第二十六話 【俺がこの先どういう風になるのか教えろ!③】
幸桜防衛線を突破された行幸。菫はアパート中心部へと進行する。行幸はそこで遂に最終兵器の投入を決めた!天に向かって叫ぶ!そう!それが起動の合図なのだ!STSがは発動するのか!ご期待下さい!…何これ
※STSとは?後書きに書いてます。
幸桜は菫の進入を許してしまった…
そして菫は俺の横にいる。
どうする? ここまで来て今日は買い物に行けないなんていい訳は出来ない。
本来であれば菫に今の俺が置かれた状況を説明して理解を得るべきだ。
だけどそれを他人に話してもいいものなのかが解らない。
さっき幸桜にも後で説明するとか言ったけど、はたしてどうしたものだろう?
行幸は考えた。しかし結論は自分だけでは出なかった。
くそ…こうなったら。
「おい! そこに居るのかよ? この二人にあの事を話してもいいのか? もう黙ってられねーよ!」
行幸は天井に向かって叫んだ。
もしリリアがこの部屋の何処かで俺達の様子を見ていたら反応してくれるかもしれないと思って。
視線だけを菫に向けると、菫も釣られたように天井を見ている。
「いないのか? おい!」
もう一度叫んだ。しかし反応は無い。
「ねえ行幸? 何がしたいの? 頭でも狂っちゃったの?」
菫は怪訝そうな顔で行幸に聞いた。
そんな菫を無視して行幸はまた叫んだ。
「いねーのかよ!!!」
『ガチャン!』
台所の方から物音がした。
部屋にいた全員が一斉に音の方へと顔を向ける。
すると先ほどまで誰も居なかった台所には、一人の女の子が立っていた。
「煩い! 来てやったぞ! だから黙れ!」
この毒々しい台詞。まさか?
そう、そこにはシャルテが立っていた。
何だよ? シャルテじゃないか。
しかし、現れたシャルテ容姿は昨日と同じではなかった。
今そこにいるシャルテは人間の格好をしていた。ツインテールの金髪がとても映えている。
行幸はそんなシャルテを見て目を細めた。
うーん……昨日の天使のような可愛らしさが欠けているなぁ。
おまけに今日はあのデレ感がないというか……
本気で残念極まりないなこれ。
「え!? な、何、この金髪の女の子は!?」
残念そうな行幸を余所に、菫はシャルテを見て凄く驚いていた。
幸桜も同じだった。叫びはしなかったが両手で口を押さえて目を丸くしている。
「ちょっとした知り合いだ」
行幸がそう言うと菫は目を丸くして行幸とシャルテを交互に見る。
「え? し、知り合い!? この金髪の女の子と?」
「そうだ」
「よ、幼女誘拐とかじゃないの!?」
菫はマジな顔で言い切る。
「何で俺が幼女を誘拐するんだよ!」
「な、何でって……」
「理由がない!」
「あ、あれでしょ? よ…欲求不満だから?」
菫は自分で言っておいて勝手に顔を赤くした。
おまけに視線が何故か自分の下半身に向いているのに行幸が気が付く。
そんな初心で素直な反応と行動に思わず行幸まで顔が熱くなる。
「な、何でそうなるんだよ! 俺に幼女趣味は無い! そんな妄想をするお前こそ欲求不満なんじゃないのか!? おい!」
行幸が返すと菫は更に顔を真っ赤にした。
もう、やかんを頭の乗せれば沸騰するんじゃないかって程に。
「………」
そして無言です。
え、ちょ、ちょっとまて! マジで欲求不満なのかよ?
おい、こら! 俺はそこで何て返せばいいんだよ!
くそ…冗談のはずだったのに…って、これってもしかしてフェロモンの影響か!? やば! こんな事をしている場合じゃない!
「お、おいシャルテ、この二人には話してもいいだろ? 俺が男に戻る方法と、おれのフェロモンについて!」
シャルテは菫と幸桜を見るとしかめっ面になる。
そして行幸を見ると言った。
「何でだよ?」
「何でって、菫はまだ俺のフェロモンの影響を受けきってない! だから菫に俺のフェロモンの影響を受けさせたくないんだよ! あと、今の俺がどういう状態なのかを二人には教えておきたい。どうすれば男に戻れるのかもな」
行幸がそう言うとシャルテは頭をポリポリとかくと呆れた表情で言う。
「じゃあ行幸は僕の正体もこの二人に教えるのか?」
シャルテは目を細めて行幸を見ている。
そんな行幸とシャルテを見ながら困惑の表情の菫が口を開いた。
「ちょ、ちょっと……話が見えないんだけど? 行幸、だからこの子は誰なの? それにフェロモンって何よ?」
「ちょっと待っててくれ。ちゃんと説明する。今はこの女の子と話をするのが先決なんだ」
「え? 何よそれ!」
求める回答が聞けずに更に困惑する菫。
というか欲求不満は何処へ消えたんだ? って何を俺は考えているんだ?
シャルテは全員に顔を見渡す。そして冷静に言った。
「あのな、僕が今ここに居るって事は僕の存在を教えていいって事だろ? 考えてみろ。僕がいきなり部屋の中に現れて、それもこの姿でだぞ? 人間に見えるように出て来てやったんだぞ?」
確かに人間の姿だ。だけど……天使ってバラすんだよな?
「え? じゃあ……いいのか?」
「仕方ないだろ」
「本当か? いいのか? ばれるんだぞ? お前の正体が」
「だから仕方が無いと言ってるだろ?」
「本気か? お前がツンデレで褒められるのに弱いって事もばれ……」
行幸がそこまで言った時、鬼の形相をしたシャルテが銀色の剣を行幸の首元にあてていた。
キラリ光る刃先が、本物だとアピールをしている。
というか…何で剣が…俺に?
「黙れ行幸。まだこの世に未練はあるんだろ?」
シャルテはそう言うと不気味な笑みを浮かべた。
こえええ! 天使の癖に悪魔だこいつ!
「ど、どろぼう!? どろぼーーーー!」
突然、幸桜が大きな声を上げた!
「強盗だぁぁぁぁ! 強盗にお兄ちゃんが殺されるぅぅ!」
幸桜は青い顔で叫ぶとオドオドとし始めた。そして携帯を手に取ると警察に電話しようとする。
「まったくもう……行幸、お前のせいだからな?」
シャルテは幸桜に左手を向けると何かを念じた。
すると幸桜はまるで磁石に吸い寄せられるかのようにシャルテの真横へと飛んできた。携帯電話はその拍子に床へと落とした。
「へ?」
きょとんとする幸桜。
菫は焦った表情でこちらを見ている。
「わ、私は…ご、強盗じゃないとは思う…でも…だ、誰なの?」
「おいシャルテ! お前のせいで二人がびっくりしてるじゃないか!」
「いや、僕のせいじゃない。行幸のせいだ」
「何でそうなる! この現状をどうするんだよ? 説明どうするんだよ?」
行幸がそう言うとシャルテは銀の剣を目の前から消し、突然両手を胸の前で組む。そして目を閉じで祈り出した。
するとシャルテは光輝き、天使の姿へ変化してゆく。
髪はするするとストレートの輝く金髪へと変化した。
服は真っ白なローブへと変わる。
背中からは白く大きな翼が生えた。
そして頭の上には天使の輪が光る。
「シャ、シャルテ!? お前いきなりか!?」
行幸はシャルテがいきなり天使になった事に驚きまくる。
突然の出来事に菫と幸桜は硬直してへたりと床へ座り込んだ。
「仕方ないだろ? この格好にならないと僕が天使だって信じてもらえない」
「ま、まぁ…そうかもしれないが…じゃあ最初からその格好で…」
「煩い! いきなりこの格好で出たら単なるコスプレした女に見えるかもしれないだろ!」
あ、なるほど…インパクトも無いしね!
俺は妙に納得した。
「流石に行幸でも理解したか。では僕からこの二人に説明してやろう」
「シャルテが説明?」
「そうだ。何か文句でもあるか?」
「い、いや…無いけど…うまく説明出来るのか?」
「タブン…」
「なるほど…」
自信ないんだな。まぁ俺はいいけど。
「ごほん…ではお二人に説明するぞ?」
シャルテは先ほどまでの鬼の形相が一転して、とても優しい笑顔になった。
しかし、こいつの天使姿ってマジで可愛いいな。
そしてなんだその笑顔は! 昨日はそんな笑顔は無かったぞ! 何で俺にはそんな笑顔をしてくれないんだよ。
よし…こうなったら…褒めてやる!
「シャルテ、今日もお前はかわい……むぐ!?」
「黙れ外道が!」
シャルテは行幸の行動を予測して、サイレントの魔法をかけたのだ。
それにしても外道とは酷い…と行幸は思った。
「ムグググ!」
え!? は、話せないじゃないか!
「こんな馬鹿はさておき、自己紹介をしよう。僕はシャルテ。恋愛を司る天使だ」
シャルテの自己紹介に菫と幸桜は……反応なし!
「おーい…大ジョブか? 二人とも何を硬直してるんだ?」
しかし二人は硬直したまま反応しない。
「おい、行幸。思った以上に反応が薄いんだけど…」
そりゃそうだろ、イキナリ俺に剣を向けた奴が天使に変身したとか。
いくら目の前で変身したとしても、まず天使の存在をすぐに信じろって言うのが間違いだろ。とは言っても今の俺は話が出来ない。
「あ…あの…」
菫がやっと硬直から解けたのか、シャルテに話かけた。
「おや?」
「て、天使って何ですか?」
シャルテは首を傾げて腕を組む。
「うーん…天使?……僕が天使だけど?」
「あ、えっと、そうじゃなくって……何で天使がここに?」
「あ、ああ! あああ! ああ! それか! そっちか!」
シャルテは笑顔で何度も頷いている。
「僕がここにいる理由を説明すると、僕は恋愛の担当天使で、僕の担当した人間が行幸を好きなんだ。だから、その恋愛のお手伝いをしているというか」
それで通じるのか? なんていう説明下手だ。
それじゃ理解出来ないだろか?
「え? それってどういう事ですか?」
ほら、理解出来てない!
「うーん…えっと…だから僕は天使なんだ。僕は恋愛をさせる為にこの世界に来ているんだ。だから僕の担当した人間が好きなのが行幸なんだ」
「誰が行幸を好き?」
シャルテは俺の方をじっと睨んだ。そして指をパチンと鳴らす。
「……行幸が説明しろ」
俺が? 何で? そして今はあれだよな?
「あれ? 話せる」
「サイレントは解いた。だから説明しろ!」
「俺が?」
「そうだ」
「何で?」
「何でもだ! 別に逃げた訳じゃないぞ!」
「へぇ…だったら担当天使から説明の方がいいんじゃないの?」
「う、煩いな……ぼ、僕は説明が苦手なんだよ!」
シャルテの顔がだんだんと高揚して赤くなってゆく。
最初からそう言えばいいものを…まったく。
「わかった…うん…俺が説明しよう。でもなシャルテ」
「な、何だよ」
よし…ここから仕返しだ。
「なんで……」
ここで憧れるような眼差しっ!
「シャルテって天使の格好をしているとそんなに可愛いんだ?」
『ピーーーー!』とやかんのお湯沸き音が聞こえてきそうな程に急激にシャルテの顔が急激に真っ赤になった。
「ぼ、ぼ、ぼ!?」
おいおい、まさかここまで過剰に反応されるとか……無茶苦茶おもしろいジャマイカ!
「ぼ、僕は……か、かわ、可愛くなんて、な、ない!」
シャルテは真っ赤になった顔をぷるぷると横に振る。それがまた可愛い。
本気で照れるシャイな女の子はこんなに可愛いのかと実感できるレベルだった。
「菫、幸桜、シャルテは可愛いよな?」
行幸がそう聞くと二人は素直に頷いた。
幸桜も可愛い反応のシャルテを見ていて硬直が取れたらしい。
「か…可愛くない…し…」
「いや、可愛い! 確実に可愛い!」
『ボフ!』っとシャルテの頭から何かが出たように感じた。
それにしても褒められ耐性がここまで無いとか、マジで何かのゲームキャラだな。
どこかのメーカーで売り出せよ!『ツンデレ天使シャルテと恋愛物語~褒めたら駄目だよ~』とかさ。※ネーミングセンスなし
「あ。あの………ええと…あの……説明して…貰えますか?」
シャルテが真っ赤な顔で俯むき、行幸に向かって小声で可愛くお願いをした。
うわ……遂に女の子口調になった。余程ダメージを受けたのかな?
これ以上からかうとちょっと可愛そうだな。
しかし、可愛いな……マジで。
「わかった、俺から説明する」
「あ! その前にシャルテ」
「え? は、はい…」
やば! もじもじするシャルテも可愛いすぎる。
俺って幼女趣味があるのか?こいつがすごく可愛い……
「俺のフェロモンって半径どの位に効果があるんだ?」
きっとバイト先で菫が暴走しなかった理由はフェロモン効果を受けない距離にいた時間が多いかったからだ。
逆に幸桜は俺の横にいた時間が多かった。だから幸桜には影響が大きかったんだ。と勝手に想像。
「え? えっと……ご…五メートルだお…」
え? 五メートル!? でか! て…何故語尾が『だお?』なんだよ?
「何だよそれ! 広すぎだろ!」
「でも……僕が決めたんじゃないもん…」
今度は『もん…』がきたぁ! オマケに涙目になってる!
涙目のシャルテ……破壊力がありすぎる……
萌えというのはこれの事を言うのか? ※そうとも限りません。
今日はツンデレでは無く、萌え属性か! お前はすごいぞ!
……じゃない。俺が喜んでどうする? 今は説明が先だろ。
「わ、わかった…サンキュ…」
「み、行幸? どうなってるの?」
菫は行幸とシャルテのやりとりについてこれていない。
シャルテの変貌にも驚愕している。ちょっと混乱しているっぽい。
「じゃあ今から俺が説明するからな。幸桜も菫もよく聞けよ」
二人はこくりと素直に頷いた。
行幸は幸桜と菫に説明を始めた。
もちろん菫とは距離は五メートルを離してだ。
しかし五メートルというのは行幸がリビングの窓際で菫が玄関までの距離になる。
さすがに無理があるなこれで説明は……とは思いつつも行幸に暴走の怖さは拭えなかった。
結局は、行幸は菫を玄関に立たせて説明をした。
シャルテはと言うと?
「むきゅーん」
なかなかダメージから回復出来ないみたいだった。
人形のように大人しく固まったまま行幸の横にちょこんと立っていた。
その格好がまた可愛くって、ツンツンしているシャルテのイメージがまったくない。
そんなシャルテを見ている行幸から、いつの間にか笑顔は消えていた。
何でリリアが来なくってシャルテだけ来たんだ?
きっとリリアならばこうなる事も多少は予測もできただろうに?
なぜなんだ?
続く
ゲストコーナーです!っとその前に…STSですね。
S=すごい、T=ツンデレ、S=シャルテ、駄目?すごいツンデレのシャルテ!って意味でしたー!…す、すみません!
という事でそのシャルテさんです!
シ「…帰っていいか?」
さ「ま、待って!まだ何も聞いてないし、始まってない!」
シ「いや、何も始める必要は無いと思うぞ?」
さ「そんな殺生な…ここで帰られると作者としての威厳が…」
シ「威厳?あったか?そんなもの」
さ「………(何こいつ)」
シ「じゃあ一つだけ質問に答えてやる」
さ「え?あ、じゃ、じゃあ……なんでツンデレなんですか?」
シ「ツンデレ?なんだそれは?誰だそれは?」
さ「シャルテさん」
シ「……作者も休養が必要だよな?」
首元に銀の剣を突きつけられ…プス…
シ「あ、すまん、刺さった」
さ「………」
シ「大丈夫だ!リリアお姉ぇが後で助けてくれるらしいぞ?それではもう来ないという事で、さよなら」
さ「(どうしてこうなった!)」
………次回は未定です。