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どうしてこうなるんだ!  作者: みずきなな
【どうしてこうなるんだ!】
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第五十話【俺の予想しなかった展開Ⅷ】

幸桜こはる行幸みゆきの妹を演じなければいけないという束縛からついに解放された。

今まで我慢が解放されたせいか、極端に感情を前に出して行幸みゆきに迫る幸桜こはる

そんな幸桜こはるにたじたじの行幸みゆき。そしてそんな二人のやりとりをリリアはこっそりと見ていた。

という感じで続きます。

 リリアの姿を確認した行幸みゆきから思わず声が漏れた。

 

「リ、リリア!」

 

 それを見ていたリリアはそっと右手中指を口にあてて、話さないでと行幸みゆきにアピールした。

 行幸みゆきはハッとして周囲を見渡す。誰もこちらを見ていない。

 行幸みゆきはほっと胸をなで下ろすと、今度は思念を送る。

 

 リリア、聞こえるか?

 

 リリアはこくりと頷いた。どうやら通じているようだ。

 

 おいリリア、もしかしてずっとそこに居たのか?まさか、ずっと俺達を見ていたのかよ?

 

 行幸みゆきの思念を受けたリリアは険しい表情で行幸みゆきを見詰める。そして返事をしない。

 

 リリア?おい…どうしたんだよ。何か返してくれよ。

 

 しかし思念は返って来ない。それから何度も思念を送ってみたがまったく反応がない。リリアはずっと難しい顔で行幸みゆきを見ているだけだ。

 

 おい…なんだよ?何で何も返さないんだよ。

 

 流石に返事がここまで無いと行幸みゆきもイライラし始める。

 

 おい!いい加減返事くらいしろよ!聞こえてないのか!

 

 今度は怒鳴るような強い思念を送る。するとリリアはやっと思念を返してきた。

 

『どうしてこんな事になったのでしょう…』

 

 えっ?どうしてって?

 

 やっと返って来た思念の意味が理解出来ずに首を捻る行幸みゆき

 

 おい、それってどういう意味だよ。

 

『そうですね…そのままの意味です』

 

 いや、だから意味わかないんだよ。その意味を教えてくれよ。


『知りたいのですか?』


 あたりまえだろ!

 

『わかりました…ご説明します…』

 

 そう思念を送るとリリアは小さく溜息をついた。

 

 行幸みゆきはリリアの顔を見ながら考える。リリアの伝えたい事はどういう事だろう?

 ここまで深刻になっている今までリリアは見た事がない。それ程の事なのか?もしかして伝えたい事って…

 そして思い浮んだのは先ほどまでの幸桜こはるとのやりとり。

 まさか、俺が幸桜こはるに告白された事なのか?それがこんなにリリアを深刻にさせる事だったのか!?

 

 そして思念ですぐに問う。

 

 おいリリア、もしかしてそれは俺が幸桜こはるに告白された事なのか?

 

『そうですね…それもあります。が…』

 

 がっ?がって何だよ。告白された事じゃないのか?他にも何かあるのか?

 

『はい』

 

 即答だった。

 

 な、何だよ?他にも何かあった?全然わかんねー!それって俺の人生に関わるような一大事なのか?

 

『はい』

 

 またしても即答だった。

 

 即答!?俺の人生に関わる一大事って何だよ?何なんだよ!?

 

 行幸みゆきは急激に不安に襲われる。今ですらいっぱいいっぱいなのにこれ以上変な事が起こってはたまったもんじゃない。おまけに人生に関わる一大事と聞けば不安になるのは当たり前だ。

 

 おい、本当に早く教えてくれよ!

 

 行幸みゆきは思念を送ると『ごくり』と唾を飲み込む。緊張でだんだんと喉が渇いてくる。

 しかし、すぐには思念は返って来なかった。リリアを見る。すると何か考えている。

 俺に教えるべきか迷っているのか?

 ふと行幸みゆきを見たリリアと視線が合った。そして見詰め合う二人。

 リリアの瞳から緊張が伝わってくる。再び唾を飲む行幸みゆき

 そしてしばらくはリリアと行幸みゆきは見つめ合いは続いた。

 一応は男と女が見つめ合ってあっているシチュエーションだ。

 これほど長時間見つめ合ってめっていれば今までの行幸みゆきならば我慢できず、恥ずかしくって視線を反らすはず。しかし今回は真面目な表情でずっと見ている。

 

 おい、黙ってないで教えろよ。

 

 行幸みゆきの思念を受けたリリアは目を閉じる。そして何か覚悟を決めたような表情で頷いた。

 

 緊張の趣でそんなリリアを見詰める行幸みゆき

 そしてリリアは行幸みゆきに衝撃の事実を伝える。

 

行幸みゆきさん…驚かないで下さいね…幸桜こはるさんが新しく恋愛対象者に加わりました』

 

 その思念に言葉を失う行幸みゆき。衝撃が体を走る。一瞬どういう意味だかわからなくなる。

 

 え?何か今、幸桜こはるが恋愛?あれ?嘘だよな?俺の聞き間違いだよな?

 信じたくない。リリアの思念を疑う。

 

『いいえ、嘘ではありません』

 

 そして、リリアのは行幸みゆきにトドメを刺した。動揺する行幸みゆき。心拍数が激増する。

 

 ま、待て!そんなのありえないだろ!

 

『嘘ではありません。本当の事なのです…』

 

 緊張の表情から焦りの表情に変化する。嫌な汗が出る。幸桜こはるに告白された時の緊張とは違う別の緊張が行幸みゆきを襲う。

 

 ま、待ってくれ。それって本当に本当なのか?幸桜こはるは本当に俺の恋愛対象者になったのか?

 

 リリアは頷いた。

 

 マジか…

 な、何でそうなったんだ?えっ?どうして?やっぱりさっきのやりとりが原因なのか!?

 

 両手で頭を抱える行幸みゆき

 

 幸桜こはるが恋愛対象者?じゃあ対象者が増えたって事なのか?そういう場合はどうなるんだ?これからどうなるんだ?

 

『落ち着いてください。やだ、何度も申しますが幸桜こはるさんが恋愛対象者になったのは事実です。そして私が幸桜こはるさんの担当を兼任する事になりました』

 

 リリアが担当だと!?

 信じたくない思念を受けて混乱する行幸みゆき

 リリアは天使だ。まさか嘘をつくはずなんてないよな?

 でも、幸桜こはるが恋愛対象者とかありえない…あっちゃ駄目だろ?昨日まで妹だって思ってた女の子だぞ?いや、俺にとっては今も妹なんだぞ?それが恋愛対象者だと?

 

 考えれば考える程ショックを受ける。しかし、そこである事が頭に思い浮かんだ。

 

 っていうか…そうだ、そうだよ!リリアなら幸桜こはるが恋愛対象者になる事を予想できてたんじゃないのか?

 もしかして対象者になる寸前で阻止だって出来たんじゃないのか?

 

 行幸みゆきは険しい表情でリリアを見る。

 

 おい!リリアにはこうなるって解ってたんだろ!そうなんだろ!何で恋愛対象者になる前に阻止してくれなかった!どうしてこうなるまで放置したんだ!

 

 行幸みゆきは強い思念を送るがリリアの対応は思った以上に冷たかった。

 

『阻止ですか?私には阻止する事は出来ません。いえ、その権利がないのです。行幸みゆきさんには前にもお伝えしたはずです。私達天使は人間の恋愛には直接関与は出来ないと…。これが暴走なら話は別ですが』

 

 うぐっ…だ、だからって放置とか酷くないか?恋愛対象者が増えればお前らが困るんじゃないのか?

 

『仕方ない事です…私も本当に辛いのです…』

 

 行幸みゆきは天を仰いだ。しかし残念。天井しか見えない。

 

 おいリリア。俺はこれからどすればいんだ?幸桜こはるにどう対応すればいいんだ?俺が男に戻る方法も変わるのか?

 

 深刻な表情で質問をする行幸みゆき


『これから…ですか?』


 そうだよ。


『それは…』


 ちょ、ちょっと待って。


 行幸みゆきの頭の中では色々な考えが浮かんでは消えてゆく。正直考えが纏まらない。今、何を聞いても理解出来ないかもしれない。解る。自分で混乱している。

 行幸みゆきはゆっくり目を閉じた。そして自分に言い聞かす。

 冷静になれ…落ち着くんだ。落ち着け…

 そして再び深呼吸をする。何度か深呼吸をしてやっと落ち着いてきた行幸みゆき

 

 少し落ち着いてきた。よし、確認しておくべき事はちゃんとリリアに確認しておこう。

 これからの事とか俺が男に戻る方法はどうなるのかとか…あとは…幸桜こはるの事とか…


 行幸みゆきは真面目な表情でリリアを見上げる。行幸みゆきをリリアが見返す。

 

 よし、落ち着いて質問するんだぞ?

 

 行幸みゆきが質問を思念を送ろうとした時、先にリリアが思念を送ってきた。

 

『質問があるのですね。どうぞ…』

 

 えっ?

 

 リリアの思念はまるで行幸みゆきの心を読み取ったかの様な内容。そこで行幸みゆきは思い出す。

 

 そうか!そうだった。こいつら心が読めるんだった!リリアは俺の心を読みやがったな。

 くそっ…心を読むという酷いチート機能を使いやがって。

 

『チートではありません』

 

 すぐに反応するリリア。

 

 おいっ!だからそれがチートなんだって!

 く…くそっ!これじゃ俺のプライバシーはいつでもリリアに筒抜けになるじゃないか!ってもしかして今までそこに居たって事は…

 

 恥ずかしい事とかいっぱい考えていた事を思い出す行幸みゆき

 

 も、もしかして幸桜こはるとやりとりしてた時の俺の考えとか全部知ってるのかよ!?

 

『そこはご安心下さい。私は行幸みゆきさんのプライベートに興味はありません。例え卑猥な妄想をしていても、怪しげな脳内会議をしていていても、私は偏見の目で見たりはしませんよ。大丈夫です』

 

 リリアは笑顔で思念を送ってきた。

 

 ぶふっ!か、完全に読まれてた…

 

 だから、そういう問題じゃないんだって!興味なくったってそういう風にわかっちゃんだろ!?これから俺が考える事も解っちゃってるんだろ!?

 

 思念を送る行幸みゆきの顔は、どんどんと赤くなってゆく。

 

『ほら、早くしないと幸桜こはるさんが戻ってきますよ?』

 

 リリアは笑顔で冷静に返してくる。

 

 えっ?えっと?話をはぐらかすなよ…

 

『ほら、本当に早く質問された方が良いと思いますよ』

 

 確かに…幸桜こはるが戻ったらもう質問は出来ない…

 もう考えを読まれるのは仕方無いか…隠せる訳でもないし諦めろ…

 

 そして行幸みゆきは誓った。

 今度からリリア達の前ではあまり変な事は考えないようにしようと。

 

『はい、頑張ってください』

 

 くそっー!

 行幸みゆきは凄まじい敗北感に襲われた。

 

『ほらほら、質問があるのならば早くお願いします』

 

 わかった…わかったよ…

 

 行幸みゆきは色々と諦めた。そして質問を考える。

 そして質問したい事をすぐに一つすぐ思い付く。それはまったく恋愛対象者とは関係の無い事だが確認しておきた事。

 

 リリア、まず…一つ目だけど。

 

『はい、どうぞ』

 

 幸桜こはると俺は血が繋がってないって本当なのか?

 

『はい』

 

 これまた即答かよ。

 

 ここまでくれば覚悟はしていた。だけど、覚悟はしていたと言えどショックはショックだな。

 だが、幸桜こはると血が繋がっていない事実が明確になた事で行幸みゆきの中の何かが吹っ切れた。

 ん?待てよ!?前に幸桜こはるが暴走した時…あっ!


 行幸みゆきはある矛盾に気が付いた。

 

 そうだ!そうだ!思い出したぞ…あの時のリリアの台詞だ…あの時リリアは!

 

 それは以前リリアが言った台詞。

 

 おい、前に幸桜こはるの記憶を消してくれた時にリリアが言った事、今も覚えてるか?

 

『えっ?私が行幸みゆきさんに言った事…ですか?』

 

 明らかにリリアの態度が変化した。

 

 そうだ。

 

『…もちろん、覚えています』

 

 じゃあ解ってるよな?おかしいだろ?矛盾してないか?

 

『そうですね…おかしいですね…』

 

 すっかり冷静さを失ってたけど、さっき思い出したよ。

 リリアはあの時に言ったよな?血縁の家族は恋愛リストには入らないって。それは幸桜こはるが俺の血の繋がった妹という意味で言ったんだよな?

 

 リリアは険しい表情で行幸みゆきを見る。

 

 あれって嘘だったのか?それと血縁じゃないって事が嘘なのか?俺はリリアは天使だし嘘をつかないって思ってたのに、嘘ついてたのかよ?

 

『私は…』

 

 私は?

 

『私は…天使失格ですね…』

 

 リリアはそう言うと俯むく。そしてうっすらと瞳に涙を浮かべた

 

 続く

天使失格だと言ったリリアの本当の気持ちは?

そんなこんなで続きます。

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