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どうしてこうなるんだ!  作者: みずきなな
【どうしてこうなるんだ!】
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第四十九話【俺の予想のしなかった展開Ⅶ】

妹に告白されて困惑する行幸みゆき。妹の破壊力はゲーム所の問題じゃなかった。そう、幸桜こはるは可愛いのだ。妹だから意識をしていなかったが、実はすごく可愛かったのだっ!はい、続きをどうぞ。

 幸桜こはるの言葉…

 本気で俺とキスがしたかったのか?

 

 行幸みゆきは先日のあのキスシーンを思い出す。

 

 キス…もうしちゃたんだよな…いや、そんな事は今はどうでもいいんだ。

 行幸みゆきは聞こえないフリをした。それが最善だと思ったからだ。

 

 そして、無言のまましばらく時間が経過する。

 目の前に置かれてあるコーヒーはすっかり冷めてしまい、湯気すら立っていない。

 そして、幸桜こはるは相変わらず俺の腕を抱いている。

 傍から見ると百合カップルに見えそうだ。

 

 行幸みゆきは周囲を見渡した。俺と目が合う度に皆が視線を逸らす。

 

 ま、まぁ…こういう反応されて普通か…なんて考えていると…

 

行幸みゆき…」

 

 幸桜こはるの口がついに開いた。

 

「何だ?」

「答えだけど…」

「うん…」

 

 行幸みゆきの中では幸桜こはるは妹であって、恋人には出来ないと答えは出ている。

 しかし、それは言えない。そう思っていた。

 その一言が妹を傷つける事になりそうだから。それが怖い。

 幸桜こはるを傷つけるのが怖かった。嫌われるのも怖かった。

 

「どんな答えでもいいから。覚悟はしてるから…だから思った事を言って欲しいの」

「わ、わかった…」

行幸みゆき…」

「何だよ…」

「私は行幸みゆきが大好きだよ…本当に…大好き…」

 

 その瞬間だった。『ぴらりーん!ピコーン!』

 まるでゲームのフラグが立ったかのような効果音が行幸みゆきの頭の中に響いた。

 その音は大きく、頭の中で響き渡った。

 

「な、何だ!?」

 

 行幸みゆきは慌てて立ちあがると喫茶店の中を見渡す。

 

「きゃっ」

 

 幸桜こはる行幸みゆきの立つ勢いで思わずイスに倒れこんだ。

 

「痛っ」

「あっ、ご、ごめん」

 

 行幸みゆきは慌てて幸桜こはるの手を掴み体を起こす。

 

行幸みゆきどうしたの?いきなり立つからびっくりしたよ」

「えっ?あっと…そう、何か音がしたんだよ」

「音?」

「そう、音がしたんだ。それも結構おおきな音だ。幸桜こはるには聞こえなかったのか?」

「ううん、何も聞こえないよ?」

「あれ?」

 

 おかしい…確かに音が聞こえたのに。俺にしか聞こえていないのか?

 そういえば喫茶店の店員も客も別に慌ててる様子もない…

 音…音か…音って?ま、まさか!幸桜こはるがまた暴走するのか?

 

 行幸みゆきは慌てて幸桜こはるを見た。

 しかし、そこにはキョトンとした表情で行幸みゆきを見ている幸桜こはるの姿。

 

 …暴走してる気配はないか…

 じゃあ何だったんだ?さっきの音は…まさか!周囲で誰かが暴走してる?

 

 行幸みゆきは改めて店内を見渡す。しかし誰も暴走している気配はない。

 それよりも、視線が自分に集まっている事に気が付いた。

 

「み、行幸みゆき?座ってよ!目立つでしょ!」

「はっ!そ、そうだよな」

 

 行幸みゆきは慌てて座った。

 

「うーん…」

行幸みゆき、大丈夫?」

「あ、ああ…大丈夫だよ」

「ならいいんだけど…」

 

 とは言っても気になるな。くそっ気になって仕方ないぞ。何の音だったんだ?さっぱりわからない…

 今はリリアも居ないし…

 

「ねぇ行幸みゆき…」

 

 そ、そうだよ。音もそうだけど、こっちもどうにかしないとダメなんだ。

 くぅ…どうする?いつまでもこのままじゃ駄目だよな。

 だからと言って、幸桜こはるを傷つけるような一言は言えないしな…

 出来ればうまくここをうまく切り抜けたい。どうする…

 

 行幸みゆきは考える。うまく乗り切る方法を。

 そして一つの手を考えた。というかそれしか考えつかなかった。

 

 よし…ここはゲームに置き換えて考えよう。

 

 行幸みゆきの考えなんて所詮はこんなものだ。

 しかし、この方法は今まで何度も失敗してうまくいっていない。

 だが、他に方法が無い。そう、行幸みゆきの恋愛経験がまったく無い。だから疑似恋愛体験であるゲームしか頼るものがなかった。

 

 よし…思い出せ。こういうシーンだった場合はどうやって乗り越えたかを。

『すぃーとモードはーとまーく』でも『俺と恋人達の放課後』でも確かこういうシーンはあった。

 そうだよ。俺は何度もこういうシーンを切り抜けたじゃないか。

 冷静に考えればここは切り抜けられるはずだ。

 今までの経験を生かせ。リアル恋愛経験がなくったって俺にはゲームの経験があるじゃないか!

 そうだ、俺は…神だっ!ゲームの中の神なんだっ!買って来たエロゲーは全部クリアしてるじゃないか!※通常はクリアできるように出来てます。

 

 そうだよ!某漫画だって自分を神だって言ってたじゃないか。※それは漫画です。現実ではありません。

 

 しかし、人間の思い込みとは恐ろしいものである。

 そのポジティブ思考が行幸みゆきの中の何かを刺激した。そして行幸みゆきを変えた。

 行幸みゆきの目つきが変わる。これがエロゲ攻略モード、イケテル男子(自称)モードを発動した!

 

 俺なら出来るっ!

 

 しかし、行幸みゆきは重要な事に気が付いていない。

 所詮ゲームは『恋愛を成立させる』のが目的であって『恋愛回避』は目的では無いのだ。

 そう…『恋愛成就』して『エッチ』をするのが目的なのだ!

 

 モード移行後、キリっとした真面目な表情に変化した行幸みゆき

 そんな行幸みゆきの表情の変化にいち早く気が付いた幸桜こはる

 息を飲み見る行幸みゆきをじっと見た。

 

幸桜こはる

「は、はい」

 

 行幸みゆき幸桜こはるの腕をそっと自分の腕からはずす。そして幸桜こはるの左手を自分の右手でぎゅっと握った。

 

「えっ…あっ」

 

 幸桜こはるは驚き、そして顔を赤らめる。

 そんな幸桜こはるに言葉で追い討ちをかける。

 

「俺はな…幸桜こはるが好きだよ」

 

 その一言を聞いた瞬間、幸桜こはるの顔は更に赤くなる。

 

「ほ、本当っ?」

 

 そして、幸桜こはるは恥ずかしそうに笑顔を浮かべた。

 

「ああっ、幸桜こはるが大好きだよ」

 

 幸桜こはるの目からは思わず嬉し涙が溢れる。

 

「嬉しい…すごく嬉しい。私も行幸みゆきが大好き。本当に大好き」

 

 幸桜こはる行幸みゆきの手をぎゅっと握り返してきた。

 しかし行幸みゆきは笑顔をつくらない。あくまでも真面目な表情で幸桜こはるに語りかける。

 

「でもな、恋人関係にはなれない。恋人関係というのはそんなに簡単なものじゃないんだよ。幸桜こはるだったら解るよね?」

 

 その一言で一気に表情が曇る幸桜こはる

 

「えっ?それってどういう意味なの?やっぱり私じゃ駄目って事なの?」

 

 そう言って顔をぐっと近づける。先ほどのうれし涙が今になって頬を伝わっている。

 普通の行幸みゆきであればここで動揺する所だが覚醒した行幸みゆきは動じなかった。

 その涙を左手でそっと取ってあげると優しい笑みを浮かべる。

 

「ほら、そんな悲しそうな顔をしないで」

「だって…」

「別に幸桜こはるじゃ俺の彼女として駄目という事じゃないよ。ただ、今すぐには幸桜こはるの告白にはまだ答えられないという事なんだ」

 

 しかし、幸桜こはるは納得ゆかないのか首を振った。

 

「何で?何でよ?行幸みゆきも私が好きなんでしょ?好きなんじゃないの?」

 

 幸桜こはる行幸みゆきの手をぎゅっと握ったまま顔を行幸みゆきの顔にさらに寄せる。

 寸前まで来た幸桜こはるの顔に思わず自分の顔を引きそうになるが、耐えた!

 

「す、好きだよ」

「それは答えじゃないの?私が恋人でいいって意味じゃないの?」

 

 行幸みゆきは小さく首を振った。

 

「これは答えじゃない」

「どういう事?どういう事なの?」

 

 幸桜こはるはそう言いながら今度は項垂れた。

 

「ごめん。俺は今すごく動揺してるんだ。だからちゃんとした判断も出来ない。そんな状態で安易に幸桜こはるを一人の女性として好きだとか嫌いだなんて言えない。軽い気持ちで答えなんて出せないんだよ」

 

 幸桜こはるは俯いたまま首をふる。

 

「…やだ…そんなのやだ。好きなら私を…」

 

 項垂れる幸桜こはるの頭を行幸みゆきは優しく撫でた。

 

「大丈夫だよ。ちゃんと答えは出す。約束する。勇気を出して告白してくれた幸桜こはるの為にも」

 

 幸桜こはるはゆっくりと顔をあげる。両方の瞳からは涙が溢れでている。

 

「…じゃあ…いつまで…いつまで待てばいいの…」

 

 幸桜こはるの悲しそうな泣き顔を見ていると心が揺らいだ。気持ちが負けそうになる。

 しかし、今回の行幸みゆきは強かった。またもや耐えた!

 

「俺が男に戻るまで待ってくれないか」

「えっ?男に戻るまでって!」

 

 幸桜こはるの顔に焦りが見える。

 

「それってすみれさんと恋人同士になるって事!?それともすみれさんを振ってくれるって事なの?」

「解らない。まだそれも解らない。気持ちの整理がついていないから」

「解らないって何?じゃあすみれさんと恋人同士になる可能性もあるって事なの!?」

「ゼロじゃないな」

「やだよっ!私はやだ!行幸みゆきをあげたくない!誰にもあげたくない!」

 

 幸桜こはるは俯き、そして首をぶるんぶるんと横に振る。

 

幸桜こはる、落ち着いて。きちんと考えてから結論は出すから。さっきどんな答えでも覚悟してるって言ってたじゃないか」

 

 幸桜こはるは唇を噛みしめた。そして俯く。

 

すみれに対しても安易に答えは出さないから」

 

 幸桜こはるはゆっくりと顔を上げる。そして行幸みゆきに抱き付いた。

 

「ちょっ!」

 

 流石に動揺する行幸みゆき。だがここも耐える。

 

幸桜こはる?落ち着いて…」 

「ねぇ…私を選んでくれるよね?選んでくれるよね?」

 

 訴えかけるように幸桜こはるは抱き付いたまま言った。

 

「それはまだ解らない…まだ解らない」

 

 行幸みゆきは小さな声でそう返した。

 

「私は…私は信じてるから…」

 

 幸桜こはるはゆっくりと行幸みゆきから離れる。そして行幸みゆきの手を取るとそっと自分の胸に当てた。

 

「お、おい!ちょっちょっと」

 

 ここで素に戻る行幸みゆき。妹の胸の威力抜群である。

 そして手を引こうとするが、両手でしっかりと持ち離してくれない。

 

「逃げないで…」

「で、でも幸桜こはる、む、胸に…」

「いいの…そんな事はどうでもいい…今は感じて欲しいの…」

「な、何をだよ…」

「私の心臓の鼓動を…」

 

 そう言われてやっと気が付いた。幸桜こはるの心臓の鼓動が、激しく鼓動する振動が手のひらに伝わる。

 

「ねえ…わかるでしょ?私の鼓動。すごくドキドキしてるんだよ…私の胸は張り裂けそうなんだよ…それは…行幸みゆきと一緒だから…私…私は…」

 

 幸桜こはるの柔らかな胸の感触を通し、ドキドキと強く鼓動する振動がさらに強さを増す。

 

「ちゃ…ちゃんと伝わってるよ…」

「私ね…すごく勇気を出したんだよ?」

「解ってるよ…」

「ずっと、ずっと我慢してたんだからね?」

「う、うん…」

「好きなんだよ…本当に好きなんだからね…」

「えっと…」

「今まで辛かったよ…」

「わかってる…」

「本当に…辛かったんだよ…」

「わかった…答えは…ちゃんと出すから」

 

 行幸みゆきの手をぎゅっと握る幸桜こはる。そして俯き答えない。

 これは待ちたくないって事なのか?

 

幸桜こはる、待っててくれるよね?」

 

 幸桜こはるは俯いたまま小さく頷いた。そして行幸みゆきの手をそっと離す。

 

 しばしの無言タイム。幸桜こはるは横で項垂れたままだ。

 行幸みゆきはふと顔を上げて喫茶店を見渡した。

 すると店内ほぼ全ての人が行幸みゆき達を見ている。

 行幸みゆきが店内を見渡していると、蜘蛛の子を散らすように一斉に人々が動き始めた。

 

 もう…気にしたら負けだな…

 行幸みゆきは諦めてた。周囲からどう思われても仕方がない。もういい訳なんてきかないんだからな。

 そして思う。この喫茶店にはもう二度と来られない…

 

 行幸みゆきが溜息をついていると、いつの間にか幸桜こはるが立ち上がっている。

 

幸桜こはる?」

 

 幸桜こはるは涙でぐちゃぐちゃになった顔をハンカチで拭きながら、それでも笑顔で言った。

 

「緊張しちゃったからおトイレに行きたいの忘れてたよ」

 

 そう言うと幸桜こはるはお手洗いへと消えた。

 

 笑顔だったけど…あれは無理に笑顔をつくってたよな…

 ……

 ……俺、なんとか乗り切ったのか?

 

 緊張の糸が切れた。いきなり体が震える。

 

 俺、よく頑張ったよな…よく頑張ったよ…

 幸桜こはるごめんな。申し訳ないけど今は返事が出来ないんだよ。お前を恋人には出来ないって結論が出ているのにな…

 そう思いながらトイレの方を見ていると後ろから気配を感じた。

 

 行幸みゆきは『バっと』勢いよく振り返る。

 後ろには…いや、正確には斜め後ろの上にはリリアの姿があった!

 

 

 続く

ついにリリアが登場!そしてリリアの口から…続きますよ?

『すぃーとモードはーとまーく』『俺と恋人達の放課後』はもちろんエロゲです。内容は…ご想像におまかせします。

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