第五十一話【俺の予想のしなかった展開Ⅸ】
リリアが天使失格だと行幸に向かって言った。何故?そして幸桜と行幸はどうなるのか…
どうなるんでしょうね?はい、続きをどうぞ。
リリアが俯き涙を見せて、そして自分が天使失格だと言っている。
行幸はそんなリリアを見て理解した。
本当に俺と幸桜は血が繋がっていないんだと。
『私は行幸さんに嘘をつきました。本当に申し訳ありません…』
リリアはそう思念を送ると行幸に向かって深く頭を下げた。
そんなリリアを見ていると、行幸はちょっと後ろめたい気持ちになる。
考えてみれば、俺だって沢山うそをついてる。天使だから嘘をつくなとか言える立場じゃない。
現に嘘をついたから俺はシャルテに女にされたんだ。それに嘘をついただけでこんなに謝るとか…俺には無理だ。
行幸は気まずそうな顔でリリアを見上げて思念を送った。
いや、あれだよ。俺は別にリリアを責める気はない。リリアにも考えがあっての事だろうし…そんなに謝るなよ…
行幸がそう思念を送るとリリアは頭を上げる。
『行幸さん…ありがとうございます…』
いや、別にいいよ。
あっそうだ。ちょっと聞くけど、どうしてあの時は幸桜の記憶を消したんだよ。
幸桜が恋愛対象者になる可能性があったのなら記憶を消す理由は無かったんじゃないのか?
行幸がそう思念を送るとリリアは小さく首を振った。
『必要があったのです。少なくとも私の中では』
リリアが勝手にやった事なのか?
『そうです。基本的には人の記憶を操るとか消すとか、そういう事はやってはいけないのです』
ま、まぁそうだよな。それが自由に出来たらとんでも無い事になる。
でも何で?何であの時は?
『それは行幸さんの置かれた状況。行幸さんはフェロモン効果という我々が普通の人には無いものを与えてしまいました』
それで俺はすっごい苦労してるんだけどな…
『血縁でないにしても幸桜さんと《みゆき》さんは兄妹です。それにあの時の幸桜さんは恋愛対象者ではない。私達の魔法の影響で行幸さんと肉体関係を持つなんて私は許せなかったのです』
なるほど…俺や幸桜の事を考えてくれていたのか。
そうだ、あの時に俺と幸桜が血が繋がってないって教えなかったのは何故だ?
リリアが自分を責める程の嘘をつく理由があったのかよ。
『それは…私の我がままです。教えたくなかった…教えれば行幸さんは嫌でも意識していまいますよね?』
確かに…そうかもしれないな…でも、結局はその事実をいつかは知る事になるんだ。
『…そうですね。しかし、それがあの時だとは思いませんでした。あと、その事実は私から知る事ではないと…』
まぁ…俺が親父達の言葉に耳を傾けなかったのも悪かったんだよな。リリアのせいじゃない。
『そうです。シャルテには血が繋がっていない事は教えていません』
んっ?シャルテには教えないのかよ?
『あの子はまだまだ未熟ですので…教えるとそれはそれで…』
リリア小さく首を振る。
行幸はシャルテを思い浮かべた。天使とは思えない言動…そしてツンデレ…確かに未熟だ。何であんなのが天使になった?幸桜の方が天使だよ。俺にとっては。
あっ、ちょっと質問していいか?
『はい』
幸桜は何で恋愛対象者になったんだよ?
『それは…』
それは?それは何だ?
『行幸さんには自覚はありませんか?行幸さんが原因なのです…』
俺が原因だと?俺が原因かよ…何となく所か、今回はかなり自覚があるが。
『行幸さんが、幸桜さんを恋愛対象者にしてしまったのです…』
それって、俺が幸桜に告白させたからなのか?それで対象者になったのか?
でもおかしいだろ…確かに俺は幸桜に告白させたかもしれない。でも、前に幸桜が暴走した時だってあいつは俺に告白した。何であの時にはあのタイミングで恋愛対象者にならなかったんだ?
『それは…』
それは?
『幸桜さんは、ずっと以前から行幸さんに対しての感情を特別なものにしてはいけない。行幸さんに迷惑をかけない。ずっと妹のままでいよう。そう考えていました。だから暴走して告白したにも関わらず恋愛対象者にならなかったのです。幸桜さんはとても意志の強い方です。ご理解して頂けましたか?』
幸桜がそんな事を…そんな幸桜を俺は恋愛対象者にしてしまった…
思わず自分の仕出かした事の重大さに気が付く行幸。
『行幸さんの先ほどの言動によって幸桜さんは抑えていた気持ちを解放したのです。そして幸桜さんは行幸さんを一人の女として愛すと決めました』
くっ…何てこったい!何てこったい!俺は馬鹿だ…
『そう、行幸さんは馬鹿ですね』
そう思念を送ってきたリリアはとても悲しい顔をしていた。
ああ、俺は馬鹿だ…絶対に敵わない恋を妹にさせるなんてな…
行幸はこてんぱんに凹む。
妹に恋愛感情を持たせて、自分を大好きにさせて、目の前で告白させて、そして恋愛対象者にした。
それなのに俺はその気持ちに答える事が出来ない。幸桜は妹なんだ…幸桜ごめん…
落ち込む行幸にリリアが思念を送ってきた。
『ここまで来たら…いっそ幸桜さんを恋人にする選択肢はないのですか?』
えっ!な、ないない!
行幸は大きく首を振った。
ないって!今までずっと一緒に暮らしてきた妹だぞ?いきなり恋人だなんてありえない!
『いきなりだと思わなければ良いのでは?最初から赤の他人だったのですから』
リリア?いきなり何だよ?お前は幸桜と俺をひっつけたいのか?
『そういう訳ではありませんよ?それも一つの選択肢だと言ったのです』
だから無いって!
『頑なに拒むのですね…行幸さんは』
悪いか!それが俺の性格だ!
『そうでした。先程なにか音がしませんでしたか?』
…音だと?音…ああ!そうだ!音がした!でも、幸桜は聞こえなかったって。
『幸桜さんには聞こえないはずです。しかし行幸さんには聞こえたはずです』
ああ、聞こえた。あの音って何だったんだ?暴走した時の音とは何か違ったけど。
『あの音は、行幸さんに解り易く説明すると…恋愛フラグが立った音』
恋愛フラグ?恋愛フラグってゲームのフラグって意味だよな!?
リリアは頷いた。
もしかして幸桜に恋愛フラグが立った音だったのか!?あの時に恋愛対象者になったのか?
『はい』
そ、そうだったのかよ…確かに、そういう感じの音だった…
『逆に言えばあの音が鳴るまでは引き返せる可能性があったのですよ』
なんだとぉぉぉ!遅い!言うのが遅いよ!
行幸は再び頭を抱えた。
じゃあ、あのタイミングまでは本当に引き返せたっていうのかよ?
『そうです。うまく対応していれば幸桜さんを恋愛対象者にせずに済んだのです』
なんってこったい。最悪なルート選択を俺は…
『行幸さん、そこまで落ち込まないで下さい』
リリアは優しい声で行幸に声をかけた。
何だよ?俺を慰めてくれるのか?
『いえ、そうではありませんが…今更ですし…』
優しいけどキツイ思念だな…
っていうか、そんな事実を知ったら落ち込むしかないだろ!
『でも…』
でも何だよ!
『幸桜さんは幸せになれました』
えっ?何で?俺はまだ何も答えを出してないんだぞ?あいつが幸せ?
『はい、幸せです。それは…行幸さんを兄ではなく男性として見れるようになったから。行幸さんの彼女になれる可能性が出来たからです。彼女は絶対に敵わないと思っていた恋愛が可能になった事がとても嬉しいのです。不安もいっぱいでしょうが、それでも貴方に告白出来た事。好きだと伝える事が出来た事がとても嬉しかったのですよ』
リリアはとても優しくそう思念を送ってきた。
そうか…そういう事かよ…わかる…言ってる事はわかるけど…
あぁ…心が痛い…すごく痛い…でも無理なんだよ!何度でも言うけど俺が無理なんだよ…
俺は幸桜を恋愛対象として見れない…あいつは妹なんだ…
『私は行幸さんなら、きっとそうなるだろうと予想していました。だからこそ幸桜さんを恋愛対象者にはしたくなかった。しかし、もう遅いのですよ?』
くそっ、重いな…とても重いぞ…
おいリリア…俺が選択したルートは大失敗だったろ?幸桜にも申し訳ない事をしただけだし…最悪だよな。
リリアは柔らかい笑顔で思念を返してきた。
『どうでしょうか?大失敗かどうか私には判断は出来ません。恋愛に正解など無いのですから』
正解が無いか…確かにそうかもしれない。でもこれは正解じゃない。俺はそう思う。
『わかりませんよ?もしかすると正解なのかもしれません。近い未来、幸桜さんと行幸さんが結ばれる事もあるのかもしれません』
む、結ばれる!?いや、ないだろ!
『この世の中には絶対はありませんよ?』
リリアは笑顔でそう言った。
まぁそうだけど…無いよな…確かに無い…
行幸は腕を組んで考えた。
リアル妹が恋人候補とか本気でゲームの内容じゃないか。いや、俺の体験している事がマジでゲームなんだ。アリエナイ事がありすぎだろ!俺は女になるし、妹は恋愛対象者になるし…血縁じゃないし!何だよこれ?もしかして神様が俺で遊んでるのか?それともこれは夢なのか?
考えれば考える程あたまが痛くなる…俺のあの平穏な日々を返してくれ…
『行幸さん。落ち込んでいる所を申し訳ありませんが、大事な事を先にお話をしておきますね。お解りかもしれませんが、幸桜さんの恋人になっても男性に戻れますよ』
「えっ?……えっー!?ちょっと待てー!」
思わずリアルで声が出てしまう。そして再び集まる視線。
「あの人、やっぱりおかしいよね?さっきからずっと誰もいない所に向かって何か言ってるし」なんて声がもろに聞こえてくる。
行幸はすぐに口を両手で塞ぐとくるりと体の向きを変えた。
イスに座り直して周囲を気にしつつ後方にいると思われるリリアに思念を送る。
お、おい、その話は本当かよ?
『本当です。私は言ったはずです。恋愛対象者と恋人関係になれば戻れると』
思念は向いてる方向は関係ないんだな。よく聞こえる。
確かに…じゃあ、幸桜と俺がひっついてもOKなのか?
『はい、もちろん大丈夫です』
何だろう…リリアが半分、開き直ったような感じがする…気のせいか?
リリアは後ろに居る為にその表情を伺えない行幸。
しかし、そうだよな。俺は恋愛対象者と恋人関係になるか、あとは完全に振るか。どちらかで男に戻れるんだよな。
っていうか待てよ?すぐに恋人になれるのは幸桜じゃないのか?
俺が付き合おうって言いえばそれでカップルになれるよな?そうか、いっそこのまま恋人同士になって男に戻ればいいじゃないのか?俺が割り切れば恋人にはなれるだろ。そうだよ!形だけの恋人になって、キスとかエッチな事とかしなきゃいんだよ!
でもなぁ…あいつはやっぱり妹なんだよな…嘘だとしても妹と恋人関係とかどうなんだ?
いや、男に戻ったらすぐに恋人関係を解消すれば問題ないのか?そうだよ!後で説明すればいいだろ?幸桜なら理解してくれるんじゃないのか?
そこへリリアの思念が割り込んでくる。
『行幸さん、とりあえず幸桜さんカップルになって男に戻ろう。なんて軽い気持ちでは男性に戻れませんよ?戻る為の条件はそれ程、甘いものではありません』
ちょ!お、おい!また心を読みやがったな!
『読むつもりはありませんが…入ってくるのです』
同じだろ!
『本当に駄目ですよ?男性に戻ってから幸桜さんを振るなんて…相手の立場も考えてあげて下さい』
じょ、冗談だよ…いくら俺でも…それは流石に実行には移せない。
『半分、冗談には聞こえませんでしたが?』
冗談だって!俺がそんな事を出来るはずないだろ!
『確かに、実行には移せないかもしれないですね』
行幸は返す言葉が無かった。
し、しかし、戻る為の条件って?そんな厳しいのか?
『いいえ。普通に恋人同士になる事を考えれば厳しくはありません』
普通に恋人同士か…もしかして恋人同士になって何かをしないと駄目なのか?
『…そこはご想像にお任せしますが…相思相愛の若い男女が何もしないなんてありますか?愛を確かめるのではないのですか?』
えっ?愛!?えっと…こ、恋人同士だとあれだよな…いや、まぁ…愛を確かめるって…まさか…
そして思い浮ぶのは卑猥な事ばかり。仕方無いよ。だって俺は男だから…って待て!こんな事を想像したら…
そーーと振り返り、リリアを見る。
先ほどまで冷静だったリリアがちょっと頬をピンク色に染めて照れている。
『ええと…恋人同士であれば…それも否定はしませんが…でも、行幸さんって結構ハードなのがお好きなのですね…私の想像以上でした…まさか…』
うぁぁぁ!言うな!じゃない!思念を送るな!お願いやめてくれ!
『ですが…恋人同士になったばかりで縛るのはどうかと…』
だから言うなって言ってるじゃないか!
俺の…俺のヒットポイントはもうゼロだから…やめてあげて…
行幸は思わず顔を両手で覆った。
続く
※これは続きではありません。
行幸は考えた。
リリアは処女だったのか…
そうか、そうだよな?天使がエッチをするとかゲームの中だけの話だよな?普通に考えてもありえない。
しかし…えっと…リリアの体ってどんなんだろ?
やっぱ普通に女なのかな?胸も結構あるし、体型も普通に女だ。
じゃあ…やっぱり全部が人間と同じなのか?どうなんだ?
『それでしたら…一度、私とエッチな事をしてみますか?』
って!リリア!?な、何を馬鹿な事を!
『前にも言いましたが、私…そういう経験がありません。ですので…よければ経験させて頂ければ…』
いや待て!俺は今あれだ!男に戻る為にだな…大変な…って何で服を脱ぎはじめて!?待て!今、俺は女になってるんだぞ!?
『何を言っているのですか?ほら、もう貴方は男に戻っているではないですか…さぁ…貴方の好きにしてくれて良いのですよ』
え?あれ!?うそ!マジで男になってる!これって嘘だろ!夢だろ!
『はい、もちろん夢です』
行幸は目を覚ました。
咄嗟にパンツを捲る。ない…胸を触る。ある…
作者 という展開も入れてみようかと思うんだけど?
行幸 殺すぞ!
という事でまた次回!