表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうしてこうなるんだ!  作者: みずきなな
【どうしてこうなるんだ!】
27/120

第二十二話 【俺が男に戻る方法②】

自分が女になった理由を知った行幸みゆき。まさにどうしてこうなった!果たして行幸みゆきの運命は?男に戻れるのだろうか?え?そんなのどうでもいいですか?いや、行幸みゆきはまだ脱ぎませんよ?え?違う?

「リリア姉ぇ、それは僕が説明する」

 

 シャルテはリリアの顔を見ながら前へと出た。


「おい、お前が男に戻る方法は僕が教えてやるからな!」


 シャルテが説明だと? それって俺を男にしたのがシャルテだからか?

 まぁいい。男に戻る方法がわかるのなら。

 

「リリアでもシャルテでもいいから早く説明してくれ」

「じゃあ説明するぞ? 行幸みゆきが男に戻る方法は……」

「方法は?」

「それは僕とリリア姉ぇがさっき言った願いを叶える事だ」

 

 シャルテはそう言うとまた腕組みをする。どうやら腕組みは癖らしい。

 しかしさっき言った願いって何だ?


 行幸みゆきはリリアとシャルテに言われた事を思い出してみた。

 

「俺に恋愛をして欲しいって奴……なのか?」

 

「そうだよ。僕の担当している人間と、リリア姉ぇの担当の人間。両方と恋愛をして欲しい。そして僕とリリア姉ぇの願いをちゃんと叶えてくれれば行幸みゆきの願いを一つ聞いてやるよ。それで男に戻りたいと願えば元に戻れるから」

「おいシャルテ、ちょっと待ってくれ。お前が俺を女にしたのに何でリリアの願いまで俺が叶えないと何で駄目なんだ? お前の願いを叶えた後に俺を男に戻せないのかよ?」

「戻せない」 

「即答かよ!」

「僕達のような恋愛を司る天使は、担当した人間がどんな結果であれ納得する恋愛をした場合に限って担当の人間、又はその相手の些細な願いを一つだけ叶える事が出来るんだ」

「願いを叶える? だったらシャルテの願いを叶えれば、その担当になった人間と納得のゆく恋愛をすればお前が俺の願いを叶えられるんじゃないのか?」

「駄目なんだよ」

「何でだよ。それじゃおかしいじゃないか」

「だから、僕は既にお前の願いを叶えてしまったからな」


 少しだけシャルテの表情が引き攣ったのを行幸みゆきは見逃さなかった。


「はぁ? 俺の願いを叶えただと? 何だよそれ? 俺はまだ納得のゆく恋愛なんてしてないぞ? 意味わかんねーし!」

 

 行幸みゆきはシャルテの担当している人間に逢った事も無かった。

 ましてや恋愛などした記憶も無い。シャルテに願いを言った記憶も無い。

 結論、先ほどのシャルテの行幸みゆきの願いを叶えたというのはおかしいとう事になる。


行幸みゆきは覚えてないのか? あの時にやり取りを…」

「あの時?」

 

 あの時? あの時って何だ?

 行幸みゆきが考え込んでいると、行幸みゆきの脳裏に直接話し声が聞こえる。

 

『このやりとりの事だよ。忘れてないよな? 昨日の個人チャットだよ』

 

 これはシャルテ? 何だこれ? テレパシーって奴か?


 シャルテを見ながらそんな事を考えていると、行幸みゆきの目の前が急に真っ暗になった。

 そしてだんだんと何かが見え始める。

 見えたのは行幸みゆきの部屋だった。そして視界にはMMOをプレイする自分の姿が見える。


 え? 何で俺の姿が見えるんだ?


『これは僕の視点から見た昨日の行幸みゆきの姿だよ』


 再び脳裏にシャルテの声が聞こえた。


 昨日の俺? 確かにあそこに座っているのは俺だ…それも男だな。


『画面をよく見てろ』


 行幸みゆきはパソコンのディスプレイを見た。すると画面には行幸みゆきがプレイしているネットゲーが映っている。

 そして昨日の行幸みゆきはパソコンでチャットを始めた。

 そのログがハッキリと見える。

【個人:      】おい、お前

【個人:MIYUKI】はい? どなたでしょうか? 

【個人:      】お前は本当に女か?

【個人:MIYUKI】キャラは女の子ですよ 

【個人:      】違う、お前の本体、ようするにプレイしてるお前だよ

【個人:MIYUKI】え? 私は女ですけど?何か? 

【個人:      】そうか…俺はお前みたいな人を騙す奴が大嫌いなんだよな

【個人:MIYUKI】え? 何か言いたいのでしょうか? 

【個人:      】人を騙して生きてる奴は嫌いって言ってるんだよ

【個人:MIYUKI】それで何の用事ですか?私はそういう冗談に付き合っている時間はないんです 

【個人:      】…わかった、お前は女なんだな?人は騙してないんだな? 

【個人:MIYUKI】はい

 

『お前は女だって言った』

 

 も、もしかしてこの名無しの相手はシャルテだったのか!?

 その瞬間、急に目の前が明るくなった。そして視界にはリリアとシャルテが飛び込んでくる。


 元に…戻った?

 

「さ、さっきのは何だよ」

「見たまんまだよ」

「見たまんまって…」

行幸みゆきが僕に女だって言い切った場面だよ」

「待て! あれはっ」

 

 あんな事が理由で俺は女にされたのか!?

 俺はシャルテに向かって願いを言った訳じゃないジャマイカ! 質問に答えただけだろ?

 決して女になりたいなんて願ってないぞ?

 

「そんなに深刻な顔をするなよ。願った覚えは無いとか思ってるんだろう? だけど行幸みゆきは自分は女だって言い切ったんだ。だから僕は女にした」

 

 何だその解釈は!?

 

「待てよ! それって強引すぎるだろ! お前、俺が本当は男だってわかってたんだろ!?」 

「強引だと? 女に成りすまして人を騙してお金を使わせるような男にそんな事を言われたくないね。それにお前は言った! 自分で女だって!」

「く…」

 

 こいつ、俺とフロワードとのやり取りまで全部しってるのか。

 ってそうだよな? じゃないと罰だとか言わないよな。

 あれ? そうだ。

 

「おい、お前は些細な願いを叶えるって言ったよな? 男を女にするっていうのも些細な願いなのか!?」

「いや、些細じゃないね」

 

 シャルテはすぐに、簡単に言い返した。

 

「そうだよな? じゃあ何で俺を女に出来たんだよ? さっきも言ったけど俺はまだお前の担当してる奴とは恋愛なんてしてねーんだぞ? それなのに願いを叶える事なんて出来ないんじゃないのか? それも男を女にするようなすごい願いを」

「ふんっ、今回のは願いの前借りだ。そして特別にこんなすごい願いを叶えた。だからお前は俺の担当している奴と絶対に恋愛しなきゃいけないんだ!」

「特別な願いの前借りだと!? そんな事が出来るのかよ?」

「今回だけの特別処置だよ」

「何だそれ? それってすげーやり方が汚ねぇだろ! 何だよ強制イベントかよ! そんな無理矢理に恋愛しろなんて許されるはずないだろ! 天使がそういう事をしていいのかよ!」

「人を騙すよりも数倍マシだと思うけど?」

「う……だ、だからって人間を、俺にこんな事をしていいって思ってるのか!」

 

 行幸みゆきはちらりとリリアを見た。

 しかしリリアは俯いていて表情は伺えない。

 リリアの感じからするとこの件に関してはあまり関わり合いたくないように思える。

 

「僕だってここまでやりたいなんて思ってた訳じゃない! お前が! 行幸みゆきがあまりにも酷い嘘つきだから! だから……あいつが可愛そうだよ……こんなネカマ変人野郎が好きだだなんて」

 

 あいつって俺を好きなプレイヤーの事だよな?

 シャルテがそいつのためにこんなに悔しがるとか。

 

行幸みゆき! あいつは初めて人を好きになったんだぞ! あいつはお前を女だって信じてるんだぞ! なのに相手がネカマだって知ったら……」 

「い、いいじゃねーか! ゲームのプレイスタイルなんて個人の自由だろうが! それにネカマだって何人、いや何千人もいるんだよ! 俺はその何千人の一人なんだよ! それで何で俺だけがこんな目にあう!」

 

「それは僕がお前が嫌いだかららだよ!」


 個人的感情キター! って、待てい!

 

「天使なのに嫌いだからっていいのかよ!」 

「いいんだよ!」

「よくねー!」

「よくないけどいいんだよ!」

 

 は、話しになんねぇ!

 くっそ……でもってあれだよな、俺を好きになった奴ってきっとあいつだよな。

 

「おいシャルテ、俺を好きになったのってフロワードなのか?」


 行幸みゆきはストレートにシャルテに問いただした。

 シャルテの頬肉がぴくりと動く。

 

 行幸みゆきには俺を好きになった奴と聞いてすぐにフロワードの事が頭に浮かんでいた。

 行幸みゆきはフロワードしか居ないと思っていた。


 シャルテの奴、俺を好きになった相手をちゃんと正直に教えてくれるのか?

 もしかしてここまできて誤魔化さないよな?

 不意をついて俺を好きになったのはフロワードって言う可能性もあるのか?

 

「ああ、そうだ。フロワードだよ」

 

 シャルテは行幸みゆきの心配を余所に、質問に対して素直に肯定した。

 

「そ、そうか…」

 

 素直に答えられてドキッとした行幸みゆきだが、フロワードだといわれて納得する。

 前々から行幸みゆきに、いや、MIYUKIに気があると思っていたからだ。

 思い出すだけでも、何度ともなく好意があるってわかるような場面や会話があったのは事実だ。

 行幸みゆきはそれに気がついていたのに、その好意を有利に冒険をするためだけ利用していた。


 まさかフロワードが天使にお願いする程に俺が好きになっていたなんて……

 そう考えると悪い事をしていたのかもしれないよな。

 行幸みゆきの胸がチクリと痛んだ。 


 行幸みゆきはフロワードとの少しだけ思い出していた。

 数ヶ月前のフロワードとの個人チャットでの会話を。


【個人:フロワード 】なあMIYUKI。

【個人:MIYUKI】何?

【個人:フロワード 】あまりリアルを聞くと良くないって思うんだけどさ。

【個人:MIYUKI】え? それってどういう事?

【個人:フロワード 】えっと…ちょっとMIYUKIに聞きたい事があってさ。

【個人:MIYUKI】私に? 変な事じゃなかったら答えるよ?

【個人:フロワード 】うーん…どうなんだろ?女性にこんな質問はしていいものなのかな。

【個人:MIYUKI】何よ? 別に気にしなくていいよ? フロワードの質問なら答えるよ?

【個人:フロワード 】え? そっか? じゃあ質問しようかな…

【個人:MIYUKI】うん。

【個人:フロワード 】MIYUKIってさ、リアルで彼氏とかいるの?

【個人:MIYUKI】え?

【個人:フロワード 】いやさ、もしもいないならさ、今度一回でいいからリアルで逢って欲しいなとか思っててさ。

【個人:MIYUKI】…

【個人:フロワード 】いやボイチャだけでもいいんだけど…

【個人:フロワード 】おいMIYUKI?

【個人:フロワード 】おーい!


 俺はログをこの見てからわざと回線を落としたんだ。

 そして再起動をした。


【個人:フロワード 】MIYUKI? 落ちてた?

【個人:MIYUKI】あ、ごめん! 落ちちゃったよー

【個人:フロワード 】あ、そっかそっか、だから反応なかったんだな。

【個人:MIYUKI】え? ごめんね、何て言ったのかもう一度教えてよ。

【個人:フロワード 】え? あ…もういいや。

 

 フロワードはあれから一度もリアルで逢おうとは言って来なかった。

 もしかすると俺が故意にパソコン回線を落としたのを解っていたのかもしれない。

 だからこそ俺との関係をこじらせたくないと思って触れなかったのかな。

 でも、もしもう一度同じ事を聞かれたら俺は何て答えたんだろう?

 きっと俺は『彼氏はいないよ? だけど逢うとかボイチャとか無理かな』って平然と答えたんだろうな。

 結局はフロワードを騙して傷つける事しか出来なかったはずだ。

 

「シャルテ、俺がこの姿でフロワードに逢って、そしてフロワードを振ればいいのか?」

「そうだよ。フロワードが未練を残さないようちゃんと振って欲しいんだ」

「未練か……」

「キッパリ結論をだせって事だよ」

「わかったよ……」

 

 そうだな、フロワードのためにもちゃんと答えを出してやろう。ハッキリとな…

 

「おい行幸みゆき

「ん?」

「裏技もあるぞ。これを実行すれば男に戻るためにどうしようとか悩む必要は無くなる」

「え? 何だよその裏技って?」


 シャルテはニヤリと微笑んだ。


「お前がフロワードと本当に恋仲になればいいんだよ。自慢じゃないがお前は今カンペキに女なんだ。おまけに結構かわいい。そしてセックスだって出来るし、子供だって生めるんだからな」

 

 ナンダヨソレ!

 

「お、おい待て! それは無いだろ! 俺は男に戻りたいって言ってるのに何でそうなるんだよ! て言うか天使の台詞じゃねーだろそれ!」

「いや、実は女の体を気に入ってくれてるのかと思ってな」

「何でだよ! 気に入るはずねーだろ!」

「へぇ…じゃあ何で自分の胸を触ったり、鏡とか置いて変な事しようとしたりする訳?」

 

 ダーと滝のように汗が額に溢れ出る。

 一気に顔に上った血で湯気が出そうな程に熱くなる。

 行幸みゆきは完璧にテンパッていた。


 ま、まさか……さっきの俺の行動までばれてる!?

 

「正解」

 

 なっ!? ま、また考えを読まれた!

 

「あ、あれは男としてだなっ!?」

「そうだよな、興味あるよな? じゃあいっそ女を満喫すればいいじゃん? 一生かけてさ 

「い、嫌だ! だから俺は男に戻りたいと言ってるだろうが!」

「知ってるか? あれって気持ちいいらしいよ? 僕はまだ経験ないけどさ」 

「な、何を言い出すんだ! そ、そんな事に……」

「何で顔を真っ赤にしてるのかな? 僕はあれとしか言ってないのに。ははーん……すっごく卑猥な事を考えたんだろ? ふーん」

「ば、馬鹿か! そ、そんなのは……す、少しは考えて…くぅ…」

 

 くそムカツク! こんなガキ天使に口で負けるとか!

 

「だ、だから俺は今すぐにでも男に戻りたいんだよ!」

「へぇ…あ! もしかしてさ! 男に戻りたい理由って僕を襲いたいから? でも僕は幼児体型だよ?」


 シャルテはわざとらしく自分のすこし膨らんだ胸部をローブから浮かせた。

 その微妙な膨らみがなんともいえないエロスをかもし出す。


「だ、誰が……」

「どうしたの? 否定できてないけど? あれか、やっぱり行幸みゆきって変態なんだ? もしかして妹フェチとかか!?」

「な、何でそうなる!」 

「まぁ…冗談はその位にして、何でもいいよ。最終的に結果を残してくれればね」

「そ……そうだな、それは約束する」

 

 今回は行幸みゆきの完敗だった。


 シャルテの言い分は確かに正しい部分が多い。

 フロワードの件に関しては俺にも責任はあるのも事実だ。

 こうなると、俺もちゃんと結果を出さないと駄目だよな。


 行幸みゆきがふとシャルテを見ると少し俯き加減なのに気がつく。

 しかし行幸みゆきが見ているのに気がついたのかすぐに顔を上げた。

 そしてシャルテとは思えない程に可愛く微笑んで言った。

 

行幸みゆき、頼んだからね」

 

 シャルテが天使の姿になった初めて女の子っぽくいった言葉。

 その表情は本当に可愛くって、行幸みゆきはその笑顔に優しさを感じたのだった。

天使の役目とは?

本来であれば恋愛成立を目指す天使です。しかし決して恋愛を成立させる必要はありません。天使が担当の人間の好きな人物を見て、その人物が不適格な場合には別れさせる努力をします。

しかし、本来であれば姿を見せることはありません。ちょっとした運命のいたずらにより気持ちのずれを発生させたり、浮気を仕向けたりします。

完全に決別すれば天使は担当を外れる事が出来るのです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ