第三十二話【俺の決戦の日~正しい選択枝とは?①】
またまたお待たせしました。これからは行幸・菫・フロワード・シャルテ・リリア・そしてその他のキャラがごちゃごちゃと絡みあってゆきます。暴走ぎみですが宜しくお願いします。
※ネットHNのMIYUKI=ミユキにさせて頂いております。
秋葉原駅から外れた某川沿いを行幸は歩いていた。
近くには首都高速が走り、けっして静かな場所ではない。いや、逆に煩いと言った方が良い場所。
だが、行幸はそんな騒音などまったく耳にはいっていなかった。
「くそっ……」
唇をぐっとかみ締めると困惑した表情を浮かべる。
幸桜は簡単に言うけどさ……
ふと携帯の時計を確認した。
約束の時間まであと三十分か……
それまでにフロワードを振る方法を考えておかないと駄目なんだよな。
行幸はフロワードと待ち合わせをしていた。そこで幸桜の作戦である【フロワードを振る】を実行の移す予定だった。
だが、どうやって振るのかまでは考えられていなかった。
幸桜に『お兄ちゃんが考えて』と言われたが、頭を捻るが何も良いアイデアが浮かんでこない。
そしてだんだんと腹が立ってきた行幸。
「あーっ! 何で俺がこんな事で頭を悩ませるんだよっ! 大体おれは男だって言うんだっ! 男の振り方なんで知るかぁ!」
行幸は頭を抱えて大声を出す。
あまりの大声にすれ違った二人の男性が立ち止まり、行幸の方を振り向いた。
立ち止まった男達は頭を抱える行幸をじっと見る。
しかし、今の行幸にはそんな事はどうでもよかった。というか見られているのに気が付いていなかった。
今の行幸はフロワードをどうやって振るのか。その方法を考えるので精一杯なのだ。
うぐぐ……フロワードを満足するように振るだと? そんなのどうやるんだよ?
頭を抱えたまま横に振る行幸。そのままゆっくりと、脇にある電柱に片手をついた。
男を振る方法か……納得させる方法ね……うーん……
真面目に本気で頭を悩ませる行幸。そこへ先ほどの男達が寄って来る。
男は二人で二人とも見た感じ秋葉原には似合わないちょっとおしゃれな男子である。
「彼女、どうしたの? 道に迷ったとか?」
男達は行幸が道に迷っていると勘違いし? 優しく声をかけて来た。
しかし、行幸は一瞬だけ反応したが無視して悩みを継続する。
「別に道に迷った訳じゃないのかな? えっと、もし困って事があるなら俺達が手伝ってやるけど?」
再び優しげに声をかける男の言葉に行幸は再び反応した。そして二人の男を睨む。
「何だよ? ナンパかよ?」
おまけに、返した第一声も酷かった。
「確かに俺は困ってる。だがな? お前らじゃまったく役にたたないんだよ!」
見た目は可愛いのに言葉遣いが荒い女? に戸惑う男達。
「いや……別にナンパじゃないし、役に立たないとか怒鳴られても困ると言うか……」
「ん? じゃあ何だよ?」
行幸はおもむろに自分の胸へ視線を下げた。
「もしかして胸か? 俺の胸が目当てか!」
酷い決め付けである。
「ち、違う! 別に胸が目当てじゃないってっ!」
慌てて両手を前で振りながら否定する男達。
しかし、男達の視線は行幸の豊満な胸にいってしまう。
仕方ない。胸という単語が出れば見たくなる。男性であるがゆえの性である。
「ほら見てるじゃないか!」
そして、酷い引っ掛けをした張本人がこれである。
「男なんて所詮はそんなもんだよな! と言う事であなた方にナンパされません。さようなら」
行幸は事務的に手を振り、唖然としている親切な男達を置き去りにした。
俺はナンパなんてされてる時間は無いんだよ!
マジで男を振るってどうすればよかった? もしかして女性向けのラブゲームでもやって経験積んどけばよかったのか?
んなのまったく興味ねぇし、したくもねぇ!
そうだ、幸桜! あいつが作戦を考えたんだし、考える義務は絶対にあるだろ!?
行幸は携帯を取り出した。そして目に入る時間の表示。
あと二十分しか無いじゃないか!
★☆★☆★☆
その頃、行幸から少し離れた道を一人の女性が虚ろな目で歩いていた。
「渡さないから……私が先なんだから……」
虚ろな目で歩いているのは菫だった。
行幸のフェロモンの影響で菫の感情は高まり、ある部分を特に強調させていた。
それはずっと前から菫が心配だった事。考えていた事だ。
『行幸に彼女が出来たらどうしよう?』
『そんなのやだ……』
『行幸は本当の私を見てくれるかな?』
『見て欲しいよ……』
『私の気持ちに気が付いてくれるかな?』
『早く気が付いて欲しいな……』
好き……行幸が好き……大好き……
誰よりも私が行幸が好きなんだから……
私は誰にも譲らない……誰にもあげない!
行幸は……
「行幸は私だけのものよ!!!」
そう、独占欲である。
彼女は心の底で行幸を独占したかったのだ。
そして菫は行幸に告白をする前に邪魔者を排除する方に動きだす。
「フロワードなんかに私の行幸はあげない……」
フロワードを探し秋葉原の中を彷徨う菫。
しかし彼女はフロワードと行幸が待ち合わせている事を知っている訳では無い。
我武者羅になって当ても無い秋葉原の街を、フロワードを探して彷徨っているだけだった。
だがしかし、なぜか彼女は確実に二人の待ち合わせ場所へと向かって歩みを進めていた。
まるで誰かに導かれる様に。
いや、導かれていた。
『私は菫さんの担当ですのでこの位はいいですよね?』
そう、あの天使に。
菫の上にはリリアの姿があった。もちろん、菫にも周囲の人間にも見えてはいない。
リリアは菫の心に深層に訴えかけ、そして行幸とフロワードの待ち合わせの場所へと向かわせたのだ。
『この行動でこの恋愛にどのような変化が出るのでしょうか。少し楽しみかもしれませんね』
微笑むリリア。しかしすぐに険しい顔になる。
『いえ、駄目ですね……天使ともあろう者が人間の恋路で楽しんでは』
そんな事も知らずに、菫はふらふらと街を歩いてゆく。
「行幸……行幸……」
『本当に菫さんは行幸さんが好きなのですね』
★☆★☆★☆
その頃、もう一人の天使であるシャルテは?
「ここは何処だよっ!」
道に迷っていた。
「くそ…こっちか?」
シャルテは小走りで人ごみをすり抜けているとゴチンと誰かにぶつかった。
「痛っ!」
「ご、ごめんっ! ちょっと急いでるからまたっ!」
天使の癖にちょっと謝るだけでとっとと立ち去るシャルテ。
そして、シャルテにぶつかった相手は「パンパン」とスカートについたゴミを払って立ち上がった。
「まったくっもぉ……スーツはこれ一着しか無いのに。汚れたらクリーニング代がかかるじゃないのよ」
文句を言いながら立ち上がったのは愛だった。
愛は秋葉原までちょっと色々な野暮用があったので来ていたのだ。
右手に持った紙袋の中身は決して聞いてはいけない。
某アニメシップの柄がプリントされているが突っ込んではいけない。
愛の視線には足元に落ちたハンカチ。
「あれ? 何これ? まさかさっきぶつかったあの女の子の?」
実際それはシャルテのでは無い。しかし、思い込みの激しい愛はシャルテのものだと決め付けた。
「あの子は?」
そして愛はシャルテを探し始める。
ふと振り返ると勢い良く立ち去るシャルテが見えた。
しかし、シャルテの姿はどんどんと小さくなっている。
「やばい、行っちゃう! 待って! 落し物ぉ!」
愛は落ちていたハンカチを取ると、怪しい紙袋を抱えたまま、ものすごい勢いでシャルテを追った。
「ふふふ……こう見えても私は陸上部じゃなかったんだよ!」
意味の無い台詞を吐きながら……
「水泳部でもないけどねっ!」
もういいですから……
★☆★☆★☆
くそっ! 幸桜めっ!
携帯電話を震える手で持った行幸。
その表情はちょっとだけ怒っていた。
うまく振る方法を教えてくれって聞いたら何だって?
「私、付き合った事ないし、振った事ないから知らない」だと!?
でも待てよ? 確かに、昔かから幸桜に男の気配なんて昔から無かったよな。
そうだよ。確かになかった。
というか、あれなのか? もしかして幸桜は俺が好きだったから他の男とは付き合わなかったとか?
行幸は眉間にシワを寄せた。
だとすると、すっげー複雑だなこれ……
幸桜は俺が好き……
彼氏をつくらないレベルで好き……
もしかして、昨日の幸桜のあの態度が幸桜の願望だと考えると……
またしても妹の裸体を妄想する行幸。
もしかして、お、俺に………さ、捧げてもいいなんて本気で思ってたのか!?
脳内妄想~そして18禁へ~
い、妹と関係を持った兄になれるのか? (遠い目)
ば、馬鹿か! 俺は何をまた考えてるんだよ! それってどんなエロゲーだよ! って、いっぱいあるけどさっ! 妹系!
はぁはぁと息を荒くする行幸。
もはや変な女である。通行人が避けるレベルである。
やばい……また駄目な妄想をしてしまった…
ここは思考リセットだ……思考を元に戻せ! 今はフロワードだぞ? フロワードを振る方法を考えるんだよ!
落ち着け……落ち着け……
「すーはーすーはー」
よし、大丈夫だ!
深呼吸をして行幸はひとまずは落ち着いた。
で、どうする? こういう場合は?
行幸は再び「うーん」と唸りながら考え始める。
そしてある事を思いついた。
そっかっ! あれだ! 某漫画みたいに俺の今まで培ってきた恋愛エロゲーの経験を生かせばいいのか!?
考えてみれば男と女を入れ替えればいいだけじゃないか。別に乙女ゲーをやってなくってもいけるだろ?
所詮この程度の思いつきである。
そうだ、そうだよ! 所詮は恋愛なんてゲームだよ! ルート選択さえ間違わなきゃいいんだ。
きっとうまく振るルートがあるはずだ!
まぁエロゲーの相手は女だが、相手が男でもそこは臨機応変に対応すればOKだろ。
という事で思い出せ。今までのエロゲーのルートを、選択肢を、イベントと結果を!
自らBADエンドを演出すればいいんだよ!
くだらないアイデアであるが、行幸にとっては画期的なアイデアであった。しかし……
行幸は懸命に思い出せるだけ思い出してみた。エロゲーを。
……ええと…あれ?
……エロゲーで振るシチュエーションって見覚えが無い? かも?
というか、よく考えればエロゲーで女を振るってなかった。
そ、そうだよ……恋愛系のエロゲーの目的を考えればエッチする事だよな。
結果的には誰かしらと引っ付くルートしか無いんだよな……
うぐぐぅ! ナイスアイデアのはずが……どうすればいいんだよ?
いや、でもあれだよな? 選択肢という考えはあるのか?
フロワードの言う事に対して、ちゃんと選択肢を考えてその後の事を考える。そしてうまく振るルートを考える。
確か某漫画でもあの主人公はうまく考えていたよな?
フロワードを振るエンディングまでの道のりか……
うーん…難しそうだな。
腕を組んで下を向き、唸りながらゆっくりと歩く行幸。
フロワードに合うギリギリまで作戦を考えておこう。
その場で考えるとか無理に決まってる。
よし、きちんと選択肢やトークを考えて……
そんな行幸に一人の男性が声をかけてきた。
「ミユキ?」
フロワードを振る為にルートと作戦はどうしようか……
「ミユキ? だよね?」
ん?……誰か俺を呼んだ?
行幸は声のする正面を見た。そして驚愕する。
「え? ええぇ!? な、何で?」
そう、正面に立っていたのはフロワードであった。