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どうしてこうなるんだ!  作者: みずきなな
【どうしてこうなるんだ!】
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第三十七話【俺の決戦の結末①】

二人に向かって走るすみれ。そんな事も知らずに会話中の二人。

果たしてその結末とは? 遂に? 行幸みゆきの勝負が決着します! っと格好良く書いてみる実験

 橋の上では恋愛バトル継続中。

 

 意気消沈中の行幸みゆきは、されるがままにフロワードに抱かれていた。


 フロワードには悪い事をしたのは俺だ……本当に悪い事した。


 抱かれたまま溜息を『ふぅ』とつく行幸みゆき

 そんな行幸みゆきにフロワードが語りかける。

 

行幸みゆき、やっぱり俺じゃ駄目なのか?」

 

 それはとても優しくて、そして寂しそうな声だった。

 

「ごめん……」

 

 行幸みゆきは俯いたまま、小さな声でそう答えた。

 そこでふと気づく。そういえば……フロワードの奴、すごく落ち着いてるよな?

 あれ? もしかしてフェロモン効果が切れたのかな?

 

「やっぱり駄目なのか?」


 確かにフロワードとの会話は普通っぽくは戻っていた。

 よし、今なら話も通じそうだし、離してくれって言えば離してくれるか?

 言ってみなきゃ始まらないよな。


「うん、ごめん……だから、俺を離して欲しいんだけど?」

 

 行幸みゆきは顔を上げて、フロワードに向かって言ったみた。

 冷静になったように見えたフロワード。だからこそ、離して欲しいと言えばきっと離してくれると思ってた。

 しかし、またもや行幸みゆきの期待は裏切られる。

 

「いや、離さない。俺と付き合ってくれるって言うまでは離さない」


 フロワードに思いっきり笑顔で拒まれたのだ。


「ま、待って、だから付き合えないって言ってるだろ? 理解してくれたんじゃないのか?」


 ちょっと焦ったのは行幸みゆきだ。


 やっぱり甘かったのか? まだフェロモン効果が続いてるのか? 暴走状態も継続いてるのか?

 

「理解なんてしたくないよ」


 ずっと笑顔のフロワード。


「俺がフロワードの気を引くような会話とかした事は謝るよ。でも、こんな事をしてると本気で大嫌いになるぞ?」

「言ったじゃないか、俺はミユキが好きなんだよ。彼女になって欲しいんだ。駄目なのか? 俺がミユキを好きになっちゃ駄目なのか?」

「いや、それは……えっと……」

 

 笑顔でも真剣な表情のフロワード。行幸みゆきは完全に自分のペースを崩されている。

 暴走のお陰もあって、フロワードも躊躇なく恋愛感情をぶつけてくる。

 恋愛経験がゲームのみという行幸みゆきにはなかなか厳しい状況であった。

 所詮は童貞である。二次元は三次元ではない現実。


 マジの告白か……

 幸桜こはるにも告白されたけど、その時と今回は全然違うよな。

 これが惚れた女に告白する時の真剣さなのか?

 やばい、フロワードの勢いに押されてる。

 でも……だけど、ここで負ける訳にはゆかない。

 

「だ、駄目なんて言ってない。だけど彼女にはなれないんだ。何度でも言う。なれないんだよ!」

「それならやっぱり離さない。キミが好きだから、本当に本気で好きだから」

「解ってくれよ!」

「嫌だ。俺はね、俺はミユキのすべてが欲しいんだよ。キミの全てがさ……」

 

 フロワードの抱き寄せる手にぎゅっと力がこもる。

 

「えっ……ま、待て! ちょっと待て!」

 

 おまけに全てが欲しい宣言もでました。

 

「何度でも言うよ。ミユキの全てが欲しい。絶対に幸せにするから……ずっと一緒にいよう」

 

 とても優しくて真剣な顔のフロワード。そして今の会話にちょっとひっかかるキーワードが含まれていた。

 

「ちょっと待って……ええと? 幸せにするって?」

「うん、だから結婚しよう」


 やっぱりそういう事ですか!

 

 【速報】行幸みゆき、人生初のプロポーズは男から。

 

「ま、待って! 今日が初対面だぞ? いきなりそういうのはイケナイ事だと思うんだ!」

「何故だよ?」

「何故って、そりゃ常識的に考えてみろ、初めて逢って即日でプロポーズする奴なんているか!?」

「いるよ?」

「え!? 何処にだよ」

「ここに」

 

 そしてこの満面の笑みである。

 

「……」

 

 呆気にとられる行幸みゆき。そして思った。コイツ駄目だ。

 

「と、取りあえず離してくれ!」

「嫌だ」

「離さないと訴えるぞ?」

「いいよ?」

 

 またしても笑顔で即答である。

 

「い、いいよって! 笑顔で言うな!」

「ミユキにだったら何をされてもいい」

 

 フロワードは相変わらず笑顔で行幸みゆきを見ている。

 行幸みゆきはフロワードと視線があう度に恥ずかしくて顔が熱くなる。


 そんな笑顔で言うなよ……くそ…調子が狂うなじゃないか。

 気が付けばドキドキと胸の鼓動も高鳴っていた。

 何でこんな状況にドキドキしてるんだよ俺は……

 くそ! 文句言ってやる! 何をされてもいいとか簡単に即答しやがって!

 

「あのさ? そこは『訴えるのは辞めてくれ! 離すからお願いだ!』とか言う所じゃないの?」

「ああ、そういう答えを望んでたのか。でも僕は本当に訴えられてもいいんだよね。ただ、その引き替えにミユキの全てが欲しいだけだよ」

「オイマテ。ソノコウカンジョウケンはオカシイ」

 

 やばい、こいつ完全に狂ってる。

 

「落ち着けフロワード。今のフロワードは冷静じゃない。だからちゃんと落ち着いて話しをしようじゃないか?」

「俺達の未来計画とかを?」

「そうそう、子供は何人欲しいかとか……って、違う! そうじゃない! どうしてそうなる!」

 

 危ない、思わず乗る所だった。(いや乗ってただろ。)

 

「俺は子供は二人がいいな」

「引きずるか!」

「いや、本気だけど?」


 俺からも本気に見える……


「謝る、ごめん、俺が話しにちょっと乗ってごめん……」

「ん? 別にいいよ……会話の中で俺と結婚する覚悟が出来きて来たのならね」

「いや、出来ないから」

「え? 何で?」

「それに、結婚とか無いから……」

「えぇぇ!」

 

 フロワードは唖然と行幸みゆきを見た。


 こっちが「えぇぇ!」って言いたいよ! と言うか何でそんなに驚くんだよ!

 

「それでも僕はミユキが好きだ」

 

 フロワードは再びぐっと行幸みゆきの体を抱き寄せた。

 行幸みゆきは完璧にフロワードの懐に抱き寄せられた状態になる。

 

 もう無理だ……うまく振るとかそういう問題じゃない。

 今のフロワードにはまともに話が通じない。このままじゃ言い合いの無限ループ突入だよ。

 

「ミユキっていい匂いがするよな…」

「え!?」

 

 いつのまにかフロワードは行幸みゆきの首もとに顔を寄せていた。

 左首筋にフロワードの息がかかる。妙に暖かくってくすぐったい。

 

「ば、馬鹿! 匂いを嗅ぐな!」

 

 息が拭きかかる度に行幸みゆきの心臓がバクバクと強く鼓動する。


 俺は嫌な事をされているのに何でまたドキドキしてるんだよ!?

 相手は男だぞ? 男に何度もドキドキさせられるとか……

 

「それにすっごく柔らかい……」

 

 背中に回したフロワードの手がすーっと行幸みゆきの背中を優しくなぞった。

 行幸みゆきは体をぴくんと震えさせる。


 んっ…くっ…くすぐったい!

 それに何だこれ? 体が熱くなって来た?

 

「や、やめろよ! 本当に……本気で離してくれ……お願いだから…」

「嫌だ、止めない。それに顔が赤いよ? 行幸みゆきも本気で嫌ってないんじゃないのかい?」

「……うぅ」

「じゃあ、そろそろ本気でミユキを貰おうかな?」

「……え? も、貰うって?」

「よいしょっと」

 

 フロワードは何を考えたのか、ミユキをひょいと抱えあげるとお姫様抱っこ状態になった。

 

「な、何? 待って、ちょっと待って!」

「何を待つのかな?」

「何で抱きかかえてるんだよ!? 下ろして!」

「嫌だよ?」

 

 やばい! なにこの状況!

 まさか男にお姫様抱っこされる日がくるなんて思っても見なかった。って何でこうも簡単に抱き抱えられちゃったんだよ!? おいおい……

 

「さぁ、二人で愛を確認しにゆこうか?」

「へ? ドウイウイミデスカ?」

 

 フロワードは満面の笑みで行幸みゆきの瞳を見た。

 思わず視線を逸らす行幸みゆき


 あ、愛を確認するって? もしかして? マサカの合体フラグじゃないよね!?

 

「ミユキだって子供じゃないんだから……解るよね?」


 合体フラグでした。


「エエト……ワカリタクナイ」

「なんだ、ちゃんと解ってるじゃないか」


 あぁぁ! しまったっ!


「ひ、否定する! 断固否定するからな!」

「大丈夫だよ」

「な、何がだ! 俺は大丈夫じゃない!」

「だって、俺は初めてだから……」

「俺だって初めてだよ!」

「あっ、そうなの? 嬉しいな……」

「え? あぁぁっ!」

 

 俺は何を教えてるんだぁぁぁ!

 

「じゃあ、初めて同士で頑張ろうな?」

「が、頑張りたくない!」

 

 やばい、このままじゃホテルに連れ込まれて俺のバージンが奪われる!

 まだ童貞なのにロストバージンが先なんてシャレにもならないじゃないか!

 

行幸みゆき、顔がさっきより真っ赤だよ? 耳まで真っ赤だね。ミユキって初心なんだね? 可愛いなぁ」

「う、煩い!」


 くそー! マジで顔が熱い! 体が熱い!


「大丈夫だよ、優しくするからさ」

「やめろー! 下ろせっ!」

 

 懸命に手足をバタバタと動かし抵抗する行幸みゆき

 だがやはり非力である。まったく抜け出せない。

 

 女の子ってこんなに非力なのかよ。

 くそっ! 男だったら……男だったら簡単に脱出してやるのに。

 

 しかし、すごく嬉しそうなフロワード見ていると、行幸みゆきは再びある気持ちに襲われた。

 

 でも……あれだよな。フロワードをこんな状態にしたのは俺なんだよな。

 俺のせいでフロワードは暴走しちゃってるんだよな。

 ネカマって嘘をついて、女のふりをして好意を抱くように仕向けて、そして俺を好きにさせた。


 ぼわっと行幸みゆきの視界が霞む。


 くっそ……ちょっと涙が出てきた。悲しいのもあるけど、悔しいな……俺は馬鹿だよなぁ……

 

 フロワードの目からも行幸みゆきの瞳が潤んでいるのがわかった。

 まさにか弱く可愛い女の子状態の完成。

 そしてミユキはお姫様抱っこ状態のまま抵抗を止めた。

 

 諦めようかな……俺はやられても文句言えないのかもな……

 それに、どうせもう成るようにしか成らないんだ。

 

 その時だった、空耳であろうか、行幸みゆきの頭の中に響く声。

 

『それでいいのですか? それが行幸みゆきさんの望む結果なのですか? 答えなのですか?』

 

 誰だ? もしかしてリリアなのか?

 

 行幸みゆきは辺りを確認した。しかしフロワードと自分以外は誰もいない。

 空耳なのか?


 しかし、先ほど聞こえた声で行幸みゆきはもう一度考え直す。

 果たしてこれは自分が望んだ結末なのかを。


 違う……これは俺の望んでる結果じゃない。

 そうだよ、ここでやられちゃったら俺って男に戻れないんじゃないのか?

 それは困る! そうだよ、俺はフロワードを振って男に戻らないと駄目なんだよ。

 確かに俺が悪かったかもしれない、だけどここは何とかしなきゃ駄目だろ!

 今の俺は逃げてるだけだっ!

 

「じゃあ移動しようか?」

「待って!」

 

 こうなったら、効果的な断り方はこれしかない!

 行幸みゆきは気合いを入れて強い口調で言い放った。

 

「フロワード! 俺には本当に好きな人がいるんだ! だからフロワードとは付き合えないんだ! 今まで黙っててごめん。フロワードにはストレートに言いたくなかったんだ! でも、ここまできたら言う! 俺には好きな人がいる! だからフロワードには何もあげられない!」

 

 フロワードの笑顔が消えた。そして信じられないという表情で行幸みゆきを見る。

 

「好きな…人って?」

 

 効果だけを考えて後先を考えずに言った台詞であったが、フロワードには十分に効果があった様子だ。

 

「まだ俺が一方的に片思いしているだけだけど、でも、前からずっとその人に告白したいと思ってたんだ。フロワードは俺が好きかもしれないけど、俺はその人が好きなんだよ!」

「う、嘘…だよな?」

「嘘じゃない、だったら好きな人の名前を教えようか?」

「い、いい! そんなの言わなくってもいい!」

「駄目だ! 教えてあげないとどうせ信じてくれないんだろ?」

「いい! 俺はそんな事は聞きたくない!」

 

 教えるとは言ったものの誰の名前を言えばいいんだ?

 店長か? いや、それは無いな。(脳内即否定のスキル)

 すみれか? ……すみれかぁ……

 でもダメだな。嘘の片思いの相手にすみれの名前を使いたくない。となると……知り合いの女性で抵抗なく言えるのってお前だけなんだよな。

 それにお前は俺が好きなんだし……よしっ!

 

「俺は女性が好きなんだ。そして、相手の名前は幸桜こはるっていうんだよ」

 

 行幸みゆきが選択したのは妹であった。

 

「女性? が? 好き?」

「そう、俺は女性が好きなんだよ」

 

 そして百合宣言。

 

「それって……こ、幸桜こはるっていう女性が好きなのか? 女性なのか?」

 

 フロワードは驚いた表情で行幸みゆきを見る。

 

「ああ、女性だよ」

 

 その瞬間だった。抱きかかえられた行幸みゆきの目の前を何かが通過した。

 

「駄目だ! そんなの俺が認め……っ!?」

 

 その『何か』は、話をしていたフロワードの顎を打ち抜く。

『ゴブンッ』っと鈍い音。

 揺れる頭、歪む表情。

 フロワードの体はぶるぶると振るえ、振動が行幸みゆきの体にも伝わってくる。

 そして腕の力が抜けてゆく。

 何が起こったのか理解出来ていない行幸みゆき。ただ驚くばかりだ。

 

「フ、フロワード!?」

 

 声をかけたが返事は無い。視点は定まらず、脳震盪のうしんとうを起こしている様子だ。

 

「おい! 大丈夫か! フロワード!」

 

 しかしフロワードはやはり反応しない。いや、出来ないのである。

 そして力の抜けた腕から行幸みゆきは地面に転がり落ちた。

 

「私の行幸みゆきに触るなぁぁっ! 私のだぁ!」

 

 女性の怒鳴り声が聞こえた。そしてすぐに行幸みゆきは女性の姿を確認する。

 それと同時にフロワードは腹を蹴飛ばされた。

 蹴飛ばす時に女性のスカートがふわり捲り上がる。

 

 お、女!? 何でフロワードが!?

 

 目の前で吹き飛ぶフロワード。目の前で見えた白いレースの下着。

 そしてそのままフロワードは歩道の上に仰向けに転がった。

 

 続く

思ったよりもずっとずっと長く続きすぎているこの小説です。

実は全12話の予定でした。

今さらですが思いますね…そんなに小説は甘くないと。

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