』
リリアは不意をつかれて慌ててしまう。そして咄嗟に嘘をついた。
へぇ…そうなのか?
しかし行幸はまったく疑っていない。
『はい…時間が経てば戻ってくると思います…』
リリアは自分に言い聞かせる。これは仕方のない嘘です。シャルテの試練の為なのです。
ここはぐっと我慢をして嘘をついた。しかし心が痛む。
また…嘘をついてしまいました。
行幸の顔がまともに見れない。
なるほどな…まぁ…いっか。俺はあいつは苦手だからな。いっそ戻ってこない方がいい。
『…』
リリアは何も思念を返せなくなった。それどころか今すぐにでもここから消えたい。そう思い出した。
行幸は腕を組んで考えている。
本当にどうするかな…幸桜が恋愛対象とか…
そうだ、リリアにもう一つ聞きたい事があるんだ。
『えっと、すみません。そろそろ私は…』
リリアがそう思念を返した瞬間だった。
「行幸、お待たせ」
行幸が横を見ると幸桜の姿があった!
続く
リリアは実は腹黒いと思うのは私だけでしょうか?
続きます。