第十九話 【俺の妹は暴走してます】
何が起こったんだ!? 幸桜が狂った!?
実の妹に迫られる行幸!
どうなる、二人の関係は! っていう感じでどうですか?
シーンとした部屋の中に僅かに聞こえるシャワーの音。
行幸は脱ぎ捨てられたトランクスを手に取り、それを履くと床にへたりと座り込んだ。
はぁ……何で俺は幸桜がいるのにあんな事をしちゃったんだよ。
『チリリリリ』
嫌悪感がいっぱいに反省していると、突然目覚まし時計のアラームが鳴り出す。
音のする方向を見るとパソコンの横に置いてある目覚まし時計が鳴っていた。
もうそんな時間かよ。
行幸はMMOのショップの更新時間で毎日タイマーセットしていた。
そして、パソコン机に移動して行幸は時計のアラームを止めた。
あれ? そいやショップの更新時間って……
行幸は慌てて時計の時間を確認した。
「ちょっと待てよ! やっぱりまだ二十四時じゃないか!」
そう、NPCのショップは毎日深夜二十四時に更新。
幸桜は終電が終わったと言っていたけど…
くそー何が「終電がもう終わったから今日は泊めて」だ!
今でもまだ電車は動いてじゃないか!
と…こういう事があったんだよ。
※十七話からの回想がやっと終わりました。
幸桜の言う事を鵜呑みにして完全に幸桜の戦略に嵌ってしまったようだ。
家に帰してたらあんな事にはならなかったのに……なんて後の祭りだ。
これこそ『後悔先に立たず』って奴だよなと行幸は思わず頭を抱えた。
「行幸、どうしたの? 頭なんか抱えて?」
「わぁ!」
すっげー驚いた。
いつの間にかバスタオル姿の幸桜が俺の横に立っている。
「こ、幸桜、いつの間に出たんだよ? っていうかそんな格好でうろつかないでくれよ」
「え? 別にさっきの事は気にしないでいいよ。あ、もう一枚タオル借りるね」
幸桜は行幸の心配を他所に平然と別のタオルで髪を拭き始めた。
そして、どうやら幸桜はさっきの出来事をもう怒ってはいない様子だ。
それにしても、またバスタオル姿で俺の目の前にきやがった。
またさっきみたいな事になったらどうする気だよ。
ま、まさか? もしかしてこいつ俺を誘ってやがるのか?
いや待てよ、いくらなんでもそりゃ無いよな?
だって幸桜は俺の実の妹なんだから。
でも、何がどうあれさっき幸桜の裸を見てしまった件は謝るべきか?
行幸は幸桜の顔を見ながら考えた。
「なに見てるのよ? いやらしいなぁ。またさっきみたいな事になって私の裸が見れるんじゃないのかなって期待してる訳?」
「え? 馬鹿! 何で俺がそんな事を期待するんだよ! 逆だよ! 逆」
くそ、これって俺が幸桜に信用されてないって事か?
信用して無いならそんな格好で俺の目の前にいるなって言うんだよ。
って言ってもあれか、やっぱりさっきの事はやっぱり謝っておこう。
後で何か言われるのも嫌だしな。
「幸桜、あれだ…さっきはごめん…俺が悪かった」
行幸が謝ると幸桜は髪を拭く手を止めた。
「……いいよ別に」
幸桜は小さな声でそう言うと行幸の方を向いた。
「いいのか? マジで」
「だってさ、お兄ちゃんも男だしさ、そういうのって興味があって当たり前だし……さっきのだって本当は私も悪かったんだし……別に兄妹なんだし……裸くらい見られても平気だよ?」
あれれ? 思った以上に幸桜が大人な対応をしている。
「でもお前、すごく顔が真っ赤だぞ? 恥ずかしかったんじゃないのか?」
「そりゃそうよ! いくら見られたのが行幸お兄ちゃんにだからって……普通に恥ずかしいよ……私だって一応女だもん」
そう言うと幸桜は更に顔を赤らめて俯いた。
濡れた髪にバスタオル姿。そして右手で口を覆って恥ずかしそうな素振りの幸桜を見て俺はドキっとした。
な、何で妹を見て俺はドキってしてる訳!? 実の妹だぞ!?
そう思いつつも幸桜の姿をもう一度確認する俺が居る。
やばいな、幸桜がマジに女らしくなっちまってるよ……
あの胸は綺麗だったなぁ……
「でも私、さっき行幸がしようとしてたの変な事……あれはやだな」
変な事ってあれか。あれね、あれだよね。
「でもな、男としてはとてもあれには興味があるんだよ」
「わ、わかるよ? 私だって男の子に興味あるし、まだ経験は無いけど、だけど好きな人とエッチだってしてみたいよ?」
ちょっと待て! 何だその爆弾発言は! っていうか好きな人って誰だよ!
あと俺はエッチに興味があるなんて一言も言ってないぞ?
「おい、幸桜待て、それってちょっとそれは違わないか?」
「行幸はどうなの? 嫌でしょ? 私が男の子になってさ、行幸の目の前で×××を弄ってたりしたらどう思うの?」
俺の話を聞いてない。っていうか何を言ってるんだよ!?
思わず想像してしまった……
「わ、わかった。確かにそんな事をされたら嫌だ。だがそれ以前にそんな卑猥な台詞を女の子がストレートに言うもんじゃない」
「嫌でしょ? 私も嫌なの! わかるでしょ?」
聞いてねー。
「だからもう二度とあんな事はしないでね!」
顔を真っ赤にして行幸に向かって怒鳴りまくった幸桜は『はぁはぁ』と息を切らしている。
「わかった、もうしないよ…」幸桜の前ではしないよ。
※ここ重要です。
『プツン…』
あれ? 今なにかプツンとか聞こえたぞ? 何の音だ?
行幸は部屋を見渡す。しかし変な所は特に見当たらない。
そして視線を幸桜に戻すとさっきまで怒鳴りまくっていた幸桜の目が虚ろになっていた。
何があったんだ?
幸桜がさっきとはまるで別人の様になってる?
「幸桜? どうしたんだ?」
幸桜は目を虚ろにしたまま四つん這いになった。そしてゆっくりと行幸に迫って来る。
「行幸お兄ちゃん……」
「お、おい、何で寄ってくるんだよ? どうしたんだ?」
「いいよ……お兄ちゃんがそんなに女の子に興味あるのなら……私のを……」
え? どういう意味だ? 何がいいんだ? 幸桜の「ピー」を見てもいいとか? 幸桜と「ピー」な事をしていいとか!?
俺は何を考えてるんだぁぁ!
変な事を考える前にこの幸桜をどうにかしないと駄目だろ!
「幸桜落ち着け! どうした? 冷静になれ! いつものお前らしくないぞ?」
「私は冷静だよ…」
何処がだ!
おかしい、これは絶対にいつもの幸桜じゃない。
何がどうしてこうなったのかの理由は解らないが、幸桜が急におかしくなってるのだけは事実だ。
「行幸お兄ちゃん……私ね…行幸お兄ちゃんの事がずっと前から好きだった……」
まさか妹からの告白!? っていうか実の妹から告白とかマジ無いだろ!
マジでどんなエロゲーなんだよ! いつそんなフラグが立ったんだよ! っていうか初めての女の子からの告白が妹からとか……嘘だろ?
そうじゃない! そんな事は今は関係ないだろ。
この返しはどうする? うまく返さないと。
「えっと……それってどういう事かなぁ?」
うわぁ…なんだこの微妙な返しは!
「お兄ちゃん……覚えてる? 私が小学校一年の時の事……」
え? 一年の時? って事は俺が中学一年の時か?
何だ? 何かあったっけ……フラグが立つイベント?
「えっと、何かあったっけ?」
思い出せなかった。
「夏休みに私が一人で神社で遊んでたら、いきなり大きな犬が私の目の前に現れた。私は犬は平気だって思って寄ったらいきなり手を噛まれて、それで私は泣きながら逃げ出したの」
犬? あ! もしかしてあの時のあれか!?
近所の大型犬が逃げだしたあの事件か!
「それでもやっぱり犬の方が大きいし、早いし、強いし、私は足も噛まれてもう駄目だって思ったの。そうしたらそこにお兄ちゃんが来てくれたよね」
思い出した。あれはすっごく思い出したくない痛い思い出なんだよな。
「お兄ちゃんは犬を棒で叩いて一生懸命に追い払おうとしてくれた……でもやっぱり大きな犬は強くって……お兄ちゃんいっぱい噛まれて、そしてすごく血がでてて……わたし……わたし……」
幸桜の瞳から涙が溢れる。
行幸はそんな幸桜を見て当時の事を鮮明に思い出していた。
「あの時はすごく痛かったな……確か俺は太ももを噛まれて大怪我をしたんだよな。今になって俺もすごく無謀な事をしたって思うよ。あの後に大人が来なかったら死んでたかもしれないよなぁ」
幸桜が涙をすすりながら行幸の左足の太ももに手を置いた。
「おい、幸桜?」
「ここだよ……怪我して縫ったんだよね……あ…縫った後が残ってる……やっぱりお兄ちゃんだ……お兄ちゃんなんだね」
行幸は自分の左太ももを見た。
そこには犬に噛まれた時に縫った傷がちゃんと残っていた。
女になっても傷は残ってたのか……っていう事はこの体は俺の体って事なのか?
「病院のお兄ちゃんが寝ていたベットの横で泣きじゃくる私に言ったよね? 『泣くな幸桜、これはお兄ちゃんの役目なんだ。幸桜を守るのはお兄ちゃんの役目なんだからな』って……私、あの時からお兄ちゃんに恋をしたんだよ? 私は絶対お兄ちゃんと結婚するって決めたんだよ?」
いや、ええと? 告白継続?
「そ、そうか、そうだったんだ?」
「馬鹿だよね……兄弟って結婚出来ないのに……あの時は知らなくって……」
幸桜の目からはぼたぼたと涙が床に落ちる。
「お兄ちゃんは何でお兄ちゃんなの? お兄ちゃんじゃなかったら良かったのに……」
「幸桜…」
「こんなに大好きなのに……こんなに愛しているのに!」
何だこの展開は? まるで恋愛ゲームのヒロインと会話を繰り広げているプレイヤーになった気分だぞ。
でもゲームじゃない。これは現実なんだよな?
まるでゲームの様な展開だけど、現実的に俺の目の前で起こっているんだ。
それにしてもヒロインが幸桜とか……
だけど、何で幸桜がこんなおかしな状態になったんだよ?
行幸はどう見ても普通じゃない妹に不安を覚えた。
普段のちょっとツンツンした幸桜は何処へ行ったんだ?
それともこれが本当の幸桜の姿なのか?
違う、こんなのが幸桜じゃない。
だけど今は……くっそ!
「泣くな、俺も幸桜が大好きだから。でもな、お前は俺の妹なんだ。そして俺は兄だ。わかるよな? 幸桜だってきっと俺を兄貴として好きなだけなんだろ? 兄妹愛なんだよな?」
行幸がそう言うと幸桜は首を横に振った。
「ううん……私は一人の異性として……一人の男性としてお兄ちゃんが好きなの……」
禁断の台詞連発だと!?
これでこのまま関係持つと近親相姦だろ?
やばい、マジでゲームじゃないんだぞ!? マジ駄目だろ?
幸桜だって頭がいいからそのくらい解ってるはずだ! きっとこれはいくら何でも冗談だろ?
「えっと…幸桜? 冗談だよな? 冷静になれー」
「冗談なんかで……冗談なんかでこんな事を言えるはずないよ……ないよ!」
ホンキナンデスカ!?
「こ、幸桜?」
これって強制イベントみたい? そんな感じ?
「お兄ちゃん……やっぱり私じゃ駄目かな? こんなに行幸が大好きなのに……」
幸桜は目にいっぱいの涙を浮かべたまま行幸にぐっと顔を近づけてきた。
もう十数センチの所まで顔を寄せている。そして行幸は逃げる様にゆっくりと後ずさりをする。
やばいな、絶対に幸桜は正気じゃない。
『ドキドキドキドキ』
何だよ、自分の心臓の鼓動がハッキリと聞こえる。
馬鹿か俺は。妹に迫られてなんでこんなにドキドキしてるんだよ。
もしかして俺は妹に好意があるのか? 禁断の関係でもいいって思ってるのか? 実の妹とやっちゃうのか? ってやっちゃ駄目だろ!
まさかここで理性との戦いになるとは。
落ち着け、きっと乗り切れるはずだ!
目の前で四つん這いになっていた幸桜からバスタオルがゆっくりと床へと落ちた。
またしても全裸の幸桜が幸桜の目の前に……それも今度は四つん這いだ。
待てー! こん事ばっか起こって落ち着いてられるかぁぁあ!
なんだこのイベントは! おい!
「幸桜! バスタオル! バスタオルが落ちた! 丸見えだ! 色々見えてる!」
しかし幸桜はまったく動じない。
「別にいいよ……」
俺が良くない! 俺が良くないんだよ!
「何がいいんだよ! はやくバスタオルを!」
しかし幸桜はそのままゆっくりと行幸に接近して来る。
「幸桜、お願いだから俺の話を聞いてくれよ」
「行幸……」
やっぱり聞いてねぇー!
って言うか、なんだ? 幸桜の目が更に虚ろになっているじゃないか! 目が死んだ魚みたいになってる?
幸桜の唇が行幸の唇に急接近。
「ストップ! ストップ! まて幸桜! それは本気でマズイ」
行幸はさらに後ずさりをする。
しかし『ドン』という音と共に俺は壁際まで追い込まれた。もう後が無い。
こ、このままじゃ俺のファーストキスの相手が妹になるぅ!
ファーストキスが女になった時の、それも妹相手だなんてマジありえねぇ!
そ、そうだ!
行幸は首を左に廻して何とかキスを回避しようと考えた。
しかし幸桜は行幸の頭を両手でグッと持つと、こんなに力があったのかと疑う程の馬鹿力で顔の位置を強引に元に戻す。
「お兄ちゃん、私が嫌いなの?」
「い、いや…嫌いじゃない…けど…」
「じゃあいいよね? 私のファーストキスを……そして初めてを全部お兄ちゃんにあげるね」
「いや、いりません!」
な、何かないか!? これを打開できる何かいいアイテムは!
あわふたしていると行幸の左手に硬いものが当たった。
これはもしかして!
行幸はその固いものを左手で持って持ち上げて見た。
するとそれは…『妹と僕の秘密の関係』だった。エロゲである。
なんでお前がここに落ちてるんだよ!
幸桜はそのエロゲを見ると虚ろな笑顔で言った。
「うん、私たちも秘密の関係になろうね」
「いや、結構です!」
あまりにも無駄アイテムすぎだろ!
行幸はエロゲを投げ捨てた!
勢い良く飛んで行ったかと思ったら壁に当たり反射。
行幸の頭に直撃して再び足下に落ちた。
なんで戻ってくるんだよ!
『妹と僕の秘密の関係』というソフトの内容は?
十八禁ソフトで実の妹と関係を持つとい思いっきり近親相姦ゲームです。
フルボイスで展開され、最後に妹に襲われるという結末もあり。
妹は最初に三人の中から選択が可能でマルチエンディング!
しかし無名メーカーで人気は無く、特価商品としてワゴンセールされた。
現在はメーカーも無くなり、偏ったユーザーからのみプレミアがついている。